願い
狐人間が帰っていったあと、俺は一人で考え事をしていた。
そう、人間についてだ。
どこかで聞いたことはある気がするのだが、聞くまで思い出すことすら出来なかった。
あれだろうか、顔は思い出せるのに名前が出てこないとかそう言うあれだろうか。
しかし人間か、なんだか懐かしく感じるな。
気のせいだろう。
見たこともないなに懐かしいもくそもない。
あと、人間は狐人間が言うには弱かったと言っていたな。
でも、昔の話で、今はなかなか強くなっていると言うことだろうか。
まぁ、俺はあの狐人間が言うにはデカイらしいし、遭遇したらそく攻撃されるらしいな。
まっぴらごめんだ。
色々教えてもらったがこの森には三匹の支配者がいて、そのうち一人は謎の魔物に殺られた。
これってヤバくね。
俺外歩けないじゃん。
そして、あの狐人間。
あんな見た目で強いのか。
でも歓迎をしてくれたから気の良い奴なんだな。
そして、最後の一人か。
こっちも友好的だと嬉しいんだけどな。
敵対とかされると勝ち目がないだろう。
なんせボスだ、部下だって出てこればボコボコのリンチになること間違いなし。
南側は探索はそろそろ終わるだろうし、東に行くことも考えて置かないとな。
謎の魔物には注意だな。
少し待て。
今まではここの魔物がフレンドリーだったからよかったが。
もしも東側が友好的でなかった場合。
最悪戦う事になるはずだ。
せめて自分に何ができるかはわかっておきたい所だ。
幸い、祠の近くには岩がある。
どうしようか。
持ち上げるか。
殴るかだな。
──ヒョイ
重さはあまり感じないな。
この程度の岩なら軽々だな。
と言っても大きさは俺の半分はあったけど。
無視だ。
お次は殴るだ。
痛かったら嫌だなぁ。
よし、いってみよう
ふん。
──ドガァァァァン!!
割れるとかじゃなくて粉砕したんですけど。
跡形もないんだけど。
……うん、きっと気のせいだろう。
これが本当だとしたらとんでもない殺傷力だ。
きっと岩が脆かったのだろう。認めない。
な、なら地面、そう、地面を殴れば本当にわかると思うんだ。
ふっ!
ドバァァァァッシャァァアァァア!!!
うん、見なかったことにしよう。
さて、戻るか。
たまたま殴ってみた時に地面が陥没しただけだ。
でなけりゃ殴ったときに五メートル近く穴が開く訳がない。
運が悪いなぁ俺は。
自分の実力もわからないまま探索しなきゃいけないとは。
だが、まだ南側の探索は終えていないのだ。
まだまだ時間はある筈だあせることはない。
夜が明けて俺は南側を歩いている。
肩には狐人間が乗っているがな。
俺が南側へ入ると同時にやって来たのだ。
待ち伏せしていた様だな。
まぁ道中は暇だ、仕方なく話に付き合ってやる。
探索と言っても端を見たらあとは適当に回るだけだ。
面白いことはない。
襲われることもないからな。
「所でもうこの辺にはめぼしい物何てないからねぇ。そろそろ東に出向くんだろぅ? 私からの忠告だけどぉ、東の角と呼ばれている魔物は血気盛んで頭も悪い短気だからねぇ、すぐに喧嘩を吹っ掛けてくると思うよぉ」
何てこった。
喧嘩だと、勝てるわけないだろうに。
俺は弱い弱いただのゴーレムだ。
戦闘なんてしたこともない。
なんとか許してもらおう。
どうやら角と呼ばれる魔物の種族はオーガらしい。
そもそもオーガは体調も大きく、また、戦闘と酒を好むことで有名らしい。
この中でも角は今は分からないが相当な実力を持っていたとか。
そして、森を勝手に歩き回っている俺を既にターゲットにしているとか。
勘弁してほしい。
「ま、君なら大丈夫なんじゃないかなぁ。私もねぇ、止めておけと忠告はしているんだけどねぇ、如何せん頭の悪い奴だから1日前のことなんて覚えていないだろうねぇ」
狐人間は忠告をしてくれてたみたいだ。
ちょっと待て俺なら大丈夫ってなんだ。
というか角は頭が悪すぎだな。
「もしも、部下とかを使って攻撃してくる様なら構わず殺っちゃって良いよぉ、そうでもしないとアイツらはわからないからねぇ」
殺っちゃうとかできるわけないだろう。
善良なゴーレムは未だ殺し経験は0だ。
でも、撃退はしよう。
うん、命あってこそだもの。
あと偉い奴からも許可は得たからな。
気が楽になった気がする。
正当防衛って良いことばだと思う。
なんか良い響きだ。
