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第十九話 誰かという名の救世主。

※改稿しました。(内容に大きな変化はありません。)10/19






 「おーーーーい!!」





 暗闇で発した声が響く。とにかく今ので何かがいるとしたら、こちらに来るはずだ。


「────」


 水を打ったような静けさが、現実ではないはずのこの世界に不安感と虚無感を与えている。



 「────!!」


 待て待て、背後からなにか聞こえる。これは、足音?

 いきなり襲われたりしたら堪らないので、とりあえず振り向いてみることにした。


「急げリオン!あの炎に捕まったらおしまいだぞ!!」

「止まってちゃダメだよリオン!走って!」


 子供が二人、全速力でこちらに走ってきている。しかしその姿は性別もわからないほど影のようなモヤがかかっていた。


 それにしても、なんで俺の名前を知ってるんだ?


 あれ?先程まで真っ暗だったはずの世界が今度はどこか見覚えのある街の細道に変わっているではないか。


 不思議に思いつつも、とりあえずは俺を抜いてすでに前を走っている二人について行こうと、顔を前に戻して走り出そうとする。


「あれ?今度は視界が……」


 それもそのはず、どうやら身長が今の一瞬で縮んでしまったらしい。というか声もなんだか甲高いし、もしかして小さい頃・・・・に戻って────!?


「「リオン、はやく!!!!」」


「おわっ、ごめんごめん……」


 頭だけを回してボーッとしていたら、前の二人に腕を引っ張られてしまった。



 それにしてもこの感じ、どこかで見たような気のする。いや待て、これって本当にただの幻術なのか?師匠の考えはまるで分からない。





────────────────




 背後から追ってくる炎は、やけにどす黒い色をしていて気味が悪い。

 それは俺たち三人をつけ狙うかのように退路を焼き尽くしながら、徐々に徐々に、その逃げ場を奪っていく。


 そしてついに、炎の包囲網に囲まれてしまう。


「いや…………まだだ!」


 目の前にはふたつの分かれ道、今まで通ってきた退路、そしてその三方から迫る炎。

 なら他の場所を、例えば建物と建物の間・・・・・・とか……


「あった。あそこのまだ炎に侵食されてない建物同士の隙間から逃げれるはずだ!行くぞ二人とも!」


 今度は俺が二人の手を取ってそこに逃げ込む。


「ちょっと待てリオン!あそこが他の道に繋がってるかも分からないんだぞ!?」


 たしかにそう言われると、なんの確証もない。でも、今の俺の選択は間違ってないとなぜか言うことができる。これは絶対だ。


「それはそうだけど、今はリオンを信じよう?ね?」


 三人で駆け抜けていく建物の隙間は身長が低くなっているのも関係しているのか、最初に見た暗闇のように、周りがまったく伺えないほどに暗い。


 背後には、先ほどまで俺達を追い詰めていた炎同士がぶつかり合って、爆音が響いている。何よりもその音が、よりいっそう不安感を湧き立てた。


 恐怖心に負けないよう、さらに走る速度を上げようと一生懸命に腕を振る。逃げるんだ!この三人で!



 ────なんだろう、この感覚。


 大体、今一緒にいる二人とはさっき出会ったばかりだ。なのになんでこんなに……


「まずい!もう炎がこっちに来てるぞ!急げ!」


 いや、待て。そんなことは後回しだ!今は兎にも角にも逃げることが優先だ!


「もう少し、あと少しで出口だよ!」


 二人の片割れが走りながら指を指す方向を見ると、そこにはまだ炎に侵されていない道があることが分かった。


 これまでになかったほど疲労した身体を乱雑に動かして、どうにかこうにか走る二人についていくことで精一杯だった。


 そうこうしている間に、長かった暗闇の細道は終わりを告げ、これまた見覚えのあるような大きな道が姿を現した。



「やったぞ!抜けた!あとは……っ!?」



 そういえば、先ほどまで並走していた二人が見えない。なんで────











 ただそれは、絶対に味わったことのある感覚だったことに間違いはない。



 ────この、忘れられない感覚は、なんだ?








