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世界調整  作者: 虹某氏
5章【未来】
267/305

264話 上手くいく.....

 全て上手くいった……

 あとは私を信じよう。

 この事態を想定した打った手。

 それが全て表に出ている。


「……クソっ! ルークの野郎! 裏切りやがって」


 まだ笑うな……

 全ての努力が水の泡になる。

 私は確実にここでこの男を殺す。

 世界の終末(ラグナロク)を除けば唯一の不安要素であるこの男を……


「パパ、そういえば私の名前は?」

「桃花のままでいい」


 桃花のままか。

 それに一体どういう意味があるのか。


「うん! 分かった!」


 しかし不憫なものだな。

 言いたくもないであろうセリフを無理矢理言わせられるのも耐え難い苦痛だろう。

 だけど桃花。

 安心してくれ。

 君の記憶を戻す算段はあるし前通りの生活も私であれば保証できる。

 だからそれまで……


「……そういえばさっきのお兄さんとお姉さん達は?」

「竹林響って餓鬼とペッシェっていうドラキュラ王の娘か?」

「多分それ!」

「彼等なら地下で拷問中だ」


 クソっ。胸糞悪い。

 これは早く動かねばならない。

 その為にもこのクズをどうにかせねば。

 このクズの目を盗まねばならない。

 それに響とペッシェの具体的な位置も聞きたい。


「そういえばマルクは?」

「あ? さんを付けろ!目上の人だろ!」


 桃花の頬が力強く叩かれる。

 傍から見たらあまりにも痛々しい光景。

 屈曲な男性が見た目はか弱い少女を殴るなど……

 私はギュッと力拳を作る。

 今すぐにでもこいつを殴り飛ばしたい。

 だけど今は耐えろ……


「……ごめんなさい……」

「ったく、マルクは雇っただけだから仲間じゃねぇよ」


 マルクは仲間じゃない?

 彼は雇われただけだったのか?

 いや、違う……

 恐らく他に理由が……

 マルクの動向が一番怖いな……


「……パパ、私は部屋が欲しい」

「そんなもん勝手に奥の部屋でも使え」


 笑うなよ……

 まだ笑うな……

 これは想像以上に上手くいっている。

 もしもこのまま桃花が部屋を得たら私の勝ち。

 お前はチェックメイトだ。


「ありがと!」

「お、おう……」


 ここは一つお約束に言っておこう。

 言わなければならない場面である。

 人生で一番言いたいセリフ筆頭と言っても過言ではないそのセリフを心の中で言う。


 ……計画通り。


 私は悪そうな笑みを自然と作っていた。


 ◆ ◆


 私、神崎真央は鼻歌交じりに掃除する。

 やっと全てが終わり世界調整を行える。


「真央、桃花が殺されたというのにやけに上機嫌だな」

「たしかに教え子が死んだ時にする顔じゃなかったね」


 空に軽く注意されたので謝っておく。

 たしかに桃花の記憶が失われたのは悲しい。

 実に嘆かわしいことである。

 だけどちゃんと対策はしといたし想定内の出来事なんだよ……

 まだ計画は言えないが……


「……ただ上機嫌なのも理由がある」

「なんだ?」

「神崎陸をやっと殺せるからさ。それに桃花の記憶なら私が戻すから安心していいよ」


 あーでも計画言ってもいいかもしれない。

 いや、やめておこう。

 ()()()()()()()()()()()()()()ことがバレたらどうなるか分かったもんじゃない。

 ぶっちゃけアララト山の時はこっそり後ろから夜桜と観察してたから知ってるし何時でも助けには行けた。

 だが私は神崎陸を追い詰めることを優先して野放しにしたのだ。それはある意味では責められて当然の行いである。だから私は言わない。

 空達には悪いが私はあの場にいなかったと思っといてもらうのが最善だろう。


「ていうか南極行ってどうするんだ?」

「そんなのルプスのお迎えに決まってるだろ」

「そういえばルプスの話聞かないが何してるんだ?」


 やれやれ……自害させられたことも知らないとは。

 まぁそれに関してはあとで海が話すだろう。

 私が口出すことじゃないさ。


「色々とあって南極にいるみたいなのさ」

「色々ねぇ……」


 さて、問題はマルク。

 下手したら彼はバイトかもしれない。

 つまり陸に雇われただけとも考えられる。


「ていうか真央」

「なんだい?」

「どうして掃除してるんだ?」

「気分が良いからかな?」


 さて、あとで空達の防寒着を作らねば。

 それと悪いが闇桃花にはここで退場願おう。

 少し彼女は使いにくすぎる。

 まぁ全て南極で決着着くだろう。

 今の空と海が闇桃花と戦って勝てるか否か。

 五分五分と言ったところだろうか?

