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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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94話 共有は大切

 海を地面に降ろして親父と向き合う。

 さて、どう動くか。


「お前の記憶を全部消して歩き方すら忘れさせてやるよ!」


 親父……いや、ラグーンは俺に突っ込んでくるか。

 あまりにも遅い。

 前はこの程度の動きすら回避に苦戦したのか。

 本当に情けない。

 俺は体を捻ってヤツの頭にカカト落としを入れる。

 ゴツンと鈍い音がした、


「……こんなやつに苦戦するなよ。過去の俺」

「こんな奴とはなんだ!」


 キレやすいのも同じ。

 戦闘センスも無ければ判断も鈍い。

 親父の体を使えば俺と善戦するのは容易いはずだ。

 再び殴りかかる。

 俺はそれを難なく回避


「急いでるしもう殺していいか?」

「何を!?」

「親父の体でぺちゃくちゃ喋るな」


 ラグーンの顔を掴む。

 ニヤリと笑い俺の手首に手を伸ばすが遅い。

 その程度の動きを考えないわけないだろ。


「灰になって死ね」


 俺はそのまま手から火を吹き出してラグーンを焼く。

 焼き殺す。

 存在諸共消えてしまえ!


「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 そしてラグーンは灰へと変貌を遂げた。


「海。行くぞ」

「そうですね」


 再び海を抱き抱える。

 本当に大したこと無かったな。

 俺は無事にラグーン戦を終えた。

 前はこんな奴にも苦戦したんだよな。

 俺は過去の自分より強くなったと成長を噛み締めた。


「アレで良かったんでしょうか?」

「知るか。今は考えてる時間はねぇ」


 先程から闇雲に走ってるように見えるがそうではない。

 念の為に携帯で位置情報の共有を行った。

 俺はそれを頼りに桃花の元へ向かっている……

 確認すると何処かのビルだ。

 果たしてそこで何が起こってるのか。

 少なくとも桃花達は俺達が向かってるのに気づいている。

 それだったら何かあったと察したはずだ。


「お兄様は戦闘になると容赦ありませんね」

「そうでもしないとやってらんねぇからな」

「同感です」


 容赦ないのはお前もだろ。

 普通に骨をバキバキ折って……


「白愛は大丈夫でしょうか?」

「夜桜が追ってこねぇのが何よりの証拠だろ」

「そうですね」


 恐らく白愛は亜空間の能力を使って夜桜を閉じ込めてるはずだ。

 もしも俺が白愛と同じ条件だったら逃げに専念する。

 正面から戦っても勝てるが相手は再生持ちで何度も蘇ってくる。

 体力的にも持って二十分が限界。

 そのため時間稼ぎなら逃げの一択だ。

 亜空間に連れ込んだ以上は死なない限りは逃さないしな。


「なんだ!」


 そんな事を考えた矢先だった。

 俺の手の甲にナイフで突き刺されたような鋭い痛みが走り血が吹き出した。

 突然の事で海を落としてしまうが難なく着地したようだ。

 それにしても一体何だ!?


「お兄様! 大丈夫ですか?」

「……なんとかな」

「でも、血が……」


 間違いなく能力によるもの。

 いったい何の能力だ!


「このように私を傷つけたら空が傷つくけど私を殺すのかい?」

「……外道が」


 そんな事を考えてると目の前に真央が現れた。

 それから間もなく桃花も現れる。

 恐らく転移で移動してきたのだろう……

 桃花が俺に気づいたのか口を開いた。


「空君。ごめん……殺れなかった……」

「分かった。俺が殺す」


 今なら殺せる。

 俺は雷を落とそうと身構えた。


「やぁ空。今の君は私と一心同体だよ」

「知るか」

「そうかいそうかい」


 その瞬間、真央が持っていたナイフを自分の太ももに突き刺した。

 痛みで真央の顔が歪む。


「やめて!」


 桃花が叫んだ。

 それと共に俺の足にも痛みが走る。

 ズボンに血が滲むのが嫌でもわかる。


「まさか……!?」

「海の予想通りだよ。私は空と共有している。私が死ねば空は死ぬし私が傷つけば空も傷つく」


 下衆が。

 こんなの桃花が殺せるわけがない。

 だからこそのこの余裕か……

 でも弱点でもあるぞ。

 俺は傷口を塞ぐのも込めて真央に刺されたところ。

 すなわち自分の太ももを焼く。

 かなりの高温により顔が歪む。

 しかし真央が共有してるなら俺が傷つけば真央も傷つくはずだ……


「……どう……して」


 そう思っていた。

 でも違った。

 真央は何ともなかったのだ。


「ごめんね。一方通行なの。君がどうなろうが私には影響ないんだよ」


 なんだよそれ……

 そんなの一方的に殺られるだけじゃないか……


「最初から勝負の結果は決まってたんだよ。神崎空」

「……桃花。お前のお父さん達はどうした?」

「アルカードって名乗る吸血鬼と戦闘中」


 ここに来てアルカードかよ。

 もう完全に布陣が揃ってるじゃねぇか。


「それで私だけ先に行かせて真央と会って……」

「現在に至るわけか」


 絶望的すぎる。

 真央の作戦に穴がない。

 夜桜に勝つ事は不可。

 自分の安全は確保。

 一体どこを付けばいい……


「もっといい事教えてあげる。私は三人まで共有出来て暗殺姫ともしてるよ?」

「……お前ッ!」

「今のデモンストレーションで痛みに怯んで夜桜に八つ裂きにされちゃったかもね」


 つまり自殺覚悟で真央を殺しても夜桜への対抗手段がなくなって全滅だ。

 もう負けは確定。


「もっといい事を教えてあげるよ」


 そう言うと携帯をこちらに投げた。

 俺は恐る恐るそれを拾う。

 その携帯には一つの動画が流れていた。

 動画には狂気の場面が展開されている。


「……嘘……だろ?」


 映っていたのは死体の山と血溜まり。

 しかし争ったあとはない。

 全員がナイフを持ち自分の首に一斉に刺す。

 間違いなく自殺。

 でも問題はそこじゃない。

 そこが展開されてるのは桃花の家だった。

 死体の山の中にはアリスと雨霧さんもいた。


「何をした!?」

「スーに頼んで皆殺しにしただけだよ。何も怒ることないじゃないか! 人は遅かれ早かれ死ぬんだから」


 あぁ……

 負けた……


「随分と楽しいゲームのご提供ありがとうございました。これからは夜桜との戦闘をお楽しみください」


 真央はそう言い残して消えた。

 何処に行ったかなんて分からない。

 ただ一つ言えるのはこの場には静寂が残った事ぐらいだった。

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