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世界調整  作者: 虹某氏
2章【知】
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68話 一筋の希望

 夜桜は黙り込む。

 どうやら図星のようだ。


「なら、もっと答えやすくしてやる。お前、本当は何の使徒だ?」


 アイツは前に【闘】の使徒だと言った。

 もし、戦闘狂じゃないならその前提が思いっきり覆る。


「……お前に言って変わるのか?」


 やっと口を開いたか。

 もしかして真央に人質でも取られてるのか。

 いや、それだったらあんな親しくしない。


「俺はどうせ変わらないから言わないっていうのは馬鹿だと思うけどな」


 疑いは確信に変わった。

 あとは口を割らせるだけだ。


「おぉ。夜桜もとうとうアレを私以外の人に伝えるんだね」

「……ちょっと黙ってくれるか」


 夜桜が張り詰めた声で真央を黙らせる。

 真央は夜桜の件について知ってるのか。


「夜桜が人に弱みを見せない質だっていうのは知ってるよ。でもそろそろ限界なんじゃないか」

「うっさい! エニグマや神崎家に助けを求めた時を思い出せ! アイツらは姫を助けるどころか利用しようとしたじゃないか!」


 間違いない。

 前から言っていた姫。

 それが夜桜の助けたい人だ。


「……なるほど。俺は信じられねぇってわけか。まぁ俺もお前を信じられねぇしお互い様だな」


 問題は姫とは何か。

 夜桜を持ってしても助けられない人物だろう。

 もし、エニグマにいるならルークさんを殺した時点で解決するはずだ。

 つまりエニグマとこの件は関係ない。

 そういえば前にコイツは姫を殺せる能力を探していると言っていた。


 ……そういう事か。

 全て辻褄が合った。


「……魔神か」


 その瞬間、夜桜が目を見開いた。

 間違いなくビンゴだ。

 姫とは魔神と融合した少女の事。

 つまり夜桜は姫を助けるために姫を殺すのだ。


「……お前……まさか……あの部屋を?」

「あぁ」


 そして知の神は魔神の殺し方を丁寧に教えてくれた。

 もしかしたらコレを見越したのか?

 まぁいい。


「お前と魔神の関係を話せ」

「言って何のメリットがあるっ!」

「そうだな。魔神の殺し方を教えてやるよ」


 夜桜が表情を変える。

 その表情は驚愕。

 おそらく彼はあの子を救うために旅をしてたのだろう。


「……俺もあの子に必ず助けるって約束したからな」


 夜桜が涙を流した。

 そしてポツリと言葉を漏らす。


「……あり……がとう」

「勘違いするな。お前のためじゃねぇ。あの子のためだ」


 お前に感謝なんてされても嬉しくねぇよ。

 でも今回ばかりは利害が一致しただけだ。


「空の言う通り、俺は【闘】の使徒じゃねぇ。俺は【妹】の使徒で姫は俺の妹だ」


 なるほど。

 つまりお前は妹を助けるために殺す方法を探してると。


「そうか。それじゃあ何故、白愛を狙った?」

「暗殺姫の能力が問答無用でどんな生物でも殺すものだと踏んでいたからだ」


 実際は違うが、たしかにその能力なら殺せる可能性はあるな。

 白愛を付け狙うのも理解は出来た。


「アリスを殺した理由は?」

「エクスカリバーによる自称の巻き戻しなら姫が魔神と融合する前に戻せると思ったからだ」


 俺と同じ事を考えたのか。

 まぁ型落ちじゃなくて本物のエクスカリバーならそれも出来るかもな。


「ルークさんを殺した理由は?」

「それは私からのお願い。君と会話の機会が欲しくて彼は邪魔だったからね」


 ルークさんを殺したのは夜桜じゃなくて真央の意志か。

 そういえば真央の目的はなんだ。

 これが分からないことで事態がどんどんややこしくなっている。

 本質はもっと簡単なはずだ。


「……夜桜。魔神を殺すには神器が必要だ」

「神器か」


 とりあえず夜桜側の事情は分かったからもういい。

 問題は真央だ。


「とりあえず姫を助けたいなら神器を探せ。それと真央。お前は何がしたいんだ?」


 その瞬間、真央は不気味に笑った。

 まるでよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに。


「全ては語れないが話せる事は話すよ」


 全ては話せないのか話したくないのか。

 真意は不明だ。


「まず最初に私には必要不可欠な物がある。それは君のお父さんの能力の記憶消去。まぁ欲しいのは記憶の閲覧の方だけどね」


 それで親父を狙ったのか。

 しかしもう親父はいないから得られない。

 そもそもどうして親父の能力が必要なのか。


「記憶の閲覧。それはもしかしたらアカシックレコードにすら到れるのじゃないか?」

「……アカシックレコード?」


 またややこしそうなのが出てきたな。

 それがどうしたというのか。


「アカシックレコードは元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念だ。つまりこれさえあれば未来すら見える」


