248話 VSピエロ
「少しは楽になりましたね」
「本当に私のせいで……」
私達は現在地中2500m地点にいる。
あれから魔物にも会ったがブラック・ラグーンを超える敵はそうそういない。
無傷とは言えないが全て無事に蹴散らしている。
「気にしないで大丈夫ですよ」
しかし右腕がないのが不便だ。
まぁそこまで大きな問題がある訳では無いのだがやはり右腕は欲しいものである。
「それに桃花のせいじゃありませんよ。全ては弱い私のせいですから自分を責めないでください」
ちなみに現在はブラック・ラグーン遭遇から三日が経っている。
吸血鬼の二人も一度は出たもののこの状況を知るなり引きこもっている。
まぁいたとしても自衛がギリギリのレベルだろうしそっちの方が私達にとってありがたい。
「でもやっと海ちゃんはやっと恋人も見つけて人生これからなのに……」
「だから何度も言うように真央なら何かしらの治す手段を持ってますよ」
「もし無かったら……」
「真央ならすぐ見つけてくれますよ。私のお母さんをもっと信じてください」
まったく……
だいたい私のミスなのに桃花がどうしてそこまで病むことがある?
ていうか桃花はそんなことを気にするような人じゃ……
「たしかに海ちゃん達以外が手足を無くなっても気にならないよ。でも海ちゃんや空君は私の宝物で……」
「ありがとうございます。でも私も桃花は宝物ですしそんな桃花が悲しむのは見たくないんですよ」
「でも……」
「でもじゃありません。この話はこれで終わり。いいですね?」
「うん」
今は魔物は恐れることがない。
桃花の音で近づく前に全て殺せる。
そしてこのダンジョンの地形も全て掴める。
そのために安定して探索も出来ている。
ただそろそろ大部屋がある。
またブラック・ラグーンと同格の魔物がいる可能性が高いと思われるのが少し不安点だ。
「大丈夫。次は私を守るよ」
「では私は守られますね」
「安心してね」
まぁ桃花なら何とかしてくれる。
私は桃花が真央以外に負けたのを見たことがない。
しかも今の桃花は万全の状態。
そんな桃花が負けるわけがない。
「さて、それじゃあ大部屋に行くよ」
「はい」
そうして私達は大部屋に足を踏み入れた。
するとそこには金槌が置かれてるだけだった。
「これは……」
「間違いないね」
◆ ◆
「それで?」
「だから拙者は綾人と……」
「そんなことを聞いてるんじゃないです。母さんと海お姉ちゃんがどこに行ったか聞いてるのです」
私、ルプスは現在母さんと海お姉ちゃんを探していた。
二人が行方不明になって既に三日。
どこを探しても二人は見当たらない。
やはりそうなると地下にある神々の神殿にいる可能性が高いかもしれない……
ただあそこは地中にあり普通の人間には厳しい。
特に戦乙女の真価を発揮出来ないママなんかは……
「それはあの胡散臭い男が話してただろ」
「やはり……」
「それより今はこっちの問題だ」
私達はこの三日間ある敵と戦い続けていた。
この相手は搦手過ぎる。
一向に勝負がつかない……
私達がいるのは少し遠くにあった街なのだがそこには誰もいない。
物音一つしない街だ。
「みーつけた」
「響! 下がるです!」
私はすぐさま飛びかかる。
今度こそ間違いなく首を跳ねた!
だがこいつは……
「ざーんねん」
「響!」
「分かってるよ」
相手は響の後ろに現れナイフを突き出す。
響はそれを綾人を抱えながら間一髪で回避。
「やっぱり何度やっても手応えすらねぇです!」
「それに急に背後から現れるな」
「……使徒なのは明白。一体何の能力です?」
「とりあえずまた距離を取るぞ! あいつの能力について考察する時間が欲しい!」
「先程とずっと同じ展開ですね」
私達はマルク・ローズベリーという男と会った。
それからこの街に案内されてこれだ。
相手はピエロみたいな男で……
「……そこまで早くないのが楽ですね」
「少し能力について考えるか」
「相手が背後から現れる。それは真央の転移を連想させますね」
「ただいくら倒しても手応えすらないのは不気味だ」
「そうなると単純な転移じゃ……」
来る!
私は響と綾人を抱えて跳躍する。
それからすぐさま真下から例のピエロがナイフを持って現れていた。
「息をつく暇も与えてくれませんか!」
「……」
「なんか言葉を返せです!」
ここでママがいたらエコーで、パパがいたら街一面を焼き払い荒野にして、海お姉ちゃんなら匂いで多少の情報は掴めるから楽なんですけど生憎今は誰もいない。
「……おい! ルプス!」
「な!?」
私の肩からナイフが生える。
刺された訳では無い。
内部から突然生えたような感じだ。
「……ちょっとタネが割れたかもです」
痛いが……今のは悪手だ。
もしも響の反応が少しでも遅れてたら心臓をそのままズブリと貫かれていたかもしれない。
「マジか?」
「恐らく相手の能力の一つは転移……というより物体と物体の位置を入れ替える能力ですね」
「一つ!?」
「私の予想なら敵はピエロだけじゃねぇです。もう一人いるです」




