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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
始まりはいつも突然
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ギルド

 辺境ファン。

 プラウド王国の国内領土の端にあり、目覚ましい発展もない土地。

 所謂、田舎だ、最底辺と言う訳でもないが人間が大量に訪れる訳でもない。

 ただ、ひたすらに自然が綺麗なだけの田舎だ。



 そんな辺境ファンへと、俺と女冒険者はさっさと向かっている。

 よくよく考えたら俺等が持つ荷物なんてものは無いのだ。

 

 辺境ファンへと続く道と言う名のだだっ広い草原には所々に木やそこそこデカイ岩などがある。

 時々小規模な森もあるが他の魔物がいるだろうからむやみに近づく事はない。


 そしてこんな何の障害物もない平原で野営をするとなるとかなり危険らしい。

 なんでも野生のゴブリンなどは夜になると狂暴化することがあるので、そこそこ手強くなるらしい。

 

 そんなわけで俺の出番(強制)だ。

 俺は寝る必要もなければ体力が切れることもない、それはつまり何をしている意味するか。

 夜通し走ることになる訳だ、夕暮れ時になると休憩も兼ねた上で女冒険者は活動停止をする。

 それを俺は肩に担いで朝まで走る……え? 担ぐな? どうしろと……あぁ、お姫様抱っこね。

 注文の多い女である。おれならおんぶでも良いと思うんだがな。


 疲れないから俺は全力疾走が出来るわけだ。

 あと『付与』にある[速度小up]を使って走る速度をあげる。

 体感的には大分早いと思う。

 ひたすらに真っ直ぐ進むだけと言われているからな、もしかすると朝には着くんじゃないか?


 

 *


 

 人を抱えて広い平原をかつてない速度で走る灰色の物体。

 端から見れば物凄い絵面なのかななんて思っていたりするのだが、予想以上に早いな、明け方に差し掛かる頃にはなんかそれっぽいものが見えていた。


 あと、1、2時間程だろうか。

 ん? あぁ、女冒険者の目が覚めたようだな、そしてこの速度を朝から叩きつけられて叫んでいる。

 そんなに楽しいのだろうか。


 「ってか、早くないですか!? 普通に行けばあと、1日位かかりますよ!?」

 「最初からお前を持って行けばもっと早かっただろうな」

 

 そんな話をしているとそろそろ門が見えてきたので速度を落とし、女冒険者をおろして歩く。

 人間が長時間こんな速さで走ってきたら第一印象最悪だからな。


 「すみませ~ん、入りたいんですけど!」

 「ん? あぁ、身分証明になるものは持っているかな?」

  

 腰の低いお兄さん兵士だな、さぞモテるだろう。

 しかし、身分証明になるものか、持ってないぞ。


 「そちらの仮面の方は?」

 「あ、この人記憶喪失で身分証明になるものがないので私が責任を持ってギルドに登録して持つ一回来ます!」

 「うーん、まぁ、良いか。すぐに戻っておいでよ?」

 「分かりました! 行きますよ!」

 「……恩に着る」


 そんなんで良いのだろうか、門番として…

 

 「お前は何を見せたんだ?」

 「ギルドカードです! これは、冒険者の証としてギルドに冒険者登録をすると証明書変わりになります」

 「便利だな」

 「ゴーレムさんにも作るんですよ?」


 俺達はそのままギルドとやらに向かうことにした。

 


 うわぁ、人が多いなあ、オラ森に帰りてぇ。

 だが、女冒険者にズルズル引っ張られる、畜生。

 依頼とやらを受けるために紙が貼られている壁に冒険者が殺到している。

 人間とは不思議だな。


 「あら、エマさん、ご無事で何よりです、いつこちらに?」  

 「受付嬢さん、お久しぶりです! 先程ですよ!」  

 「そう、他の3人の冒険者はどちらに?」

 「……それが、大分遠くまで行ったんですが、魔物に襲われて、私以外は……」

 「……そうですか、それは残念です」

   

 この女、口からでまかせを平気で言っている。

 まぁ、俺が殺しました。なんて言ったら即捕まるか。

 黙っていよう、それにしてもなんか淡々としているな。

  

 「所でそちらの方は?」

 「あ、そうです、私が魔物から逃げている最中に助けてくれたんです!」

 「運が良かったですね、ギルドからもお礼を」

 「いや、偶々だ、気にすることはない」

 「いえ、ギルドとしては冒険者は大切な人手です」

 「あの、それで、この方のギルドカードを作ってほしいんですが」

 「持って無いんですか?」

 「ああ、田舎から出てここで登録をしようと思って女冒険者に遭遇したからな」

 「分かりました、では、こちらへ」


 受付嬢がカウンターを移動してそれについていく。


 そうして俺は何故か外に連れ出された。

 女冒険者も一緒についてきている。

 案内されたのは広場のような場所だ。

 

