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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
勇者
112/120

休息

「ようっ! 天馬、随分と長風呂だったな!」


 大広間へと戻った天馬は、案の定懸念していた事を言われ、苦笑いを浮かべる。

 チラリと見てみれば、いつの間にかサナや田嶋も食事を開始していた。


 サナはクラスメイトの女子と、田嶋はいつもつるんでいる他の男子となにも変わらず、明るく話しているようだった。


「ん? 天馬、どうした」

「あ、いや。ダンジョンにいた時間が長かったからね、ついつい長く入ってしまったよ。所で、田嶋とサナさんはいつから?」

「あー、さっきかな? お前が来るほんの少し前だぞ、何か気になることでもあったか?」

「え? いや、そんな事はないよ。さぁ、早く食べよう。冷めてしまうよ」

「いや、もう冷めてるし……俺、結構食ったから腹一杯」


 何とか誤魔化しつつ、皿に料理をのせて勢いよく頬張る天馬を、クラスメイトの男子……名前は|藻部園一〈もぶそのいち〉は「良く食えるなぁ」と呟きながら見ていた。

 その天馬は料理を堪能しながらも、意識しているつもりは無いが度々サナ、田嶋の二人を目で追ってしまう。

 何かを企んでいる可能性がある二人の会話を聞いて、無意識に疑っている様だった。


「あー! 天馬君、サナちゃんの事見てたでしょ!」


 小学生か! と言いたくなる台詞を吐きながらいつの間か後ろにいたのはアゲハだった。

 一応図星を突かれた天馬は体をビクッとさせながら、食べものを口に含みながら振り向くと、ご立腹なアゲハの他にもルーチェと玲華が立っていた。


「私と言うものがありながら他に色目を使うとはどういう事ですの!?」

「ルーチェ、天馬は私のものだが? 横取りは止めてくれないか?」

「あら? 私程天馬の支えになれる人はおりませんわよ?」

「ふ、だが君は守ってもらうばかりだろう? その点私は共に戦うことが出来るよ?」

「ちょっとちょっと! 私だって天馬君のサポート出来るよ! 回復だって出来るんだから!」

「「うるさい貧乳」」

「うがぁぁぁぁぁぁ! 言いやがったなこの野郎! その贅沢に育った葡萄むしり取ってやるからなぁ!」


 急に喧嘩になった3人に呆気にとられた天馬、そして一瞬で空気と化した藻部君は「俺なんてそんなもんさ……」と涙する。

 因みに3人は普段は仲が良いのだが天馬に関しては完全なライバルなのだ、断じて不仲ではない。断じて!


「モブイチ君、この場は離れよう」

「あ、俺忘れられて無かったのか……モブイチて!」


 天馬と藻部はその場からこそこそと移動を開始し、別のテーブルで食事をすることにした。

 そしてテーブルを探していると視界の端に手をあげている人物が映り込み、その場所を見るとサナが手を振っているではありませんか。

 明らかに天馬を呼んでいるので、一瞬、先程のやり取りを思いだし顔を引き吊らせる天馬だか、何とか表情を戻しサナの元へ向かい席につく。


「ふふっ、あの御三方は本当に愉快で面白いですね」

「あ、うん、そうだね……ダンジョンでもあの明るさには助けられたよ」

「それでもその中心は天馬様ですよ」

「滅相もございませんよ」


 他愛もない会話から始める二人、サナの言動は特に変化がなく、通常通り。

 端から見れば何の疑問も異常も抱かない。だが、少しだけ本性を見たっぽい天馬からすればその通常が異常に感じられた。


 その一方で隣に座っている筈の藻部君は再び空気となっている。

 「俺の存在価値……」等と呟いているがそれすら誰の耳にも届かない、隣にいる筈の天馬にも斜め向かいのサナにもだ。

 頑張れ藻部園一。


「ところでサナ様、途中から来た様ですけど、何かしてたんですか?」


 何となく、気紛れにだがカマを掛けてみようと思った天馬は不意に質問を投げ掛ける。

 サナは笑顔を崩すことは無かったが眉がピクリと普通なら気が付かない位だが上がっていた。

 それでも鍛えてきた天馬からすれば余裕で捉えられるほどの動きだった。


 (今聞き出すのは不味かったかな?)


 例え肉体が強くても、権力と言うベクトルではあちらの方が上、そして腹黒さで言えば圧倒的上位種であるサナにかかれば、天馬ごときはどうとでも出来るだろうなと言う事を喋った後で少し後悔した。

 

 だが、サナの内心は違った。


 天馬が突然、大広間へと来る前の事を聞いて来るので少し驚いた。

 ──見られたのではないか? そうは思ったのだが、何でも天馬は疲れを癒すために長風呂に入っていたのだ。

 そして、田嶋と会話した場所はその風呂からは完全な迷子にならない限りは城の事を知らない天馬が辿り着く筈がないと一瞬で確信した。


「天馬様にお会いするために服を選んでたら時間がかかってしまったんですよ」

「あぁ、そうだったんですか。すみません変な雰囲気にしてしまって、でも嬉しいです」


 曇りのない笑顔で答えてくるサナに対して天馬も爽やかに返す。

 それは絵になるだろうと言うほど美しかった。

 それでも各々の内側がギスギスしているのは本人達以外は知らないだろう。


「くそっ、リア充が……はいはい、どうせ空気ですよ!」


 その隣に座っていた藻部君の内心は非常に穏やか出はなかった。

 既に諦め半分の自暴自棄に陥っている。

 目立たないのは分かるがこうあからさまに無視されると辛いものがあるらしい。


「所で天馬様は、暫く休んだ後また迷宮へ?」

「そうだね、休んで準備が出来次第すぐに向かいたいとは思ってるよ」

「そんなにハイペースで体を壊しては大変ですよ」

「そこはちゃんと考えてあるよ。それに、少しでも早く強くなって皆を守りたいからね」

「それでも焦りは禁物ですからね、心して下さい」

「肝に命じます」


 いつの間にやらちゃんとした話に戻っており、天馬、サナ共に内心は安堵していた。

 そして喧嘩を漸く終えたのか、周辺でキョロキョロして天馬を見つけたアゲハ、ルーチェ、玲華はこぞって天馬のいるテーブルへと座る。


 なお、藻部君の空気感は増した模様。


「何の話してたの?」

「うん、今後のダンジョン攻略についてだね」

「アゲハ様をどうか天馬様が無理をなさらないように手綱を引いて下さいね?」

「勿論だよ! 私がいなきゃ天馬君はダメだからね!」

「それは聞き捨てならないなアゲハ。その非力さでは手綱は握れないだろう? 私に変わると良い」

「玲華さん、あなたの場合だとその腕力で絞め殺してしまう可能性がありますのよ。私が優雅にリードするので下がってて下さいまし」

「ちょっと! 私がお願いされたんだから私が……」

「「うるさい貧乳」」

「お? 1度ならず2度目か? あ? ちょっと表出ろやぁ!」


 少しの切っ掛けでまたしても喧嘩を始める三人だが、その顔は本気で怒っている訳じゃなく、楽しんではいるようで天馬も安心する。

 例え強くても女の子、笑っている位が丁度良いと感じている。


 だが、この時の天馬は流石に空気にならざるを得ない冗談だった。


「ようこそ、こちらの世界へ」

「モブイチ君、いつの間に……」

「藻部園一ですぅぅぅ! モブイチじゃありませぇぇぇん!」

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