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世界調整  作者: 虹某氏
6章【生命】
303/305

295話 五人目

 俺達の父親、神崎陸。

 そして俺達のはとこで現代の魔王、神崎真央。

 それと俺、神崎空にその双子の妹の神崎海。

 現在の神崎家はその四人である。

 しかし現在、神崎麻衣という謎の人物が名前だけ現れたのだ。

 恐らくその白いゴスロリの女性が神崎麻衣と考えて間違いないだろう。

 しかし真央とどこまでも対象的な見た目。

 彼女が真央と無関係とも考えにくい。


「……白の魔王……ですかね」

「それなら俺達は何色の魔王になるんだろうな」

「……青ですかね?」

「冗談だから気にしないでくれ」


 神崎麻衣。

 彼女の狙いはなんなのだろうか。

 このまま絡むことなく終わりだといいが彼女からのメッセージ“近いうちに会おう”を考えると間違いなくこれから絡むことになるだろうな。

 真央でさえ手一杯だというのに……


「しかし今は麻衣の事を考えてもしかたないんじゃないですか。だって私達は麻衣って人のことを知らないですし」

「そうだな」

「今は闇桃花の対処をするのが先決です。それに麻衣のあの写真が私達に向けたものとも限りませんしね」


 とりあえず今は帰ろう。

 考えるのはそれからでもいいだろう。


「……もしも神崎麻衣が関わってきたらその時に考えればいいんですよ。ここは見なかったことにしとく方が賢明です」

「そう……だな……」


 少し納得はいかないが他になにか出来るということでもないのだ。

 だったら今回は……


「ふーん。そっか誰を警戒してるのかな?」


 そんな時だった。

 後ろからゾッとする声が聞こえる。

 俺達は思わず冷や汗をかいていた。


「海。振り返らず逃げろ」

「分かり……」

「私が逃がすわけないじゃん」


 上から闇の杭が落ちてくる。

 それを間一髪で回避する。

 それから俺は振り返り彼女の姿を目に焼き付ける。


「……闇桃花!」

「空君! 私だけの空君! 今、会いに来た……いいえ、愛に来たから待っててね!」

「クソっ!」


 下から氷柱を出して闇桃花を凍らせる。

 しかしそんな小手先の技はすぐ突破される。

 そんなことは分かってるんだ。

 だが今は数秒を稼げればいい!


「随分と私を安く見るんだね」

「走れ!」


 そう俺が叫ぶと同時に海が走る。

 それに合わせて俺も走り……


「白愛。早く走れ!」

「空様。海様。今までありがとうございました」

「なにいってんだよ!」

「闇桃花相手に全員生きて帰ろうなんて無理です。だから私が時間を稼ぎます」


 迷ってる時間はねぇか!

 ならここでやるしかねぇ。


「バカ言うな! それなら三人でここで戦う! 数十秒の隙を作ってその間にジャバウォックで逃げる。ジャバウォックの足の速さなら逃げれるはずだ」

「空様! それは……」

「お前は俺が死なせねぇよ。白愛」


 それに逃げたとしてもどうせ追ってくる。

 ただエニグマ総本部ならルプスがいるからまだどうにかなるだろうというのが俺達の考え。

 そして白愛がエニグマ総本部まで逃げる時間を稼ぐと言い始めたがそれは認めない。

 誰一人殺すことなくここは抜ける!


「グレイプニル!」


 鎖を闇桃花へと飛ばす。

 しかしそれを身体を捻り簡単に回避。

 その一連の動作から嫌という程、彼女は桃花であり平均を凌駕する身体能力を保持してると分からされてしまい下唇を強く噛む。

 だが悔しがる暇なんてない!


