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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
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9話 百合と妹のお話

 コンビニに着くが置いてあるものはどれも大して心惹かれるものではなかった。

 そんな中で選ぶためあまり時間はかからないだろう。

 それに今は腹が膨れるならなんでも良い。

 僕は適当に弁当を買いコンビニを後にした。


「……コンビニって買うより食べる方が時間かかるよな」


 ふとそう思った。

 でも、こんなひとり言に反応してくれる人はいない。

 そう思ってた。


「悩む時間いれると買う方が時間かかるだろ」


 ……いた。

 正直いないと思ってたから驚く。


「久しぶりだな。お前はどうしてコンビニに?」

「ちょっと魔法のカードを買いにな。それと久しぶりって金曜日に学校で会ったばかりだぞ!」

「悪いな。この土日が濃密すぎてな」


 話しかけてきたのは僕の友人である鈴木拓也(すずきたくや)

 改めて説明すると僕が拓也と知り合ったのは二ヶ月前で突然彼の方から話しかけてきて話してるうちに仲良くなったのだ。

 そして彼はオタクと言われる人種だ。

 しかし根暗というよりはむしろ明るい。

 たまにそのテンションがうざいぐらいだ。

 それと先程彼が言った魔法のカードは隠語でどうやらソーシャルゲームの課金に使うらしい。

 

「おいおいまさか白愛さん買い物とか行ったり?」

「した」

「クソッ! このリア充が! 一回爆発しやがれ! 前に家に行った時も終始イチャイチャしやがって!」


 そして白愛の事を知っている数少ない人である。

 彼はこういうが本心からキレてはいない。

 軽いノリのようなものだ。

 大体こういう時は僕が軽く流して終わる。


「付き合ってないからリア充じゃない」

「うっさいわボケ!白愛さんと同棲してる時点でお前はリア充なんだよ」

「……そうかよ」

「それにしてもお前が白愛ちゃんと一緒にいないなんて珍しいな。もしかしてとうとう別れたか?」


 痛いところを突いてくるな。

 どこまで説明したものか……


「別れてない。取られただけだ」

「マジかよ! それって寝取りだろ? ねぇねぇ今どんな気持ち?」


 やはりこいつは騒がしい。

 一回しばいた方がいいのでは?


 まぁ何度もやって効果はないのが現状だが……


 彼は一段落つき口を開く。

 その内容は彼にしては珍しくまともなものだ。


「それにしても説明がほしいな。正直白愛さんがお前を捨てるとも思えねぇ」

「……話せば長くなるぞ」


 彼なら話しても問題ないだろう。

 暗殺姫や神崎家の事は流石に言えないが海については説明しても大丈夫だろう。


「だったらウチに来い。どうせ家に白愛さんはいないんだろ?」

「……分かった」


 拓也に案内されて彼の家に行く事になった。

 彼の家はあまり綺麗ではない。

 ある意味、拓也らしい。


「今は親いないから特に気にしなくていいぞ」

「どうしてだ?」

「実家に帰省だ」

「なるほど」


 そういえば拓也の親はどんな人なんだろう?

 なんだかんだ言って一回も会った事ないな。

 彼に親について聞いてもはぐらかされてしまう。

 聞かれたくない事情があるのだろう。


「とりあえず俺の部屋で飯でも食いながら話そうぜ」

「そうだな」


 とりあえず彼の部屋に行く。

 僕は彼の部屋に一歩入った瞬間に凄く後悔した。

 壁一面に美少女のポスターやタペストリー。

 それは別にいい。

 そして床は脱ぎ捨てられた服とかゲームの空箱とかで足の踏み場もない。

 何故か女性用の服や空の酒瓶もあるがそれはスルーだ。

 しかし一番の問題はめちゃくちゃ変な匂いがする。

 煙草の臭いとか色々と混ざっている。

 そういえばここは彼の部屋だ。

 何故、煙草の臭いがするのだろうか?


「少し散らかってるが我慢してくれよ」

「お、おう」


 それより頼むから掃除をしてくれ。

 もしこんな堕落した事を僕が部屋でやろうものなら白愛に何をされるか分かったもんじゃない。

 下手したら晩飯を抜かれるかもしれない。

 場合によっては真冬の雪山に放置……

 拓也は僕がこんな事を思ってるなんて考えもせず聞き始めた。


「それで何があったよ」

「そうだな……」


 とりあえずなんとか部屋の中心にある丸テーブルにたどり着き弁当を食べ始める。

 最初に説明するのは海の立ち位置だな。

 

「……僕に妹がいた」

「は?」

「だから妹が……」

「とりあえず俺が全人類を代表して言う」

「なんだ?」

「一回死んでこい」


 正直大体予想通りだ。

 彼ならそう言うと思っていた。

 しかし彼はどうして妹に過剰反応をした?

 拓也はそれを補足するかのように語り始めた。


「貴様に全て教えてやろう。貴様はイケメンでメイドがいてケンカも強くスポーツも出来て頭も良い。そして更に佐倉さんにまで告られるときた」


 よく他者に言われる事だな。

 しかしそれがどう関係するというのだ。


「お前は正直言って嫉妬の対象だ。メイドが欲しい。イケメンになりたい。スポーツとか勉強が出来てチヤホヤされたい。クラス一の美少女と付き合いたい。そのありとあらゆる男子の欲求を満たしたのがお前だ」

「お、おう」


 彼の熱弁っぷりに僕は押し負ける。

 しかし彼の言うことも一理ある。

 実際に竹林が僕に強い恨みを持ってたわけだし……

 彼はかなり真面目に考えてるのではないか?


