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世界調整  作者: 虹某氏
2章【知】
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42話 試練«開幕»

 たしかに白愛の言う通りだ。

 敵はどうやって俺達の関係性を知ったのだろう

 もしかしたら敵はずっと俺達の身近にいたのではないだろうか。

 しかしこの話題は親父が遮った。


「そんな事はどうでもいい。捕まえれば僕の能力ですべて分かるだろ」

「それもそうですね」


 もしかしたら白愛が既にこの街にいる事も知っていて対策を立てられてるかもしれないな。

 それも踏まえた上で計画を立てなければ。


「とりあえず僕に攻めてくるのは確定してるわけだ。深く考えずに攻めてきたらそこを返り討ちにしよう」

「そうですね」


 結局そうするしかないな。

 変に作戦立ててそれに縛られるよりはよっぽど良いか。


「お父様はもしも私達が来なかったら何をする予定でした?」

「今日は街の友達と飲みに行く予定だったな」


 おそらくその帰りに襲われたのだろう。

 飲んだという事は酒で酔っ払っていて狙うならこの上ないタイミングのはずだ。


「なんとなく狙われたタイミングは検討つきました。お父様は予定通り飲み会に行ってもらって構いませんよ」

「おい! 白愛!」


 親父を守るならずっと家の中にいた方が安全のはずだ。

 何故外に出る?


「今回で一番最悪のパターンは襲ってこないというパターンです。襲ってこなければ敵の素性が分かりません」


 たしかにそれも一理ある。

 襲ってこなければ捕まえて尋問する事も不可能。

 しかし襲ってきて親父が奪われるのも最悪だ。

 やはりここは守りを固めるべきなのではないだろうか。


「いや、心配するな。敵の襲撃があるって分かってさえいればどうにでもなる」


 考えてみれば前は完全に不意打ちだったのか。

 でも今回は来るって分かっている。


「それじゃあ私達は夜に備えて寝ますね」

「そうか。お前達は一睡もしないであの山を越えたんだもんな」


 寝るという言葉で体が思い出したかのように眠気が一気に襲ってきた。

 考えてみたらあんな険しい山も超えて体力を凄く使い疲れてるはずだ。

 眠くならないわけがない。


「おやすみなさい」

「おう。夕方には起こすからそれまでしっかり寝ときな」

「それじゃあ空様。寝ましょう」

「そうだな」


 俺達はそのまま親父に寝室を借りて移動した。

 特にどうってことのない普通の寝室だ。

 そして俺達はあっという間に眠りについた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 目を覚ますと真っ暗な部屋にいた。

 一体ここはどこだ?

 白愛はどこに行った?


「いや、見てて中々面白かった」


 そんな言葉と共に幼女が現れる。

 そして俺はその幼女の事が記憶にある。

 彼女は知の神だ。

【知】の試練を与えた張本人でもある。

 たしか試練の内容は答えられない事を問題を出せだった。


「面白いってどういうことだ?」

「私達、神は人間が悩むのを見るのが好きなのさ」


 なんという趣味の悪さだ。

 いや、神なんてそんなものか。


「それで問題は思いついたかな?」

「その前に細かいところを教えてくれ。例えば問題を出せる回数とかだ」

「そういえば言ってなかったね。全部で試験は三回で問題の回数制限は無しだけどつまらない問題だったらその時点でその回は終了。ちなみに試験は一回三十分だよ。他になにかある?」


