表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界調整  作者: 虹某氏
6章【生命】
295/305

287話 バベルの塔

「ここはハリボテだろ?」

「えぇ。あなたの言う通りよ」


 ちょっと考えれば分かるだろ。

 まったく……

 しかしなんでこんなに頭が冴えたのだろうか。


「ただ修行していたわけじゃない。ずっと色々な条件を試していたんだよ。このスペースだけ発動しないとか威力によって変わるとか色々とシュミレーションしてな」

「……君達なら本当のエニグマ総本部に案内してもいいいかもね。おいで」


 しかしずっと騙していたわけだ。

 恐らくここで仕事も行っていた。

 それはアリシアがここにいることから証明するのは容易いだろう。

 なぜって言われたらハリボテに常にトップがいるとは考えにくいからな。


「その前に一つ聞かせろ」

「なに?」

「何故そんな嘘をついた?」

「能力が使えないって思い込むだけでも意味があるものよ」


 そういうことか。

 思い込みの力は偉大だし悪くは無い手だ。

 やはり彼女はやり手ではないだろうか。


「さてそれじゃあ行きましょうか」

「バベルの塔か」

「ええ。その前に一つだけ説明しておかないとね」


 アリシアがこちらにウインクを飛ばす。

 一体何を説明するつもりだろうか……


「このエニグマ総本部はバベルの塔の真上に立っているわ。バベルの塔は何千年前からある塔よ。それこそ南極に氷が出来るから前からね」

「つまり氷に埋もれてるってことか?」

「えぇ。そうよ」


 つまり地下がバベルの塔。

 そういうことなんだな。


「仕事はもちろんバベルの塔の中で行っているわ。でもここはハリボテといえど座標はバベルの塔と同じ。すなわち移動なんてすぐに出来るから基本的にここにいても同じなのよ」


