表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界調整  作者: 虹某氏
5章【未来】
242/305

239話 大好きの怒り

「どう? 可愛い? ねぇ可愛い?」


 目の前にはいるのは明るい桃色の髪の女の子。

 ふわっとした腰まであるウェーブがかった髪だ。

 その容姿からはかなりふんわりした様子を与える。

 だが彼女の趣味が拷問であることを忘れてはならない。


「まぁ可愛いですね。ていうか別人ではありませんか?」

「そうかな?」

「そもそもそんな髪があったのですか?」

「ちょっと魔法で伸ばしたんだよー。あと一応いつもツインテールに結んでたし多少はね?」


 先程までは茶髪ツインテの女の子だった。

 こんな現実離れした色じゃなかった……

 それなのに今ではこんなにも……


「それとお姉さん感が十五パーセントくらい増されてますね」

「たった十五パーセント!?」

「そんなもんです」


 しかし本当に別人だ……

 桃花だった部分なんて目と胸と匂いしかない。

 そう言っても過言ではないくらいに別人……


「ていうかこれで闇桃花の方とも見分けが付きやすくなったんじゃない?」

「そういえばそうですね


 まぁでも桃花である事には変わりありません。

 顔も雰囲気も変わっていようが桃花は桃花です。


「しかし本当に綺麗に染まったねぇ」


 桃花は愛しそうに髪に指を通します。

 どうやら彼女自身が相当気に入ってるようで。

 しかしこんなんで街中を歩いたら目立って仕方ないですね……

 どうにかならないものでしょうか……


「ていうかなんでこんなピンクが似合ってるんですか?」

「似合ってる! 海ちゃんから似合ってる宣言もらったー!」

「そんなはしゃがないでください」


 ちなみに見た目は普通に美少女です。

 アニメならどこにでもいる美少女です。

 だけだ中身は……桃花です。


「名前にあった容姿にするのも私は大切だと思うんだよねー。そもそもピンク髪は高校の時からしたいなぁって思ってたし」

「そういえば桃花の中学時代ってどんなんだったんですか?」

「うーん。いじめられっ子」


 いじめられっ子!?

 え、あの桃花が!?

 いやいやないない。

 それは絶対にない。


「折角だから教えてあげようか?」

「お願いします」

「まず私はテニス部に主属しててね……」


 ◆ ◆


 その時の私は中学生だった。

 私は近くにある普通の公立に通い特に目立つことなくそれなりの成績(学年一位)でテニス部所属でテニス部でも特に派手なこともせず(無敗記録更新中)平凡に過ごしていた。

 退屈な学校を済ませて阿呆らしい部活を適当に消費して家に帰ったら温かいココアを飲みながら魔法理論の書かれた書物を読み漁る。

 そんな日常の繰り返しをしていた。

 しかしそんな平凡な生活をしていた私の人生はあの日を境に大きく変わった。


「好きです! 付き合ってください」


 私はある日、先輩に告白された。

 何でも周りから曰くサッカー部のエースで爽やかなイケメンらしい。

 だが、私にはまったくイケメンには見えなかった。

 そもそもスポーツ如きでイキらないでほしい。

 それしか私の中に無かった。

 私はもっとカッコいい人と付き合いたい。

 間違ってもこんなモブとは付き合わない。


「ごめんね。彼氏とかそういうの興味ないから」


 スポーツが上手いから何だと言うのだ。

 こんな小さな学校の中で一番になったとしても何の役にも立たないしプロにもなれない。

 そもそも屋上から飛び降りただけで死ぬ時点でもう論外と言っても過言ではない……


「……え?」

「それに丸山先輩って他に彼女三人いましたよね?」


 私に告白してきた先輩は丸山健二。

 私以外の人から見たらイケメンでサッカー部のエース。

 だが実態は曜日で付き合う女を変えるレベルの女たらしであり後輩いじめも平気で行う外道。

 うーん。論外!


「それじゃあ私はテニス部の練習があるので失礼しますね」


 あーテニス部の練習とかダルい!

