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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
26/305

26話 彼女

 目を覚ますと隣には裸体の桃花がいた。

 時計は五時になるかならないかの早朝を指している。

 何故こんな事になったのか記憶を漁り思い出す。

 そうだ。思い出した。

 俺は桃花を抱いたんだ。

 もちろんそれが初めて女性関係だ。

 

「おはよう。空君」


 桃花も目を擦りながら起きたようだ。

 かなり寝惚けてるがそこが可愛い。

 

「おはよう」


 桃花と再度キスをする。

 俺は桃花の犬でもあるが彼氏になったのだ。

 そのくらい普通だ。


「空君は朝から積極的だね」

「そうか?」


 それに桃花は笑顔を返す。

 一寸の曇もない笑顔だ、


「今日は学校だからそろそろ準備しないとね」


 言われて思い出したが今日は学校だった。

 親父に襲われた時に制服で逃げたため制服は幸いにも手元にある。

 しかし教科書類が家だな。


「それとも今日も休んじゃう?」

「いや、今日は行こう」

「そっか」


 学校に行く前に家に寄って教科書類を取ればいいか。


「そう言えば雨霧さんはどうしたんだ?」

「未だに音信不通」

「そうか」


 少しだけ不安だな。

 でも、きっと大丈夫だ。


「さて、朝飯作るか」

「空君作ってくれるの!?」

「まぁな」

「やった〜!空君の料理は美味しいから大好き!」

「なにか食べたいのあるか?」

「それじゃあたこ焼き!」


 たこ焼きを朝食に頼むとは中々に珍しいな。

 食材があれば簡単に作れるので問題ないが……


「いいぞ。タコはあるか?」

「うん!冷凍庫で一匹凍らせてるよ!」


 一匹とは凄いな……

 しかし使うのは足一つで十分だ。

 それに冷凍なら解凍しないと……


「わかった」


 考えるのは後だ。

 一階に降りて台所を目指し冷凍庫からタコを出す。

 中々に大きいタコだ。

 俺の顔くらいのサイズはある。

 そして包丁を手に持ちタコの足を切り落とす。

 それ以外は今回は使わないため残りはまた冷凍だ。

 あとは足が解凍されるまで放置だ。

 六時頃には終わるだろう。


「さて、暇だな」

 

 もう一品作ってもいいがたこ焼きだけでお腹いっぱいになってしまうだろうな。

 そして桃花が下着だけを付けて一階に降りてくる。


「空君。シャワー浴びに行こ?」

「そうだな」


 もう体を重ねた仲だ。

 こんな事で恥ずかしがる事はない。

 台所を後にして二人で浴室に移動する

 そして桃花が服を目の前で脱ぎ始める。

 昨日初めて知ったのだが桃花はかなり胸がある。

 たしかに服の上からでもあるのは分かっていたが実物は想像以上だ。


「空君も早く脱いでよ」

「そうだな」


 言われるがままに俺も服を脱ぐ。

 すべてを脱ぎ二人とも何も纏わぬの姿になった。


「昨日も思ったけど空君って結構筋肉あるよね?」

「そうか?」

「うん! 腹筋だって割れてるし〜」


 言われてみれば腹筋はたしかに割れている。

 おそらく白愛に鍛えられた成果だろう。

 

「とりあえず入るぞ」

「そうだね」


 そんなやり取りをしながら浴室に行く。

 それにしても浴室の大きさは何度見ても驚いてしまう。


「さて、体を洗おっか?」

「そうだな」

「ちょっと失礼するよ」


 そう言うと桃花が手にポディーソープをつけて俺の体を手で洗い始める。

 おそらく“洗いっこ”をするつもりだろう。

 桃花の手つきはとてもイヤらしく撫で回すように体を洗う。

 最初に腹を撫でるように触りその後に脇を洗って首を手で時間をかけて撫でる。


「どうかな?」

「かなり良い」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


 首を一通り洗い終わった後は下半身を洗い始めた。

 俺の体を桃花が一通り洗い終わったら次は俺の番だ。

 欲望に忠実に桃花の体を撫でるように洗う。

 白愛ではこんな事は出来なかった。

 というよりさせてくれなかった。

 しかし桃花はさせてくれる。


「もう。空君はエッチだなぁ〜」

「下半身に忠実な犬は嫌いか?」

「ううん。それが空君なら大好き!」

「桃花ならそう言うと思ったよ」


 互いの体をじっくりと堪能しながら洗い終わった後は一緒にお風呂に入る。

 広いのに何故か桃花は俺の膝の上にいる。

 桃花は軽いので疲れないから別に良いが……


「そういえば桃花は俺のどこが好きになったんだ?」


 俺はずっと気になっていた事を尋ねる。

 何故桃花は俺を選んだのだろうか?


