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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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90話 現在の戦闘力

「気軽に役員さんと呼んでくれて構わない」


 随分と適当だな。

 なんか凄く親しみやすいぞ。


「とりあえず我々の対応としては全てエニグマに一任する。また必要な機材や道具に武器があれば用意もしよう」

「……自衛隊は?」

「望むのであれば出そう」


 思ってた以上に話が分かるぞ。

 てっきり被害者についての賠償とか街の損害の責任とかそっち系の話をされるとか思っていたのだが……


「……じゃあ銃をお願いしてもいいですか?」

「もちろん!」


 とりあえず銃は欲しいな。

 夜桜には意味がないが真央には効果的面だ。

 ちょっと待て。

 何でも良いと言ったよな?


「どうした? 他に必要なものがあるなら遠慮なく言ってくれて構わない」


 夜桜に効く武器。

 もしかしたら強力な毒も用意出来るかもな。


「桃花。夜桜に毒って効くと思うか?」

「分からないけど試す価値はあると思う」


 それだったら頼んでおこう。

 何でもいいって言ったのは彼等だ。


「超強力な毒霧とか用意出来るか?」

「問題ない。煙幕玉のような感じで地面に叩きつけると周辺を毒霧が覆うような感じになるが問題ないか?」

「威力は?」

「どんな生物でも三分で死ぬ。仕組みとしては内部から細胞を破壊する。主に使われてる素材は……」

「そこまではいらない」

「……そうか」


 ここまで詳細に説明してくれるのか。

 本当に全面的なバックアップだな。


「……あとは私に任せてもらっていい?」

「悪い」


 考えてみたら最初はアリスが話す予定だった。

 それなのに俺が思わず話し込んでしまった……


「とりあえず空と海は中でのんびりしてて。桃花と白愛はちょっと残ってくれると有難いかな」

「分かりました」


 必要な道具は桃花が用意してくれるだろう。

 白愛が残ったのは暗殺姫だからか。


「お兄様。早く戻りますよ」

「そうだな」


 ◆


 家に入るがそこは静かだ。

 海との二人にはあまりにも大きすぎる部屋。


「夜桜をどう殺すか……」

「再生が厄介ですね。殺す手段が限られますから」


 肉体的損壊で殺せないのは証明済み。

 だったら傷つけずに殺せる溺死とかに方法は限られる。

 しかしそれを戦闘中に行うのは困難きわまりない。


「ていうか夜桜の能力って何があったけ?」

「再生と創造。それに身体能力強化に茨を操る能力……」

「それに影移動と血の個体化にバリアもあるよな。そしてそれが全部とは思えねぇしな……」


 あまりにも多すぎる。

 俺達が忘れてるのを入れたらもっとあるかもしれない……


「大体の遠距離攻撃はバリアで防がれ接近戦は身体能力強化がある以上は白愛しか不可」

「でも夜桜の攻撃にはハートキャッチみたいな絶対的な攻撃手段がありませんね」

「見せてないかもしれないぞ」

「そうかもしれませんね」


 本当にないなら随分と楽になる。

 少なくとも俺達だけでも時間稼ぎくらいなら出来る可能性が生まれてくる。


「お兄様。絶対に殺されないでくださいね」

「わかってるよ」


 もし俺が殺されたら夜桜はそれに一度受けた攻撃を使えるようになるという能力が加わる。

 そうなったら間違いなく勝てない。


「空様。それに海様。少しよろしいですか?」


 話が一段落したころで白愛が入ってくる。


「方針は決まったのか?」

「はい。それで空様の戦闘能力を知っておきたいそうなので……」


 たしかに俺は立場上は一介の高校生でしかない。

 だから少しだけ不安なのか。


「分かった」


 俺は椅子から腰を上げる。

 さて、まずは国に戦力になる事を証明しにいくか。


「お前が空か?」

「あなたは?」