 とりあえずカラクリは分かった。

 しかし地下ということはこことあまり大差はないだろうな。

 つまり行く意味がそこまである訳では無いということを遠回しに意味してしまっている。


「ただ君はお留守番ね」


 それからアリシアは冥府の笛に語りかける。

 たしかに彼女はお留守番だな。

 中では一切の能力を使えない。

 つまり彼女が入ったら擬人化能力が解除されてただの笛に戻ってしまうだろう。


「そういえばルプスにグレイプニルを触れさせたことは無かったのかしら?」

「言われてみれば無いな」

「それで正解よ。触れさせたらフェンリルに魂が戻っちゃうから」


 だろうな。

 ルプスが触れないようにしてたのもそれを理解してのことなのだろうか。


「バベルの塔の高さは約2500mでここの氷の暑さはたしか2839mだから残りの地下339mまでは増築した普通の塔だから」

「バベルの塔は何層になってるんだ?」

「面白いことを聞くわね。ピッタリ百層になってるわよ」


 ピッタリ百層になっているのか。

 百回建ての高い塔だという認識でいいか。

 そして百層ということは一層当たりの高さは25mと言ったところ。

 25mと言えば七階建てのビルが入るか入らないかの大きさという認識でいいだろう。

 これだけの高さの天井を確保している。

 その事実だけでも頭がクラクラしてくる。

 また、全長で計算するなら七百階建てのビルと同じ高さであり、日本で一番高いビルですら六十階建ての300mだと言うのだからそのスケールの凄さが良くわかるだろう。

 そして300mと言ってもこのバベルの塔では12階層までしか該当しないという事実。

 もしも本来のビルと同じ天井高、ここではそれを5mと仮定してそれで作っていたら約500階層だ。

 ちょっと本格的に頭が痛くなってきたぞ……


「それで一層辺りの面積がどのくらいか聞いてもいいか?」

「そうね……大体3500坪かしら」

「大体テニスコート17個分って言ったところか」


 こりゃまた随分と広いところだな。

 ほんとに化け物タワーだ。


「もっとも大きすぎてエニグマでも3階層までしか使えてないけどね」

「もったいねぇな」

「広すぎるのよ……」


 まぁ俺も使いこなせる気はしねぇな。

 だがあれをやるならもってこいの場所だな。

 問題はどうやって運ぶかなのだが……


「とりあえず百聞は一見にしかずだ。行ってみるか」

「えぇ。そうね。案内するわ」


 だがその前に一つだけやっておかないとな。

 俺達は現在、海を通じて真央に監視されてる。

 それは少し面白くない。


「海」

「なんですか?」

「ちょっと痛いの我慢しろよ」


 俺は海の頭をかち割り脳に手を入れる。

 そしてそのままマイクロチップを取り破壊。

 それかりすぐに手を抜き“癒せ”と発音して傷を塞いでいく。


「……っ」

「よく頑張ったな」


 さて、これでやっと真央に情報を吸い取られることは無くなった。

 ちゃんと真央にバベルの塔の大きさという最低限の情報だけは伝授することにも成功した。

 ここから先は企業秘密といこうか。

 そうして一仕事終えた俺達はアリシアに案内されるがままにバベルの塔へと来た。

 そこはどこにでもある普通の建物の中身と変わりばえしないで少しつまらないものだった。

 地面も階段も普通にコンクリート製だ。


「……海。ちょっといいか」

「なんですか」

「少し思いっきり地面を足で叩いてくれ。それこそバベルの塔を壊すイメージで」

「嫌ですよ。そんなの」

「そこを頼む! あとで美味しいプリン作ってやるから。な?」

「仕方ないですね」


 海が足を振り上げて地面にかかと落としを入れた。

 海ほどの脚力なら間違いなくコンクリートくらいなら壊せるだろう。

 しかし……


「痛っ!」

「無駄よ。バベルの塔はどうやっても壊せないわ」


 やっぱりか……

 恐らく神器というものはどうやっても傷つかないように出来ているのだろう。

 もしも核兵器を落とそうが傷一つ付かないだろう。

 そんな外部からの攻撃を絶対に防ぐ塔。

 大きさ的に人も充分に収納出来る。

 これは動かすことさえ出来れば一種のフィルターとして使うことも出来るな。

 まぁ動かせない以上は夢物語だが……


「……火も使えないか」


 指を鳴らすが一向に火は出てこない。

 いつもはこれで出てくるんだが……

 やはり能力は封じられているか。


「……ならこれは?」


 ポケットからエメラルドを投げる。

 すると軽い風が巻き起こった。

 なるほど。ここでは魔法なら使えるのか。

 しかし能力は使えないという場所か。

 そしてどうやっても絶対に壊れない。

 これは少し面白いことを思い付いたぞ。


「海。闇桃花に勝つ方法を思い付いたぞ」

「なんですか?」

「ここに閉じ込めるんだ。闇桃花の転移もここなら使えないし壁も壊そうとしても壊せない。ここに閉じ込めて存在を忘れて暮らすのが一番だと思わねぇか?」

「……たしかに!」


 そのまま餓死させたいが、そうもいかない。

 闇桃花はあのグロテスクな悪魔を呼べる。

 最悪は悪魔を喰ってでも生き延びるだろう。

 そして水はいくらでも魔法で出せる。

 まぁ殺すとしたら闇桃花だけ閉じ込めてここを毒ガスで充満させて殺すのが一番だな。

 ちょっとそれが出来るのか調べるために換気について調べないとならないのが面倒だが……


「問題はどうやって誘き寄せるか」


 ここに闇桃花だけを閉じ込めるという局面。

 その時に俺達が中にいては意味が無い。

 つまり中で闇桃花と戦って隙を突いて逃げる。

 問題はどうやって逃げるかだ。


「問題はもう一つあるわ」

「あの入口か」

「そうよ。入口だけは中からでも開けるようになってる。もしもコンクリートとかで塗り固めても闇桃花レベルなら容易く破壊出来るでしょうね」


 裏を返せば入口さえどうにかすればいいんだろ。

 ただその入口をどうにかする手段が見当たらないからお手上げ状態なのだが……


「古典的ですが上から重りでも置きます?」

「闇桃花が重りくらいで止まると思うか?」

「それもそうですね……」


 ただバベルの塔の中では転移出来ない。

 つまり転移先にバベルの塔の指定も出来ない。

 それはここに俺がいれば闇桃花は転移での不意打ちが出来ないということを意味する。


「まぁとりあえず俺は当分の間はここに修行も込めて籠るわ。ちょっと作戦が思いついたらよろしく。もしもその間に正面から闇桃花が攻めてきたらその時は教えてくれ」


 なら俺はここにいるしかないだろうな。

 さて、ここで何をするか……

 俺はこれから頭を悩ませるのであった。

P.S.

無事にオーストラリアから帰国しました。

これからはいつも通り手動更新となります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