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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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89話 海の宣戦布告

「そういえばバーベキューなのに肉がないねぇ」

「今回は魚がメインなんだよ……」


 なんだかんだで結局真央達とバーベキューをしている。

 しかし落ち着かない。

 恐らくこの場で気楽に過ごしてるのは真央と夜桜くらいだろう……


「まぁ全て水に流そうぜ」

「ふざけるな」


 今この場でケリをつけるか?

 俺のアレなら恐らく倒せる。

 最初に真央を倒し夜桜を殺す。

 距離は十分に近い。


「……微弱な電気を流してショックボルト。たしかに気絶なら再生とは関係ないよな」

「なっ!」


 こいつに考えが読まれた?

 先ほど海と桃花と話して出来た解決案だ。

 アレとは夜桜の言う通りショックボルトだったのだ。


「ほれ、魚焼けたぞ」

「……そうだな」


 やめろ。

 今は確実に勝てない。

 どんな手段か知らんが手が読まれた……

 待て、そういえば俺達の位置はどうして割れた?

 誰にも言ってないはずだ……


「ホントに詰めが甘いよな。例えばここに内通者がいたらどうだ?」

「……まさか!」


 そういえばアリスはどうして夜桜のいる位置を言い当てた?

 そもそも彼女には俺達に協力する理由がそこまでない。

 もしかしたら彼女が……


「……お兄様」

「お! 海ちゃん。ほら、お魚が焼けたよ」

「やめろ。海が怖がってるだろ」


 コイツは何を考えてやがる。

 お前の存在が海には半分トラウマになってるんだぞ。


「大丈夫か?」

「……はい」

「ホントにいいよな! 妹がいるっていうのは!」


 海への異様なまでの執着。

 もしかして妹を持ってる俺への嫉妬か?

 夜桜の妹は姫だ。

 そして姫は今も尚苦しんでいて夜桜は十年もの間助ける方法を探していた。

 そんな夜桜が他の妹をみたら妬みにより壊したくなってもおかしくはない……

 まぁ本人が自覚してるかどうかは別だが。


「海。中に入ってるか?」

「妹に下ネタをぶち込むなんて兄としてどうなんだろうなぁ!」

「変な事を言うな。家の中にだよ」


 海を夜桜の近くに居させることは大きな負担になるのではないか?