「俺は天池潤(あまいけじゅん)。潤さんって呼んでくれて構わない」


 背中がヒリヒリする。

 彼も使徒……


「そして【目標】の使徒で軍人。夜桜と戦う以上はどのくらいか力を見ておきたくてね」


 軍人か……

 ここにいる以上はある程度上の立場の人だろう。


「もちろん手合わせしてくれるよね? 俺達だって無駄に死者は出したくはないしね」

「分かりました」


 さて、久久に体を動かすとしよう。

 どう戦うか……


「今はエニグマからアリスが来てるお陰でどんな怪我でも治せるから手加減はいらないよ」

「それじゃあ遠慮なく」


 決めた。さっさと終わらせよう。

 俺は潤さんに雷を落とす。

 ズドドンと音と共に眩い光。

 彼の周辺にクレーターが出来る。

 少しだけ雷の威力が上がったかもな……


「なんて火力……」


 今のに耐えるか。

 でも驚くことじゃない。


「終わりですね」

「なんだこれは!?」


 彼の体を重く。

 大体三倍くらいか。

 歩くのすら困難のはずだ。


「追撃です」


 再び雷を落とす。

 ズドンとズドンと二回か三回音が響いた。

 それにより潤さんはまたも黒焦げになる。

 しかし遠慮はいらないと言ったのは彼。


「……勝負ありね」


 アリスが呟くと背景は見慣れた草原になった。

 それと共に潤さんが明るい光に包まれる。

 アリスがエクスカリバーを使ってるのだ。


「いやぁ参った。まさか手も足も出ないとは……」


 遅い。

 あまりにも行動が遅すぎるのだ。

 あの程度なら雷を落とし続ければ簡単に勝てる。


「さて、次は君」

「私ですか?」

「そうだとも」


 海も戦うのか。

 そういえば潤さんは能力を使わなかったな。

 俺の場合は使わせる前に勝ってしまったからな。

 そんなことなら海のために暴いておけばよかった。


「分かりました」


 その瞬間、海は潤さんの懐に潜り込んでいた。

 いらない心配だったな。

 この勝負は海の圧勝だ。

 海は潤さん足を引っ掛けて綺麗に背負い投げ。

 思いっきり地面に叩きつけた後に足をあらぬ方向に曲げてボキリと折る。

 潤さんの悲鳴が上がる。

 それと共に何処から出したのか分からないが手に持っていたナイフを喉に軽く当てた。


「勝負ありですね」


 たしか軍人と言ってたよな。

 まさかこんな簡単に決着が着くとは。

 そして海はまだ無能力者だ。

 つまり素の力だけで軍人を完膚なきまでに倒せる……


「いや、強いね。これなら問題なさそうだ」

「結局あなたの能力はなんだったんですか?」

「変形だよ」


 そう言った瞬間、彼の右手が剣の形へと変わった。

 体の一部を好きな形に変える能力か。

 便利と言えば便利か。


「ちなみに変えられる対象は自分だけ」


 俺が使えるようになる事はなさそうだな。

 少し便利だっただけに残念だ。


「ていうか君達は本当に高校生?」

「はい」

「最近の高校生は随分とバケモノなんだねぇ」


 多分こんな戦闘能力が高いのは俺達くらいだ。

 全員が俺や海と同等の身体能力のわけがない。


「さっき宝石嬢とも手合わせしたんだけどその時もボロ負けだよ」


 彼が指差した方向には桃花がいた。

 それに気づいたのか桃花が笑顔で手をこっちに振る。


「俺だってまだ高校生には負けないと思ってたんだけどなぁ」

「この二人は暗殺姫から直々に教わってるのよ。勝てるわけないじゃない」


 アリスが慰める。

 たしかに白愛に教わってるから強いというの大きいが……


「それじゃあ先程の桃花さんとの戦いはどう説明すんだよ!」

「あれは仕方ない。千年に一度の天才だから……」


 桃花の場合は才能の塊だからな。

 凡人が天才に勝てないのは昔からの道理だ。


「さて、気を取り直して本題に入ろうか 」

「本題?」

「あぁ。桃花さんからの夜桜の情報を照らし合わせて俺達の方でも少しばかり作戦を立てたんだ。参考にはなるだろ?」

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