 もうダルい! スポーツとかやりたくない!

 とりあえず私は肩書き作りのためだけにやってる。

 だってあるとスクールカーストで有利だし……


「……この俺に恥をかかせた事を覚えてろよ?」


 私はそんな言葉を気にも止めなかった。

 そのままスタスタと練習に行った。

 やりたくもない練習に……

 しかしそれが間違いだったらしい。


 丸山先輩を振った次の日だった。

 私は学校に行き上履きを履こうと下駄箱に手をかけた。


「……痛っ……とでも言うべきなのかな?」


 そしたら手に軽い痛みが走った。

 指を見てみるとそこには赤い点が出来ていた。

 赤い点は少しずつ広がっていく……

 どうやら私は怪我をしたらしい。


「……画鋲か」


 それから上履きを見る。

 すると中には大量の画鋲が入っていた。

 私の恐れていた事態が起こった。

 虐め。

 私に対して虐めが始まったのだ。

 折角スクールカーストには細心の注意を払っていたというのに全てが水の泡だ……


「見てーあれ! ドジ過ぎない?」

「ほんとだー。ちょっと可愛いからって……」


 私は凄く悔しいと思った。

 思わず手に握り拳を作ってしまう。

 私はそのまま耐える。

 大丈夫だ。どうせ一過性のもの。

 それに虐めを受けたという事実が恥ずかしい。


「……」


 私は画鋲の入った上履きをそのまま履く。

 靴下が血に染まるが痛みは無い。

 この程度の痛みで動じるほど私は弱くない。


「え、嘘でしょ!」

「頭逝ってんじゃないの?」


 しかしそれが不味かった。

 彼女達にとってはそれが面白くない。

 私は本能的にそんな事を感じていた。


 それから教室に行く。

 すると私の机には“死ね”や“バカ”、“ビッチ”など。

 そんな馬騰の言葉が書かれていた。

 私は思わずポカーンとしてしまう。

 “今時こんな分かりやすい虐めあるんだ”と。

 ショックというよりは感心だった。

 もちろん不快感はある。

 だがそれよりも感心が強い。

 それから私は椅子を引いた。

 するとその椅子には牛乳が巻き散らかされていた。


 それから少し笑い声が聞こえた。

 クスクスという小馬鹿にする笑い声だ。

 私は少しばかし不愉快な気分になった。

 しかし今は椅子を拭くことが先決だ。

 私は雑巾を取りに行こうと廊下に出た。

 すると……


「キャッ!」

「ごめんなさい。思わず足を伸ばしたら当たっちゃったわ」

「ちょっと花子。わざとらしすぎ」


 私は思いっきり背中を蹴られた。

 まるでスポンジを軽く当てるような感じで。


「どうしてこんな事をするの?」

「え、私達何もしてませんよ。ちょっと自意識過剰過ぎませんか。マジウケるんですけど」


 まぁいいか。

 私はそう思い彼女達を無視して雑巾を取りに行った。

 それから椅子を拭き座り授業を受けた。


 それから授業中も当然ながらイジメは続いた。

 馬鹿なのに授業を聞かない。

 だから馬鹿が加速する。

 私は陰口を言われゴミを投げられる。

 私が先生に当てられると茶化す。

 そんなテンプレ通りの虐めだ。

 少しだけ鬱々しい。


「よし、お弁当だ」


 そんなこんなで授業は終わり昼食の時間となった。

 私は鼻歌を歌いながら弁当箱を開いた。

 そこには彩りの野菜にカリッと焼けたベーコン。

 それに真っ白のご飯に梅干し。

 今日は私の自信作で食べるのをとっても楽しみにしていた。

 だが、そんな時に事件が起こった。


 ビシャァァァァァ


 上から大量の水が降ってきたのだ。

 それによりお弁当も服もグシャグシャになる。

 髪からポツンポツンと水滴が零れる。

 それから圧倒的な不快感がこの上なく私に襲いかかってきた。

 水分を吸った服は異様に重い。

 私はこの時、殺意が芽生えた。

 こいつら絶対殺すと……


「見てーあれ。あんなの食べるんだって」

「まるで豚みたい。いや、あんな大きな乳があるんだから牛か」


 うん。私はよく耐えたほうだと思う。

 考えてみたら私が我慢する理由なんてない。

 つまり今までの私は優し過ぎたのだ。

 しかしここは人目が多くて面倒だ。


 私は記憶を漁り死体処理の方法を考える。

 たしかコンクリに詰めて海に沈めると死体は見つからないというのを見た。

 そして死体が見つからなければ警察は動かない。

 全て行方不明や家出で処理されるはずだ。

 防犯カメラとかは帰ったらハッキングしてデータを改竄すれば問題無し。

 ただ、目撃者だけには気を付けよう。

 最悪死体が何個か増えてしまうから……

 あと念の為に警察も買収しておこう。

 お金は腐るほどある。

 お金で従わないなら適当にその人の大切な人の指を落としてそれを見せて脅せばいい。


「……桃花。放課後に体育倉庫に来れるかしら?」

「うん。いいよ」


 それから周りからは笑い声が挙がった。

 体育倉庫で殴る蹴るのリンチにするつもりか。

 なんて好都合なのだろうか。


「……ちゃんと自分のした事覚えておいてね」

「は? うぜぇんだよ!」


 それから腹にパンチが入る。

 まるで猫が餌を求めて叩くかのようパンチだ。

 一切の痛みはなくて笑いそうになる。

 だが、んなことを考えてる場合ではない。

 少しは痛がってる演技をしなければ今度がすこし面倒になってしまう。

 私は軽く歯で口を傷付け血を吐く。


「……うっ」

「この面がうぜぇんだよ!」


 それから腹に何度も蹴りが入った。

 まったく女の子の日が来なくなったらどうしてくれるのだろうか?

