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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
勇者
110/120

階層主

 その後、天馬達は無事に帰還し、準備をしてダンジョンへと潜ると言うことを何度も繰り返し、その繰り返しから3ヶ月が経っていた。


 ダンジョンの魔物は階層を追うごとに強くなっていくが、強くなっていくのは天馬達勇者もまた同じで、着々と力を着けていた。


 そんな天馬達に触発されてか、引きこもりがちだった他の面々も徐々にやる気を取り戻していた。

 それでも数名ほどは食事、風呂等のとき以外は部屋から出てくる事もなかった。


 戦線復帰した勇者達が増えてくれた事により、王は一先ずは安心と安堵した。

 だが、最初は足並みを揃えていた勇者達の戦力も天馬、アゲハ、ルーチェ、玲華以外は差が圧倒的に開いてしまった。


 それでも、天馬のフォローにより全員が奮闘し何とか差を縮めようと頑張っている。


 そして、天馬達のパーティーの方は現在、サルサ大迷宮の69層目を攻略し終わりは見えないものの、階層主が存在しているであろう節目、70層目の手前まで来ていた。


 階層主はダンジョンボスとは違い、大体が10層毎に配置されている番人の様な存在。

 だが、ダンジョンボスよりも下位の存在であり、ダンジョンボスよりも危険性はない。

 それでも油断して良いわけでも無く、主は主だ。弱いはずがない。


「まだどれくらい先が残っているかは分からないけど、気を引き締めていこう」

「分かった、サポートは任せて!」

「余り無茶はしないで下さいませ」

「心配しなくても天馬は私が守るとするさ」

「いや、女の子である玲華を守るのは俺の役目だ。しっかり頼ってくれ」

「天馬……」


 思いがけない天馬の一言により、玲華は顔を赤くする。

 抜け駆けをされたと感じたアゲハとルーチェはどこからか取り出したハンカチを噛み締めていた。

 そんな二人の態度に全く気がつかない天馬は第70層、階層主のいる部屋の扉を開いた。


「……何もいないな」

「そんなのいつもの事じゃない、上よ、上」


 そして部屋に入りつつも上を警戒しているとやはりと言うべきか、なにかが落下してくるのが微かに見える。


「どうして毎回こうなのかしら」

「さぁね、私達が考えても仕方の無いことではないか?」

「それもそうですわね」


 階層主やダンジョンボスの部屋は開いただけではボスの姿などか見えず、ただの広い空間があるだけなのだが、部屋に入ると必ずと言って良いほど上空からその部屋の主がやってくる。

 最初は驚いてはいたものの、こう何度も上から来られるとなれてしまう。

 呆れ顔で敵が落下してくるのを待ちつつ、先制攻撃を仕掛ける準備をする。


 落下してくるので、その時の衝撃は結構大きく、下手すると相手に先制を許してしまう。

 だが、天馬達はそんな体験を幾度となく繰り返しており、今では着地の瞬間を見極め、バランスを崩すことなく相手に接近し、攻撃を加えることが可能となっている。


 落ちてきた相手は四つ足で、明らかに突進能力に優れていそうな大きく発達した角、猪の様な体格をしており、大きさはその比ではないほどに巨体だ。

 そして着地をすると同時に天馬、玲華は躍りかかる。

 

「ブモォ!?」


 着地と同時に食らったダメージにより、怯む猪擬きだが、倒れることはなく、しっかりと地面に足をつけていた。

 食らったダメージも驚きはしたものの、大した損傷にはなっておらず、ただただ牽制になっただけだった。


「うん、結構固いぞ」

「あれが突っ込んでこればかなりの重傷になるだろうね、アゲハ、ルーチェは気をつけてくれ」

「玲華、君もだぞ」

「天馬……」


 戦闘中だと言うのに現を抜かし掛けている玲華。そこにぶち切れたアゲハからの口撃が飛ぶ。


「こらぁ! 玲華ぁ! そんな羨ま……ちがう! 余所見してるんじゃないよ!」

「全くですわ、今は戦闘中……羨ま……違いますわ、気を引き締めるべきですわ」

「す、すまない」

「っ! 来るぞ!」


 すぐに立て直した猪擬きは額から生えている巨大な1本角を武器に突進を繰り出してくる。四人は即座に反応し、猪擬きを囲むように位置取り、それぞれが邪魔をしないように攻撃をする。