 「これから実践で実力を示してもらいます。あまりにも腕がたたないなら無駄死にするだけですので」

 「なるほど」


 試験すら合格できないなら冒険者なんて出来やしないし、死ぬだけだからな。

 ギルドは無駄に人を殺したくないのだろう、当然の措置と言う訳だ。


 んで、俺が相手するのはあのおっさんか。

 厳ついな、重厚な鎧を着て、防御は抜かりなしと言いたいところだが頭が禿げている。

 防御とは一体なんなのだろうか。


 「こちらは貴方の合否を判断する試験官であり、Bランク冒険者のダガシカシさんです」

 「俺はダガシカシ、よろしくな、言っておくが帰るなら今のうちだ、自分の実力を見極められないなら冒険者なんぞ出来んからな」


 話が長いな、早くしてほしい。

 丁寧な説明はありがたいが飽きる。

 そう何度も確認しないでほしい。


 「問題ない、早くしてくれ」

 「ほう、これは、楽しみだな、手加減はせんぞ?」


 おっと思わず態度が悪くなっていた様だ、おまけに手加減はしてくれないらしい。

 やべ、合格出来ないかも。


 「では、始めるぞ……武器はその剣で良いのか?」

 「ん? あぁ、これは飾りだな、いざというときにしか使わないぞ」

 「ほう、俺に使う必要もないと言うことか、いくぞ!」


 なんでそうなるんだよ。

 まぁ、さっさと始まるならいいや。


 む、おっさんが消えた。

 すごいな、あんなデカイ大槌を持っているのにいなくなったぞ。

 ……あぁ、上か。


 おっさんは走りで消えたのではなく飛んだらしい。

 それでも視界から消えるとはすごいな。

 取り敢えずかわそうと思った俺は横に飛ぶ。


 ──ダァァァン!


 地面にかなり大きなクレーターが出来上がった。

 深さはそれほど無いものの、広さは俺がやる以上だ。

 お陰ですこし余波が来た。

 バランスは崩れないけど。


 「これをかわすか……」

 「それ、普通の人間にやるのは死ぬぞ」

 「心配するないざとなれば寸止めするさ」

 

 振り切る直前の大槌をどうにか出来るのか、凄いな。


 「それ! どんどん行くぞ」

 「いや、飽きたから終わりだ」


 俺はハゲが大槌を構える頃には走っている。

 攻撃も出来るようにな。

 ハゲも流石はBランクと言うべきか、慌てることはないらしい。


 ならすこし環境をつけてみるか、俺は自分に[速度小down]を付与し、すぐに解除そして[速度小up]を付与する。


 「んなっ!?」


 歴戦の猛者と言うやつはこの少しで多少はリズムが崩れる筈だ、その狙いは当たり、若干動きが止まった。

 その一瞬があれば、まぁ何とかなるだろう。


 取り敢えず振り抜いた一撃でハゲは大槌ごと飛んでいき、壁を破壊して動かなくなった。


 ……これ、タイミングずらす必要なかったわ。

 

 やってしまったな、ハゲは意識を失っているだけで死んではいなさそうだ、その代わり、装備と武器が使い物にはならなさそうだ。

 やりすぎで逆に不合格だったらどうしよう……そのときはそのときだな。


 「ダ、ダガシカシさん!? 無事ですか!?」

 

 女冒険者と離れてみていた受付嬢はハゲに駆け寄り安否を確認する、問題ないと見たのか安堵する。


 それはそうか、Bランク冒険者だからな、失うと痛いだろう。

 俺には関係ないけど。


 「ゴーレムさん、無事ですか?」

 「ん? あぁ、問題ない」


 さすがに冒険者の前で俺の名前を大きくは言わなかった事には感心する、そんな頭あったんだ……。


 すると思ったよりも早くハゲが目を覚ました。

 防具に感謝しろ。


 「ん、はっ! ど、どうなった!?」

 「ダガシカシさんの敗けです、派手に吹き飛びましたけど」

 「そうかそうか、あれは驚いたぜその体格のどこにそんな力があるんだ?」

 「そんなことはどうでも良いが、合否は?」

 「ん? あぁ、もちろん合格だ、こんな強いやつを不合格にしたら冒険者としての目も腐ってる様なもんだからな」


 頭の硬いハゲではなくて良かった。

 これで晴れて冒険者になれる訳だ、目立たないようにせねばな。


 「では、カードを発行致しますので、こちらへ、あ、その前にダガシカシさんを運ばないと!」

 「どこに持って行けば良い?」

 「へ? あ、医務室です、カウンターの近くにあるのでご案内致します」


 俺はハゲに近より声をかける。

 

 「運ぶが良いか?」

 「あ、あぁ、なら防具を取ろう少し待ってくれ」

 「必要ない」

 「え? うわ!」


 俺はハゲを担いで歩くが受付嬢は唖然としている。

 さっさと案内しろよ。


 「あ! こ、こちらです」


 ギルドに戻ったら若干目立っていた気がするのは気のせいだろう。


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