牙との遭遇
視点はエマです
ランドが角、ガケトカゲ、カウントゴリラとの戦闘中に姿を消していたエマは森の西側を走っていた。
どうせ明に話に行くならばグラスウルフの牙も予め呼んでおこうと思ったのだ。
「はぁ、はぁ、相変わらず広いですねこの森、嫌になります」
私は現在、何とか森の西側、牙さんの領地に入りました。
ですが、何故かグラスウルフが周りを並走していて、攻撃は仕掛けて来ません。
これは、獲物を追っていて獲物が弱るまで待っている様にも見えます……あれ? 私、仲間でしたよね?
魔物の言葉を話すことが出来れば良かったんですが、恐らく難しそうです。
牙さん達の住む集落まではまだもう少しかかりますが、全速力で走ってきたお陰で思ったよりも速く着きそうです。
すると1匹のグラスウルフが立ちはだかりました。
思わず足を止めたのが失敗ですね、周りを瞬時に囲まれてしまいました。
以前は1匹ならあしらう事が出来ましたが、集団となると厳しそうです。
そもそも何故私は襲われているのかさっぱり何ですが……
ふと、1匹のグラスウルフだけが何処かへ行ってしまいました。
まぁそんなことを気にしてる余裕無いわけですが。
周りのグラスウルフが細かい動きで場所やお互いの位置を激しく動き回り、いつ攻撃が来るかを予測させないように動いてくる。
私のスキル『隠密』はこう言うときに役に立ちません。
もっと強いスキルが良かったです。
「ガルルル!」
「わぁっ!」
顔に飛びかかるグラスウルフをしゃがんで避け、そのグラスウルフが居なくなった場所から逃げようとしましたが他のグラスウルフに阻まれる。
そしてその空いたスペースを他のグラスウルフが直ぐに保管し、最終的に逃げ道は無くなりました。
……連携が上手すぎて何も言えないです。
グラスウルフの連携は普通とリストにも載ってましたが、段違いです。
私達がいない間に何が有ったのでしょうか。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
マジで無理です! 戯れとかそんなレベルじゃないです! 殺す気ですよこの狼達!
私が何をしたって言うんですか!
無理やり突破してみたのは良いとしましょう、ですが、その後ですよ、攻撃の勢いが増してきましたよ!
さっきまでのは本気じゃ無かったんですか!
ちくしょー! こんなことならランドさんと一緒に居ておけば良かったです!
「ぜぇ、ぜぇ」
30分ほど全力疾走をしているんですが、グラスウルフに殺されるより酸欠で死にそうです。
もう、倒れちゃおうかな~なんて思ったりします。
「グルウウウ!」
「わっ!」
やってしまいました、足に疲労が溜まっていたせいで避けたものの立ち上がるのが厳しいです。
これからが人生だったと言うのに……はぁ、ついてないですね。
──アォォォォォォン!
やけくそに諦めていたら突然遠くから遠吠えが聞こえました。
その声が届くと同時に、私に襲いかかろうとしていたグラスウルフが止まりました。
「え? な、何ですか?」
すると何かが此方に猛スピードで接近してくるのが分かりました、おそらく後10秒もしない…きた!
出てきたのは他のグラスウルフよりも一回りは大きいグラスウルフでした。
こんなに大きなグラスウルフは見たことがないです、いましたっけ?
私が驚いていると一際大きなグラスウルフが近寄ってきて頭を下げました。
その大きさは2メートルは越えてるんじゃないですかね。
周りにも少し吠えた後、私を襲っていたグラスウルフも頭を下げる……何ですかこれ。
良く理解することは出来ませんでしたが恐らく襲うことはない……と思います、多分、きっと。
……所で牙さんはどこに居るのでしょうか。
と言うか私、どうやって意志疎通するつもりだったんですかね、早とちりしちゃいました。
取り敢えず諦めて戻りますかね、はぁ、無駄足でしたよ。
ランドさん、心配してくれますかね?
……いや、あのゴーレムさんの事だから私の存在忘れてますね。
私は戻ろうと立ち上がるものの、上手く行かず、よろめいたんですが、大きなグラスウルフさんが受け止めてくれました。
優しいですねー、ランドさんも見習ってほしいですよ、全く、なんで人と戦うと手加減しないんですかね、全員を半殺しにしてますからね。
「ありがとうございます、では、私はこの辺で」
グラスウルフさんにお礼を言って戻ろうとしましたが次の瞬間、襟を加えられ背中に乗せられました。
「え? って、うわ!」
グラスウルフさんは私が向かいたい方向へと走ってくれました。
「そうだ、どこに向かうか教えなきゃですね、えーと」
私は取り敢えず、尻尾さんの耳を手で表して頭に持っていって伝えます。
……伝わりましたかね? これ、伝わって無かったら恥ずかしいだけですよ。
グラスウルフさんのスピードはかなり速いです、もしかするとランドさんより速いかもしれないです。
これなら上手くいけば直ぐに追い付きますね。
それから1時間ほど走った所で、歩いている角さん、ガケトカゲさん、カウントゴリラさん、そしてランドさんが見えました。
「おーい! ランドさーん!」
叫ぶ私、ランドさんは気づいてくれた様で此方を見て片手を軽く上げてくれました。
するとグラスウルフさんはランドさんの前で止まってくれて、私も降りました。
「何処に行っていたんだ?」
「牙さん連れてこようと思ったんですけど、大量のグラスウルフに襲われまして、このグラスウルフだけが助けてくれたんですよ!」
「……やけにデカイな」
するとグラスウルフさんがランドさんに向かって吠え、ランドさんは話を返している様子でした。
途中で驚いたように多少からだか揺れてましたね、ランドさん、分かりづらいんですよね。
話終えたのか此方を見るランドさん。
「あー、エマ、牙が見つからなかったんだっけか?」
「残念ながら……」
「こいつらしいぞ」
「え?」
ランドさんが指差したのは私を連れてきてくれたグラスウルフ……え? 本当に牙さん?
「どういう事ですか」
「聞いてみる」
再度話し合うランドさんとグラスウルフ……私も話せたら良いのに!
「どうやらグラスウルフの族長になった者は成長が他とは異なるみたいだな」
「ほぇー、でもまあ、結果オーライですね!」
「結果的に連れてきてるし良いか」
いやー、まさか助けて貰ったのが牙さんだとは、私は運が良いのか悪いのか分かりませんね!
すると少ししょげた様子で牙さんがランドさんに話し、私に向き直り頭を下げた。
どういう事かランドさんをみる。
「同族が下らないことで襲ってしまって申し訳ないだとさ、お前を襲ったやつらはきっちり教育するらしい」
「……ほどほどにですよ?」
どうやら私に襲いかかったグラスウルフ達はやんちゃ者で話を聞かなくて困っていた集団らしいです。
一匹離脱したグラスウルフはこの事を牙さんへと報告しに走ってくれ、何とか間に合ったそうで、いやぁ、あのグラスウルフが間に合わなかったら私死んでましたね……笑えないです。
牙さんにも今後は気を付けるように言ってもらい、再び尻尾さんの元へと私、ランドさん、角さん、ガケトカゲさん、カウントゴリラさん、牙さんは歩きます。