 それだったら先に戻した方が良い。

 別に無理してこの場にいる必要もないわけだしな。


「……大丈夫です」

「無理はするなよ」

「はい」


 さて、そろそろ本題にいこう。

 今この場に夜桜がいるのは歪だ。

 真央ならまだ分かる。

 彼女はそういう奴だ。

 しかし夜桜がこの場にいる必要はないはずだ。

 真央の護衛のためと考えられなくもないがその場合ならそもそもここに真央を来させたりしない。


「……神器について聞きに来たのか?」

「珍しく察しが良いな」


 コイツの目的は最初からわかりやすいぐらいに決まってる。

 それは夜桜の妹である姫を助ける。

 夜桜にとって今までの行為は寄り道に過ぎない。

 もっとわかりやすく言うなら遊び……


「俺は神器に挑戦して負担に耐えられず泣く泣く逃げ戻った。それだけだ」

「再挑戦の予定は?」

「……もちろんある。ただ今の俺じゃ無理だ。もっと成長してからだ」


 姫は俺も見逃せない。

 あまりにも可哀想すぎる。

 それに何より俺は助けたいと思ってしまった。


「そうか」

「でも忘れるな。姫は助けるけどお前は絶対に殺すからな」

「わかってるよ。そんな事は」


 こいつは罪を犯し過ぎた。

 それこそ死でしか償えほどに……

 俺のやる事は私刑がしれない。

 それでもコイツだけは殺す。

 被害者が増えるから殺すとかそれっぽい言い訳はある。

 でも俺の本心はそんな事を考えてない。

 何故かコイツだけは()()()()と思ってしまった。

 なんでそう思ったのは分からない。

 それでも俺は殺す事を躊躇わない。

 この諸悪の根源を……


「お兄様。顔が怖いです……」

「悪い」

「憎しみに飲まれないでくださいね。ろくなことになりませんから」


 憎しみか。

 俺が夜桜に抱いてるのは憎しみなのかもな。


「それにお兄様より私の方が夜桜への恨みは大きいです」

「……そうだよな」


 考えてみたらあくまで俺は見てただけ。

 しかし海は違う。

 実際に被害に遭っているのだ。

 そして海は手に持っていたフォークを夜桜に向けて飛ばした。


「あぶね! 休戦中だろ?」

「どうせ再生するんだからこのくらいいいでしょう?」

「……そういう問題じゃねぇよ」


 夜桜がボソボソと呟いた。

 それと共に海が立ち上がり夜桜に近づく。

 距離は段々と狭まり拳一つ分となった。

 辺りが緊迫した空気になる。

 夜桜が唾を飲むと共に海がアクションを起こした。

 海は夜桜の胸ぐらを掴んだのだ。


「女性に手を出した罪。簡単に晴れるとは思わない事ですね」

「……」

「私はそこのお兄様と違い何があっても許しませんのでそのつもりで」


 カッコよく言い放つと海が夜桜から手を離した。

 彼女は戦ったのだ。

 自分の中の恐怖と……

 夜桜への宣戦布告。

 それは自分の中にあった恐怖に打ち勝ったと言ってもいいだろう。


「次に会う時は確実に殺しますよ」

「いいぜ。今度は遊ばないで全力でお前を殺してやるよ」


 海と夜桜。

 間違いなく夜桜の方が強い。

 それでも海は折れない……

 だからこそ怖い。

 海は無鉄砲にも夜桜と戦いにいくだろう。

 しかし結果は火を見るより明らか。

 間違いなく死ぬ。


「海……」

「お兄様が私を守ってくれると信じてますよ」

「俺任せかよ……」

「はい! 妹とは兄を頼る生き物ですよ」


 まったく。仕方ねぇな。

 俺がまた助けてやるよ。

 海を助けると最初から決めてたしな。


「おぉ! 予想通り盛り上がってきたねぇ。これは明日が楽しみだ!」


 ……楽しみ?

 真央は完全に遊び感覚だな。

 随分と舐められたものだ。


「真央とか言ったかな? 自分は死なないと思ってるみたいだけどあなたは私が殺すよ」


 真央の呟きに答える桃花。

 どうやら完全に決心が着いたみたいだな。


「……ハートキャッチ。逆言えばあなたはそれしか攻撃手段がないんでしょ?」

「攻めはダメでも逃げは誰よりも得意だと自負してるよ」

「その自信。へし折ってあげる」


 なんとなく桃花の考えが分かった。

 腹黒というか計算高いな。

 俺の推測でしかないが桃花の宣戦布告。

 恐らく暗殺を悟らせないためのものだ。

 真央に俺達は正面から戦うと思わせる。

 そのための布石……


「さて、そろそろ政府も来るし帰ろうか」

「そうだな」

「楽しかったよ。またこうやって楽しめる事を望んでるよ」


 真央達はそう言い残し消えていった。

 この場には火のパチパチとした音が残る。


「いや、些か予想外だったよ。まさか乗り込んでくるとはね」


 たしかにその通りだ。

 しかし気になる事がある……


「……内通者」

「お兄様は馬鹿ですか?」


 馬鹿とは酷い言いようだ。

 現に内通者がいなきゃショックボルト戦略はバレるわけがない。


「仕方ありません。答え合わせをしますよ」


 答え合わせ?

 一体なんのだ?


「まず相手の目的。恐らく内輪揉め狙いです」

「……は?」

「現にお兄様は騙されてアリスを疑ったではありませんか?」

「あ……」


 まさかアレが計算の内だというのか!

 いや、それだと夜桜はどうしてショックボルトを……


「恐らく夜桜の能力の一つに盗聴とか相手の考えてる事が分かるのがあるんだろうね」

「桃花の言う通りと見ていいわね。そして最悪の場合は未来予知か……」


 なんて思考の速さだよ。

 どうしてこの二人はそこまで深く考えられるんだよ……


「アリスはどう思う?」

「そうね……未来予知なら少し不可解な点が多くないかしら?」

「たしかに」


 不可解な点か。

 考えてみたら未来予知なら二週目の世界で手も足も出なかっただろう。

 それこそ姫について知る事も出来なかった……


「だったら夜桜の能力は盗聴というより街全域の音を拾えるとかなのかな?」

「だとしたら作戦は全て筒抜けですね……」

「筆談と言いたいけど相手も絶対そうしてくる事を考えるよね……」


 とりあえず現状整理だ。

 夜桜側は俺達の動きを何かしらの方法で把握してる。

 しかしその方法が不明。

 そしてどうやって知ってるのかを考えてるのが現在か。


「作戦を把握されても相手は対策出来ないのではないのでしょうか? 私なら正面からでも殺せますし……」


 白愛は考える事をやめたのか?

 それとも考えた上での発言か?

 たしかに白愛なら奇襲するってバレてても殺せそうだが……


「それって相手がハートキャッチっていう即死攻撃なければの話だよね?」

「使わせる前に首を跳ねれば解決だと思いますが?」

「……出来る?」

「はい」


 対抗策は力押しか。

 それが無難かはさておき有効打ではあるだろう。


「失礼する!」


 ようやく答えが纏まったところで誰かが来たようだ。

 それも一人じゃなくて集団。

 こんな夜に来るのは間違いなく……


「国の者だが夜桜について話とエニグマの考えを聞きに来た!」


 やっぱりそうなるよな。

 さて、面倒なイベントだ。

 しかし頑張って乗り越えるとしよう。

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