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第十五話 試練その一。


「それでリオン君、ボクが居にゃい間も元気してたかい?」


「あーー、えーっとその」


「まぁ無属性魔法の修練もしてたみたいだし、心配はしてにゃいんだけどねー」


 無事に授業初日(説明が多かったが)を終えた俺は、夜遅くになったタイミングで希望の種寮の外に出ていた。


 会話の相手は従順な使い魔である黒い猫。ではなく、その皮を被った俺の師匠だ。


 その割には猫の影響を受けてるようだけど。


「ていうか師匠、あの時に死んだというか魂が消滅した?みたいな感じになってたよね?」


「だから言っただろ少年、じゃなくてリオン君。『魔法は世界の法則だって簡単にねじ曲げれる』ってね?…………まぁ代償はあるんだけどにゃ」


 ドヤ顔のかわりに師匠の尻尾がフリフリと揺れている。さすが猫だ。

 でも、ある意味俺の考えてたことは合ってたのか、でも何だかあっさりしすぎて複雑な気分だ。


 って、おい。今なんか物騒な単語が——、


「そんなことはいいの!そうそう、今からわけは聞かずにボクについてくるにゃ!」


 そう言い残すと普通の猫よりも明らかに速く、風に乗ったように走り始めた師匠。


 こんな風に、相変わらず俺はまた振り回されるんだろうなと思うと本来の日常が戻ってきた気がして、少しだけ嬉しくなってしまった。


「ちょっ!どこ行くんだよー!師匠!!」





 後日知ったことだが、師匠は本当に猫の姿で話しているのではなく、俺にだけ届く思念のようなものを送っていたらしい。


 ————つまり俺、教室や道端で独り言をいきなり話すやばい人になっていたのである。嵌められた……





☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「ってことで、着いたよリオン君!」


 かなり早足で俺を連れてきた場所。そこは、


「塔の上?……っていうかここ立ち入り禁止だし……そもそも外出時間過ぎてるし……」


「塔の屋上」、今日の『召喚術サモン』で媒体を担った二つの「消えない灯火」が置かれている場所である。


「まぁ夜番の看守を眠らせたし、施錠されていた門を開けたし、十時以降の外出禁止も破ってるし、これ見つかったらリオン君が退学ににゃるかもねー」


 「……冗談やめてよ?師匠」


 何を隠そう、この悪事のほとんどは師匠によるものなのである。

 生物の姿になってから魔法がしっかり使えるようになったらしいが、あんまり暴走して欲しくないな……


「それで師匠、本題は?」


「相変わらずつれないなぁ……それじゃ、第一条件としてここにある「灯火」は使い魔を呼び出す媒体としての素質を持っている。つまりは自然の力が漲っているっていう証なんだよ」


 真実を確かめるため、灰が落ちている大きな皿状の場所で、音を立てて燃え盛っている大きな炎に意識を向けて、視てみた。


「————炎が、自然エネルギーを吸ってる……」


 それはまるで生物が呼吸をするみたいに一定の間隔で自然エネルギーを取り込んでいたのである。


「そうにゃんだよリオン君!この炎は君の想像通り生きている!そしてその正体は「神」によって人間よりも前に創造されたといわれる『精霊』なのにゃ!!」




 ————ごくり。


 精霊って確か絵本の「創世の魔法使い」に出てきてたよな?九人の魔法使いは精霊に愛されていたとか何とか……


「ってことでリオン君、試練その1にゃ!この灯火の中に存在する「火の精霊」と契約を交わして『火属性魔法』を会得せよ!」


 そうやって属性持ちの魔法を使えるようになるのか……ビックリするくらい急展開だな。


 ——いやまぁ、なんかもう慣れたけど。


「ふぅー、で。それはどうやってやるの?師匠」


「うん?そんなの簡単さ。ただ勇気を持って炎の中に飛び込むだけにゃ!」


 俺は目の前にある炎へと歩みを進めていく。




 ……あと三歩、あと二歩、あと一歩……っ!


 明確に伝わる熱気が、目の前にあるのは本当の炎なんだと決定付ける。



「はい行くにゃ!せーので前に飛ぶっ!はいっっ!」


 あああーーー!もう分かったよ!!


「せぇーのぉ!!!」


 ぎゅっと目を瞑って思いきり前へ飛んだ。


 絶対熱い、絶対熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱、くない?


 随分と長い浮遊感がようやく終わりを告げ、地に足が着いた。


 それと何だか背後が熱いんだけど、気にしない方がいいの?


 「ようこそ、魔を操る者よ。妾は生死の輪廻と太陽を司る精霊、『フェニックス』である。こちらを向かれよ」



 何言ってるか分からないけれど絶対やばい。

 とりあえず目も開けたくないし、振り返りたくもないんだけど…………



 ————こうして、最初の「試練」がいつも通りに突然始まるのだった。




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