「そしてそれに妹までいると来た。お前の罪は死でしか償えないところまで来てんだよ」


 彼が真面目に考えてると思った僕がバカだった。

  最後が何故そうなったのか理解できない。

  もし白愛がいたら分かるだろうか……

 でも正直この話は白愛でも分からない気がする。


「とりあえず男子の三大欲求について言ってみろ?」

「金が欲しい。楽したい。寝たいか?」

「違う!『妹欲しい』『メイド欲しい』『異世界行きたい』だ!」

「お、おう」


 完全に理解の範疇を超えた。

 僕はそれにただうなづく事しか出来ない。


「そしてお前は妹がいる事でそのうち二つを満たした! 一つですら死罪のところ二つも満たしいてる! それはまさしく死罪だ!」


 よく考えるとかなりの理不尽だ。

 特に妹に関してはいるのただの理不尽。


「さぁ死ぬ覚悟は出来たか?」


 彼はそんな事を言うがそんな事を実際にそれが出来るのだろうか?

 彼は喧嘩が特別強いわけではない。

 むしろ弱い部類だろう。

 軽くからかってみよう。


「……お前は僕に勝てるのか?」

「すみませんでしたぁぁぁぁ!」


 彼は謝罪と共にジャンピング土下座をする。

 いつも通りだな。

 さて、茶番もその辺にしてそろそろ本題に入るか。

 

「それで問題はその妹なんだ?」

「ほう?」

「その妹は“海“って言うんだ。そして白愛を取ったのが海なんだ」


 それを聞いた拓也が少し反応した。

 まるで好物を見つけた肉食獣みたいに……


「もしかして百合か?」

「……そう言わればそうだな」

「百合!リアル百合キターーーー!それだけご飯三杯はいけるぞ!」


 彼が突然興奮を始めた。

 それこそまるで狂信者の元へ信仰していた者が現れさらに狂ってるような感じだ。

 しかし“百合”ってそんなに良いのか?

 いまいち理解出来ない。

 拓也は僕が百合の良さを理解してないのを察したのか 熱弁に語り始めた。

 

「いいか、百合はな可愛い女の子たちがあんなところやそんなところをチュッチュしたりするんだぞ! ホントに興奮するぞ! あとさ、女の子は自分の気持ちいいところがわかるんだよ! つまり相手の女の子の気持ちいいところもわかるわけ! お互いが気持ちよくなってるところ見ると本当にこっちが気持ちよくなっちゃう! もう百合最高」


 もうこいつ末期だな。

 早くどうにかしないと手遅れになる。

 いや、既に手遅れか。

 しかし、ここら辺で話を本筋に戻そう。

 少し脱線させすぎた。


「さて、話を戻すぞ」

「そういえば白愛ちゃんをなんで取られたんだ?」

「白愛を賭けてゲームをして負けたんだ」

「……ゲームね」


 突然拓也のトーンがガラリと変わった。

 先程のおちゃらけた感じはなくなり急に真剣な目付きになった。


「その妹さん。かなり良い趣味ししてんじゃねぇか」

「……そうか?」

「まぁお前にそっち方面の話は分かんねぇか」


 分からないなら話を振るな。

 余計な混乱をするだけだ。

 すぐに他人に答えを求めて自分で考えもしない。

 その結果があのゲームの結果なんだ。


「それで聞きそびれてしまったが妹とは今どんな感じなんだ?」

「そうだな。とりあえず一緒には住んでない。一応明日から同じ学校に来るみたいだ」

「なるほど。年齢差は?」

「双子だからない」

「……おいおいマジかよ。どこのラノベだよそれ」


 たしかに言われればラノベみたいな展開だろう。

 同じ年齢の妹が家に来て一緒に学校に通う事になる。

 しかも海は悔しい事に容姿は可愛いのだ。

 これをラノベと言わずしてなんというだろうか?

 でもラノベと違うのは海は僕に好意を抱いておらずむしろ敵意を抱いているところだな。


「たしかにラノベっぽいな。それで詳しくは言えないがどうやら海は僕に恨みを抱いてて僕の全てを奪うつもりなんだ」

「なるほど。全てを奪うか」


 そう言った瞬間に拓也が悪魔のような目になる。

 一体何を思ったのだろう。

 でもすぐに戻った。

 今のはなんだったのだろうか?

 とりあえず話を続けよう。


「現に白愛を取られた」

「なんか仕掛けてきたか?」

「今さっき海の差金でヤンキー達に襲われた。その時に僕の命も奪うと言っていた」

「……なるほど」


 そう言うと拓也を察したように一息ついた。

 何かわかったのだろうか?

 それと拓也的に海をどう思ってるか聞こう。


「お前は海についてどう思う?」

「そうだな。普通の女の子じゃねぇか」

「……兄を殺そうとするやつが普通で溜まるか」


 少し拓也とは価値観が違うようだ。

 一体何が拓也をこのような価値観にさせてしまったのだろうか……

 僕は始めて彼の過去に興味を持った。


「事実、妹を必死になって殺そうとする兄だっているしな」

「……マジかよ」


 もしかして世間の兄妹は殺し合うものなのか?

 しかし雨霧さんと桃花の間にそういうのは見えなかった。

 いや、あれは表向きで本当は殺しあってるのか?


「とりあえず話は聞けたし俺はこれから用事があるからまた明日学校でな」


 こんな夜遅くに用事とは一体なんなのだろうか。


「とりあえず夜道には気をつけろよ」

「おう」


 しかし気にしても仕方ない。

 俺はそのまま拓也の家を後にして無事に帰宅した。

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