 だが猪擬きはただ迷惑そうに頭を降るだけにとどめ、またしても大きなダメージは無い様子だった。


「バラバラな攻撃じゃだめか……よし!」


 何かを決めた天馬は走りだし、そんな天馬を見て察したアゲハ、ルーチェ、玲華は天馬の元へと駆ける。

 そして集まった3人に天馬が作戦を伝えると当然了承し、玲華は猪擬きへと突っ込み、アゲハとルーチェはそのサポートへと回る。


 猪擬きの目が玲華達へと誘導され、見向きされなくなった天馬は剣を構えて目を閉じ、力を溜める。

 天馬が発動しようとしているのは『剣聖』のスキルにより使える剣技光突(こうとつ)。読んで字のごとく、突きの技だ。

 固い皮膚に覆われている猪擬きに傷をつけるには一点突破の集中攻撃しかないと踏んだらしい。

 力を溜める、そして集中するために時間はかかるものの、その分威力は申し分ない。

 そして時は来た。


「アゲハ! ルーチェ! 玲華!」


 3人の名前を叫ぶと3人はどうじにその場を離脱、ついでとは言わんばかりにルーチェは猪擬きの足を凍らせ、玲華は目眩まし、アゲハは戦闘型ではないので普通に逃げた。少し悔しそうだったが誰も見ていない。


「今だぁ!」

「ブモ!? ブモォォォォォ!!」


 目潰しや足元を凍らせたにも関わらず天馬が接近してくるのを察知した猪擬きは自分自身も最高速度の突進を繰り出す。

 リーチでは圧倒的に猪擬きが勝っており、物理的に天馬の剣よりも先に角がぶつかることは目に見えている。


 剣と角が交差する、その前に天馬は地面を踏みしめて飛び上がる。


「ルーチェ!」

「っ! は、はいですわ!」


 ルーチェは咄嗟に天馬の少し上に氷の足場を作る。だが並大抵の氷では直ぐに砕ける。そこでルーチェが作ったのは足場と言うよりは巨大な氷の塊だった。


 頭上に出現した氷の塊に頭からぶつかる直前に、天馬は体を捻り逆さまに着地、そこから、勢いよく地面に激突するように猪擬きへと剣を突き立てる。

 対空手段を持ち合わせていない、突進に全身全霊を注いでいた猪擬きは避ける事や反撃も出来ずに背中を貫かれる。

 そしてルーチェは浮かべていた氷を分解し、大量の槍へと変えて天馬へと当たらぬように猪擬きへと槍の雨を降らす。


「ブモォォ……ォォォ……」


 背中から心臓を貫かれ、至るところに細かい傷のついた猪擬きはその場で倒れる。天馬はと言うと着地のことを一切考えていなかったので頭から地面に突き刺さり、腰から下のみが地上に出ている。


「天馬くん!?」

「生きてますの!?」

「大丈夫か?」


 3人係で埋まりまくった天馬を引きずり出し、負った傷を回復させる。

 傷とは言っても埋まった時位しかダメージは受けておらず、この戦いは苦戦はしたものの、大きく見れば殆ど圧勝したようなものだ。


 哀れ、猪擬き。


「いやぁ、ルーチェ、最後は助かったよ。ありがとう!」

「と、当然の事をしたまでですわ! 私と貴方ならあの程度のこと雑作も無いに決まってますもの!」

「ねぇ、私達の事忘れてない?」

「私も褒めて欲しいんだが……」

「貴女はさっきからいい思いをしているでしょうが! 今回は私の番ですわ!」


 鬼の形相をするルーチェにアゲハも玲華も頷かざるを得ない。

 天馬に鬼の顔は見えない角度だったので、天馬は首をかしげるだけだ。


「勝てたは良いけど全く攻撃が通じなかったな……まだまだだ、もっと鍛えないと」

「天馬はストイックだな。なら、私もそれに付き合おう」

「玲華、助かるよ!」

「ちょいちょい! 私もやるよ!」

「攻撃手段が無いのにか? 危ないぞ」

「ぶぅー、もっとサポート出来るようにするんですぅー! 二人が倒れてもそれすら回復させて永遠に訓練させるんだから!」

「ちょ、それはキツくないかな……」

「私ももっと強力な魔法を使うために頑張りますわよ!」

「その前に帰らないとだな! 食料もあれだし」


 天馬達は、素材を剥ぎ取ろうかと思い腰を上げるが、良く良く見てみると殆ど原型も止めていないぐちゃぐちゃの肉塊のみがあるので、剥ぎ取ろうにも剥ぎ取れなかった。


「……帰ろうか」

「だね」

「ですわね」

「そうだな」


 角だけは回収し、帰路へとついた。

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