 まぁコンニャクで腹を叩いてそんな大怪我をするかどうかと言われたら微妙なところだけど……

 私はわざとらしく噎せてく。


「……ごほっ……ごほっ」

「体育倉庫な」


 よし、騙された。

 それから私は水に濡れた弁当を食べて五時間目以降の授業を受けた。

 そして運命の放課後になり私は体育倉庫に向かう。

 今日された鬱憤。

 ここで晴らさせてもらおう。

 私はそんな思いを込めて足を踏み入れる。


「遅せぇよ」

「ごめんね。これでも急いだ方なんだよ」


 私は扉を空けるとそこには私を虐めた三人がいた。

 しかしどうでもいい。

 私が入ると同時に一人がニヤニヤと迫ってくる。


「ねぇまずお詫びに……」


 遅い。すごく遅い。

 私はすぐに動き彼女の手首を掴んでみせる。

 それに対して彼女達を驚きの目を見せた。


「な!?」

「脆い。ちゃんとカルシウムは摂取しようね?」


 それから私は軽く力を込めて握った。

 するとボキバキボキバキと音を立てて骨が粉砕した。

 かなり心地良い音が鳴った。


「アアアァァァぁぁぁぁぁぁ!」

「うるさい。人が来たらどうしてくれるの?」


 それからかなり強く腹を蹴る。

 もちろん加減はそれなりにする。

 だが臓器が破裂したのか相当な血を吹いた。


「ここって子宮があったね。今ので子宮が壊れて子供を作れなくなっちゃたけど笑って許してね。私がしたようにね」


 皮膚が裂け内臓がもっと鮮明に見えるまで蹴る。

 その度に世界の終わりのような声を上げる。

 うるさい。黙れ。楽しい。


「ひ、ひぇ……」


 そんなことを続けてると二人が動いた。

 ちょっと判断が遅すぎる。

 二人は蹴られてる虫を見捨てて逃げようとする。

 だがそんな事を私が許すわけないだろ。


「ねぇ。私にしたことを忘れたのかな?」


 私は耳を掴みそのまま引きちぎる。

 耳をそのままチーズを裂くように……

 すると二人は白目を剥いて絶許した。

 まぁ死にはしないだろう。

 最後は殺すけどね。


「ごめん! そんな脆いとは思わなかったから!」


 さて、あとは気絶するまで殴るか。

 ここはやはり防音じゃないから面倒だ。

 そんなことを考えながら何度も蹴った。

 手刀で気絶させてもいいが少し足を伸ばしたくなってしまったのだから仕方ないだろう。

 そんな時間を二十分ぐらい続けた。

 すると……


「おい、愛奈。ここにいる女抱いていいって?」


 チャラチャラした金髪の男が入ってきた。

 あれは噂に聞くDQNって奴だろう。

 愛奈は私が蹴っていた女性の名前。

 なるほど……ご丁寧にやってくれるものだ。


「どうしたの?」

「ま、愛奈? なんだこの地獄絵図は!」


 やっぱりこの虐めっ子が呼んだのか。

 恐らく私を強姦させる気だったのだろう。

