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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
辺境にて
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久しぶりの依頼

 「次下らない冗談言ったらぶん殴りますからね!」

 「いや、既に殴られたんだか……」

 「何か言いましたか?」

 「……ナンデモナイデス」


 ダガシカシと共にお説教タイムが終わり、解放された後、俺とエマは依頼を受けて孤児院とやらに向かっている。


 「それにしてもあんなデカイ子供が居るわけ無いのにダガシカシもアホだな」

 「ごく自然にそんな嘘をつくランドさんの方がアホだと思いますがね!」


 ふぅ、何をそんなに怒っているんだか、そんなに皺を寄せたら老け顔になるぞ……おっと睨まれてる。


 「尻尾さんも来れば良かったんですけどね」

 「個人的に調べたいこともあるとか言ってたし良いんじゃないか? 迷子にならないように声も掛けたから大丈夫だろ」

 「その後に迷子になったのはランドさんですけどね……」

 「……」


 な、何の事だろうか……検討違いにも程がある。

 気になって色々見ていたらエマの方が消えたんだ、うん、俺は悪くないかもしれない。


 尻尾は孤児院に行くと言ったところ、顔がひきつって全力で拒否された。

 孤児に何か恨みでも買っているのだろうか。


 「孤児院に何しに行くんだっけか?」

 「何で依頼を受けた人が忘れてるんですか……」


 エマが呆れたように此方をみて溜め息を吐く、そして説明してくれる。


 なんだかんだでちゃんと話を聞いてるよなー、感心感心。


 なんでも、今回の依頼は孤児院での手伝いらしい。

 手伝いと言えば子供と遊ぶとか孤児院の修理とかそんなところらしい、別段難しくもなさそうだななんて考えてたらエマが足を止める。


 ……どうやら着いた様だな。

 結構ボロボロだな、これなら一昔前の尻尾の家の方が良いレベルだな。


 取り敢えず俺とエマは扉の前に行きノックする。


 ──ガタンッ


 「あ」


 両開きの扉は片方が勢いよく孤児院の中に倒れかなり大きな音を建てた。


 「何事!?」


 孤児院の中からかなりガタイの良い……あれは、男だろう、なんか化粧施してるが男だな。


 「また来たの!? 返り討ちにしてやるわよ!」


 口調が女だと!? そんなバカな! なんでそんな強烈な個性がこんな田舎に存在するんだ!


 拳を振り上げながら向かってくる性別不明の化け物。


 「なぜこんなところに魔物が……」

 「いや、人間ですよ、限りなく魔物に近い。て言うかランドさんの方が魔物ですし尻尾さんに至っては彷徨いてますからね」


 そんな会話をしているともう眼前には拳が迫っている。

 かなりデカイな、拳が俺の顔ほどは有ると思われる、食らったらどうなるんだろう、駄目だ! 避けなければ、でも気になる! 気になって仕方な……


 ──ゴォォオン!


 視界がぶれる、景色は高速で動いていく。

 

 今日は晴天だな、しかし雲の動きがやたらと早いな……あ、飛ばされてるのか。


 「よっと」


 腕を地面にめり込ませ無理矢理その動きを止め、俺を殴り付けた張本人を見る。


 「なかなかやるじゃない! 次は無いわよ!」


 勇猛果敢に走ってくる性別不明の化け物。

 

 仕方ない、此方も相手してやろうではないか。


 俺は腕を抜き目標に向かい走る、相手は此方が無傷なのに驚いているがすぐに顔を引き締めて向かってくる。


 なにコイツ、もう冒険者しとけよ……て言うか誰だよ、俺が何したってんだか。


 手の届く距離まで近づいた俺等は拳を突き合わせると周囲に衝撃が走る。


 おぉー、例え配慮した拳だとしても互角に打ち合うか、いやちょっと人間舐めてたわ。

 あ、あれやってみよう、搦め手?


 打ち合ってる拳から軌道をずらして俺は絡み付くように性別不明の化け物の動きをロックする。


 「な!? なにそれ! 動けない!? 離しな!

私はここをあんたみたいな奴から守らなきゃいけないんだよ!」


 じたばたもがく性別不明、どうしたらもんだろうか……離すとまた襲いかかってくるだろうし、依頼を終わらさなきゃいけないわけだが。


 「おい、何を勘違いしてるか知らんが俺は依頼を……」

 「ぬおぉぉぉぉ! 離せぇぇぇ!!」

 「あ、力強っ……」


 徐々に押し返してくる性別不明。

 

 ここまでの力を持ってる奴は中々見たこと無いな、本当に人間だろうか。


 「あのぉ、孤児院の方ですよね?」

 「そうよ! ここを取り仕切ってる者よ! またこの院を潰そうとしてるのか! そうはいかないよ!」

 「いえいえ! 私達はギルドからです!」

 「え?」



 「なんだ! それなら最初からそう言ってちょうだいよ!」


 陽気に話す院長、俺等はあの後誤解を解いて孤児院の中に案内されている。


 「勘違いしてごめんね、私はここの院長を勤めているカマよ、よろしくね」

 「俺の名前はランド、院長、お前はホントに人間だろうか」


 途端に横から拳が飛んでくる、その正体はエマだ。


 「初対面で失礼です! すみません、私はエマです」

 「しかしこんなクソボロい孤児院に本当に子供はいるのか?」

 

