241話 国境越え
「だから殺しはダメです!」
「えー絶対殺した方が早いよ」
あれから一週間。
私達はもうそろそろ国境に入ろうとしていた。
これまで特に問題もなく食料に困ったこともない。
たまに紛争による流れ弾が飛んできたり上から爆弾が落ちてきたりするが全て私の能力により対応 。
私達はそんな感じで人生ゲームでもしながら車での旅を続けていた。
「しかし魔法を使った無限エネルギー生成とかほんとに便利ですね」
「ほんとにね〜」
あれから一度たりとも止まらず車は走っている。
ほんとに問題が何も無さすぎて怖い。
「あー海ちゃん! グレープジュースずるい!」
「まだピーチジュースがありますよ」
「もうグレープは二つしか無いんだから!」
響の方はペーターと何故か意気投合して盛り上がり、ペッシェは運転中の桃花に構ってもらえずいじけておりルプスは一人で携帯ゲーム機をカシャカシャとずっとやっていた。
ちなみに私は食べて寝ての繰り返しだ。
そして綾人は一人浮いていた。
たしかに話しかけられたら返すが彼とは私も好んで話したいと思う人物ではない。
「ていうか海ちゃん。運転疲れたから変わって?」
「仕方ないですねぇ」
私は桃花と席を変わりハンドルを握る。
ちなみにこの面子で運転出来ないのは響と綾人の男子高校生組だけだ。
まったく。運転も出来ないとは……
少なくともお兄様はノリノリで覚えていたぞ。
「だから海ちゃん。国境どうするかって話だよ〜」
「普通に飛び越えればいいんじゃないですか?」
「絶対に銃を打ってくる気がする」
「その時は桃花が弾丸を叩き落としてください」
「もー仕方ないなぁ……」
さて、国境越えの問題は解決。
国境を超えたらそのまま最寄りの街へ行き少し物資を整えてアララト山へ。
とりあえずそこでノアの方舟を回収してから今後の方針を決めよう。
「ていうかノアの方舟で真央に勝てそうですか?」
「うーん。スーはどうにかなりそうだけど天邪鬼がかなりキツい」
「天邪鬼にルプスぶつけるのは確定ですね」
「そうだね」
ルプスと天邪鬼。
互いに一歩も譲らない戦いが予想される。
天邪鬼はルプスと同じくらい強い……
「ただ抑えたとしてもダークナイトに夜桜。それにもう一人の私がかなり厳しいよ」
「なるほど……」
「とりあえず夜桜は響にルプスが来るまで耐えてもらう」
でも一番の問題は闇桃花だ。
あれはあまりにも強過ぎる……
「闇桃花は私が殺るよ。自分のケジメぐらい自分でね?」
「分かりました」
「ちなみに私達吸血鬼組はダークナイトを抑えるつもりでいるわ。海ちゃんは白愛と真央の相手、それに余裕があればアルカードとも戦ってくれるとありがたいわね」
アルカード。
三週目では三人がかりで互角の強者だ。
でも今の私なら造作もないだろう。
それほどまでに強くなった。
「大丈夫よ。アルカードは海ちゃんの蝶化の突破手段を持たないから。それより海ちゃんは真央っていう一番の強敵だけど大丈夫?」
「問題ありません。絶対に私が真央に力を証明して世界調整を諦めさせてみせます」
「よく言った!」
問題は敵の本拠地への乗り込み方だ。
島へ行ったとしてもそのどこにあるか分からない。
だからまずは探索する時間が必要になる。
しかし森には時猫がいて向こうに時間のアドバンテージが取られている。
あそこは中々に攻略が難しい……
「要塞鬼ヶ島ね」
「桃花はなんか良い案あります?」
「焼くー」
「それで失敗してますよね?」
焼くしかないのだろうか。
森を焼き払えばたしかに浮き彫りになる。
だが私達は既に一度失敗してる。
なら別の方法をとるべきだと私は思う。
しかし他に案があると言われると……
「ていうか森を焼けば浮き彫りになるって前提が間違ってるのかも?」
「というと?」
「目に見えるものが全てじゃないってことよ」
うーん。
まぁとりあえず保留だな。
ぶっちゃけノアの方舟の性能も分からないのが現状である。
つまり今考えても仕方が無いことなのだ。
「うー暇!」
「ですね」
そして私達は凄い暇であった。
暇すぎておかしくなりそうなくらい……
そんな暇を持て余しながら私達は国境線に来た。
「そろそろ運転変わるよ」
「お願いします」
桃花に私は席を譲る。
すると桃花はアクセルをベタ踏みした。
バギーは凄い勢いで加速を始める。
「お、おい! 待て!」
国境線にいた人が私達に話しかける。
しかしバギーは止まることなくそのまま突っ込む。
それからバギーは跳ねて柵を飛び越えた。
相変わらずの物理法則無視だ。
「撃て! ここを通すな!」
弾丸が飛んでくるので私は蝶化をする。
それによりバリアを貼り弾丸を弾く。
それからそのまま突き抜けていった。
「なんとかなったね〜」
「ですね」
私達は無事に国境を超えたのであった。
ここまで来たらあとは目指すだけ。
私達の気分はだいぶ楽になった。




