表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/48

第三話 先に進む。

ようやく更新です!遅くなりました。




「……一週、間後の朝?」


「はい。リオン様は魔成獣の出現、おそらく人為的な侵略がなされた日からまるまる一週間目を覚まさなかったのです」


 部屋を出た俺は、とりあえず今の現状を知るために、食堂にいたベラに話を聞くことにした。


「ふぉれで?けっきょふあの襲撃はどうなっふぁの?」


「魔成獣達の襲撃は主様も所属されている魔術士協会の活躍により、王城が少し破壊されたものの、死者または負傷者を最低限に抑えることに成功したようです。それと……」


 被害の少なさにほっとしている俺をよそに、ベラはどこからか手に収まるほどの小さな黒い箱を取り出した。


「先日、リオン様に救助されたと仰る給仕服を着た女性が、旦那様からの御礼と言ってこの装飾品を置いていかれました」


そうか、あの時魔法で浮かせて運んだメイドさんと赤ん坊のことか。今まで何のことを言っているのかまるで分からなかった。


「ふぉれは?」


 俺への返答のかわりに、その黒い箱が開けられる。


「その貴族の方に箱の中身を尋ねたところ、そのペンダントの宝石は純度の高い日長石、サンストーンと呼ばれ、必殺の一撃を一度だけ防ぐ魔術がかけてあるそうです」


 ベラが言った通り、鈍い光を放つ橙色の宝石が綺麗に削られてはめられたペンダントが目に飛び込んできた。


 その俺の髪色によく似通った宝石をじっと見つめていると、なぜかベラに深く溜息をつかれた。


「…………リオン様、お腹がすいているのは分かりますが、もう少しゆっくりとお食べください。体に障りますよ?」


 食堂に近づくにつれて漂ってくる朝食の匂いで、自分がまるまる一週間ほどなにも食べていないことにさっき気づいたのだ。


 そのせいで、さっきからなにかを考えながら無心で料理を食べてしまっていた。ゆっくり食べないともったいないとは思うけど……


 あいにく、俺はそんなに我慢強くはない。


「それは……うん……わかってるけど」


 俺が食を進めるほどに、ベラの整った眉毛がどんどんつり上がっていく。これは危険なサインだ。


 でも、体を芯まで温めるスープをすくう腕は止まらない。

 外は少しカリッとしていて、中はきめ細かく柔らかいパンを食べる手が、空腹も手伝って尚更止まらない。


 ──あぁ!美味しすぎる!


 これは余ったもので作られた料理の範疇を遥かに超えている。

 もし、ベラがどこかで料理の店を開いたら、流行ること間違いなしだろう。俺だったら少なくとも週三は通える自信がある!


「私は主様にリオン様の教育を一任されています……その意味がお分かりですね?」


 あっ、超えてはいけないところを超えてしまったようだ。その冷えきった視線が俺に最終宣告を知らせる。

 そんな親の仇に向けるような瞳で、こっちを見ないで!


「あんまりベラを困らせたらダメだぞ?というかリオン、せめて私に挨拶くらいしてくれてもいいじゃないか……」


 どこか落ち込み気味な声の方をみると、そこには俺の父さんが椅子に座って普通に食事をしていた。

 まったく気づかなかった……なんて、いくらなんでも言えるわけがない。


 普段の父さんはなんというか、その実力に伴うオーラがないのだ。服装だけどうにかしてしまえば、平民だと嘘を言ってもバレはしないだろう。


「お、おはようございます。父さん」


 そこで、父さんが何かを思いついたように手を叩く。


「そういえばベラ、リオン宛に手紙が届いてなかったかい?」

「はっ!私としたことが……早急に用意致します」


 俺宛の手紙?災厄の日からは、外に遊びに行くことすらせず、魔術の勉強を必死こいてやっていた俺に、もはや友達と呼べるような人はいない。珍しいこともあるもんだ。


 ────というか、父さん!ナイスタイミング過ぎる!影が薄いとか言ってごめんなさい!


「リオン様、こちらです。くれぐれも食事中に読むのはおやめくだ……」


「ふー。ご馳走様でした!」


 俺の言葉を聞いたベラが、そのまま固まってしまった。


 理由はいつもの二倍以上あるすべての品を俺がすでに完食していたからだと思うけど、いくらなんでも驚き過ぎじゃないか?