「空君って体育の授業で結構目立つじゃん」

「……否定は出来ないな」

「野球では確実にホームランを打ってサッカーではボールを一度取れば誰にも止められない。そんなカッコイイ事が出来るのは空君だけだよ!」


 たしかに全てを否定は出来ない。

 しかし本当にそれだけだろうか?

 それだけならあそこまで狂気的にはならないはずだ。


「桃花は運動さえ出来れば誰でも良かったのか?」

「それは違うよ。私は運動も出来て頭も良くてイケメンで自分の力を自慢しない人が良かったの」


 まさしく女子の理想の男子というものだろう。

 かなり強欲な願いだと思う。

 こんな条件なら一生彼氏なんか出来ないだろう。


「こんな人いるのか?」

「いたよ! それが空君だよ!」


 あぁそうか。

 俺は今言った条件をすべて満たしてるのか。


「しかも神崎家の血筋で魔法も出来る! もうこんな完璧な人は空君ぐらいだよ!」

「桃花はこの条件を満たせる人なら誰でも良かったのか?」

「うん!」


 桃花は迷うことなくそう言った。

 何故か俺は少しだけ悲しくなった。

 でも桃花が励ますように言葉を続ける。


「でもこの条件を満たせる人が空君以外にいるとは私は思えないな」

「もしも満たす人が来たら?」

「多分来ないよ。それに来てもこの人は空君の下位互換でしかないと思う」


 桃花の理想はとても高い。

 そして桃花は俺が最も完璧だと疑っていないのだ。

 傍から見たら桃花の好きになった理由はヒドイものだろう。

  一目惚れみたいな夢のある理由ではないのだ。

 しかしそこまでハッキリしてると桃花は絶対に裏切らないと安心できる。

 だから俺は変に一目惚れとか言われるよりよっぽど良いとこの時思った。


「そうか」

「空君はどうして私を好きになったの?」

「それは分からないんだ」


 俺は素直に答える。

 正直抱いといてアレだが桃花が好きなのかどうか分からないのだ。

 今はまだ桃花が傍にいて欲しいと言うからいてるに過ぎない。

 もしかしたらまだ好きではないのかもしれない。

 でもこれから好きになっていけば良いと俺は思っている。


「そっか。でもこれから私の事しか考えられないようにさせてみせるから安心してね」

「あぁ」

「そう言えば空君はエニグマに入るの?」


 そういえばそれもあったな。

 桃花のお父さんが今日に返事を聞くと言っていたな。

 つまりどうするか決めなければならないのか。

 まだ、かなり悩んでいる。

 もっと魔法とかファンタジーな事は知りたい。

 なんか凄くワクワクするし。

 そしてそういうのを身近にするにはエニグマに入るのが一番だろう。

 でもまだ本当にそんな簡単に決めていいのだろうかという悩みもある。


「まだ悩んでる」

「そっか。私考えたんだけど二人でエニグマに入らない?」

「二人か……」

「そうだよ! 悩むなら入っちゃおうよ! 二人でなら絶対楽しいよ!」


 たしかに桃花と一緒に働くのは楽しいだろう。

 そう言われればありの気もしてきた。


「それじゃあそろそろのぼせそうだし上がろっか」

「そうだな」


 少しだけ名残惜しいがもうそろそろタコの解凍も終わる事だろう。

 そして俺達は風呂場を後にした。


「そういえば牛乳あるけど空君は飲む?」

「あぁ」


 風呂上がりの牛乳程美味いものはないだろう。

 桃花は中々分かっているな。

 そしてコップに注ぎ俺に手渡す。


「はい。どうぞ」

「ありがとな」


 そう言い牛乳を一気に飲む。

 牛乳はしっかりと冷えており風呂上がりの体に染み渡り格別に美味い。


「やっぱり風呂上がりの牛乳は最高だな!」

「そうだね」


 さて、風呂も入った事だし朝飯を作るか。

 それと一緒に弁当も作ってしまおう。


「空君。私が手伝える事はあるかな?」

