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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
勇者
114/120

ダンジョン攻略

「おや、天馬様。お早い帰還で、どうかなされましたか?」


 ダンジョンに潜っていた筈だろう天馬パーティーはかなり早い帰還だった事により、流石に気になった城の門番に声をかけられる。


「あ、ダンジョンを攻略したので帰って来たんです」

「あぁ、なるほど。だからですか……えぇ!? 攻略ぅ!!!?」


 天馬のさも当たり前、世間話をするかの様な言葉運びにちょっとだけ聞き流してしまった門番さん。

 もう一度反芻してみるとスッゴい重要な事を言い出した天馬へと目が飛び出す程の驚きを見せ、ちゃんと確認を取った後、職務を放棄してまで国王へと報告に行った。


 それほどの重大なことを天馬達は大して感じていなかった。


 それよりも悩ましい問題を突きつけられたからである。


「……とりあえず中に入ろう」

「う、うん」


 その様子はとてもダンジョンを攻略して帰ってきた英雄と言うよりも、コテンパンにされた様な暗さだった。

 だがそこは勇者、城に入ると割りきった様に振る舞う。


「ひとまずこの件については俺達の秘密で、後で話し合おう」

「わ、分かった」

「突然言われても国が騒ぎますからね。賢明ですわ」

「それに私達自身、まだどこか飲み込めてないからね、考える時間が必要だ」


 天馬達の言っているものは、ダンジョン出会った魔族の少年ギリィ。またの名を魔王。

 そんな自らの宿敵に相対したが、どこかで信じきれていなかった。

 確かに圧倒的な強さには触れた。ダンジョンボスを完封していたのだから。


 だがそれと同時に困惑する。人柄が良すぎたのだ。

 天馬達が国王やサナ達から聞いた、学んできた話だと、魔族とは極悪非道、自分達の種族以外は破滅に導こうとし、今でも数えきれない人が奴隷の様に扱われている。

 と言う最悪のイメージを教えられてきた。

 まさに宿敵、その王ともなれば残虐な者と言うことは容易に想像できたし、そう思っていた。


 だが実際には人懐っこく、何事にも面倒臭そうにしていた年齢は少年では無いが見た目が完全に少年な魔王はとてもそうは見えなかったのだ。

 勿論、あれは、此方を欺く為の装いで、転移も自らの力を示すためにやったのかも知れない。


 そう考えてしまうとどちらが正しいのか天馬達は分からなくなった。

 なので考える時間が必要と判断し、まずはこの場にいた四人だけの秘密と言う事に至った。


 

 その後、天馬達は汚れた体を綺麗にするために風呂に入り、国王へ謁見を行う。


 天馬達四人が会場に赴いた時には、他の勇者──クラスメイト達が集まっていた。


「して、天馬よ。此度はこの国の上級ダンジョン、サルサ大迷宮を攻略して帰還したとの報告だ。これは間違いないか?」

「はい、俺達は全100層に連なるサルサ大迷宮を攻略し、その奥に眠る秘宝、聖剣を手に入れました」


 天馬は腰にかけてあった聖剣を引き抜き、天に翳す。

 すると応えるように聖剣は煌めいた。


 それを見た周りの大臣や兵士、クラスメイト。果ては国王迄もが「おぉ……」と声を上げた。

 騒がしくなった広間は国王の一言により再び静寂を取り戻し、国王は言葉を続ける。


「此度は大義であった! より一層励み、この世界の象徴として輝いてほしい。疲れているであろう、食事も用意してあるので皆で祝おう出はないか!」


「「「「おぉー!!」」」」


 するとパレードの様に周りから紙吹雪やオーケストラの音楽がなり、扉からはテーブルや椅子が運ばれ、料理が次々と並ぶ。


「無礼講じゃ、飲め飲め!」

「俺達は未成年ですよ?」

「この世界の基準で言えば十分成人だ、問題ない! はっはっは!」


 国王は随分とご機嫌らしい。

 それも当然で、誰もが成し得なかった、サルサ大迷宮を勇者と言えど若者が攻略した。それも自分が統治している代によりそれが叶ったと言うことは、後世にも伝えられる様なものだからだ。


