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世界調整  作者: 虹某氏
2章【知】
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66話 ハートキャッチ♡

 白愛が起きてからすぐに夕飯を作る。

 これから白愛は一人この世界に取り残されることになる。

 それならせめて……


「空様。電話です」

「すぐに出る」


 俺は白愛から電話を受け取り出る。


「もしもし」

「……僕だよ」


 電話の相手はルークさんか。

 もう着く頃合いだな。


「今は佐倉さんの家にいるんだ。それで作戦を決めようと思うから来てもらっていいかな?」

「分かりました」


 そして電話を切った。

 しかし嫌な胸騒ぎがするな。


「白愛。悪いがルークさんに呼ばれたから晩御飯は後にして行くぞ。行き先は桃花の家だ」

「分かりました」


 俺達は共に家を出た。

 とりあえず白愛が一緒なら大抵の事はどうにかなるだろ。


「空様。くれぐれも感情的にならず慎重にお願いします」

「そんなことは分かってるよ」


 外に出た瞬間、冷たい空気が頬を撫でる。

 もう真っ暗だ。

 家の中にいたからこんなに夜になってるとは気づかなかった……


「もう冬ですから暗くなるのも早いですね」

「そうだな」


 俺は念の為にナイフを一本。

 それに加え白愛から役立ちそうなのを色々と借りて携帯している。

 ルークさんと決別した時のためだ。

 最悪は脅してでも……


「空様。あちらのお屋敷で合ってますか?」

「そういえばこの世界の白愛は見るのが初めてだったな。あれが桃花の家で合ってる」


 何度見てもその豪邸っぷりになれない。

 エニグマの職員の給料が良いのか少し気になるところだ。


「呼び鈴鳴らしますね」

「頼む」


 そして白愛がインターホンを押した。

 すぐに桃花のお父さんが出て出迎えてくれた。

 桃花のお父さんはエニグマ職員。

 しかしどのくらい戦えるのか不明だな。


「この世界では初めてだね。空君」

「そうですね」


 一言を話すのに緊張を覚える。

 落ち着け。ボロを出すな。


「白愛がいるのは少し驚きだ。華恋から取り返した。いや、自力で戻ってきたのか……」

「後者ですよ」


 あの話を聞いたあとだと一風違って見える。

 一瞬も気が抜けない状況が続く。


「それとアリスはどこかな?」

「そうですね。まずその話からしましょう」


 そして俺達は語った。

 夜桜に襲われアリスと海を殺された事を……

 でも全てを話したわけではない。

 あの魔神だけは敢えて話さなかった。

 それはエニグマが信用出来ないからだ。

 エニグマがあれを知ったらとんでもない事をしでかす気がする……


「そうか。そして空。君は使徒になったようだけど何の能力だい?」


 ここで嘘をつくメリットとデメリット。

 メリットはエニグマと決裂した時に手を隠せる。

 デミリットはバレた時に面倒なのと夜桜と戦うことになった時に作戦を立てにくい。

 いや、俺はやり直すんだ。

言う必要はない。


「後で話しますよ。それより他に話があります」

「何かな?」


 勝負はここから。

 ルークさんにどうやって時間逆行させるか。


「俺を過去に飛ばしてください」

「どうしてだい? 折角夜桜を追い詰めたんだ。時間逆行する理由がない」

「アリスと海はどうなるんですか!」


 そしてルークさんが驚くぐらい冷たい声で冷酷に言葉を放った。

 その言葉は予想通りだが俺を引かせるには十分だった。


「多少の犠牲は仕方ないじゃないか」


 一言だけ彼に言うとしたら“ふざけるな”。

 多少の犠牲とは言うが多少の犠牲も出さずに頑張るべきではないか。


「それに君は勘違いをしてる。時間逆行の残り回数二回。それは君に残された回数ではなく全人類に残された回数だ」


 つまりあと二回やったら誰も時間逆行を出来なくなるわけか。

 そんなの知るか。

 俺は海を助ける。

 海と顔しれない誰かなら迷わず海を取ってやる。


「……お前ならそう言うと思ってたぜ」


 その瞬間、時が緩やかになった。

 空間が捻じ曲がりそこから海とアリスを殺した張本人が出てきた。


 そう夜桜だ。


「エニグマ局長ルーク。お前の能力は俺が貰う」


 目に見えない速さで夜桜の右腕がルークさんの胸を貫いた。

 そして手を抜くとそこには大穴が空いていた。


「……さて、これで桃花を殺したクソへの復讐の舞台も整った」


 後ろから憎しみの篭った声が響いた。

