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世界調整  作者: 虹某氏
2章【知】
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43話 発想力

「空様。起きる時間ですよ」


 白愛のそんな声が聞こえる。

 試練は夢の中で行われる。

 だから寝たと同時に試練が始まったのだ。

 そして試練のせいもありあんまり寝た気がしない。


「なぁ白愛」

「どうしました?」

「何でも答えられる人が答えられない問題ってあるか?」


 俺は白愛に助けを求めた。

 あの神は他人に聞くなとは言ってなかった。

 つまり聞いてもいいという事だ。

 もしダメならルールに入れるはずだ。


「どうしてそんな事を?」

「……実は【知】の神の試練に選ばれてその内容がそれなんだ」

「つまり空様はそれにクリアしたら使徒になれるわけですね」

「あぁ」


 俺はあの試練が出来る気がしない。

 彼女に答えられない問題など出せる気がしない。


「そうですね。泳いでる魚を箸で掴む方法でも聞いてみたらどうですか?」

「……本気で言ってるのか?」

「はい」


 こんなの馬鹿げてる。

 よく見て掴むだけで知恵もなにもない。

 おそらくこの程度なら簡単に解かれる。


「そして水槽と熱帯魚と箸を用意して実践させるんです」


 考えさせてそれを行動に移させるわけか。

 俺はおそらく造作もなく掴めるだろう。

 待てよ。

 あの神はどうだ?

 そこまで身体能力が高いとも思えない。


「もし魚を浮かせたり動きを止めたりしたら取ったらそれは泳いでるという前提を覆したから間違った解答って言うんです」


 正直この作戦は馬鹿げてるだろう。

 しかし話を聞けば聞くほどあの神には有効打の気がしてくる。


「空様は難しく考えすぎです。この試練の課題は知恵を張り巡らせる事ではありません。相手の手を封じる事です」


 神の手を封じるために箸という選択権しか与えない。

 俺には思いつきもしなかった発想だ。


「是非、次の時に試してみてください」

「そうするよ」


 自由な発想をする

 それがこの試練のクリア方法だろう。


「そういえば白愛の受けた試練はどんなのだったんだ?」


 俺は興味本位で聞く。

 白愛も使徒だ。

 他の神はどんな試練を出すのか興味ある。

 それに白愛がどうやって突破したのかも。


「私が受けた試練は寝るまでに千人の人を殺せという単純なものでしたよ」


 それは白愛には簡単な課題だろう。

 しかし俺が同じ試練受けたら突破出来ないな。


「それにしても空様はどんな能力を授かるのか想像しただけで自分の事のように楽しみです!」

「まだ試練の合格が決まったわけじゃないぞ」

「大丈夫ですよ。空様なら絶対に合格しますよ」


 少しだけ白愛と話して気が楽になった。

 今回は醜態を晒したが次は晒すつもりはない。


「起きたか?」


 そして親父が起きたかどうか確認しにくる。

 試練の事は一旦忘れよう。

 今は親父を助けることだけを考えよう。


「あぁ」

「さて、行くか」

「そうだな」


 そして俺は部屋を出た。

 その瞬間スーツ姿の親父が目に入った。


「親父! なんだよその格好!」

「いや、やっぱり戦闘するならスーツに限るだろ」

「スーツとか動きにくいだけじゃねぇか!」


 スーツで戦うのはアニメの中だけだ。

 まさかそれを現実でやるとは……


「茶番はそこまでにして準備してください」


 白愛はいつの間にかメイド服に着替えている。

 メイド服は家事とかをする事も配慮されてるからかなり動きやすい部類に入る。

 戦闘服にはもってこいだろう。


「空様も早く着替えてください」

「いや、着替えが……」


 運の悪い事に着替えは持ってきていない。

 ていうか学校から直行だったから手ぶらだ。


「着替えなら私が持ってます」

「いや、どうして持ってるんだよ?」

「基本的に最低限の必需品は収納してますので」


 そういえば白愛の能力で収納が出来たな。

 本当に便利な能力だな。

 すぐに白愛から服を受け取り着替える。

 今回の服は黒色のジャージだ。

 動きやすさもあり目立たないから不意打ちにも優れる。

 見事な采配としか言い様がない。


「準備が出来たし行くぞ」


 俺達は家を後にする。

 今回の動きは簡単だ。

 親父はそのまま飲み会に行く。

 敵が襲ってきた所を白愛が仕留める。

 俺の役目は想定外の出来事の対処だ。

 もしも敵が複数犯なら白愛が来るまで持ちこたえたりするのが俺の役割だ。

 そのため俺だけは別行動だ。


 今回は屋根の上で見張る。

 かなり目立ちそうだが黒一色って事もあり闇に紛れて意外と目立たない。


「結局、俺が一番楽な役割か」


 そう呟き店内を双眼鏡で除いた。

 白愛は一般客に紛れて親父に襲撃があったら対処出来るようにしてる。

 何故かメイド服なのに周りから浮いていない。


「これで上手くいくといいが」


 出来る事はすべてやったつもりだ。

 しかし不確定要素が多すぎて不安だ。


「上手くいったら困るのだがな」


 その声と共に俺に大量の蝙蝠が襲いかかってきた。

 俺は咄嗟にナイフで全て切り落としてきた。

 これは間違いなく敵の襲撃だ。

 どうやら複数犯だったらしい。

 そして俺は後ろにいる人物に話しかける。


「お前が今回の事件の犯人か?」

「まぁそのようなところだ」


 俺は振り向け表情を見る。

 顔はかなり老けているな。

 髪は白髪で血のような赤い目。

 そして何よりそいつの放つプレッシャーは尋常ではない。

 間違いなくかなりの強敵だ。

 おそらく親父、いやそれ以上だ。


「……お前は何者だ?」


 恐る恐る問いかける。

 かなり参ったな。

 今の俺が勝てる相手ではない。

 運が良くて時間稼ぎと言ったところだ。


「アルカード・ミカエラ。魔王の吸血鬼だ」


 その男は吸血鬼と名乗った。

 まさか人間ではないのは想定外だ。

 俺は必死に吸血鬼について思い出す。

 ニンニクと十字架が苦手で鏡に映らず日光で死ぬ。

 どこまで本当か分からない。

 出来れば合っていてほしいな。


「さて、人間。遺言を言うなら今のうちだぞ」



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