「これで魔王を倒すのも1歩前進だ!」

「っ! そ、そうですね、これからも頑張りますよ!」

「その意気や良し、さぁ、騒げ騒げ!」


 不意に出てきた魔王と言う単語に体が硬くなったが、何とか取り繕うことができた天馬。

 それに、皆が騒いでいるのに自分だけ、それも攻略した本人が騒がないと言うのはおかしいので、今、このときは魔王の事を忘れ、全力で楽しむ。


 それを見ていたアゲハ、ルーチェ、玲華も互いに頷き、クラスメイトとの輪に混ざり、今を楽しんだ。


「おいおい、天馬ぁ! すげぇじゃん、サルサ大迷宮なんてさ、やっぱりボスは強かったか?」

「あ、あぁ、とんでもなくね……接戦だったよ」

「どんな奴だった!?」

「それは見てのお楽しみだよ。教えてもそこまで行けなきゃ意味がないからね」

「ブー、けち~!」


 教えないじゃなくて教えることが出来ないが正しかったりする。

 天馬は確かにダンジョンボスを見たが、それは既に原型を留めておらず、良くわからなかったのだ。


「モブイチ君はどうなんだい?」

「俺か? 俺等のパーティーは中級のダンジョンの中盤って所だな、まだまたレベルが足りん」

「立ち直ったばかりでそこまで行くのは凄く早いと思うけどなぁ、俺もうかうかしてられないな」

「追い付いてボッコボコにしてやんよ」


 ケラケラと笑うモブイチこと藻部園一、だが彼の嘉多を叩く人物がいた。しかも3人。


「モブイチ君、誰が誰をボッコボコにするのかな?」

「あ、アゲハちゃん?」

「モブイチさん、もしボッコボコにでもしよう物なら……どうなるか分かってますかしら?」

「あのぅ、ルーチェ様?」

「モブイチ、その時は私達が相手になろう。今から楽しみにしているので早く中級ダンジョンをクリアして欲しい」

「れ、玲華さん?」


 すごい殺気を放つ3人に、モブイチ君は汗をすごいかいている。

 その汗の量で脱水症状が起こりそうだが、そんなことよりも目先の殺気が恐ろしすぎて動けない、蛇に睨まれた蛙の状態だ。


「や、やだなぁ、冗談だよ冗談。ほ、本気にしないで欲しいなぁ、アハハ」

「「「あぁ?」」」

「ひぃぃぃ!? 天馬君ヘルプ! って居ねぇ!」

「今すぐ鍛えてやろう外に出ると良い」


 あのプレッシャーに耐えれなかった勇者天馬は、一瞬で部屋の外まで逃げ出していた。


「いやぁ、流石の俺もあれは無理。モブイチ君には悪いことをした」


 熱気が充満している広間を出て、天馬は風当たりの良いところを探す事にした。


「やっぱり城は広いな……日本じゃ考えられない大きさだ」


 やはりうろちょろして、天馬は迷子になっていた。

 だが本人は全くそんなことに気がついておらず、探検をしているつもりだった。


 基本的に天馬達勇者の日常は、起床した後、朝食を採ってその後は訓練か、各々でダンジョンを攻略すると言う個々の意識でその日に得られるものが分かれる。

 天馬の場合は、一刻も早く強くなりたいと思っていたので、難易度の高いダンジョンに挑んでいたので、こうして城を探検すると言うのは初めての事だった。


 恐らく勇者でなければ不審者として捕まっていたであろう。


「ここは、この前の場所か」


 天馬がまたもや偶然に辿り着いたのは、以前、サナと田嶋が会話をしていた少しだけ拓けた場所。


 今回はサナの方は既に会食の席にはいた。

 田嶋の方はいなかった。


「へぇ、ここも結構良いところだな」

「だろ? 俺も気にいってんのさ」

「っ!?」


 後ろから聞こえた声に驚き、その場から飛んで距離をとり、天馬は声の主の方を向く。


「田嶋?」

「おいおい、剣聖さんよぉ、そんな反応されちゃ泣きたくなるぜ」

「なんでここに?」

「何でってよぉ、お前が迷子になってるから呼び戻しに来ただけだぜ?」

「なんだ、ならそう言ってくれ。いきなり背後に立たれては驚く」

「ハッ! そうだな、剣聖ともあろうものが引きこもってた奴に背後盗られるなんざ、笑って許せたもんじゃねぇからなぁ」


 田嶋は天馬を嘲る様に笑う。


「……何が言いたい?」

「期待外れだって言ってんだよ剣聖さんよぉ。その程度で魔王に勝てるとでも思ってやがんのか?」

「うん、まだ実力不足だとは感じている。ダンジョンは攻略したがこれはまだ第一歩に過ぎない。これから俺はもっと頑張るつもりだよ? それに君は何もしていないだろう? 文句を言われる筋合いはない」


