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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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80話 外道達

「頭痛たいよ〜。夜桜〜」


 真央が俺に寄りかかる。

 完全に酔ってる。


「お前ッ! 酒くせぇよ!」


 アリスとスーは未だに爆睡。

 早く起きて酔いを覚ましてくれ。

 俺も頭がいたい。


「理不尽だ。この世界は間違ってる……」

「酒飲んだのはお前の意思だろ!」

「分かってないなぁ……。酒飲むと酔うように設定されてる世界の責任だよ」


 酷い。

 あまりにも酷すぎる……


「……てめぇら朝からうるさいんですけど。声が頭に響いてめちゃくちゃ痛てぇんですけど」


 そしてアリスも起きた。

 性格は完全に別人。

 いや、これが素なのか?


「さーめーろー」


 この一言で景色が変わる。

 アリスの手にはエクスカリバー。

 光が俺達を包み込んだ。

 それにより頭も軽くなってくる……


「……酔いは覚めても眠気は覚めないわね」

「覚めたらビビるわ!」


 もし眠気も覚めたらエクスカリバーの基準が分からなくなる。

 ただでさてよく分からないのに……

 そもそも傷を治せるなら応用して赤ん坊の状態まで戻せるはずなのだ。

 しかしそれは出来なかった。

 一体基準はなんだ?