 まぁ頑張れとしか私からは言えないな。

 それに運が良ければ本家の方の桃花が間に合うかもしれないしどうにかなるだろ。


「気分が良いだけで掃除してたらもっと綺麗だと思うんだが」

「私の気分が良くなるなんてことは滅多にないから仕方ないね」

「そうかよ」


 あそこに埃がある……

 ただ手が届かぬ。

 空なら届くだろうが頼むのも流石に悪い。

 転移を使ってもいいが天井に頭をぶつけてタンコブを作りそうでもある。


「空、そこに四つん這いになれ」

「は?」

「早く!」

「はいはい……」


 私は空を四つん這いにさせる。

 そしてそれを踏み台にして埃をとる。

 我ながら実に天才的な案だ。


「あ、あの真央さん……」

「なんだい?」

「俺が取った方が早いと思うんですけど……」

「流石に埃を取らせるのは悪いと思ってね」

「踏み台にされる方がよっぽど悪いわ!」


 そう言うと空は立ち上がった。

 それによって私は思わずバランスを崩す。

 ちょっと落ちるだろ!

 そのまま私は地面に尻餅をつこうとした時だった。

 誰かの手によって抱き上げられる。


「……お兄様。真央に何をしてるんですか?」

「すまない……海」


 しかし間一髪で海が私をキャッチした。

 私はこのまま海にお姫様抱っこをされる。

 それにしてもこの落ちた私に間に合うとは相変わらず凄まじい身体能力だと思うよ。

 これならサーカスでもやったら一儲けできるんじゃないかな?


 まぁ転移で銀行から金を盗める身としては一度もお金に困ったことはないが……


「真央なら転移で着地出来るだろ」

「君達……どんだけ転移を万能だと考えてるんだ」


 そんな万能なわけがないだろ!

 あの一瞬でゲートを開けるわけがないだろ!

 もう少し頭を使ってほしいものだ。


「ていうかあの高さなら怪我をしないだろ?」

「お兄様ひどい! それ女性にいうセリフじゃありませんよ! 女の子の身体ってかなり脆いんですからね!」

「……真央は年齢的に女の子じゃねぇだろ」

「たしかにそうですが……」


 二人とも処す。

 うん。処そう。

 ちょっと南極では痛い目を見てもらおうか。

 うん。そうしようか。

 二人の言動はあまりにも身勝手で酷すぎである。


「ていうか実際、あの高さなら怪我しないだろ?」

「怪我しないが痛いだろ!」

「お前、辛いもの好きだから良いじゃねぇか」

「たしかに辛さとは味覚では痛覚で感じると言われてる。それを覚えてることと私の好みを把握してることは評価に値するが完全に別物だ! 特に舌の痛覚と肉体の痛覚はな! はっきり言って詭弁も良いところだ!」


 まったく……この二人は……

 いつからそんな舌が回るように……


「しかし真央。本当に桃花のこと任せていいんだな?」

「安心しろ。大船に乗ったつもりでいろ」

「あぁ……信じてる」


 これは失敗出来ないな。

 無論、鼻から失敗するつもりはいが。

 大丈夫だ。きっと上手くいく……

 少しの不安要素はある。

 でもきっと上手くいく……

 私は心無しかそう言い聞かせていた。

 恐らくそれは作戦に少しの運が絡むからだろう。

 そして何より私は作戦に成功したら死ぬ。

 果たして私は桃花のために命を投げらせるか。

 それが一番の不安要素であった。

これで5章【未来】は終わりです。

次は6章【生命】となりましてもしかしたら最終章になるかもしれません……

そんな6章は少し間を置きまして7月7日の七夕から連載を始めたいと思っています。

どうかそれまでお待ちください。

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