「そうだな……」


 正直一人でやった方が早いんだよな。

 しかし折角だからなにかしてもらいたい。


「そういえば桃花はピアノ出来るよな」

「うん。出来るよ」

「それじゃあ歌も出来るのか?」

「もちろん!」

「なら俺のために歌ってくれるか?」

「分かった!」


 そして桃花が歌い始める。

 その声はいつもの明るい声と違いとても透き通っていた。

 歌に合わせてたこ焼き作りを始める。

 歌を聴きながらやると手は踊るように動き作業が楽しくなる。

 それは桃花の歌だからだろう。

 俺は桃花の歌を堪能しながらたこ焼きを完成させる。

 ついでに同時進行でやっていた弁当も完成だ。


「ほれ出来たぞ」

「早いね!」

「桃花が歌で応援してくれたからな」

「えへへ〜」


 歌は良い。

 聴きながら作業も出てるし効率も上がる。

 それになにより聴いていて楽しい。


「それじゃあいただきます」


 桃花がたこ焼きを食べ始める。

 美味しく出来ただろうか?


「うん! すっごく美味しい!」

「なら良かったよ」


 ちゃんと美味しく出来ていたみたいで安心する。

 食べ終えた時の時間は七時で家に教科書類を取りに行くにはちょうど良い時間だ。


「そろそろ行くか」

「そうだね」


 俺達は制服に着替えて家を出た。

 外では普通にたわいもない話をしながら俺の家に向かう。

 例えばいつの日かやった化学のテスト。

 厳しすぎる校則の愚痴。

 そういったありふれた話だ。


「神崎さん。ちょっといいかな?」


 そして家に着くと俺が住んでいるマンションの管理人が待ち構えていたように僕に話しかけてきた。


「どうしたましたか?」

「どうしたもなにも扉を豪快に破壊してあるが一体なんのつもりだい?」


 そういえば親父に襲われた時に逃げるために扉を蹴り壊したのを忘れていた。


「かなり頑丈な作りだからちょっとした事じゃ壊れないと思うんだけどねぇ」


 今思うとあの扉を蹴り壊すなんて異常だな。

 火事場の馬鹿力ってやつだろうか。


「それはそうとどうするつもりだい?」


 管理人がそう問い詰める。

 まぁ弁償しかないだろうな。

 お金をどこから出したものか……

 そんな事を考えていると後ろから誰かが話に割り込んできた。


「それなら僕が代わりに弁償しますよ」

「あんたは?」

「ルーク・ヴァン・タイムです」


 ルークと名乗った人は短髪の女性だった。

 髪はとっても綺麗な白色だ。

 しかし女性にしては少しだけ声が低いような気がする。


「とりあえず一億あれば足りるでしょうか?」


 そう言うと持っていたショルダーケースを開いた。

 そこにはお札が敷き詰められていた。

 こんな光景は始めてみた。

 管理人も唖然としいる……


「……あんたは何者なんだい?」

「調停者です。それはそうとこれで足りますか?」

「……あぁ」


 管理人は驚いて声も出ていない。

 俺もあんぐりと開いた口が塞がらない。

 桃花は見慣れたものを見るように見ているが……

 それにこんな現金を用意出来る彼女は何者なんだ?

 もちろん俺は彼女の事を知らない。

 何故、変わりに弁償した?


「それは良かったです。それと彼と少しだけお話がしたいので少しだけ離れてもらってもよろしいですか?」

「分かった」


 そう言うと管理人はその場を後にした。

 それにしても俺に話とはなんなのだろう。


「初めまして。僕の事はルークって呼んでくれて構わない」

「分かりました。俺は神崎 空です。それとあなたは何者ですか?」

「エニグマの局長と言ったら君達には分かるかな?」


 彼女は少しだけニヤッと笑って言った。

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