武器を選ぶ
冒険者志望の子供達が自分に合いそうな武器を選び数十分、それぞれがその手に初めての武器を手にとり俺の前に並ぶ。
うんうん、全員目がキラキラしてるぞ、冷静な頭脳役のスティーブとリズですら輝いている。結局は年相応の子供って事だよね。大事だぞそういうの、俺は分からないけど。
「んじゃ、それぞれがその武器選んだ理由教えてくれ。あと調整するから持ってきて」
俺がそう促すと、スティーブが若干口許を緩ませながら手に持った槍を俺に渡す。
「俺は後方支援は女子に任せて中衛で臨機応変に対応したい。そして近距離中距離なら動き易いと思ったから槍にしたぞ。それに自分で言うのもなんだが背も高く、槍に適していると自負する」
なるほど、つまりコイツらは男女別々じゃなくて1つのパーティーとして活動するって事か。うん、スティーブは頭が良いし、要領も良い、パーティーの頭脳になるだろうな。
「いい判断だと思うぞ、フィルがアホな分苦労してくれ。それで、どこか調整するか?」
「それなら槍をもう少し長くしてくれ、感覚的にもう少し長い方が扱いやすい」
槍を少しずつ長くしてはスティーブが振るう。それを数回繰り返すと丁度良い長さになったのか満足そうに頷いた。
「うん、これくらいでいい。ありがとう、師匠」
そうしてスティーブは槍に慣れるために遠くで素振りをしていた。
「ちょっと、早く私のもやりなさいよ」
いつの間にか目の前に来ていた上から目線少女、アルカは意外にも弓を手にしている。
意外かどうかは知らんが流石に剣とか持ってきそうだなと予想してただけちょっと意外だ。
「なによ、私が弓で文句あるわけ?」
「いや、何をするにもお前達の自由だ、その結果死のうとも俺は知らん。所で、選んだ理由は?」
「師匠って責任あるのか無いのかわかんないわ……」
1度ため息を吐くと俺に弓を放り投げ続ける。
「それは私のスキルと相性が良いのよ、師匠とエマお姉ちゃんの間に割り込めたのもスキルのお陰。それに剣を使うなんてフィルに任せたら良いのよ。あんな重いもの私は持てない」
あー、割り込めたのってスキル使ってたんだ。どんなスキルなのかね、しかし聞くのも無粋と言う奴だ。相性が良いからと言っても使いこなせるかは別だ。それでも選んだと言うことは自信が有るんだろうな。
「あまり慢心するなよ。その傲り昂りがパーティーを危機に晒すことになるかもしれないからな」
「分かってるつもりよ、極力気を付けるわ……猪突猛進なんてフィル一人で良いのよ」
「それで、調整するところは?」
「そうね、そのままでぴったりよ、流石師匠ね。でも私達も成長するのよ。この大きさだと冒険者になる頃には扱い辛くなると思うのよ。だから一般的な弓の大きさも用意してほしいわ。皆の分も、あと矢を追加で2000は欲しい」
ははぁーそこまで考えては無かったな。確かに大きくなれば武器も変わっていくか。俺がふらっと現れて武器を作り直すと言うこともする気は無かったからな。寝耳に水って感じだ。
皆の分はダルいけど仕方ない……ここは面倒を見るとしよう。
「矢を追加で2000って鬼か?」
「それくらい良いじゃないの」
「手入れが大変になるから100本だけだな」
「確かにそうね……分かったわ、それで我慢する。でも皆の分の一般武器は作ってよね」
「勿論だ」
弓を受け取ったアルカは俺が木で作っておいた的を目掛けて練習を開始する。
すると今度はリズが杖を持って歩いてくる。
「妥当だな」
「はい、やっぱり発動体があった方が楽なので、それに物理意外にも遠距離補助がある方が良いと思いますし」
「直す所はあるか?」
「いえ、かなり完璧で非の打ち所が無いです」
「1番時間かけたからな」
「感謝します」
リズもスティーブと同じく頭が良い、劣らないレベルでだ。流石にスティーブ一人じゃカバーできない事もある。リズにはその辺を頑張って欲しいな、と言う願望がある。
「ぜひ、スティーブを支えてやってくれ」
「それどころか私が引っ張って見せますよ」
「意外と向上心が有るんだな」
「負けず嫌いなので」
そう言うと俺に礼をしてアルカの元に去っていく。
「し、師匠ぉ……」
「ん、あぁ、ピータ。次は君か」
おどおどしているピータにしゃがみ込んで目線んを合わせる。こっちはフルフェイスなので逆に怖がられて無いだろうかと思うが声だけは出来る限り優しくしよう。
「選んだのは……短剣か、珍しいな」
「うん、師匠のお陰でスキルが分かったんだ。スキルと相性って言うか、前にでなきゃ行けないって思って」
「ふむ、何か分からないが、大丈夫か? こう言っては悪いが怖くはないか? お前は見るからに臆病だろ? 客観的、そして主観的、常識的にみて冒険者に向いている性格とは思えない」
俺の発言に驚いたのはスティーブ、リズ、そしてアルカだ。フィルはエマと共にまだくたばっている。
「師匠、それは言い過ぎだ」
「師匠としてどうなんですか」
