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そのゴーレム、元人間につき  作者: HIGH
辺境にて
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かくれんぼ……そして

「おはようございます~」


 まだ眠いのだろう、目を擦りながらゆっくりと祠から出てくるエマ。

 眠たいのならもう少し寝ていれば良いのだと思うがな。特に時間で縛られている訳じゃ無いのだから。


「まだ眠っていても良いんだぞ?」

「いつになく優しいですね。病気ですか?」

「……永遠に眠らせてやろう」


 エマを張り倒そうと思いながら立ち上がるがそれを本気だと察したらしいエマは慌てたように首振る。


「いやいやいや、冗談ですよ冗談。冒険者が長かったものですから習慣が染みついてるだけですよ!」

「まぁ、万年底辺の冒険者だったのだから朝は早いか」

「ランドさん、急に辛辣ですね」


 ガックリと肩を落としているが慰めるつもりは一切ない。人の好意を無駄にした罰だ。


「さて、何か言い残す事はあるか?」

「それ終わってなかったんですね……」


 ハハハ……と苦笑いを浮かべて後退り、エマは脱兎のごとく森を走り去っていく。どうやら逃げ出した様だな。


 彼女も俺の性能テストに付き合ってくれるのだろうか。


 エマが逃げ出したのは南側の森、領地としては尻尾の管轄だな。唯一言葉が通じるのが尻尾なのだから意図してかは知らないが良い選択なのかもしれないな。


「……8、9、10。よし、追いかけるぞー」


 準備運動はいらないが取り敢えず屈伸運動と言うものをやってみる。エマが運動をするときにやっていたものを真似たが、特に意味はない。

 これより、エマの生死をかけた鬼ごっこが始まる。……鬼の役は角にやらせれば似合うんじゃないかと考えながらも森へと足を踏み入れる。



「……なかなか見つからないものだな」


 南側へと入り30分ほど練り歩いた所だがエマは見つからない。20分程は体力切れがないのを良いことに力業で森のあちらこちらを探し回ったのだが影一つ見つけられなかった。


 代わりに見つけたのはアホゴブリンの棍棒位だった。道に立ち塞がって居たので牽く飛ばしたのだが、普通の人間が食らえば暫くは動けなくなる威力だったと思うのだが。


「死ぬかと思ったっすわ!」


 と、草むらから所々に枝を引っかけながら怒鳴ってきたのだが放置し、エマの捜索へと意識を戻しすとしよう。


 雨は最近は降っていないので足跡もついていないし、冬に向けて地面は落ち葉まみれなのであってもすぐに埋もれて分からなくなる筈だ。

 なので、足跡から特定するのは難しい。それに、いくらエマがアホの子でもこの状況で足跡を残すヘマなんてしないか。


 

 そして数時間経ったのだが、驚きの事実がわかった。


「俺、探すのが下手だな」


 状況を観察して、少しの手がかりでもなんとかして見つけ、解決に繋げると言うことが全く出来ない。

 俺はただの力業で強引に問題を解決するタイプの様だと悟った。


 まぁ、俺は所詮はゴーレムなのだ。知能があるだけマシだろう。

 同族は本当に知能がないのか気になってくるが今はエマを探して八つ当たりを追加するのが優先だ。


「まてよ……一人で探す必要は無いな。手始めに尻尾の所にでも行くか」


 というか最初からそうすれば良かったな。無駄に時間を使っただけだった。しかも数時間。

 



 これまでの遅れを取り戻すかのごとく全力疾走し、途中、待たしても棒立ちしていた棍棒を牽きつつ、尻尾の所へ向かう。


 棍棒がなぜあんなところにいたのかは分からないが恐らく暇なのだろう、気にしない事にする。

 そしてあっと言う間に尻尾の住む小さな集落へとたどり着き、尻尾の家へと向かう。途中に他の妖狐達が居たのでちょろっと挨拶しながらも尻尾の家の前に来た。


「尻尾、いるか」


 返事は待たずしてドアを開ける。ここは人の住む場所ではないので特に問題にはならない。

 俺なんてまだマシな方だ、尻尾が言うには角に至ってはいきなり扉を破壊してくるらしい。

 角の方は問題にした方が良いだろうとは本気で思う。


 因みに1番訪れ方が丁寧なのは棍棒らしい。1番種族的に弱かったあの今でも下っ端感漂うゴブリンに負けるとは……情けない。

 まぁここでは種族の優劣なんてないので気にする必要はない。世の中得手不手があるものだ。


「ん? 留守か……?」


 もぬけの殻だ。気配もしない、しかし困ったなこれではエマを探すことが出来ない。

 仕方ない、エマの事はあきらめて放置するとしようか。非常に悔しいがしょうがない。


「おや? 誰か来てるのかな」


 後ろから声が聞こえる。軽い口調で真剣さがまるで足りない様なしゃべり方をする奴はアレだけだな。


「尻尾」

「おや、ランド君じゃあないかい。私に何か様かな? それにしても久しぶりだねぇ」


 ふむ、確かにここ一月は会ってなかったか。一月で久しぶりと言うのかは知らんがどちらかと言えば牙とかの方が全く会ってないぞ。

 ……今度会いに行っておくか、様はないけど。


「そうそう、私に何か様でもあったのかい?」

「あぁ、忘れてた。エマを見なかったか?」

「エマ君かい? いや、見てないねぇ」

「そうか、ならいい」

「何かあったのかな?」

「とるに足らない理由だ。気にするな」


 まぁ何かを察してくれたのだろう。それ以上は聞いては来なかった。ただし、苦笑いをしていたが……。


 すると思い出したように手をポンッと叩いて再び俺を見上げる。


「そうそう、思い出した。私も君に頼みがあったんだよねぇ」

「頼み?」


 珍しいな。頼まれ事なんて殆ど貰ったことは無いが尻尾の頼みとはこれ如何に。

 少しだけ気になる俺がいた。


「うん、私は色々と忙しくてこの森から離れられないから頼めるのは君しかいないんだよねぇ。エマ君でも良いけど見つからないんじゃしょうがないよ」

「そうか、それで頼みって言うのは?」


 尻尾が森からあまり離れられないのは普通にこの森はアホが多いのでちゃんと指示を飛ばせる奴がいなければ大変な事になるからだ。

 この間は、任せてはいたが力足らず……と言うよりは頭足らずで森の管理に手が回ってはいなかったらしい。


 俺は、詳しいことは分からないが牙と棍棒が少しは頑張っていたものの、角や鞭、槍等がアホなため、普通に管理が行き届かなかったそうだな。


 そんな訳で離れられない尻尾の頼みとはつまり、また辺境ファンへと足を運べと言うことだろうか。


「君には王都まで行って欲しいんだよねぇ」


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