「ダン・アイス・プファール!」

暗黒の杭嵐ダークネスプファールハリケーン


 氷と闇の杭の撃ち合いが始まる。

 互いが互いを落としていく。

 まるで銃撃戦のようだ。

 そんな嵐の中で俺は闇桃花の側に走り込んだ。


「へぇー」

「ジャッジ・パンチ!」

「衝撃反転」


 俺の懇親の一撃が闇桃花に当たる。

 しかし闇桃花の方が一枚上手。

 その俺の一撃の衝撃波がそのまま俺に跳ね返る。

 そして体が吹き飛んだ。


「ぐはっ!」

「強いよ! 空君強いよ! そんな空君が大好き! さすが私だけの空君! それでこそ私が好きになって人だよ! 愛してる! ここで式を挙げよ?」


 そしてその隙をついて白愛が闇桃花に近付いた。

 闇桃花の首にそのままナイフが……


「ねぇ、雑魚は黙ろっか?」


 そう思った矢先だった。

 闇桃花がまるでバターをナイフで切るように軽く手を振るった。

 それにより白愛の首が……


「させませんよ!」


 白愛の首が落ちる。

 そう思った矢先だった。

 闇桃花の手はすんでのところで少しズレた。

 その結果として白愛は左腕がダラりと落とされるも何とか命は取り留める。


「ちっ!」

「大丈夫ですか!」

「ありがとうございます」


 その落ちた左腕からは白い骨が剥き出しになり、また黄色い脂肪もダラりと垂れていて変な生々しさを放っていた。

 そしてその落ちた手から血が留めなく溢れてちょっとした血の湖を作るまでになっている。


「癒……」

「真空空間」


 息ができない?

 なんだこれは……

 そうか! 周りの空気を全て抜いたのか……

 そうすれば音は振動しない。

 だから何も聞こえることはない。

 癒しと言っても白愛にその音を伝えねばならない。

 だがこんな状態じゃ……


「誰!?」


 そんな時だった。

 横から闇桃花に一撃が入る。

 それにより闇桃花にやられた真空空間が解除。


「レイ!」

「昨日の敵は今日の友。お前らピンチそうだから助けに来てやったぜ」


 なぜ彼がここにいる?

 だけど今は好都合だ。

 彼にとりあえず感謝しよう。


「あなた、私の家に仕えてたよね? 獣人族の始祖さん」

「まぁ今回は俺の独断よ」

「ふーん。死んで」


 闇色の杭がレイに襲いかかる。

 しかしレイは動揺の一つも見せないでそれを大剣の腹を盾のようにして全て守った。


「早く逃げな。五分は稼いでやるよ」

「すまん!」

「ただ、こいつ転移持ちだろ。恐らく途中でいきなりお前達の方に飛んでくるから警戒は怠るなよ」


 俺達は彼に感謝を述べつつそのままジャバウォックに戻っていた。

 そうしてエニグマ総本部に帰還しようとする。

 だが彼の言ってた通り闇桃花は俺の元への転移がある。

 恐らく途中でもう一度……


「来ないならこちらから行くぜ」


 最後に見たのは剣の雨だった。

 激しい剣雨が闇桃花を襲う。

 そんな光景を横目で見ながら俺達はその場から撤退することしか出来なかった。


「とりあえず治すぞ。癒せ」

「……すみません」

「気にすんな」


 ジャバウォックをそのまま走らせる。

 しかしここにレイが来てくれて助かった。

 もしも彼がいなければ全滅は確実だった。


「とりあえず向こうでルプスと協力して何としてでも倒すぞ」

「ぶっちゃけ勝てる気がしないんですが」

「安心しろ。俺もだ」


 闇桃花との差は歴然。

 ルプス抜きでは間違いなく勝てない。

 だからとりあえず今は撤退だ。


「海。怪我はないか?」

「お兄様こそありませんか?」

「おれは大丈夫だ」

「そうですか」


 それから特に話すことなくジャバウォックは進む。

 ただ全員が闇桃花を警戒している。

 なんと言っても転移でいつ現れてもおかしくないのが今の現状であるからだ。

 しかしシャーロットちゃんを置いてきたのも少し気掛かりではある。

 幽霊だしダメージを負うことはないと思うが……


「すみません……私、役に立てなくて……」

「だから気にすんなって」


 白愛が申し訳なさそうにそう言う。

 ぶっちゃけ今回ばかりは仕方ない。

 なんて言っても相手が強過ぎる。

 ここには誰一人として責められる人はいねぇよ。

 むしろ俺こそ誰も守れなくて……


「グギァァァァ!」

「どうしたジャバウォック!?」


 ジャバウォックが空を舞った。

 その瞬間、地面から闇色のビームが飛んでくる。

 そのビームは凄い熱量を持っており南極の氷を容易くドロドロに溶かしていく。


「空君! 空君! 空君! 空君! 空君! 空君! 空君! 空君! 空君! 空君!」

「闇桃花!」

「来て。悪魔さん」


 闇桃花がやってくる。

 まさかそんな早く来るとは予想外だ。

 そして闇桃花の後ろから醜悪な魔物が現れる。

 一つは人間の舌に山羊の角、豚の足、マグロの目玉の付いた醜悪な生命体、もう一つもそれに負けず劣らずで手が幼女の生首、体の皮膚が人の小腸で足の骨だけが剥き出しのティラノサウルスのような魔物。

