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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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82話 目覚め

 あれから二十分近く経っただろうか。

 俺はそれまでに少なくとも千回は殺された。


「武器を捨てろ!」


 そして予想してた通り警察が来た。

 真央はまだ来ないし仕方ない。

 あとで怒られるだろうがやるか。


「なにをするつもりですか?」


 俺は茨をそこら一体に広げる。

 能力の一つで茨を生み出し自由自在に操るというものがある。


「……こうするんだよ」


 そして近くにいる警察を全員捕縛。

 その数は大体二十人くらいだな。


「……何だこれは!」

「うるせぇよ」


 俺は創造で銃を作成。

 そして今喋った警官の頭を撃ち抜く。


「今のは見せしめだ。暗殺姫。もし俺を逃がさなければ死体はもっと増えるぞ」


 俺は暗殺姫に告げる。

 お前は罪のない人を殺せるか?

 恐らく平和ボケして殺すのに躊躇いが生まれるだろうな。

 俺は鈴木拓也を演じて空の観察と同時に暗殺姫の観察もしていた。

 彼女がどのような人物なのかを含めて……


「さて、どうする?」


 その結果、分かったことがある。

 今の暗殺姫は罪無き人を殺せない。

 それも現行犯でなければ……


「もしここで俺を再度殺すようであったらお前は警官を間接的に殺した事になるぞ」

「……」


 暗殺姫は下唇を噛む。

 それでいい。


「遅い!」


 さっさと答えを出せよ。

 俺は捕縛した若い女刑事の脳天を打った。

 体からダランと力が抜け落ちた。

 間違いなく死んだな。


「お前が遅いからまた一人死んだぞ! 愉快だねぇ」

「やめてください!」

「だったら俺を殺さないと誓え」

「……はい」


 暗殺姫は持っていたナイフを落とす。

 カランカランと音がした。

 ここで暗殺姫を殺してもいいが空から嫌われるのもアレだな。

 とりあえず手足を縛っておこう。

 そう思い俺は創造で手錠を作る。


「来い」


 暗殺姫の頭を鷲掴みにして連れてくる。

 彼女の細い手首に手錠を嵌める。

 そして近くの柱と暗殺姫を繋ぐ。


「オマケだ」


 それと同時に簡易的に総合で折を作り囲む。

 これで暗殺姫は動けなくなった。

 少なくとも一分は……


「じゃあな」


 警察は用済みだ。

 俺は指を軽く噛み、それにより出た血でデカい剣を作りこの場にいる全員の首を跳ねる。

 よしちゃんと目撃者を皆殺しに出来た。

 それで警察も迂闊には手を出せなくなっただろう。

 辺り一面が血の海になった。

 そして大量の死体。

 一言で言うならハッピーな光景。

 それにしても死ぬならもっと綺麗に死んでほしいものだ。


「話が違います!」

「知るか」


 さて、そろそろ海ちゃんを追うとしますか。

 影俺は移動を使って出来るだけ早くこの場を去る。

 さて、彼女は何処に行ったのだろうか。


「随分と派手にやったねぇ」

「……来るのが遅せぇよ」


 真央がいつの間にか俺の目の前に来た。

 間違いなく転移だ。


「俺の場所は分かるのに海の場所は分かんねぇんだな」

「君の場合は携帯で位置共有してるからね。それと海なら近くの公園にいるよ。肉眼で確認した」


 間違いなく不夜公園だな。

 何故そんな所にいるのかなんて考えても仕方ない。

 俺は迷わず目指した。

 人がいるが全員、俺の顔を見るなり逃げ出す。

 あぁ鬱陶しい。

 さっさと死ねよ。

 そう思いながら血でナイフを作りすれ違うたびに殺していく。

 それにしても肉が切れる感覚が本当に堪らないぜ。


「何故あんな簡単に人が殺せる!」


 そんな事を繰り返してた矢先だった。

 どこかの男子高校生が俺の行く手を阻んだ。

 恐らく正義感故の行動だろう。

 しかし声が震えている。

 さて、勇気と無謀の違いを教えてやりますか。


「邪魔」


 俺は男子高校生の顔を掴む。

 それから身体能力強化で手の力を上げる。

 さて、フィナーレだ。

 思いっきり頭を握りつぶした。

 グシャァって音が響いた。

 俺の右手は血だらけになる。

 ていうか俺は忙しいんだから邪魔をするな。


「ここだな」


 そしてお目当ての不夜公園に足を踏み入れた。

 真央の情報通りこの場に海はいた。

 彼女が驚いた目でこちらを見ている。


「白愛はどうしたのですか?」

「とりあえず手錠をして檻に閉じ込めた」

「そうですか。死ね」


 再びナイフが飛んでくる。

 しかし遅い。

 俺は手で払い除けて海に近づく。


「やっぱりお前って可愛いよな」


 俺は思いっきり海を押し倒す。

 彼女の細い手首を地面に押さえつける。

 さて、ようやくお楽しみの時間だ。

 あぁ本当に美味しそうだ。

 空の元へ運ぶ前にこの体で遊んでも良いだろう。

 そんな自分へのご褒美を渡そうとした時だった。

 景色がすり変わったのだ。

 場所は見慣れた草原だ。


「……アリスか」

「えぇ。少しでも実は良い奴なんじゃないかと思った私が馬鹿だった。今すぐその子を離しなさい」


 戦闘能力もないくせにでしゃばるな。

 どいつもこいつも鬱陶しいな。

 みんな邪魔なんだよ。


「それとも私も殺す?」

「お前の能力は便利だしな」


 さて、完全に敵となったわけだし遠慮なく能力を奪えるな。

 彼女のエクスカリバーは二日酔いを覚ませるというとても良い物だ。


「そう。あなたにエクスカリバーは不向きね」


 そう呟くと景色が再び変わった。

 一体何をするつもりだ?

