249話 考察外し
「場所と場所を入れ替える?」
「恐らく肩に付着した埃とかと入れ替えてナイフを出したのでしょう」
だが謎は多い。
そんな強力無慈悲な能力なら最初から使えばいい。
もっと上手い活用が出来るはずだ……
もしかしたら私の考察は間違えてるのではないか?
だが、そんなことを考える時間は……
「ルプス。ちょっと下がってろ」
「なんで、ですか……」
「怪我してるからだ。いくら強くても怪我した女の子を戦わせるわけにはいかねぇよ。ここは拙者に任せな!」
相手は響の勝てる相手じゃねぇです!
それにこの程度の怪我なら余裕で……
「……おい、ピエロ」
「?」
「ここからは拙者が相手だ。いや、俺の屍を越えてから彼女達には手を出しな!」
「……愉快。了承しよう」
なんて無茶な……
だがこれで考察する時間を……
「だが貴様よりそこの幼女の方が強いであろう?」
「百も承知だよ。だが傷付いてる人を戦わせて何が主人公を名乗れる」
「エニグマに欲しい人材だな。気に入った! 気絶にとどめてやろう」
エニグマか。
それじゃあローズベリーは間違いない。
彼はあのローズベリーだ。
今は無きエニグマ創始者アリサ・ローズベリーのその夫だろう。
彼は基本的にエニグマと無関係だったはずだが……
「余計なお世話だ。20%魔神解放」
彼の右腕から不気味な魔力が溢れる。
それからどんどん紫色に右腕が変色していく。
基本的に魔神解放を解除すれば紫色のは九割型は消える。
だが少しは痕になっていく。
普段は包帯で巻いてるから分からないが既に彼の右腕はかなり紫色だ。
まぁ彼曰く痛みとかは特にないらしいが……
「来いよ」
「気絶と言ったがそれは失礼か。本気でいかせてもらう。曲芸師の斬撃雨」
上に多量のナイフが現れる。
それは見事に彼の真上……
そこから一気に降り注がれる。
私なら全て見切るのは容易い。
だが響は違う。
ピエロもそれを理解して……
「悪いな」
だが響の方が一枚上手だった。
彼は後ろに周り込んでピエロに回し蹴りを入れた。
だがピエロは霧のようにまた消えた。
恐らくダメージは一切ない。
「魔王の宝さ」
「なんだそれは?」
「文字通り魔王様から頂いた手品道具。今回使ったのはこのミストでな」
そう言うとクルクル回しながら霧吹きを見せる。
いつの間にあんなものを……
「原理は光の反射を上手く利用して自分を投影する子供騙し。うちの魔王様もあんたと同じくらい手品好きでな」
「……真央か」
「ご名答。悪いが拙者は真央の一番弟子でね。搦手も少しだけ得意なんだ」
それから彼はニヤリと笑った。
まるで次の手を打ったかのように……
「そしてお次は粉塵爆発さ」
「そんな外で!?」
「もちろん嘘。外で粉塵爆発なんて高度なこと出来るか!」
それから彼の拳がピエロに入る。
だがすぐに透かされてピエロは消える。
やはりこのタネを見付けないと……
「……この能力、見破ったぜ」
「ほんとか?」
「例えばさ、ほれっ」
「痛っ!」
そう言うと響は後に現れたピエロを足払いした。
それは初めて当たった攻撃だった。
ピエロがダメージを負った……
「その能力って物を透かしたり実体化させるだけじゃねぇか?」
「……」
「地面に透けないように足だけは実体化させてるはずだと思ったらビンゴだ」
そういうことか!
恐らくナイフは最初から刺さっていた。
それをあのタイミングで実体化させただけのこと。
転移でもなんでもなかったのだ……
ただ私が刺さってたことに気付かなかったのが癪ではある。
「……そしてもう一人仲間がいるな。恐らくそいつは一を二にする能力でお前をコピーして何人も作っていた。ほれ、後ろからもう一体」
そう言うと響はしゃがんで再び足払い。
すると後ろにいたピエロも倒れ込む。
「それで足以外を通過状態にしていたわけか。また設定としては通過したら消滅といったところか」
「能力が割れた如きで図に乗るなよ?」
「ただこの人格がどこから来てるか気になるところだがそれはまた今度考えよう」
それから響は宣言する。
戦局を動かす宣言を……
「決着といこうぜ。ピエロさん?」
「フッフッフ……」
「なにがおかしい?」
「全てさ! そもそも能力は通過じゃないのさ!」
能力が違うというのか?
いや、その通りだ。
考えてみたらピエロはナイフを握れている。
それじゃあ一体……
「落ち着け……落ち着け……」
「考える時間はねぇぜ」
「急に肩から現れたナイフ。攻撃は全て通過して通過するとやつは消える。そしてやつはどこからでも現れ同時に三人近く現れることも可能……」
「ほらよっ!」
響がナイフに切られかける。
しかしそれを体を捻って回避してそのまま腹に回し蹴りを入れていく。
魔神解放した響の方が身体能力は上ということか……
「お主の身体能力は高いがそれは時間制限付きではないか?」
「……」
「沈黙は肯定とみなそう。だったら逃げよう。お主の体力が尽きるまで!」
この戦いはまだまだ続きそうだ。
しかし厄介な事になったな……
「……逃がさねぇよ」
そこから鬼ごっこが始まった。
響が手を伸ばすも全て空気を掠り本体に触れることは一切なかった。
そしてそのまま消えていく……
「……おい、響」
「なんだ綾人?」
「アイツの能力わかったかもしんねぇ……似たような奴と俺は異世界で戦ったことがある!」




