36話 再戦
俺はたしかに時間逆行をしたはずだ。
抉った目も折れた骨も完全に回復している。
今いるのは真っ暗闇の空間だ。
俺はそのまま時間逆行をするとばかり思っていた。
しかし今はこのようにわけのわからない空間にいる。
おそらく精神世界だろう。
さて、どうしたものか。
「……ねぇ」
それにしてもここは何もない。
ていうかここで何かしないと時間逆行出来ないのか?
「ねぇってば!」
そう言われて気づく。
誰かが俺を呼んでたな。
「やっと気づいてくれたね!」
振り向くとそこには幼女がいた。
紫色の縦ロールという派手な幼女だ。
そして覇気が今まであった誰よりも強い。
その覇気には畏怖すら覚える。
明らかに格上だと伝わってくる。
「私は知の神よ」
そう幼女は言った。
その一言で全て納得する。
間違いなく彼女は神と呼ぶのに相応しい存在だ。
「君は時間を遡りやり直す。結構な事だ。しかしそれは無限というわけではない。残された回数は二回。それを忘れないように」
それは初耳だ。
ルークさんはそんな事を一言も言ってなかった。
彼がそれを知らなかったとは思えない。
おそらく故意的に隠した。
「情報は最強の武器よ。知らなければ時には損をする事もありえる」
その通りだ。
そして次はかなり情報が多い。
桃花が狂気化する事。
俺に妹がいた事。
それらは全て予想も出来ないだろう。
しかし次はそれらを知った状態で始められる。
かなりのアドバンテージだ。
「さて、メインの使徒について話しましょう」
そして衝突に幼女の講座が始まった。
どうして使徒の話をするのだろうか?
それに彼女はそれを本題と言った。
まぁ聞いても損があるわけではないし聞いておこう。
「まず使徒になると超能力を授かるっていうのはいいわよね」
「はい」
それが使徒になるメリットだ。
超能力は魔法みたいに血が無くても使える。
そして何時でも使える。
かなり便利なものだ。
「それと使徒同士は互いに使徒かどうか分かる」
極端に言えば超能力持ちかどうか分かる。
もしも使徒の反応があればその人は超能力を使えるって事だ。
それは相手の奇襲を避けるのにも役立つだろう。
「でも、あなたはどうやって使徒になるか知らないでしょ?」
「詳しくは知りません」
ルークさんは突然夢の中で言われると言っていた。
しかし本当にそれだけとは思えない。
「私達だって無作為に選んでるわけじゃないんだよ。神が気に入った人に試練を与えて使徒にしてるの」
つまりリーダーシップの強い人がいたらその人は【王】の試練を受けれるのか。
そしてそれに合格すれば使徒になるってわけか。
まぁ王の神が存在すればの話だが。
しかしそれだと疑問点が残る。
「それじゃあなんで桃花が【愛】の使徒なんだ?」
桃花が使徒の理由だ。
俺はあれが愛とは思えない。
あれは狂気だ。
【狂】の使徒の方がよっぽどお似合いだ
「愛の神と佐倉桃花の考え方は非常によく似てる。両者とも愛は狂気だと考え愛は最も尊い感情だと考えている。だから彼女なのよ」
つまり神は彼女の愛を肯定するってわけか。
あれこそが正しい愛だと言うのか。
あまりにもふざけてやがる。
「さて、君の言いたい事も分かるけどそろそも本題に入るよ」
話の流れが変わった。
その一言でかつてない緊迫感が訪れる。
「神崎空。 君に【知】の使徒になるための試練を与えようと思うの」
たしか試練を合格すれば使徒になるって話か。
使徒になれば超能力を一つ使えるようになる。
そしたらあの時に海を助けられたかもしれない。
しかしどうして俺なのだろうか?
「君には知恵がある。 今回だって君は目を抉って佐倉桃花の気を引くという知恵をみせた」
彼女にはアレを知恵と呼べるのか。
まぁこの際はなんでもいい。
大事なのは試練の内容だ。
とりあえず使徒になれるのはありがたい。
「それに【調停】の使徒に報酬は何でも良いと言われた時に君は小の世界の知識を求めた。やはり私の使徒にピッタリだ」
つまり知識欲の権化といいたいのか。
傍から見たらそうなるよな。
「そして試練の内容は“私が与える試練は答えられない問題を出す事”だ。詳しい事はまた会った時に言うよ」
それは間違いなく無理ゲーだろう。
相手は【知】の神だ。
知識の塊と言っても過言ではない。
そんな相手にクイズで対抗するなんて無理ゲーに近いだろう。
しかしデメリットはない。
俺は喜んでそれを受けよう。
「次に会う時っていつだ?」
「君が寝た時だね」
夢の中で試練は行われるのか。
それでルークさんは夢の中で授かると言ったのか。
「君は全能のパラドックスを知ってるかい?」
「あぁ」
全能のパラドックス。
それは全知全能が全知全能じゃない事の証明だ。
具体的に言うと自分の持ち上げられない石は作れない。
なぜなら持ち上げられない時点でそいつは全知全能ではない。
かと言ってそれを作れなければ全知全能ではない事の証明になってしまう。
「私はそういった知恵を求めてる。どんな手を使ってもいいから私を負かせてみなさい」
そして幼女は消えていった。
彼女の話で試練の方向性が見えた。
これは矛盾とか逆説を利用して彼女を追い詰める試練だ。
どんな矛盾を用意してどんな逆説を使い追い込むかを彼女は求めてる。
【知】の試練にはピッタリな内容だ。
勝利条件はたった一つ。
彼女を楽しませる事だ。
そのために知恵を振り絞るのだ。
それからすぐに景色が見慣れたものになった。
その景色は俺のベッドから見える景色だ。
「空様。遅刻しますよ」
とても愛しい声が聞こえる。
二度と聞けないと思った声。
白愛の声だ。
時間逆行には無事成功したらしい。
「白愛」
「なんですか?」
「呼んだだけだ」
「そうですか」
もう失いたくない。
必ず守ってみせる。
そのためには力が欲しい。
だから俺は試練を合格して【知】の使徒になってみせる。
今度こそ海も白愛も殺させない!
もう迷わない。
使えるものは全て使う。
それが手段であろうと神であろうと。
俺はもう一度心に強く誓う。
そして俺の世界への再戦が始まった。




