表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界調整  作者: 虹某氏
6章【生命】
287/305

279話 ただいま南極観光中

「……お兄様。冷たいですよ!」

「先に投げたのはお前だろ。海」


 俺達は現在、雪合戦(?)をやっている。

 たまにはそういうのも悪くない。

 それに適度な運動も必要というものだ。


「……白愛さん」

「なんですか?」

「海達が投げてるのは氷ですよね?」

「彼等にとって氷も雪も大差ないんだと思いますよ」

「えぇ……」


 きた!

 俺は飛んで海の投げてきた氷を回避。

 それから近くの氷の大地を砕き、それを海に投げつける。


「どうだ!」

「やりましたね……」


 氷は見事に海にヒット。

 だがすぐさま海から氷が投げられ体が吹き飛ぶ。

 中々に威力が高いな……


「あれ、普通死にますよね?」

「日頃から体鍛えてますし大丈夫だと思いますよ。それと空様、海様。お肉焼けましたよー」


 お、焼けたか。

 それじゃあ夕食にしますか。

 もうすっかり日も落ちて周りも暗くなってるしな。


「お兄様!」

「なんだよ……」

「私、ドラゴンのステーキなんて食べるの初めてですよ!」

「所詮はトカゲ。味には期待出来ねぇけどな」


 たかがトカゲだ。

 そんなに美味いわけがないだろ。

 ドラゴンが美味しいのはフィクションだけ。

 それを身を持って知るといい。


「そういえば義兄(おにい)さん」

「ん?」

「トカゲって“ジューシーな鶏ささみ肉”って言われてたりするそうですから意外と美味しいかもしれませんよ」


 和都さんからフォローが入る。

 だが俺はそれに突っ込みたい。

 ささみ肉って脂ねぇじゃん!

 それってステーキとしてどうなんだと。

 やっぱり肉と言ったら脂が欲しいだろ!


「空様。トカゲ肉っていうのは昔から人類のタンパク源として愛されてきて、また高タンパクで低カロリーと食材としては優れているのですよ」

「いや、でも所詮はトカゲ。爬虫類だぜ?」

「爬虫類だからって侮ってはいけませんよ」


 ぶっちゃけ白愛が料理するとなんでも美味くなるからあんまり参考にならないんだよな。

 とりあえず今回は尻尾を切り落としてステーキにして他は白愛が収納したらしい。


「とりあえず最初は塩、胡椒でシンプルに味付けしました」

「そうですか。ではいただきますね」


 そうして海がどこからともなくフォークを肉に突き刺して食べた。

 バクりと豪快に!


「うん! 美味しいです!」

「味は!?」

「胡椒の風味が最高ですね。それに何より塩のしょっぱさが疲れた体を癒しきいきますよ。これはあれですよ! お酒が欲しくなる味ですよ!」

「肝心の肉の味はどうなんだよ!?」

「あ、それは鶏肉ですね。ぶっちゃけ牛さんの方が美味しいかと」


 うーん。なにこの散々な評価。

 ぶっちゃけデカいニワトリって認識でOK?

 考えてみたらティラノサウルスはニワトリの祖先だって言われてるしドラゴンがニワトリと同格でもおかしくはないのか。

 まぁティラノサウルスとドラゴンを同格に評価していいのかは微妙なところだが……

 ていうか南極だし恐竜の一匹くらいいないのか?


「ていうかあれですね。ポン酢が合いそうです」

「ポン酢ならありますよ。付けますか?」

「是非!」


 うーん。ポン酢が合いそうねぇ。

 ていうか薄くスライスしてしゃぶしゃぶしても美味しそうではあるな。

 まぁとりあえず食べてみよう。

 俺は手で豪快に掴み口に投げた。

 味は……うん、鶏肉だな。

 だが鶏肉に比べて肉汁の量が少し多いか?