 振り向くとそこには佐倉さんがいた。


「悪いが俺達は夜桜側に付く。俺達は娘を殺されてでも忠義を誓うほど人間が出来ちゃいねぇんでな」


 どういう事だ。

 そもそもどうして俺が桃花を殺した事を知っている。


「君の疑問は私が話すわ」


 そして仮面もいる。

 いや、今は仮面を取ってるからその呼び方は正しくないな。

 それにしても仮面は女性だったのか。

 髪は腰まである黒髪ロング。

 どことなく海と似てるな。


「前にも名乗ったように私は西園寺華恋。さて、ネタばらしといきましょうか。まず暗殺姫。あなたが私とチェスをした時に桃花さんの死体を使ったわよね」

「……まさか!」

「そう。その様子を全て録画して彼に見せたわけ。そもそもあのチェスは貴方達が桃花さんを殺した証拠を掴むためのもの」


 チェスとはなんの事だ?

 いや、それはいい。

 とりあえずバレてるって事を理解しとけば問題ない。


「そもそも貴方を殺すだけならあの飛行船の中に毒ガスを充満させるだけで十分だと思わない?」

「……完全に嵌められたってわけですか」


 しかしこの状況は危険でもなんでもないな。

 だってこの場には白愛がいる。

 今、この場にいる敵は三人。

 佐倉さんと夜桜と仮面。

 白愛なら問題なく勝て……


「ハートキャッチ」


 華恋は不気味にそう言い放った。

 その瞬間、白愛が膝を付き倒れた。

 そして起き上がる気配は一向にない。


「おい! 白愛!」

「私の能力は転移だけじゃなくてよ。私は他にも一度だけ視界内にいる人の心臓を握り潰すって言うのを持ってるの」


 まさしくチート。

 そんなの回避不能即死じゃないか。

俺は白愛の体を必死に揺らすが反応はない。

間違いなく死んでる。


「ここで桃花を殺した罪を償え」

「悪いけど貴方は邪魔だから少し黙って」


 その瞬間、俺の足元を茨が這う。

 しかし、その茨は俺では無く佐倉さんに絡みつき拘束した。


「……どういうつもりだ?」

「今のあなたは感情的すぎる。私は少しだけ話をしたいから大人しくしてて」


 華恋は何故、俺を殺さない。

 今なら簡単に殺せるはずだ。


「さて、のんびりとお話しましょうか。語る時は食事中が一番。作ってくれるかしら?」

「どうして俺が……」

「料理お上手なんでしょ?」


 どうしてそうなる。

 それに奴らは勘違いしてねぇか。


「白愛を殺した奴に作る飯なんてねぇよ」

「ふふ。知ってますよ。あなたは時間逆行したいのですよね」


 何故それを知っている!?

 幾ら何でも不気味すぎる。

 考えがまったく読めない。


「今、時間逆行の能力はウチの夜桜が持ってます。そしてこちらの条件をいくつか飲んでいただいたらさせてあげます」


 ……どういう事だ?

 時間逆行したらこいつが不利になるだけではないか。


「過去の私達が困ろうと今の私達には関係ありませんからねぇ」

「……そういうことかよ。それで俺に何をさせる気か?」

「貴方には王の器になっていただこうと思います」


 王の器?

 一体それはなんだ?


「まぁ詳しくはご飯を食べながら話しますよ。会話が盛り上がるご飯を楽しみにしてますよ」


 その言葉を聞いて恐ろしい考えが過ぎった。

 もしかしてコイツらが海を殺したのは違う理由があったのではないか。


「あら、やっと気づきました」

「答えろ。どうして海にあんな事をした」

「簡単ですよ。ああでもしないと貴方は海さんを殺せないでしょ?」


 違う。そうじゃない。

 どうして俺にそんな事をさせたのかが聞きたいのだ。


「貴方には大事な人を自分で殺す辛さを知って欲しかったのよ。それが王の器には必要不可欠だから」

「……ふざけるな! それだったら海を犯す必要も無かっただろ!」


 夜桜は海の初めてを奪ったって言った。

 俺に海を殺させるならそんなことをする必要はない。


「いやいや。海ちゃんみたいな可愛い子が目の前にいて抱くなって言うほうが無理な話だろ」

「……クズが」


 なんだよそれ。

 海が不遇すぎる。


「だからこそ私達は謝罪も込めて、時間逆行させる気がないルークを殺してルークの代わりに君を時間逆行させようって言ってるじゃないか」

「……詭弁だろ」


 たしかに時間逆行すれば海は戻ってくる。

 でも、しかし……


「それに君はアペティを躊躇わず殺せる人間になったじゃないか」


 たしかにその通りだ。

 全てお前らの手の上なのかよ。


「君は王の器としてはまだ未完成。これからもっと色々な事を体験してもらよ」

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