 それだけ分かれば十分だ。

 どんなに長くてもこの試練は三日で終わる。

 そして回数制限がないのは有難い。

 ここは深く考えず『君が答えられない質問はなんだ?』と聞いて次にその質問をぶつけてもいいが“つまらない”と言われる可能性も高いな。


「いいね。こうやって頭を使う子は大好きだよ」


 今のはヒントなのだろうか。

 もう考えても仕方ない。

 とりあえず思いついたのを言おう。


「次に俺がなんて言うか答えよ」


 これで俺が【知】の神が出した答えと違う事を言えばそれでクリアだ。

 しかしそんなに上手くはいかないだろう。


「眠い」


 つまり次に『眠い』と言わなければ試練はクリアだ。

 しかし……


「眠い」

「はい! 私の勝ち!」


 俺は何故か『眠い』と言ってしまった。

 口が勝手に動いたのだ。


「この空間では思考以外は全て私の思うまま! つまり今みたいに口を勝手に動かす事も出来るよ!」


 やっぱりその程度の問題じゃ無理か。

 それにしてもこの試練は本当に突破出来るものなのだろうか?

 考えても仕方ない。

 次の問題を出そう。


「どんな盾でも突き破る矛とどんな矛でも防ぐ盾。もしもその両方がぶつかったら勝つのはどっちだ?」


 昔からある有名な問題だ。

 この問題は矛盾している。

 正解を出すなんて不可能だ。


「ちなみに両者に嘘はないものとする」


 もしも矛と言ったら盾の方は嘘になる。

 逆もしかりだ。


「そんなのは簡単だよ。作られてから時間が経過してない方だよ。二つ共同じ性能なら時間が経って脆くなってる方が負けるでしょ?」


 たしかに彼女の言う通りだ。

 まさか矛盾問題をそんな方法で解くとは……

 そして俺はそれを間違ってるとは言えなかった。


「次の問題は?」


 そして彼女は次の問題を要求する。

 おそらく彼女はどんな問題でも答える。

 これはどんな問題にも答えられる者に答えられない問題を出すという一種の矛盾だ。


「チェスでチェックメイトをかけられた状態から勝つ方法は?」


 そんなのは絶対にありえない。

 チェックメイトは勝利宣言だ。

 でも俺はチェックメイト状態から一つだけ勝つ方法を知っている。


「相手を物理的に殺して次の手を打たせなければいいんだよ」


 彼女も俺が用意した模範解答を言う。

 こんな知恵者が答えられない問題を出すのは間違いなく無理ゲーに近い。


「もうおしまい?」


 彼女がそう問いかける。

 そして俺は必死に頭を回す。

 考えろ。

 絶対に彼女が答えられない問題があるはずだ。


「俺の血液型は……」

「A型」


 ダメだ。

 やっぱりこの程度の情報はバレている。

 おそらく身長とか出しても無駄だ。

 でもやらないよりはマシだ。


「俺が最後に食べた物は?」

「炒飯」


 そういえば彼女は何でも答えられるよな。

 ならあれも答えられるのではないだろうか?


「前の世界で親父の体を奪った奴の能力は?」


 今の俺が最も欲しい情報だ。

 おそらく俺が答えを知らなくても彼女は答えられる。

 この試練はどんな問題でも答えられる人に答えられない問題を出せというもの。

 それはつまり知りたい事を知る事も出来るというわけだ。

 なら今回の回は捨てて情報収集に徹しよう。

 しかし彼女の答えは予想外のものだった。


「その問題はつまらない」


 どうやら地雷を踏んでしまったらしい。

 表情から察するに彼女は完全に俺から興味をなくしたようだ。

 彼女の冷たい目が心に刺さる。


「出題者が答えを知らない問題なんてこの上なく最低。どうしてそんなつまらないことをするのかしら?」

「これが最善手だと判断したからだ」


 彼女が冷めきった声でそう告げる。

 しかし俺も負けず、言い返す。


「私は賢者を待ってるの。それなのに貴方は問題を放り投げて知識欲を優先した。本当につまらない人間」


 彼女の姿が透けていく。

 試練が終わるからだろう。


「……待ってくれ!」

「次はこんな事しないようにね」


 つまらない問題を出したらこの回は終わりって言い方をしていた。

 一応まだチャンスは残っているのか。

 彼女はそのまま消えていった。

 それから間もなく真っ暗の空間も色付き始めた。


 俺の一回目の試練は“不合格”で終わったのだ。

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