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世界調整  作者: 虹某氏
5章【未来】
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244話 マルク

「しかしあんたら随分と上玉だな」

「そうですか?」

「あぁ。それにピンク髪の方はめっちゃ良い育ちをしてるのが容姿から分かる。どっかのお姫様か?」


 タバコをふかしながらそう言う男。

 どこかと胡散臭とところもある。


「しかたしたたおまたたえさんらたどたしてアたたララたトたた山たたたにたた行くんたただ?」

「は?」


 急にたぬき言葉とは……

 こいつほんとに何を考えてる。

 随分とふざけたやつだ。


「ほれ、俺の質問に答えな」

「どうしてアララト山に行くか……ノアの方舟を見るためですよ」

「ほう、あの一瞬で聞き逃さず仕掛けに気付くか。前世は探偵でもなんかのだったかな?」

「心底どうでもいいです」


 それ以上茶化すなら別の人に当たる。

 それだけだ。


「しかし戦乙女(ヴァルキリー)がこんな野郎しかいない酒場に来るなんて相当だな。もっとちゃんとした王城にでも生息してるもんじゃないかな?」

「今なんと?」

「あぁ。わりぃわりぃ。こっちの話だ」


 なんだこの男!?

 戦乙女(ヴァルキリー)について知ってる!

 なぜ桃花が戦乙女(ヴァルキリー)だと分かった!?


「ただ人生の先輩から一つアドバイス」


 それから手が胸へと伸びた。

 私の胸へと……


「おっぱいは大きいに越したことないぜ?」


 それから空気が振動した。

 暴風が頬を撫でる。

 マルクの首元にはナイフが突きつけられる。

 まるで何時でも首が切れるかのように。

 桃花が鬼の形相をしてナイフを持っていた。


「海ちゃんにセクハラしないでくれるかな? 人間」

「まったく……減るもんじゃねぇし良いじゃねぇか」

「不愉快にさせるのは罪だよ」

「そうかい。しかしあんたらは自意識過剰だ。そんなだといつか足元が掬われるぞ」

「自分の立場分かってるのかな?」


 しかしマルクの表情は変わらない。

 まるで生に興味が無いような感じすらする。

 ほんとにこの男はなんなんだ?


「あぁ分かってるよ。お嬢さんの表情からすると良くて爪剥がしで悪くて生まれたことを後悔するレベルの拷問をする気だろ?」

「よく分かってるじゃん」

「しかしおじさん痛いのは嫌いなんだ。それと人生わ先輩からもう一つアドバイス」


 痛いのは嫌?

 そんな風には見えない……

 この人は底が見えなすぎる。


「桃花。この人は使徒だったりします?」

「ううん。使徒じゃない。ただの人間」

「そう。おじさんはただの人間なのさ。始祖みたいな人外レベルの身体能力があるわけでもなければ超能力を持ってるわけでもない。また神崎真央みたいな超頭脳があるわけでもない人間さ」


 なぜここで真央の名前が!?

 ほんとにただの人間か?

 まさか!


「おっとエニグマに所属してる訳でも無いぜ。俺はあくまで旅人よ」

「どこでエニグマとか知った!」

「さて、そろそろ本題に入ろうか」


 本題?

 一体何を……


「命が危機にさらされて人が余裕をもって動ける理由は何かしらの策を用意しているからだ。俺だって例外じゃねぇ」

「まさか……」

「この下は世にも珍しいダンジョンとなっている。なんと地下5000mまで続いてる地下大空洞だ」


 地下5000m!?

 そんな場所の温度は150℃を超える。

 とても人間が生きれる環境じゃない。

 しかも圧力も凄まじいことになる。

 大体500気圧でそれは親指の先に大人8人を乗っけるのに匹敵する圧だったはず。

 そんな環境で……


「もちろん俺は無理だ。だが始祖なら余裕だろ?」

「何を……」

「ちなみに魔物も生息してるから気を付けろよ」


 それから足元がカパッと開いた。

 落とし穴か!

 私達は為す術もなく大穴に飲まれていく。

 深い深い大穴へと……


「最後になったが俺の名前はマルク。マルク・ローズベリーだ」

「ローズベリー!?」

「それじゃぁな」


 それから床が閉まる。

 私達は暗闇の世界へと誘われる。

 一切の光すらない世界へ……


「海ちゃん! 蝶化して!」

「そうでした!」


 私は蝶の羽根を生やす。

 それから桃花を抱き上げる。

 そのまま上に浮上しようとするが逆らえない。

 物凄い重力で私達を引き込んでいく……

 せめて落ちる速度を弱めるぐらいが限界……


「桃花。宝石魔法で氷の橋を……」

「ダメ! 既に地中深くてすぐに氷が溶けちゃう」

「クッ……」

「でも壁を壊して横穴くらいなら!」


 そうだ!

 横穴を作れば!

 私は超電磁砲(レールガン)を出して壁を破壊。

 だがそこから驚くことが起こった。


「壊れない!?」

「ダンジョンだから硬さも常識外ってことですか」


 私達の墜落は止まらない。

 そのまま地中深くまで誘われる。

 何か手は……


「海ちゃん! 壁に捕まってよじ登るのは?」

「そうですね」


 私は壁に捕まろうとした。

 しかし予想外の事が起こったのだ。

 壁に手を伸ばしたが滑ったのだ。

 まるで油でも塗られてるかのように……


「そういうことか! このオイルが超電磁砲(レールガン)の衝撃を逃がして……」

「なるほど!」

「これは万策尽きたね。今は無傷で降りる方法を考えよう……」

「とりあえずこのまま蝶化して勢い殺せばかすり傷くらいには抑えられますよ」

「分かった。そうしよう」


 そのままゆっくりと降りろ……

 体が傷つかないように……

 私はそんなことを考えながら飲み込まれていった。

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