 何やら良くない雰囲気を醸し出している田嶋を恐らくそういう台詞は嫌いで、神経を逆撫ですると言うことが分かっていながらも口にする天馬。

 確かに実力不足は、本物の魔王をみて実感したが、なにもしていない者に言われる筋合いはない。


 天馬だって普通の男だ、引けないときは当然ある。

 だから挑発した。


 挑発された田嶋は、天馬の予想通り挑発に乗る。


「そう言うんならよぉ、俺くらい余裕で倒してみせろよぉ!」

「っ!」


 走り出した田嶋の速度は思っていたよりも早く、一瞬動揺する天馬だが、許容範囲内だった。

 走りの勢いを活かした蹴りを横に回避しカウンターの肘を叩き込む。


 田嶋はそれをまともに喰らい、顔にダメージを負う。

 天馬はそこで追撃が可能だが、あえて行わない。


 それをほんの小手調べだと言葉なき言葉で言われた田嶋は激昂する。


「ちょっとはやると思ったんだけど、そんなものか? 随分と大口を叩いてたのに、こっちが残念だよ」


 それが更に田嶋の神経を逆撫でする。

 確かにこの一瞬でも田嶋の攻撃力の高さは凄い。

 蹴られていれば確実に骨が何本か折れていた、それでも田嶋は本気ではなかったと言うのは分かる。


 だが戦闘経験が圧倒的に足りない。


 その程度の拙い技術で、ダンジョンとは言え、数々の場数を踏んだ天馬に当たる筈はなかった。


「言ってくれるじゃあねぇかよ……なら手加減は無しだ、くたばっても文句言うんじゃあねぇぞ」


 腕を横に広げた田嶋は吠える。

 その様子は魔物と同じ様だった。


 田嶋のスキルは『獣化』

 魔物や動物などを食べることで、その力を体現できる能力だ。


 そして田嶋の腕は膨張し、オーガの様な腕の太さにまでなった。


「──鬼腕」


 普通なら確実に振り回せない大きさのその腕、だが田嶋は木の棒でも振るかの様に高速で振り回してくる。

 一方の天馬は、何の武器も持たないでの相対で、必然的にリーチが不利だった。


「さて、どうしたものか」


 だが技術が拙い田嶋の攻撃は穴だらけであり、避ける位なら雑作もなかった。

 時間が経つに連れて見極める様になった天馬は懐へと飛び込み、田嶋の顎目掛け掌底を叩き込む。


 その時の田嶋は焦るどころか、分かりやすい位に笑っており、口を大きく開いた。


「──鬼口」

「なっ!」


 その鋭く尖り、どんな物でも噛み砕いてしまいそうな口で天馬の腕を千切ろうと言うのだろう。


 そして噛み砕く寸前。


「お止めなさい!」


 突如響き渡った声に、二人は咄嗟に停止した。


 そしてお互いに距離を取ると声のした方向を見る。


 そこには肩で息をしているこの国の王女であるサナが立っていた。


「はぁ、はぁ、お二人共、何をしているんですか!」

「ちっ、面倒なのが来たぜ」

「サナ様、申し訳ない」


 田嶋はそっぽを向き、天馬は素直に謝った。その事にサナは溜め息を吐いて続けた。


「良いですか、今日は天馬様がダンジョンを攻略した素晴らしい日なんです、そんなときに怪我人なんて出したくはありません! 反省したなら戻って下さい!」


 どうやら怒っている様で、言い訳はしては行けないと悟った天馬は頷いた後、すぐさまその場を後にした。


「……田嶋さん、なんでこんなことを?」

「あぁ? ちょっくら聖剣さんの実力が知りたかっただけだぜ?」

「面白い冗談ですね。あのとき、確実に手を噛みきろうとしていたのは、わかってますよ?」

「……」

「それに、そんなことを今するのはお互いに不利益。今彼を失うと計画が無駄になります。あなた程度では勝てないのだから嫉妬はしないでください」

「あ? 殺されてぇのかテメェ」

「殺れるものなら殺りなさい。そうすればあなたの計画も失敗どころかあなたは死など生温い処罰を受けますからね」

「ちっ!」

「良いですか? あなたは利用される側、私の決定が全てです。お分かり戴けたのなら、とっとと戻りなさい」

「……わーったよ、クソッ!」


 田嶋は機嫌を悪くしながら、地面を蹴り、その場を去る。

 残ったサナももう一度溜め息を吐き、去っていった。


「……俺を失うと計画が無駄になる? それに不利益か……悩みが増える一方だな」


 魔王、サナと田嶋の事で悩みが増えていく一方の天馬は一度空を見上げて、ひとまず目の前の事に集中しようと改め、走って食事に戻って行った。 

 

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