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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
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6話 手合わせ

 お兄さんの質問に答えたのは桃花だった。


「ただの友達」


 しかしお兄さんはまるでどうでもいいかのように返事した。

 おそらく僕が誰であろうが彼には関係ないのだろう。


「そうか。そこの君」

「……なんですか?」

「俺は佐倉雨霧(さくらあまぎり)だ。そして俺と剣で勝負しろ。どこの馬の骨か分からないやつと桃花が一緒にいるのは兄として不安すぎてな」


 クールにそう告げるお兄さん。

 たしかに得体の知れない男と妹が一緒にいるのは不安だろう。

 しかし何故勝負をするのだろうか?


「どうしてですか?」

「剣を交えればその人の本質を理解できるからだ」


 たしかに理にはかなっている。

 流石剣道有段者だ。

 言う事が違う。

 それと隙のない立ち振る舞い。

 間違いなく相当な手練。

 そして、ここで戦いたくなるのは男の性だろうか?

 この試合を僕は引き受けようと思う。

 それに僕だって白愛に戦い方を教わってきた。

 どこまで通用するか試したい。


「分かりました。ルールはどうします?」

「そうだな。先に一本取った方が勝ちでどうだ?」


 それはわかりやすくていいな。

 とにかく竹刀で叩けばいいのだ。


「分かりました。それと僕の名前は神崎空です」

「了解した。これが空の竹刀だ。場所は庭でいいか?」

「問題ありません」


 そう言って彼は僕に竹刀を渡してくる。

 思ってたよりかなり軽い。

 まぁ白愛との時は重りを付けてたし当然か。

 それに場所は広い芝生の庭だ。

 地形を使用した戦いは出来ない。

 それから雨霧さんが防具を用意しようとした。


「防具はいらないです」


 防具なんて重くて邪魔なだけだ。

 そもそも白愛とやる時は痛みに慣れろということで防具なんか付けさせてくれなかった。

 そのため打たれる事に恐怖はない。


「……正気か?」

「はい」

「それじゃあ俺もフェアに防具なしで行かせてもらう」


 そのやり取りを聞いてたのか桃花が心配して声をかけてきた。


「……神崎君!流石にそれは危ないよ!」

「大丈夫だから安心してろ」


 流石に情けないところは見せられないな。

 僕は竹刀を構える。


「でも流石に突きは危ないから無しな」


 雨霧さんが注意をする。

 たしかに突きは危ない。

 下手したら命に関わったりする。


「了解しました」

「準備はいいか?」

「何時でもどうぞ」

「それじゃあ始めるぞ!」


 まさか雨霧さんから動くとは。

 雨霧さんは胴を狙ってくる。

 早いといえば早いが白愛程ではない。

 このくらいなら対処は簡単。

 僕は竹刀で軌道を逸らす。


「なんという技術の高さだ」


 雨霧さんは後ろに下がる。

 しかし僕はそれを見逃さない。

 雨霧さんに接近。

 そして同じように胴を狙う。


「クッ」


 雨霧さんは竹刀で受け止めた。

 それにより鍔迫り合いになる。

  少しだけ竹刀がしなり折れそうだ。


「……空は剣道の経験があるのかい?」

「いいえ。でも剣には扱い慣れてますから」

「なるほど」


 雨霧は一旦引きその直後に踏み込んで来て小手を狙って打ってきたので後ろにバックステップを取り回避する。


「……今のはかなり本気でしたよね?」

「手を抜いたら空に俺の剣は届かないからな。空は間違いなく僕より格上だ」


 実際その通りだろう。

 少しだけ剣を交えて分かった。

 雨霧さんより僕の方が強い。

 まさか自分がここまで強いとは……


「なるほど」

「さて、出し惜しみは出来ないし俺の秘技を見せようか」


 そう言って間合いを詰めてきた。

 それから竹刀で乱舞してくる。

 目にも見えない程の高速の剣を何度も振るう技。

 これ程の速さなら体力もかなり消耗するだろう。

 素人が見たら乱暴に見えるだろう。

 しかしどれも洗礼された動き。

 同格なら対処不可能の決め手になりかねない。

 でも相手が相手だ。


 僕ならこの程度の速さは余裕で目で追える。

 相手の目線や表情から推察するに止むまであと十連撃と言ったところだろうか。

 僕は全て竹刀で受け止めた。

 それにより雨霧さんは驚いた表情を見せた。

 おそらく対処出来るとは思ってなかったのだろう。

 しかし笑っている。

 勝負を楽しんでいるな。

 でも楽しいのは僕も同じだ。


「終わりですか?」

「……これほどとは」


 さて、そろそろこちらも勝負に出るか。

 僕は一気に間合いに入る。


「……ッ!?」


 そして体を狙い左下から斬る。

 雨霧は辛うじて後ろに避ける。

 それでいい。

 本命は次だ。

 僕はそのまま雨霧さんの後ろに回り込む。

 体をヘビのようにくねらせて……

 

「……なんだと!」

「勝負ありです」


 そして竹刀を後ろから背中に軽く当てる。

 一本とは言えないだろう。


「あなたなら実力差がわかりますよね?」


 雨霧さんが冷や汗をかいている。

 間違いなく戦意は喪失しただろう。


「僕は剣道を知りません。これは邪道かもしれませんが僕の勝ちでいいですか?」

「……あぁ。完膚無きままにやられたよ」


 そして互いに握手をする。

 この勝負は僕の勝ちだ。

 勝負が終わり一段落すると桃花から声が溢れる。


「……凄い」

「どうした?」

「お兄ちゃんが……剣で……負けるのなんて始めてみた」

「そうか」


 彼はとっても強かった。

 おそらく大会とかでも敵無しのレベルなのだろう。

 それでも僕の方が強い。


「勝負ですから悪く思わないでくださいね」

「そうだな。そして空は間違いなく桃花の友達に相応しい」


 どうやら僕の事を認めてくれたらしい。

 ありがたく受け取っておこう。


「……神崎君ってあんなに強かったんだね?」

「……言う程か?」

「うん。お兄ちゃんをこんなに簡単に倒すなんて驚いた。私も下手したら負けちゃうかも」


 あれ?

 今、おかしな事を言わなかったか。

 聞き間違いでなければ“私も負けるかも”と言った。

 つまり雨霧さんよりも私の方が強いと言ってるようなものだ……


「また手合わせお願い出来るか?」

「こちらこそ」

「……次は負けないぞ」

「僕も負けるつもりはありませんよ」


 まぁおそらく聞き間違えだ。

 雨霧さんレベルがそうポンポンいるわけがない。

 それにしても彼とはよい友達になれそうだ。

 彼はサッパリとしていて話していて悪い気はしない。

 

「……お兄ちゃん。神崎君を家に入れてもいい?」

「もちろん」

「ありがと!」

「こんな妹だけどよろしく頼むよ」


 そして僕はお兄さんに認められ桃花の家に入っていった。

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