冒険者ってのはな
俺とエマは孤児院へと足を運んでいる。
七三貴族からの孤児院ぶっ潰す宣言を受けた手前、結構な頻度で通って安全かどうかを確かめなければいけない。
別に暇だから良いんだけど。
でも俺達だって宿代に金がかかるし稼がなきゃならんのだが……。
「それはランドさんが夜で稼いだら良いじゃないですか」
清々しい程の人任せだ。
出来るけどさ、流石に少しお願いとかしてみない? それやってもバチは当たらないよ?
「それは良いんだが、一応Fランクだぞ俺は、稼げる量も限界がある」
「むぅ、それは確かに……では、ランクを上げたら良いじゃないですか」
「そう簡単に上がるものか?」
「私依頼あまり受けてませんし……分かんないです」
「なんだ使えないな」
「失礼な! 私だって受けたくなくて受けてないんじゃ無いんですからね! 他の冒険者には騙されるしランドさんには情報収集頼まれるし、今回に至ってはランドさんが変な事件持ってくるからじゃないですか!」
最初と最後俺関係ねぇじゃねぇか。
最後の方は向こうからやって来た事だし。
「でもランドさんって結構危険な魔物倒してますし、それでもランクが上がらないものなんですかね?」
うーん、確かに、冒険者になるための試験は高ランク冒険者のダガシカシをコテンパンにしたし、アラブルベア、カウントゴリラもボコボコにした。
それなりに領主からも依頼を受けてるわけだが、流石にそれで一気に上がる事はギルド的に無いのだろうか。
でも俺としてはランクは低くても生活に困るようなことはないしな、あくまでも冒険者として過ごしているのは暇潰しと簡単に街等に入れる様にするためだ。
他の街になんて行く予定は無いんだけど、いつかは旅をするなんて事もあるのだろうか?
……無いな、俺はのんびりと静かに過ごしたいだけだ今のままが丁度良い。
そもそも俺が魔物だとバレれば面倒なことになる気がするね。
「ちょっとランドさん、着いてますよ。どこに行くんですか」
どうやら通りすぎていたようだ。
踵を返して今度はちゃんと孤児院の敷地へと足を踏み入れる。
近くにはあの七三貴族が乗っていた趣味の悪い馬車もなく、恐らくまだ今日は来ていないか、若しくは来ないかのどちらかだと思われる。
……できれば来ないで欲しいなぁ等と願いながら俺が新しく作り直した扉を叩く。
するとそこから「はーい!」と言う元気な声が聞こえて扉が開く。
出てきたのは元気いっぱいの10歳程の男の子が出てくる。
「あ! お兄ちゃんお姉ちゃんいらっしゃい!」
「昨日ぶりです、何か変わりはないですか?」
「うん! 今のところは何もないよ!」
エマは誰にでも敬語で話す。
それは例え小さい子供でも同じなんだろう。
特におかしな事はないとの事だし、今は安心できるだろう。
「こら!」
そう大きな声で扉から出てきたのは怪物……ではなくここの院長を勤めているカマだ。
……名は体を表すとはこの事だ。
いや、別にそう言う人間ではないのは分かるが系統は殆ど一緒なのでは無いだろうか。
だって女だとしたらその筋肉量はあり得ないしおまけに俺を押し返せる程の力も持っている。
性別不明の化け物と呼ばれても差し支えないのでは。
「……アンタ、さっきからなんで私を見てるんだい?」
「いや、見てないぞ」
「まぁ、良いけど。それよりフィル! アンタ、いつも勝手に扉を開けるのは止めろと言ってるだろ! 今日はおやつはないからね!」
「そんな! ケチケチすんなよ!」
「うっさい!」
そしてその巨大な拳がフィルと呼ばれた元気な男の子へと振り下ろされる。
拳骨をもらったフィルは頭を押さえて地面をのたうち回る。
うんうん、あれは絶対痛いよな。
「だが、少年。俺はその一撃を顔面で受けたぞ」
「マジかよ……兄ちゃんすげぇな。あんなの受けたら死ぬぞ」
頭を擦りながら俺に驚きの表情を浮かべるフィル。
その目は何処と無く同情の色が見え、俺は何とも言えない気分になる。
まぁ、悪い子ではないし。
狙ったことは痛みを何とか和らぐように軽快なトークを披露し、この程度の痛みは大丈夫だと認識させて痛みをなくそうと試みたがどうやら違う方向に持っていかれた。
俺の痛みに比べたらフィルの痛みなんて微々たるものだと思われたのかもしれない。
まぁ結果オーライ、気にせず行こう。
「院長、今日は七三のは来たか?」
「七三貴族って……あぁ、ブンシャ家の貴族ね、今日はまだ来てないわ。でもいつ来るかなんでも分からないからこっちは神経張り詰めてばかりだわ」
ふぅ、とため息を吐く院長。
七三貴族はどうやら決まった時間には来ないらしい。
また面倒な微妙な嫌がらせをしてくるな。
「仮にも貴族なんだから、常識を考えて欲しいな」
「ランドさんがそれを言いますか」
「お前ちょいちょい失礼じゃね?」
今は七三貴族の事を考えるのは時間の無駄だろう。
俺は院長から修理が必要な箇所を聞き、修理へと向かう事にする。
「あ、兄ちゃん俺も手伝える事あるかな?」
フィルが俺に手伝いを申し出る。
まぁ木材を無理のない位に運んでくれれば良いか?
「そうだな、木材を運ぶだけなんてつまらん事だがそれでも良いなら手伝ってくれ」
「よっしゃ! 任せてくれ!」
「無理と怪我はするな、それだけに気を付けてくれ」
こうして俺とフィルは今回は壁の修理を行っていく。
その間エマは他の子供と遊んだり、料理を作ったり等していた。
アイツ料理出来たんだ……。
そうして結構な時間が経ち、壁修理も佳境に差し掛かっていた。
「へい、フィル少年。木材をくれ」
「ほい、師匠。これくらいで良いかな?」
「助かる」
暫く共に作業をして、俺とフィル少年の仲は進展した。
何故師匠呼ばわりされるかは知らんが恐らく作業中暇だったので少しだけ、受けてきた依頼の話をすると目を輝かせていたのでそれのせいだろうか。
大それた事はしてないんだが、恐らくアラブルベア、カウントゴリラとの戦いについての話で興奮したんだろうな。
「いいなぁ、俺も冒険者になりたいな!」
「なれば良いだろ?」
「そう言う訳にも行かないよ、孤児院の面倒もあるし……」
残念そうに俯くフィル少年。
ただその中でも作業が止まることはない辺り、彼も職人である。
「別に難しい事でもないだろう。冒険者として頑張って稼いだ金を孤児院に入れるなり、有名になって孤児院に名前を貸せば大抵の奴は寄り付けなくなると思うぞ。人間やりたいように生きるのが良いだろ?」
「……っ! そっか! その手が有ったか! 兄ちゃんサンキュ! 俺、頑張るよ!」
俯いた顔を上げてキラキラした目を俺に向けてくるフィル少年。
その目は熱意と興奮に満ち溢れている、それが長く続けば本当に有名になるんじゃないかな。
……面白い。
「今日の作業は終わりだ。外へ行こう」
「へ? まだ時間あるし直してない所も沢山あるよ?」
「なんにせよ、その熱を冷ますわけには行かないからな、特別にお前を鍛える」
「マジで! 良いの!? やったぁ!」
俺とフィル少年は作業を終え、外へと向かっていった。
といってもこれといって最適な訓練とか思い付かないけど……どうするかなぁ……。