 そんな見てるだけで吐き気のするのが現れる。


「グシャッ! グシャァァァ!」


 しかしそれらは全てジャバウォックが噛み砕く。

 そしてジャバウォックはそのままバベルの塔を忠実に目指していく。


「まだまだストックはあるよ」


 悪魔などジャバウォックは気にも止めずにそのまま一直線に進んでいく。

 悪魔を容易く倒すその様からジャバウォックの強さが見て分かる。

 流石はSSランクと言ったところか……

 そう思った矢先だった。


「ちょっとウザイかな」


 ジャバウォックの翼が風に切り落とされる。

 闇桃花の方を見るとソロモンの指輪を光らせていた。

 間違いなく闇桃花の攻撃だ。


「たかがトカゲが調子に乗らない方がいいと私は思うな」

「癒せ! ジャバウォック。止まるんじゃねぇよ!」

「グシャァァァ!」


 俺は無理矢理、ジャバウォックの翼を治してそのまま走らせていく。

 もう少しでルプスがいる元まで行ける!


「ツ・グルンデ!!」


 全てを破壊する混沌の闇玉。

 俺の最大の必殺技。

 それを闇桃花に叩き込まんと飛ばした。


「素敵! さすが私の空君!」

「そうかよ……」

「でも空君の攻撃じゃ私を落とすには役不足だよ」


 そう言うと闇桃花もそっくりそのまま闇玉。

 否、俺のよりも倍近く大きな闇玉を作り出した。

 クソ! 完全に俺の上位互換かよ!


「言ったよね? 空君に出来て私にできないことはないないって」

「海! 白愛! そのままルプスを呼びに行け!」

「分かりました!」


 俺は地面に飛び降りる。

 ここで俺が闇桃花を抑える!

 次こそは負けない!


「空君。志って大事だよ。時間を稼ぐって感じで戦うよりも絶対に勝つって感じで戦わないと発揮出来る力も発揮出来ないよ?」

「そうかよ……」

「空君の全力を見せて?」


 あれをやるしかない……

 出来れば避けたかったが……


「グレイプニル、脳強化(ブレインブースト)!」

「へぇー。脳のブレーキを解除か。それに鬼化もしてるから相当高い運動能力だよね」


 俺は駆け出した。

 足にはもちろん絶・加速(ゼツアクセル)をかけていて音速を超える蹴りが闇桃花を襲った。

 しかしそれを闇桃花は容易く回避。

 今のでハッキリ分かる。

 闇桃花を俺の全力を超える身体能力を誇っている。

 だけど負けていい理由にはならない!


「そこそこ速いよ! 凄いよ! 空君!」

「ツ・グルンデ・マシンガン!」


 闇玉をもっと小さく!

 そして言葉通りマシンガンのように飛ばしていく。

 しかし闇桃花は全て容易く躱していく。


「アイス・ロック!」


 だが、その隙を突いて足元の氷を変貌させる。

 それにより闇桃花の動きを奪っていく。


「詰めが甘いかな」


 しかし容易くその束縛からは逃れる。

 俺はもちろんすぐに追撃に入る。

 反撃の隙を与えるな!

 与えることは死に直結するぞ!


「ダン・アイス・アブソリュート・ソード・アポカリプス!」

「氷の剣ね」


 それで闇桃花の首を跳ねようと振るう。

 しかし闇桃花はこどもをあやすように全て回避。

 俺の攻撃は掠りすらしなかった。


「そろそろ脳強化(ブレインブースト)が限界なんじゃないかな」


 鼻や目からから血がタラリと垂れてくる。

 頭もボーとする。

 だけど……


「……グハッ」


 そう思った矢先だった。

 俺は耐えきれず何の攻撃も受けてないに関わらず吐血してしまった。


「脳を酷使したらそうなるよね。大丈夫だよ。私がしっかり看病してあげるから」


 闇桃花は攻撃を一切しなかった。

 全て守りに入っていた。

 それなのに俺はダメージ一つ負わせられない。

 完全に舐めてやがる……

 もしも殺す気なら彼女は何時でも俺を殺せた……


「グレイプニル!」


 俺は闇桃花に最後の力を振り絞りグレイプニルを飛ばしていく。

 しかし闇桃花はそれを回避しなかった。

 むしろ逆に受け止め、それを使いそのまめ俺を地面に叩きつけた。


「あとで迎えに来るから少しの間だけ横になっててね」


 頼む……

 誰でもいいから……

 闇桃花を倒してくれ!

 俺は心の底から強く願った。

 その時だった。


 ――目の前を水色の彗星が走り抜けた。


「嘘!?」


 闇桃花が身体を逸らすも頬に攻撃が掠る。

 初めて闇桃花から赤い血が流れた。


「やっと逢えたね。私」

「あなたは……」

「佐倉桃花。空君のお嫁さんにしてあなたの愚行を止める者の名前だよ」

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