 そして場所は川だな。

 彼女は主に世界に根付いた物語の再現。

 お伽話や童話なら間違いなく再現可能。

 しかし作られてから期間が短いからなのか知名度があまり高くないからなのか最近のアニメの再現は不可。

 さて、彼女は一体何の物語を再現した?

 川の出てくるおとぎ話と言えば桃太郎。

 しかしきびだんごが役に立つとは思えん。


「その目を貰うよ」


 そんな事を考えてた時に突如耳元で囁かれた。

 その瞬間、思いっきり目が何かに貫かれた。

 目に凄まじい激痛が走った。

 貫かれる前に先端が尖ってるのを確認した。

 恐らくは針……


「逃げるよ!」


 俺が状況を理解した時には景色は不夜公園に戻っていた。

 海がここぞとばかりにアリスの方へと向かう。


「何をしたんですか?」

「私の能力は物語の具現化。そしてその物語に登場するキャラに成りきれる。だから“親指姫”の物語を具現化して親指姫に成りきって小さくなって針で目を刺したのよ」


 ご丁寧に解説どうもだ。

 再現したのは親指姫だったのか。

 しかしアリスは攻撃する以上は物語を展開するしかない。

 物語内では援軍は来ない。

 つまり展開してる間は暗殺姫の助けはない。

 それは正面戦闘をするしかないという意味でもある。


「……逃げ切る秘策はありますか?」

「ないわよ。でも目の前に助けを求める人がいたら助けたくなっちゃうんだから仕方ないじゃない!」

「お人好しですね」


 そして正面戦闘なら暗殺姫以外に俺は負けねぇ。

 つまりあとは時間の問題……

 暗殺姫が来る前にこの二人をどうにかできたら勝ちだ。


「アリスは殺したら空が怒るよな。だから二人共生け捕りだな」


 茨で捕縛して終わりだな。

 俺は茨を足元に(うね)らせる。


「アリスで名前あってるかしら?」

「うん」

「とりあえず私とアリスの二人で白愛が来るまでの時間を稼ぎます」


 懸命な判断だな。

 あの程度の拘束なら暗殺姫なら簡単に抜けるだろうしな。


「問題はどうやって時間を稼ぐかだね」

「そうですね」


 さて、そろそろ話も終わったみたいだし動くか。

 自分で言うのもアレだが話が終わるのを待ってあげるなんてかなり優しいと思う。


「キャッ!」


 俺はとりあえず茨でアリスの足を掴む。

 アリスが運動神経がないのは分かっている。

 海の方は案の定ジャンプして回避された。

 そして俺の元へ接近。

 ナイフをズブリと心臓に突き刺す。


「大丈夫ですか?」

「えぇ」


 海は素早くナイフを引き抜きそれで茨を切断する。

 動きが戦いなれてやがるな。

 しかし俺の前では無意味だがな。


「ちょっと本気出すか」


 使うのは身体能力強化。

 十倍近くまで上げて思いっきり近づきアリスの腹を殴る。


「……ゴホッ」


 しっかりと溝に入ったのを確認。

 もう当分は動けないだろうな。


「海にも気絶してもらうか」


 体を弄ぶのはその後でもいい。

 俺は海にゆっくりと近づいていく。


「出来れば降伏してくれると嬉しいんだけどねぇ」

「誰がしますか」


 海はこちらに突っ込んで来た。

 もう動きは自棄になってるな。

 俺は迷わず腹パンして蹴り飛ばす。

 すると海はアウッと声を挙げた。

 中々に可愛らしい声だ。

 もっと殴りたくなるじゃないか。


「ちょっと痛いのは我慢してね」


 やっぱり手足は邪魔だ。

 切り落とした方が良いかもな。

 俺は一歩ずつ近づいていく。

 やっと鬼ごっこも終わりだ。


「捕まえ――」


 俺が海の手足を落とそうとした時だった。

 驚く事に俺の体が重くなったのだ。

 なんとか動くが身体能力強化をフル解放して辛うじて動かせるレベル……


「海に手を出すんじゃねぇよ外道」


 声がする方を見るとそこには黒髪黒目のイケメンがいた。

 彼は俺を力強く睨んでいる。

 殺意を込めた目だ。


「桃花。心配かけたな」

「大丈夫だよ」


 それにしても自力で目覚めるとは予想外。

 でも目覚めたなら全て解決だな。


「人の妹に手を出した罪をどうやって償うつもりだ?」

「全てはお前のためを思ってやったんだよ。神崎空」

「やっぱりお前はここで死ね」

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