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すぐそこにある未来

すぐそこにある食糧問題

作者: 坂井ひいろ

 私の仕事はフリーの女性ジャーナリストです。世界中の出来事をネットで探し回り、裏を取ってニースにのせる。隠された真実を売って社会を救う。それが私の仕事の流儀です。中でも食糧問題は女性である私のフィールドワークの一つです。


 ある日、私の所に差出人のあやしい一通のメールが届きました。私は厳重にウイルスチェックをおこなってから、極秘と書かれたそのメールを開きました。


『某国が日本へ輸出している大豆は、遺伝子組換えとポストハーベストによって大豆イソフラボンを強化したものです。大豆イソフラボンは女性ホルモン「エストロゲン」(卵胞ホルモン)に似た働きをすることで有名です。研究では、更年期障害や骨粗鬆症を予防し、ガンの発生率を下げます。コラーゲンを増やし、女性の美しさや若々しさをつくり出すとされています』


 私はそこまで読んで、側にあった大豆クッキーの封を切った。パッケージにも同じような内容が記されている。


「もう、つまんないメールを送ってこないでよ」


 私は一口かじって、メールをゴミ箱に入れようとしましたが、ふと気になって続きを読みました。


『しかし、大豆イソフラボンの実態は世間で騒がれている環境ホルモンそのものなのです。男性を女性化して出生率を下げる一方、高齢者を長生きさせて日本を超高齢化へと導いているのです。某国はそれによってかつて経済大国であった日本を、借金まみれの老人の国に陥れたのです。このままでは年金制度は破綻し、経済は崩壊していまいます。今からでも遅くありません。この事実を暴き、日本を経済大国に返り咲かせてください。お願いです』


 メールはそこで終わっていました。私は大豆クッキーをゴミ箱に放り込んで取材を開始しました。


 しょう油、味噌、豆腐に納豆、豆乳に煮豆、きな粉にクッキー、食用油にサプリメント。日本のスーパーは大豆加工食品で汚染されていたのです。しかも、その原料の大半が某国産の大豆でした。さらに某国は、自国産の大豆の国民への摂取量規制までしていたのです。自分たちが食べられないものを安全だと言って日本に売りつけていたのです。


 私はテレビ局などのマスコミを扇動し、某国産大豆の不買運動のキャンペーンをはりました。農林水産省と厚生労働省、輸入商社とメーカーなど。国と大企業をつるし上げました。するとワイロや裏金。医療データの隠ぺい工作にトクホの不正認証など。不祥事が次々と明るみになっていきます。私は、たちまち時の人となりました。私は日本を救ったのです。


・・・・・・・・・・・・


その頃、某国では。


「いやー。まさかここまでうまくいくとは。あなた方が日本の倍の値段で大豆を買いたいと申し出られたときは、我々も困りました。世界的な食糧危機のおりに、同盟国に対して高く買ってくれる国が現れたから、もう大豆は売れませんとは言えませんからな」


「まったくです。今や日本の方から大豆は願い下げだと言ってきているようですな」


「お互いにこれからは大国として仲良くやりましょう」






おしまい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 米余ってるのに米作り続けて、 消費は豆や麦の方が多いという、日本の農業事情を見直さなくてはいけませんねとも
[良い点] 難題に取り組む姿勢。それをあしらう様に大国が勝つ。SFなのにリアリティーがありますね。 [一言] アメリカ、ロシア、中国はヤバいですね。
[良い点] 面白いですね! 食糧問題にキチンと触れていながらも、 落ちも光ってます。ありがとうございます!
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