 ぼーっとしているベラの手から、ゆっくり手紙を抜きとって少し観察する。なぜか宛名は書いてなかった。


「じ、じゃあ開けて読むよ?」


 なぜか少し緊張しつつ、どこかで見覚えのあるような紋章が施された封蝋を剥がす。




 ふむふむ。




━━━━━━━━━━━━━━




 親愛なるアンブローズ・リオン殿




公平に審査された匿名希望推薦により、我々は貴殿がエイデン魔術学校の入学試験を受ける許可が降りましたことを報告いたします。



入学試験につきましては、ちょうど二週間後の正午に本校にて行います。(推薦の都合によりいち早く通知が行えませんでした、申しわけありません)

※遅刻については最悪の場合、試験を受ける権限がなくなりますので要注意です。



なお、具体的な試験内容は「魔術に関する基礎的な筆記試験」と「魔術またはそれに類する地力を測る実技試験」の二科目です。

※魔術によるカンニングや回答者の替え玉などは、当然認められませんのでご注意ください。



もし、試験を辞退する場合はそのまま無視をしてもらって結構ですので、くれぐれも間違いのないよう、お願いします。




最後になりますが、我々教員一同は貴殿が当試験を合格できることを、心から願っております。




     エイデン魔術学校 校長代理

          フォルトナ・ダリア




━━━━━━━━━━━━━━




「────フォルトナ・ダリア……」


 文章を一通り読んだ俺は理解することよりもまず、脳を一旦休ませることを優先した。


「…………」


 俺も、ベラも、父さんも、なにも言わない。


 唯一、父さんの手からこぼれ落ちたスプーンの金属音だけが、だだっ広い食堂に響いた。





 ────いや待て、落ち着け。


 エイデン魔術学校って言ったら、マルカ王国が公認している魔術学校の中でもトップの優秀魔術士輩出率を誇る有名な学校だぞ?


 匿名で俺を推薦したのはだれなんだ?そもそも、魔術の適性がまったくない俺がなんで選ばれた?そのうえ試験までたった二週間しかないし、商業高校の入学試験とも丸被りと来た。


 本当に、どうすればいいんだ?


「……リオン。今一度聞くが、お前はどうしたい?」


 先ほどまで固まっていた父さんが、気を取り直してそう聞いてくる。俺は思わず生唾を飲み込んだ。


「……言っておくと、私はこの手紙の件について一切関与していない。つまりこの好機はリオン、お前自身が勝ち取ったものなんだ。あとは言わなくても分かるよな?」



 最初は諦めていた。抱いていた夢は、約束は守れないと思っていた。それを叶えるのには、正直今でもまだ足りていないと思う。


「はい、父さん────」


 でもこの数ヶ月間、本当に色々なことがあったんだ。楽しかったこと、悩んだこと、頑張ったこと、悲しんだこと。挫折をして立ち上がったこと。


 その全ての経験が積み上がって、ようやく先が見えてきた。だからもう今更引き下がることなんて、できない。




「────俺に、この試験を受けさせてください!!」



 席を立ち、父さんに向かって深い礼をした。誰かに本気でお願いするのは、これで二回目だ。


「ぷっ……あははははは!!やっぱり親子だなぁー!」


「…………え?」


 なんということか、あのいつも静かな父さんが馬鹿みたいに笑っている。しかもツボがまったく分からないときた。


「いやすまん、実は父さんもエイデン魔術学校の卒業生だから色々思い出してな?ということで試験まであと二週間、ベラから特訓を受けるといい。いけるな?ベラ」


 サラッと衝撃の事実を話していく父さん。ていうかその後なんて──?


「無論です。それでは今からスケジュールを組んできますので、今日のところはしっかり休憩しておいてください」


 いやいやいや、この急展開はなんだ。ベラがすごいやる気漲らせてるよ?


「……特訓って、なんの?」


「決まっています。今のリオン様に足りないものを洗いざらいですよ。おめでとうございます、なんと今なら魔術についての復習もついてきますからね?」


 ベラが不敵な笑みを浮かべている。これは良くない、良くないぞ。生命の危機だ!

 そもそも俺は魔術がまともに使えないのに……


「たかが二週間、されど二週間。私が監督するからには、悪いようにはいたしません。死ぬ気で頑張りましょう」


 あぁ、二週間後の俺はどうなっているんだろうか?非常に楽しみである。





 まぁ、なんとかなる……のかな?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