 また拳が入る。


 「良くもまぁそんなにあっさり言いますね! 本当にすみません!」


 勢いよく頭を下げるエマは俺の頭も掴んで下げさせようとする。


 「くっ! この……抵抗しないでくださいよ!」

 「良いのよ、本当にボロボロなんだから……」

 

 しょんぼりと俯く院長。


 「まぁそんなことはどうでも良いが、依頼の内容はなんだ?」

 「そんな事って、あんまりですよ!」

 「依頼を受けに来たんだぞ、そっちの内情に首を突っ込む事は俺たちの仕事じゃねぇ」


 背もたれに背中を預けると勢いよく後ろに倒れ、序でに床まで抜けた。

 

 視界が真っ暗だ、やれやれ相当老朽化が進んでいる様だな。


 「……すまんな、壊してしまった」

 「良いのよ、どこもかしこもこんな感じなの……今じゃご飯と寝るとき以外は使えないのよ」

 「なるほどな、そして子供達はどこへ?」

 「みんな近くの公園とかに居るわ、街の人は優しいから孤児でも普通に接してくれる訳よ」


 んー、そう言えばその辺で子供をちらほら見た様な気がするな。

 

 「まぁ良い環境で何よりだ」

 「えぇ、それでも問題は山積みなのよ」

 「それは先程の勘違いも関係有るんですか?」


 エマが割り込んできて問題について聞き出そうとする。

 

 依頼はそんなことじゃないだろう、どこまでお節介を焼くつもりだ、冒険者かコイツ本当に。


 「えぇ、実は、王都の方にある貴族かどうにもここを買い取ろうとしているのよ」

 「それは、何故か分かりますか?」

 「それが、全く……取り立てに来る人達も教えてはくれないのよ、それにどんな理由があろうともここに帰ってくる子達の家は守りたいの」


 強い意思を示す院長。


 本当に守りたいんだろうな、強い目だ……顔が怖い、エマは感動している。


 これは、ヤバい予感がする、面倒事は御免だ、さっさと依頼の内容を聞き出そう。


 「そんなことより依頼はなんだ? 達成出来なきゃ罰金なんだが……それが目的か?」

 「違うわよ、本当は子供達と遊んで欲しかったんだけど皆どこかへ出かけたのよ」


 どこに行ったのかしらと心配そうにする院長。

 それなら前日に子供に言い聞かせて欲しかった。


 「……ならどうするつもりだ?」

 「そうね、孤児院の修繕は二人じゃできないし……」

 「忘れていた、扉を治すぞ、壊した御詫びだ」

 「ランドさんが御詫びだなんて、槍でも降るんですか!?」

 「エマの血の雨なら降らしても良いが?」


 失礼なことを行ったのでアイアンクローをお見舞いする。


 「あ! やばっ、痛い、イタタタタタ! す、スミマセン、いや本当に……マジで御免なさい!」


 ギリギリと徐々に強くしていったら謝ったので許す事にした。

 後ろで「死ぬかと思った」と呟いてるエマは放置して玄関へと向かう。


 うん、相変わらずボロボロな扉だ。

 倒したまま放置して中に入ってたな。


 取り敢えず扉を拾って見るがこれなら加工しても問題はなさそうだな。


 「よっと」


 『物質操作』[木]で折れた部分を伸ばしたりしながら加工を施す。

 やっぱり量が足りないよな。


 扉は置いておいて、やっぱり木の調達から行う方が良いか。

 ……流石に大人数で暮らすし、薪割り用の木があるはずだ、それを借りよう。


 「院長、薪を借りても良いか?」

 「え? えぇ、構わないわ」

 「助かる」


 断りも貰ったので薪が積まれている場所から少しもらい、扉へと戻る。

 ついでなのでもう片方の扉も取り外そう。


 「ランドさーん、どこですか……居た。そして何してるんですか!?」


 エマが慌てた様に此方へ寄ってくる。


 「扉を直すんだ、邪魔をするな」

 「直してるんじゃないです! これは壊してるんですよ!」

 「直すために壊してるんだよ」

 「何を言ってるか分かんないです!」

 「俺に賭けろ」

 「それ絶対意味無いです!」

 「これが孤児院の為にもなる、頼む」


 頼むから俺の邪魔をするな。

 とは言えない、言ったら余計な邪魔になる。


 「……分かりましたよ」


 不承不承で離すと空かさず俺は扉を取り外す。


 そして持ってきた薪を押し付けながら元の形をイメージしながら『物質操作』を使う。

 するとたちまち元通りどころか新品のレベルで直っていき、後は微調整をして……と、できた。


 「はぁ、こんなことも出来るんですね」

 「これくらいなら軽い」


 新品の扉を見て感心するエマ。

 すると向こう側から院長がやってくると腰を抜かす。


 「な、何ですかこれは!」


 怒ってるのか驚いているのか分からないが、また説明する事になるんだろうな。


 「院長、どうしたのー?」


 ふと、後ろから声がかけられる、そこに居たのは沢山の子供、恐らく孤児達だな。


 「えー? 扉が新しくなってる!」

 「え、本当だ~! すごぉい!」


 ガヤガヤとし始め、これはエマに任せて俺は逃げることにしよう。


 「ランドさんも付き合ってくださいね」

 「……はい」


 かなり怖かったので、エマと共に説明に回り大変な思いをした。

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