73話 Restart
ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ
そんな声が頭に響く。
何かがおかしい。
何が起きている。
そもそもどうしてこうなっている?
……記憶が抜け落ちているのか。
最後の記憶は夜桜が俺を過去に飛ばして……
「君の世界の終わりは近い。君の世界の終わりは近い」
その瞬間、突如現れた影が形を作る。
一人目の形は若い女性だ。
女子高生だろうか。
「神崎君。私を殺した神崎君」
「……誰だ?」
「私は桃花。君が殺した桃花。次の世界でも私を殺すの? また私の家族を皆殺しにするの? 何人殺すの? ねぇねぇ」
声がコダマする。
頭がおかしくなりそうだ。
彼女の言葉に耳を傾けるな。
「この言葉で何を思う? 開き直っちゃう? それともそれとも無視しちゃう?」
なんだこれは。
ホントに桃花か?
桃花の残留思念なのか?
「……お前は誰だ?」
「お兄様がそれを言います? お兄様は殺した人の顔も忘れるのですか?」
「……海?」
桃花の影は海へと変わった。
……海。
今度は必ず助けてみせる。
「私を殺した気分はどうです? 気持ち良かったですか? ねぇ答えてくださいよ。ねぇ」
「お前は海でも桃花でもねぇよ。誰なんだよ」
「私は君。君は私。表裏一体の存在だよ」
とても気持ち悪い。
吐き気がしそうだ。
声が嫌だ。
喋り方が嫌だ。
「さて、罪に耐えきれず逃げ出した君に罪を教えよう」
やめろ。やめろ。やめろ。
頭が割れる。
言ってるのは真っ当で特に狂気でも何でもない。
でも何故か気が狂いそうになる。
「桃花に海にアペティに智之に架純に雨霧。なんと六人もの殺害をしたのが君」
「あ、あ、あ、あ」
病みそうだ。
もう嫌だ。
消えて亡くなりたい。
そして目の前から影が消えた。
現れるのは紫縦ロールの幼女。
「なんとか一命は取り留めたね」
「……助けて……助けて」
俺は助けを求めるしかなかった。
◆
「空様! 空様!」
誰だ?
優しい声。
安心する声。
……声?
「やめろ! やめろ! やめてくれ!」
「空様! 気を確かにしてください!」
声、悪魔の声。
辞めてくれ。
もう俺はたくさんだ。
「どうして貴方は使徒になってるんですか! 貴方様の身に何があったんですか?」
何が……
そうだ。
俺は神器と契約をしようとした。
何故、そんな経緯になった。
覚えていない。
ただ、覚えているのは……
『絶対に許しませんよ』
その声だけだ。
それが俺の全てを破壊した。
「……俺が俺でいる。俺は俺でお前はお前」
「何を言ってるんですか!」
「お前は俺。俺はお前」
あぁ誰だ?
俺は誰だ?
何のために生まれて何のために死んでいく?
俺に足りないのはなんだ?
そもそも俺とはなんだ?
「……空様! 気を確かにしてださい!」
「……空?」
空って誰だ。
あぁ思い出した。
世紀の大犯罪者だ。
絶対に殺さなきゃ。
そうだ。俺は空を殺すために生まれたんだ。
人生をリスタートしたんだ。
空を殺すためだけに。
ピンポーン
そんな音が鳴り響いた。
一体誰だ。
「まぁ出なくても入るけどな」
白愛が居留守をしようとした瞬間、扉がぶち壊された。
そして誰かが強引に入ってくる。
「……拓也様?」
「違う。違う。俺は夜桜だよ」
その瞬間、白愛の体が強ばった。
無理もない。
夜桜と言えば神崎家皆殺しを行った世紀の大犯罪者。
「……あ……ぁ……ぁ」
声が出ない。
先程まで出ていたのに……
「やっぱり廃人になってやがったか」
「……どういう事ですか?」
どうやら三週目が始まったらしい。