 トン。











 あぁ、なんだ。絶望・・か。





 気がついたときには、もう背後にいた二人によって背中を押されていた。その力に小さい体の俺は耐えることができず、思わずして倒れ込む。


 そして予定通りに、寸分の狂いもなく、二人の今も立っている場所に炎の侵食に耐え切れなかった建物が崩落する。



 その存在がボヤけている二人。しかし、これだけは分かった。


 今彼らは、安堵した笑顔を浮かべている────。






 もう、間違えたくないんだ!


 どうか動いてくれ!今助けられなかったら、あいつらは、レオニスとスピカは報われない!



 倒れ込む身体を支えるよう、咄嗟に手を突く。高所から落下してくる家屋の部材が、やけにスローモーションに見えた。


 そこで、息を噛み締めるように、一気に吸い込む。

 心臓の音さえも煩わしく感じた。



 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」



 どうしてもこれだけは言いたい。発声練習した甲斐があったよ、師匠。



 目をつぶって、必死に走る。手を前に出した。



 俺が死ぬ?三人とも死ぬ?そんなことは分からないけど、「何もしてくれない誰か」になるのは絶対に嫌だった。

 


 それさえも、自己満足か────。



 意識が何かに飲み込まれているように沈んでいく。どうやら俺がダメだったらしい。でも、あの二人は助かったのか、それだけが気がかりだった。





━━━━━━━━━━━━━━






「…………もう、これは夢みたいなものなんだよ?なのに、こんなに無理しちゃって」



 声がする。それはずっと前に聞いたことのある、懐かしい声だ。


「ほらいい加減起きろよ、リオン」


 目を開けるとそこには俺の予想通りの人物が、自分を眺めていた。


「お前ら、何で、死んだんじゃないのか?」


 レオニスとスピカが照れくさそうに笑っている。でも、姿は小さい頃のままだ。逆に俺の身体は元に戻っている。


「まぁ、それはそうかもしれないね。だって私達はリオンの記憶から、あの人に創られた存在だから」


 「あの人」ってのは師匠のことか?最高傑作とか言ってたしな。人の人格そのものを創り出すなんて信じられないけど、まぁ、いいか。


「それは置いておくとして、この場所知ってるよな?」


 レオニスが俺にそう聞いてくる。それはもちろんだと言うように、俺は頷いた。


 そう、なぜか俺達三人は今、マルカ王国に一つだけ存在している大きな門の前に立っていたのだ。

 そしてそれ以外の存在は何もなく、最初と同じように辺りは暗闇に包まれている。


「ふふーん!それじゃあこれは知ってる?もんって別の呼び方をすると、『ゲート』になるんだよ?」


 たしか、俺が師匠から課された課題って、魔の蔵庫マジックストレージの『ゲートを開く』ことだったはず。


 もし、もしそうだとしたら────。



 目の前にある大きな門を両手で思いきり押す。当然門の扉は固く締まっており、動くことはない。


「リオンっ、なんか、なんかすんげー面白いぞっ!」


「いやだって、こんなの無茶だろ!」


 俺が押してもビクともしていないのを見て、レオニスが今にも吹き出しそうだ。


 コノヤロー、人事だと思って!


「まぁまぁ、レオニスもそこら辺にしてあげなよ?大丈夫だよリオン、そのために私達がいるんだから、ね?」


 二人は、静かに俺の背中を押した。


 俺の背中に触れた二つの手のひらは、なにも特別な力などないはずだ。だけど確かに、先ほどまでまったく動かなかった扉がゆっくりと着実に開き始める。


「──っ!?なんで?」


「おいリオン、後ろは振り向くんじゃないぞ?お前は生きてるんだ、そのまま行け!」


「そうだよリオン!その力で誰かを救ってあげるんでしょ?それから誰よりも凄い魔術師になる。それが、私達との約束なんだから!!」



 レオニス、スピカ。


 お前らがもし幻想だったとしても、創られたものであったとしても、これだけは言わせてほしい。




 


 「お前ら、ありがとな……」






 ついに門が開いた。


 その中には、煌めく炎のような何かが膨大に存在している。そして、それが視界と意識を埋め尽くした。


 だけど、いつまでも背中の小さな温もりは消えない。それは、これからずっと永遠に消えることはないだろう。






 何故なら────、






 俺が、絶対に、忘れないから。







夢系の話はすべてここに繋げるための布石です。今まで落ち込むような話ばっかりですみませんでした。

次から現実パートです。

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