 まぁより獣肉っぽくした鶏肉。

 そんな感じの肉。


「これワサビが合いそうだな」

「お二人とも西洋の伝説上の生き物だと言うのに味付けが和風寄りですね」

「龍は東洋にもいるぞ」

「あれは足がありませんしどちらかというと(たつ)、すなわち空飛ぶ蛇っていう部類ですよ」

「それもそうか」


 しかし皮肉かな。

 こいつには和風テイストが合ってしまう。


「ていうかお兄様。手で食べるとは随分と下品ですね」

「近くに誰もいないんだしいいだろ」

「そういう問題じゃありませんよ。蛮族」


 蛮族とは酷い言い様だな。

 まず、普通は箸とかフォークなんて持ち歩いてないし第一にこういう場所に来たら手で食べたくならね?

 そもそもお前だってポテチやハンバーガー食べる時は手で食べるだろうが。


「どれ、僕も……」

「はい。和都君。あーん」


 海がフォークに刺して和都さんの口へと運ぶ。

 くそ、好き勝手イチャイチャしやがって。

 一階爆発しろ。ていうか物理的にしてやろうか?


「うん。これはニンニク醤油漬けが合いそうだ」

「それも美味しそうですね! 次に食べる時はそうしましょう!」


 ていうかこれ炭火焼きも合いそうだな。

 串に刺して炭火で焼いて食べたいところだ。

 それに少しレモンを付けてもかなり良きだ。

 それに唐揚げにしてもかなり美味いだろう。

 ドラゴン肉、食材としては当たりの部類だな。

 脂が少ないと言えど比較的美味しく食べれる。


「ていうか今度あれしましょうよ!」

「あれ?」

「ドラゴンの目玉をダシにして中華スープですよ!」


 うわ、エグイこと考えるなぁ……

 しかし見た目のインパクトもあるし悪くはないかもしれないな。

 しかもドラゴンの目玉をダシ。

 それはそれでどんな味かも興味がある。


「僕はあれがしたいです」

「あれ?」

「ドラゴンのタンステーキです」

「たしかにそれは良いな!」


 鶏の舌の味なんて想像がつかない。

 しかもドラゴンだからかなりの量がある。

 つまり分厚いタンステーキが出来るはずだ。

 こいつ、天才か!


「ていうかドラゴンで盛り上がるのもいいですが上も見てくださいね」

「上?」


 俺達は白愛に言われて空を見た。

 そこには満天の星空が広がっていた。

 近くには何の明かりもない。

 だからこそ星がすごく綺麗に見えた。

 しかも何よりも空気が綺麗だからこその光景……


「……すごい綺麗ですね」


 海が言葉を漏らす。

 ほんとに綺麗な星空だ。

 こんな綺麗な星空が見える場所なんて限られてる。

 まさかこんな星空の元で食事をしてたとはな。

 特等席での食事じゃねぇか。


「……ここが南極か」

「えぇ」

「そしてルプスのいる場所……」

「そうですね」


 綺麗な星空に美味しい料理。

 だがここは間違いなく過酷な地だ。

 地球でも最大レベルの寒さを誇り俺達にとってはどうってことないが一般人からしてみたら災害レベルであるドラゴンクラスの魔物がうじゃうじゃいる。


「白愛。ドラゴンのランクっていくつだ?」

「エニグマ推定ランクはSですね」


 そんなSランクの魔物が山のようにいる。

 そんな過酷極まりない環境。

 今はまだ余裕だが少し気を抜いたら……

 Sランクは取るに足らないがもしもSSランクの魔物が出たら勝てるかどうかは怪しい。

 そしてそのクラスの魔物がいないとも限らない。

 それに何よりも……


「……ルプス。いや、神獣フェンリルのランクはSSSだよな」

「はい」


 ここのトップはSSSランクというこの世界最強と言っても過言ではない存在。

 そして俺達の娘だ。

 俺達も気を緩めたら死ぬかもな。


「空様。南極観光は始まったばかりですよ」

「そうだな」


 もしここを生きて帰れたら数段階レベルアップしてるかもしれないな。

 それが良いことか悪いことか分からない。

 だが今だけは楽しむ事を考えよう。


「空様」

「なんだ?」

「楽しい観光旅行にしましょうね」

「そうだな」


 そうして俺達の南極観光は一日目を終えた。

 タダの観光で終わるわけがない。

 直感がそう告げながら……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