「さて、真央。力を貸してくれ」


 とりあえずエクスカリバーは後だ。

 今日は土曜日。

 空の妹である海が来る日だ。

 真央の転移で迎えにいこう。


「そうだね。場所は分かってるのかな?」

「シュネーから来るなら電車の乗り換えで必ず波風(はかぜ)駅で乗り換えるだろ?」

「分かった。それじゃあ波風駅に連れてくよ」


 流石に待つのは面倒だ。

 それに移動中に全て説明は済ませたい。


「開けたよ」

「アリスはここで待つなりどこか行くなり好きにしてくれ」

「分かった」


 空間がねじ曲がる。

 転移の準備は出来たな。


「それじゃあ行ってくるわ」


 俺は捻れに飛び込む。

 転移先はは狭間駅のトイレ。

 流石に転移を誰かに見られたら不味いからな。


「今の時間は十時か」


 そう思うとかなり遅起きだな。

 宴は深夜まで続いたし仕方ないと言えば仕方ない。

 まずはとりあえずトイレから出よう。

 幸いにも海はかなり可愛い。

 間違いなく目立つ。

 そのため探すのは楽だろう。


「ちょっとそこの嬢ちゃん。俺と楽しいことをしようぜ」


 そんな声がするほうを見た。

 そこにはやはり海がいた。

 予想通りナンパされてるな。


「……目障り」


 海がギロりと睨む。

 間違いなく殴るだろうな。

 それで警察のお世話になり到着が遅れるってところまで読めたぞ。

 さて、カッコよく助けるか。


「おい。怖がってんだからやめろよ」


 俺はナンパ師の手首を掴む。

 なんか苦しめるのに良い能力は……

 そういえば壊死があった。


「痛い痛い!」


 いや、能力を使う必要もねぇか。

 握力だけで十分だ。


「……もう懲りたらするなよ」


 ナンパ師は逃げ去っていった。

 これで海はフリーになったな。


「貴方は誰ですか? 助けてもらう必要なんてなかったんですが」


 扱いが凄く冷たい。

 もう泣きそう……


「とりあえず電車の中で話そっか」

「馴れ馴れしくしないでください。感謝もしてませんしあの程度なら私だけでもどうにか出来ました」


 実際出来るだろうな。

 しかしこういう時はしっかりと感謝を述べた方が可愛げがあると思うのだ。


「そう言えば名乗り忘れてたな」

「興味ありません」

「夜桜百鬼。それが俺の名前だ」


 その瞬間、海の顔が青ざめた。

 やはり名乗るのは楽しいな。


「神崎海。俺が災厄の夜桜だと知っても話を聞かないというのか?」


 軽く震えてる。

 ここまで怯えなくてもいいではないか。

 それでも海は恐怖を押し殺して口を開いた。


「……一体何の用ですか?」

「それも踏まえて電車の中で話そうよ」


 よし、穏便に済んだ。

 物事は全て順調に進んでいる……


 ◆


 あれから少しだけ時が過ぎた。

 現在いるのは電車の中だ。

 運良くボックス席が取れたのでそこに二人で座っている。


「概ね理解しました」


 それにしても海を見てるとなんかムラムラする。

 仕草の一つ一つがエロい。

 特に髪がヤバい。

 今すぐにでもめちゃくちゃにしたくなる。


「お兄様が使徒になったのですか。そして神器の負荷に耐えきれずに発狂」


 海だけは特別ヤバい。

 なんで空はこんな芸術品みたいな人が妹にいるんだよ。

 もう俺の性癖に突き刺さり過ぎて……

 あぁぶち壊したい……


「聞いてます?」

「も、もちろん」


 もう可愛い。

 とにかく可愛い。

 しかし運の悪い事に透視の能力は持ってない。

 そのため下着が見えない。

 やはり透視能力は必要不可欠……


「まさか自滅で終わるとは些か予想外ですね」


 耐えろ俺。

 今、彼女に手を出したら全てが無駄になる。

 また前の世界と同じ過ちを犯すつもりか。


「夜桜。何を考えてるんだい?」

「ま、真央!」


 いつの間にか俺の隣に真央が座っていた。

 恐らく転移を使ってきたのだろう。

 無断乗車なのは気にしたら負けだ。


「相手はまだ十六歳の少女だ。君がロリコンなのは知ってるが流石にそれはどうかと思うよ」

「……十七です」


 そういえば空と双子か。

 年齢は変わらないか。


「一歳くらい変わらんよ」

「そういう貴方は何歳なんですか?」

「三十二だよ」


 真央の年齢は意外と高いのだ。

 見た目は間違いなく二十歳前後だがアラフォーなのだ。

 考えてみれば出会った時は二十二歳。

 そこから十年も一緒に旅をしたんだもんな。


「……本当ですか?」

「もちろん本当だとも!」


 俺はヤレヤレと思いながらポケットから煙草を出す。

 煙草を吸うと思考回路が落ち着くからやはり良い。


「それで真央はどうしてここに?」

「君が一人だと些か心配だからね」


 いつまでも子供扱いするな。

 真央はそうやって常に俺の近くに……


「いや、今回は夜桜じゃなくて海の方の心配だ。君は前科持ちなんだから」

「……夜桜は前の世界で私に何をしたんですか?」

「私もドン引きしたくらいだから聞かない方が良いと思うよ」


 絶対に言うなよ。

 四肢を()いで下半身にめちゃくちゃにしたなんて話は聞かせられるか。

 あれは一時の気の迷いみたいなものだ。

 陸の体を奪えなかったりラグーンが死んだりでむしゃくしゃしてたからな。

 ラグーンは本当に良い奴だった。

 それを殺すなんて酷いじゃないか。


「一体前の世界の私は何故止めなかったのか……」

「知るか。ていうかお前だってストレス解消で実験とか言って街全体で殺し合いを行わせたじゃねぇか」


 あれは二年ほど前の出来事だ。

 真央が砂漠のとある街に行きそこで食べ物と水だけを転移を使って遠くに飛ばして最後の一人になった者だけを救うとかいうイベントをやった話だ。

 その結果、大規模な殺し合いに発展。

 いや、そうなるように誘導したと言った方が正しいな。

 とりあえずオチだけ話すと最後は男が一人だけ残ったので真央はペットボトル一本とお弁当だけ置いて立ち去った。

 いつもの陽気な真央を見てると勘違いしそうになるが彼女は世界の悪役で間違いなく外道。

 でもそうなった原因だって理解はしてる。


「いや、あれは貴重なサンプルだよ」


 たしかに今後の作戦に必要不可欠であったが……

 そもそもこんな事を繰り返してるからエニグマに目を付けられたんだよ。


「十を救うなら一を捨てろって昔から言うじゃないか」

「だから俺も文句は言ってねぇだろ。真央のした事に比べたら俺のはまだ生温いだろって話」

「それもそうか」


 間違いなく罪だけで言ったら真央の方が重い。

 そんな彼女が俺を責めるのはお門違いだ。


「話は終わりましたか?」

「うん。とりあえず私たちは空を廃人から復活させて欲しいわけよ」

「それで私の出番ですか……」


 海が予め買っていたコーヒーを口に運ぶ。

 そして答える。

 その答えは驚くべきものだった……


「悪いけど私はお兄様を救う気はサラサラありません。このまま野垂れ死ねばいいんですよ」

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