狐人間がいっていた通り、めぼしい物は何もなかったな。
もっと頑張れよ。
狐人間が言うには、開拓などしていたら冒険者が来てしまうそうな。
そんなに危険なのか。
そう思ったら勝手に話始めた。
何故疑問に思ったか分かるのだろうか。
ただのお喋りだなコイツは。
狐人間が言うには、冒険者とは主に魔物を狩ったり、一般人に出来ないことを肩代わりするような事をする者達らしい。
そしてその実力はバラバラではあるが、個人で強いものもいれば、複数人で強くなる者もいるらしい。
まさに数は力とばかりに魔物を狩るらしい。
恐ろしい奴等だ。
なので、これ以上開拓をすれば、調査され、危険だと判断されればそのまま狩られる可能性があるそうだ。
そもそも、人間は魔物の言葉が分からない。
魔物は人間の言葉を理解できるのだが。
人間が魔物の言葉を理解したとしても友好的になることはないらしい。
この森は完全に忘れられた様な森になっており、危険度もほぼ無いと断定されているそうで、なのでこっそりと家を建てたり出来たそうだ。
狐人間は以前化けて人間の街へと出向き、色々調査してみた結果分かったことらしい。
狐人間、すごい度胸だと思うな。
長く話しているとすっかり日が暮れている。
俺は仕方なく狐人間を集落まで送り、明日、東へと探索するために今日は一度祠へと戻った。
<尻尾>
どうやらそろそろ東へと向かうらしいじゃないか。
角は短気だからねぇ、この前なんて招いたよなんて言ったら文字通りの鬼の形相だったねぇ、あれは面白かったよ、牙も唖然としていて笑いをこらえるのが大変だぁ。
ゴーレムには注意はしたが、私が本気で注意したのは角の方だよぉ、角は絶対にゴーレムへとちょっかいを出す。
だから私は部下が殺られても文句は言えないと脅したんだがあのバカは「俺の部下が負けるわけがねぇだろ! ゴーレムごときになぁ!」とか、戦ったこと無いくせによく言うよねぇ。
酒しか飲まない君らオーガの実力なんて人間にとっては既に驚異にもなっていないのに気づかないかなぁ?
ま、あれらは情報収集に関しては右に出るものがいないほどポンコツだからねぇ。
ゴーレムには許可を出しておいた。
せいぜい頭を冷やすと良いよぉ。
昔は私達も驚異的な強さを持った魔物だったねぇ。
この森は危険度で言えばかなり高い部類だった。
だが、人間の強さが上がり、私達は為す術もなく敗退したのさぁ。
以前化けて人里へ降りたときには驚いたねぇ。
調べてみると驚異度は下の中程で出てくる魔物も雑魚ばかりと書かれていた時は流石に怒りを通り越しちゃたよぉ。
私は伝えてはいないが、牙達改め、グラスウルフ、オーガ、そして私達妖狐は、魔物のランクも下げられていた。
私はとてもショックだったよ。
伝えるかも迷った末に秘匿した。
グラスウルフは自分達の連携と速度に誇りを持っていたし、オーガなんて自分達以上の武力を持った者はいないと誇らしげだったからねぇ。
私達妖狐だって、魔法と罠に置いては得意気だったよ。
だが、現実はそうは行かなかった。
魔物にはランクがあった。
SS~Fまでの中で昔の私達妖狐、グラスウルフ、オーガはそれぞれ、C、C、B、と高ランクだった。
それが今やE、E、Dと著しく下げられた。
妖狐の魔法や、罠は子供だまし、グラスウルフの連携は普通、オーガに至っては大振りで頭が悪いとまで言われている。
そんなことを報告したら頭に来た角は自分の実力を示そうと人里へ降りるだろう。
そして蹂躙されて全滅だ。
そうなるくらいなら教えずにいた方が良いと私は考えた。
だが、どうだろうか今の角は自分が高ランクだから冒険者は来ないと傲っているが実際には相手にもされていないだけだ。
こんな角は正直見ていられないからねぇ。
一人の友人としての餞別だよ。
面白可笑しく生きるのは良いが、望みが叶うならばまた、高ランクな魔物として胸を張って生きたいのさ。
だから、ゴーレムへと許可を出した。
これで改善するなら良いが、無理ならば、角には悪いが死んでもらう。
できるなら後者にはなって欲しくないがやむを得ない。
おっと、昔の話を思い出すとついつい感情的になってしまうよぉ。
でも、ゴーレムには悪いけどねぇ、利用させてもらうよぉ。
あの頃に戻れるようにね。
出来るならば、また夢を見よう。
あの日の私達がまだ魔物として胸を張れていた、あの頃の夢を。




