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第十三話 希望の種寮にて。



 ——ギシギシ、ギャシ!ギギャ!!


 ドアノブを回すまでは良かったのだが、扉自体の建付けが悪いのかギシギシと音を立てるだけで扉が一向に開かない。


「おいおい、やばい音してんぞ。大丈夫か?」


 エイルが俺にそう言うが、生憎止める気は無い。というか!さっきまでの良い雰囲気返せよこのオンボロ!!


 と、そんなことを心の中で叫んでいる間に内側からの力で扉が開く。そしてそこには——


 「こんばんはでござるよー!こんな夜更けにどうしたでござるか?」

 「っ!?こ、こんばんは。えーっと……あなたは?」


 おそらく『シード』の上級生なのだろうと、それは分かる。


 問題は制服と何かの動物を象った黒いお面のミスマッチ感。それと今現在、天井にぶさらがった状態で俺と話していることだ。


 とくに後者、普通に怖いぞ。


「上から失礼。拙者、『ハンゾウ』でござる!」


 慣れた動作で天井から床へ音もなく着地したおそらくだが彼。ハンゾウ先輩というらしい。


「ちょ、その狐のお面……なんであの『シノビ』が魔術学校にいるんだよ!!」


 ピシッと指をさしてそう叫ぶエイル。その声色には少なからず恐怖、いや畏怖のようなものが感じられた。


 ——いや、というかあのお面、狐なの?


「エイル、そもそもシノビって何なんだよ?」


「俺も親父から聞いた話だけど、こいつらシノビの一族は、離れ小島からこっちに来て大量……っ?」



 ——風だ。強く吹いた風が横切った、俺はそのようにしか知覚できなかった。



「それは、もう遠い遠い昔のお話でござるよ?…………そんなことより新しく入ったお二人の名前を教えて欲しいでござる!」


 こちらが認識できないほどの速度でエイルの元まで移動したハンゾウ先輩は、それが何事でもないように話しかけてきた。


 ————ゴクリ。


 先程、得体の知れない威圧感が一瞬身体をギュッと締め付けたような気がするけど、気のせいだろうか?


「…………エイル、ヴァルナ・エイルだ」

「ア、アンブローズ・リオンです!あの、ハンゾウ先輩と呼んでも?」


「勿論いいでござるよ!エイル殿にリオン殿でござるか、以後よろしくでござる!ちなみに拙者は進級試験で滑って留年したので、年の差を気にせず適当に話して欲しいでござる!」




「「…………」」


 ていうか留年って、すげー気まずいじゃん……


 心の中の議論の結果、確かにハンゾウ先輩は謎も多いし、見た目も奇抜だけど、話してみると何となく悪い人には思えないという結論に至った。


「ささ、寝床も含めてざっと中を案内するでござるよ。ようやっと拙者も、この寮での一人暮らしから卒業でござるねー!」


「「一人暮らし……」」


 またもや行われた爆弾発言によって、俺とエイルは反応するのも馬鹿らしくなってきていた。


 その後、ハンゾウ先輩が凄く嬉しそうに誰もいない一階の共有スペースと二階の女子と男子で分けられた寝室を案内してくれた。


 家の中を歩くだけでも軋む床などから、相当この寮はガタが来ていることを言葉なく理解した俺とエイルだった。




☆☆☆☆☆☆☆☆


 

 身の回りのことを済ませた俺とエイルは、二階の寝室の前でお互い顔を見合わす。

 寝巻きの緩いガウンを着た眠そうなエイルは、なんか新鮮だ。


「ふぁぁ~。じゃ、また明日な。リオン」

「あ、うん。おやすみエ」


 ギィー、バタ……


 俺が閉めようとした扉を、何故かエイルが足で止めている。


「…………そ、その、この前は助けてくれ!……いや、助けられたけど……その、お前には、負けないから!それだけだ!!」


 バタン!エイルによって遮られていた扉が、今度は大きな音を立てて閉められた。


 「お、おう……」


 んー、顔も何も見えなかったけど、エイルは俺に宣戦布告でもしたかったのか?


 まぁ、とりあえず明日から授業が始まるらしいので、普通に楽しみだ。あっ、そう言えばカッサンドラ・トロイは結局寮に来なかったな……というか、あいつと俺とハンゾウ先輩でこの寝室を使うのか……これから大変そうだな……はぁ、疲れた……



 自分で思っていたよりも疲れが溜まっていたのか、そのまま思考の波にのまれて眠りについてしまった。


 

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