「アンタね、そんな下らないこと思ってたのね! 幻滅よ! ふざけるな、ピータの何を知ってるの!」
冷静だが内心はかなり怒っている事が分かるスティーブとリズ。アルカに至っては隠しもせずに感情を爆発させている。
怖いなー、流石に子供にマジギレされたらこっちだって狼狽えるぜ。
「俺はピータに聞いている。それで? 自分に出来そうもない事を人のためだからど自分を殺してまで突き通してみるか?」
「アンタね!」
アルカが俺に向かう。
するとピータがそれを止めると、胸に抱き抱えながら曲がっていた背筋を正し、短剣を片手にもつと胸を張って告げる。
「違うよ、師匠。僕は弱い自分を克服するために心から皆の役にたちたいって思ってます……今は……怖いけどっ……! それでも、やるんだ!」
強い眼差しで俺を見るピータ。
ははは、目に涙が溜まってるじゃないか。……まだ怖いんだろうな、そりゃ大の大人からそんな、指摘を真正面から臆病な子にぶつけたらそうなりますよ。
……でも泣いてないからな、目も強い、1番の不屈で強いのはピータかもね。なんて。
スティーブ、リズ、アルカの三人は目を見開いて驚いている。
「いい答えだと思うぞ。その本心は大事にしろよ、お前は向いてるよ」
ピータの頭に手を乗せ、撫でる。
最初こそ驚いていたものの、次第にリラックスしてきたようだ。
「師匠、あそこまで言う必要あったか?」
「この先何が起こるか分からないからな。早めに潰してみた」
「酷い人だ」
スティーブの軽口を流しつつ、ピータへと向き直る。
「……直す所はあるか?」
「え、えーと、もう少し長くしてくれれば……接近戦、怖いですし」
「徐々になれていけば良いさ。このくらいかな?」
「あ、はい、ありがとうございます。師匠」
たどたどしく礼をしたピータはフィルの元へ駆けていく。将来が楽しみな子だよね。きっと皆を助ける情報屋とか危険を回避させてくれるお助けマンになること間違いなしってね。
「次は! 私だぁ!」
そうやって俺に手に持った武器で背後から容赦なく攻撃を仕掛けてくるのはお転婆元気少女のユンである。
しゃがんだ状態から前に転がりつつ腕の反動だけで立ち上がりバク転、バク宙を無駄に決め手ユンと相対する俺。
「……なんて無駄な技術」
アルカが何か言ってるが知らん。
「ふふふ、この私の攻撃を避けるとは……だが、次はない!」
「ははは、その腕、お主……やるな?」
「覚悟ぉ!」
向かい合った俺達は共に駆け出し、俺は落ちていた木剣を、対するユンは木で出来た斧を振り回しながら接近し、剣劇を開始する。
斧の1振りをバックステップで回避し、反動を使って真上から俺は斬りかかる。
それをユンは転がるように回避すると重量任せの1発を俺へ放つ、それを木剣で受けて鍔迫り合いをする事数分。
「ふふ、流石だな」
「私の斧に互角なんてやるね……」
「いや、何よこの茶番」
と、アルカの空気読めない発言のせいで場が白けたので構えを解く。
「アルカちゃん、空気読めないんですか?」
「全くだな、これでは先が思いやられるぞ」
「なんで私が悪い感じになってるの!?」
そりゃあ人の邪魔するからだろう。
「ユンよ、奴はいつもこうなのか?」
「そうです師匠! アルカちゃんは事あるごとに邪魔をしては知らんぷりするので迷惑してるのです!」
等とその他にもアルカの空気の読めなさを次々と暴露していくユン。流石にずっときいてるのもあれなので途中からは聞かないことにして相づちをのみを打っている。
「ユン、アルカがぷるぷる震えてるから許してやれ」
「え? あ、本当だ! 悪気はないんだよアルカちゃん!」
「ダメだな、聞こえてない」
アルカは満身創痍である!
「さて、アルカは放っておいて、ユン。どこか直すか?」
「私には分からないけど師匠はどう思う?」
「そうだな、さっきのをみていると斧を振ると言うより振るわれてる感が有るから重量を調整しよう」
そうして受け取った斧をもち調整する。
「さて、じゃあなんで斧にしたか聞いてもいいか?」
「え? バゴーンってやるのかっこよくない?」
「……それだけか?」
「ううん、私、人より力が強いし後衛はアルカちゃんとリズちゃんいるし、十分だと思うの! だからそうする。あと、普通に斧が格好良いし」
人のやりたいことに口出しするのま良くはないか、これも立派な理由だ。
「その火力で全員の度肝を抜いてやれ」
「勿論だよ!」
斧を振り回しながらユンは傷心のアルカの元へと去っていく。
「最後は俺だぜ師匠!」
「お前は何を持ってきたんだ?」
行きも絶え絶えながらフィルが寄ってくる。
「ふふふ、見て驚け、剣だ!」
「そのままだな」
「師匠、のってくれよ……」
「お遊びは終わりなんだよ」
一応フィルの武器もちゃんと調整して渡して上げた。
「よし、じゃあ早速訓練を……」
「おやおや、随分と楽しそうですね冒険者風情が」
折角の訓練時間を邪魔されてしまったようだ。




