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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
辺境にて
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弟子とな?


 「てりゃあ!」

 

 勢いよく地面を踏み締めてその反動で年相応以上の踏み込みを見せてくるフィル少年。


 ほほう、その年ではなかなか良い踏み込みだ。

 ……10歳位の踏み込みの度合いとか知らないけどな。

 なんとなく言ってみたかった。


 想定していた以上には速かったので、思わず拍手を送りたいくらいだ。

 いやいや、油断は良くないな、偶然俺の急所に当たって1発KOなんて事も起きないとは考えられない。

 急所どこか分からないけどね。

 俺だって戦いにおいて殆ど素人だからな、おまけに油断して子供に負けるのは流石に泣けるのでちゃんと対処する。

 涙出ないけど、多分。


 上段からただひたすら全力で打ち込まれる縦振りの剣を横に移動するだけで避ける。

 フィル少年はそこから持ち上げるように俺へと剣を振る。

 これも後ろへ一歩後退するだけに留めてギリギリで避ける。


 ふふふ、単調な攻撃なんて何度やっても当たらぬよ。

 もう少し頭を使うんだな!


 「くっそぉ! これなら……どうだぁっ!」


 フィル少年は肩越しに剣を担ぎ、俺の頭を狙うためにその場を跳躍して剣を振り下ろす。

 それを俺は真剣白羽取りにより見事に受け止める事に成功する。


 「すげぇ!」

 「はっはっは、この程度難しくもないわ!」


 そこから両手で挟んだ木の剣を振り回す。

 フィル少年は武器を離さなかったが故に俺の手動回転の餌食となる。


 五分程高速で回してゆっくりと剣を離す。

 回していた五分間、フィル少年は剣を離さなかった。


 どうなってんだ、十歳の腕力じゃないぞ、ここの院長や子供は怪力なのか? そう言えばフィル少年ってば木材を運ぶのを全く苦にしてなかったな。

 日頃鍛えているのだろうかね。


 そんな感心をしていたが攻撃が一向に来ないのでフィル少年を見ると地面に仰向けになっており、ときどきピクピク動いていて唸り声をあげている。


 気分が悪いのだろうか。

 これは続行は難しいかな、今のところは終わりにして置くとしよう。吐かれても困るし。

 今日のところは終わりにしないのは恐らくどうせ復活したらもう一度等と言ってくることが予想できるからだ。


 「休憩にしよう、そのまま休んでいてくれ。俺は壁の修理を続けるから、立ち直ったらもう一度呼びに来てくれ」

 「うぅ……分かった……うぷっ」


 口許に手を当てながら答えるフィル少年。

 流石に暫くは動けないだろう、そこはまだ十歳と言うことか、分からないけど。


 おっと、この場で吐かれてしまっては俺が世話をする事になってしまうじゃないか。

 ここはさっさと退散しておくことだな、去らばだ、フィル少年。強く生きろよ。


 

 「見てましたよ、大人気ないですね」


 壁の修理の最中、エマが話しかけてくる。

 左右には小さな女の子がおり、どうやら遊んでいた様だ。

 因みに他の子供達は俺とすれ違い外に出ていった。フィル少年の話でも聞きに行ったのだろう。


 「ん? あぁ、訓練の事か、甘くしたところで何か意味はあるか?」

 「まだ十歳じゃないですか」

 「もう十歳だぞ。後五年すれば冒険者に登録できるし立派な大人だ。それに世の中何が起きるか分からないからな、俺等と違って子供は幼くて弱い。少しでも自分を高めるためには悠長にしている暇なんてないよ」