 なんか凄いな。

 しかしそのアカシックレコード。

 それと親父の能力がどう関係する。


「あの記憶閲覧。それを地球に使用したらアカシックレコードにアクセス出来ると私は踏んでいるんだよ」

「……そんな事が出来るのか?」

「アカシックレコードは概念そのもの。もし、概念に干渉できる能力があれば?」


 概念干渉。

 彼女が知ってるかどうか知らないが俺はそれを知っている。

 桃花が使っていたソロモンの指輪だ。

 あれなら……


「なるほど。でもそれなら夜桜で略奪すれば良いだろ」

「夜桜の略奪だって色々と制限があるんだよ」

「……なるほどね」


 つまり夜桜は何でもかんでも能力を奪えるわけじゃない。

 もしかしたら個数制限とかもあるかもな。

 それが分かっただけでも上々だ。


「確認する。お前はそいつに親父の体を乗っ取らせて体ごと能力を奪おうとした」

「そうだよ。使徒の場合は能力が魂に刻まれるが神崎家によるものの場合は体に刻まれるからね」


 夜桜の能力は体に刻まれたの奪えない。

 つまり奪えるのは魂に刻まれる使徒の能力だけ。

 でも、そうだとしたらおかしい。

 コイツは海に子供を産ませてその子供を殺して能力を奪うと言っていた。

 しかしそれだと成立しない。


「……お前ッ」

「すまねぇ。海に手を出したのは完全な趣味だ」


 最初から子供を作らせる気は無かったのか。

 ただの性欲処理か。

 とりあえず姫を助けたらコイツは殺す。


「あの子供を作るマシーン発言はどう説明する?」

「……ああでも言わねぇと俺が変態みたいだろ」

「無限に死ね」


 ホントにコイツは……

 今すぐに殺したいがこれで情報を得る機会は失いたくない。

 そして今の俺じゃあコイツを殺せない。

 我慢しろ。

 いつか、殺す機会が回ってくるはずだ。


「お前は俺が二週目だって事は知ってるよな?」

「知ってるというか予測はついてたよ」


 やっぱりか。

 だから一周目では無かったアペティの登場。

 そして真央と夜桜がここまで直接的に関わってきた。


「まずシュネーで君のお父さんの元へ暗殺姫が来た時点で予測したよ」


 たしかに俺たちが親父のいるシュネーに行ったのは不自然だな。

 つまりどうして俺たちがシュネーに向かったのかを考えたら時間逆行して全て手がバレてると考えたわけか。

 それで打つ手を大幅に変えた。


「……つまり全て手の上だったわけか」

「まぁそういう事だよ。流石に暗殺姫が飛行船から脱出するのは予想外だったけどね」


 しかしまだ謎は多い。

 アペティや親父と入れ替わろうとした奴。

 その二人は能力を持っていた。

 使徒でもないに関わらず……

 そして神崎家とは思えない。


「フフっ。気づいたみたいだね」


 つまりコイツらには能力を任意的に解放させる手段がある。

 中々に厄介だ。


「ちなみにその手段は企業秘密ね」


 今回は完全に真央の勝ちだ。

 しかし、真央はなにをしたいんだ。


「私の目的は王の誕生。王についてはまだ言えないよ」

「……重要なところだけは言わないんだな」

「ごめんね」


 彼女の言う王はなんなのか。

 アカシックレコードも王を誕生させるために必要だから集めるに過ぎない。

 この王について分からない限り動けないな。


「ごちそうさまでした」


 そして真央はステーキを食べ終える。

 その瞬間、真央は急に立ち上がった。


「さて、王の試練を始めようか」


 そういえば真央は俺が王の器とか言っていた。

 ……まさか!


「そうだよ。神崎空。君は王候補の一人だ」

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