 この国では十五歳が成人となっている。これはエマに常識として教えてもらった。

 俺達魔物は人間の常識に疎いからな、特に俺と尻尾は叩き込まれた。

 そして冒険者に登録できるのも十五歳となっており、自分で稼げる様になるので立派な大人だ。

 それにフィル少年は有名になる男だ、後五年なんて短いも同然だ、他に追い付くためには時間を無駄にしてほしくは無い。


 「流石に手加減はしてくださいよ」

 「当たり前だ、本気でやったらフィル少年死んじゃうだろ。そうだ、エマも冒険者として何かアドバイスの一つでもしてやってくれ」

 「ランドさん、あんなに関わるつもりはないと言ってたのに子供に随分と優しいですね」

 「俺は夢見る少年の後押しをしてやりたいだけだぞ。自分のやりたいように生きて欲しいだろ、まだ小さいうちから目標を持っているなんて素晴らしい事だろ」


 魔物も例外はあるが寿命もある。

 理性もない魔物は本能だけで生きているので心からやりたいと思って生きれる者は少ない。

 いや、本能こそが心からやりたい事なのだろうか? だが、人間には誰しも理性と言う者があるし、それは、とても大切な者だ。

 自分で考えてやりたいことを心と頭で想像が出来るなんてなんとなく素晴らしいと感じるんだよな。


 「夢って大事だと思うぞ」

 「ランドさんの夢は有るんですか?」

 

 俺の夢ねぇ……静かにのんびりと過ごす。

 この一択だが、いつかはやりたいことが見つかるかもしれないな。

 当面の夢は最初に言った通り何だけどな。


 「俺の夢はだな……」

 「師匠! 復活したぞ! 続きをやろう!」


 唐突に窓から身をのりだしフィル少年が俺を呼ぶ。

 周りに他にも子供が居るようだがなんでだろうな。


 「おっと、想像以上に早いな。今すぐ行く……悪いな、この話はまた今度だ」


 俺はエマへと背を向けると扉の方へと向かう。

 窓から出ても良いがそれはちょっと怒られそうなので自主規制だ。


 「夢ですか……」


 ポツリと呟かれた言葉は左右の子供には聞こえていたが微かだったので子供達は首をかしげるだけだった。



 「よし、じゃあ続きを始めるか……そして何だこの人数は」

 「あー、なんか俺の話とか師匠との戦い見て触発? されたって言ってた」


 そこにはフィル少年の他に過ごしているのは年下の男の子が二名、女の子が三名と言うフィル少年含めて計六人の子供が集まっている。


 「フィル兄が頑張ってるし、かっこいい! 僕達もなりたい! 冒険者!」

 

 栗毛でボサボサ髪の男の子が目を光らせる。

 兄の背を追う弟的な存在だろう。


 「フン! フィルにできて私に出来ない訳が無いじゃない! ……仕方ないから付き合ってあげるわよ!」


 フィルと同じ年位の女の子だ。

 カールの入ったクリーム色の髪の毛で容姿は整っているなと言う感じ。


 お嬢さん、私は頼んだ覚えはございません。


 「ははは、俺としては嬉しいけどさ、やっぱり師匠が弟子にしてくれるかだよ」

 「お前もまず弟子にした覚えは無いぞフィル少年」

 「なんだって!? お願いしますよぉ、弟子にしてくださいよぉ」


 手をスリスリしながら謎の中腰で、笑いかけるフィル少年。そのポーズ、七三貴族にピッタリだと思った。

 

 「ちょっと! フィルが頼んでるんだから弟子にしなさいよ! ついでに私もよ!」


 フィル少年の横から俺に指を指す少女。

 どうやら俺に味方はいない、これが人徳と言うやつか。

 だが、俺には魔物徳があるぞ、角や牙、尻尾にガケトカゲ、カウントゴリラ。そしてエマと言う魔物の愉快な仲間たちが……。


 「誰が魔物ですか!」


 なぜバレたのか分からないがエマが木材を俺へと投げつけてくる。

 その顔は怖いのだ。


 ほら、この怪力と短気、そして狂暴性。これを魔物と呼ばずしてなんと呼ぶのだろうか。

 これを人間と括るのなら魔物は大体が人間になるぞ、定義作ったやつ誰だ! 出てこい!


 「そろそろ失礼すぎますね! そろそろ私とも勝負しますか!」


 そう言ってエマが窓から飛び出してくる。

 その手に持つのはエマが愛用し、俺が少し手を加えていたダガーである。

 あれは危険だ逃げよう。

 そして何で心で呟いてるのに気付かれるんだ、アイツは冒険者やめて諜報員になるべき者だろう。


 俺とエマの鬼ごっこと言う子供からしてみればかなり危険な遊びを目の前で披露してしまった。

 それにより子供達(冒険者志望)はそれをみて呆然と絶っているだけだった。


 「なんなのアレ……」

 「師匠は凄いなぁ、俺もあんな風になりたいよ」

 「僕も目指します!」

 「いや、アレ多分目指しちゃダメよ」


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