 随分と過激な事をしてくれる。

 ていうか虐めにしてはやりすぎ。

 普通に考えたらありえないよね?


「うーん。死刑で」

「え?」


 ただそれを知っておきながら参加する彼も彼で等しく罪人であるだろう。

 だから私は迷わず手刀で首を跳ねた。

 彼の生首が綺麗に宙を舞っていく。

 それからクルクルと回転するとストンと落ちる。

 血が噴水のように吹き荒れる。

 身体にじんわりとした暖かい血に包まれる。

 だが少し不快な感じだ。

 帰ったらシャワーでも浴びよう。

 血のシャワーじゃなくてお湯のシャワーを……


「人を殺すのは初めてだけど牛や豚の解体とあんまり変わらないね」


 さて、少しアクセデントもあったが移動しよう。

 早く私は罪を償わせたいのだ……


 ◇ ◇


「やっと目を覚ました」


 私はニッコリと笑顔で出迎える。

 するとボロボロの虫はのっそりと動いた。


「……ゆ……るして」

「嫌だよ」


 確かこういう場面は友達の死体を見せるといいと私は勉強していた。

 そうすると殺されたことにより怒りが発生してかなり良い声でなくとかね。

 だから私はミンチ肉を見せてあげる。

 彼女達は友達だしミンチ肉になっても分かるだろう。

 だって友達ってそういうものでしょ?


「私は凄く今日のお弁当が楽しみだったんだよ。それなのに台無しにしてくれた。これは君達が犯した罪なの」

「悪魔! この悪魔!」

「人の楽しみを奪う方がよっぽど悪魔だと私は思うな」


 彼女は泣きながら叫ぶ。

 思ったより反応が無くてつまらないな。

 まぁなんでもいいや。

 ちょっと私も良い反応の貰い方は勉強したし。


「骨の変換って面白いよね?」

「……なに?」

「ちょっとフッ化水素酸を塗ってみようかなぁってね。フッ化水素酸っていうのは人体には凄い有毒です」


 私はそこから丁寧に授業をする。

 フッ化水素酸を体内に入れると骨中のリン酸カルシウムと反応してフッ化カルシウムっていうのを生成することからそのフッ化カルシウムは凄く壊れやすく壊れたフッ化カルシウムの破片が筋肉に刺さって地獄を体現したような痛みを与えることまで全てだ。

 また骨の一部がフッ化カルシウムに置換されるため容易に骨折を引き起こすのは想像出来るだろう。


「やだ! やだ! やめて!」

「お口アーンね」


 私はコップ一杯に入れたフッ化水素酸を彼女に飲ませていく。彼女を強引に押さえつけて飲ませる。

 それから間もなく彼女は絶叫した。

 痛みにのたうち回った。

 声を必死に荒あげた。

 そして息絶えた。


「これであなたの選んだ結末です。丸山先輩」


 それから私はある男の方を向く。

 全ての元凶になった男の方を。

 彼は鎖に縛り付けられて身動きひとつ取れない。


「とは言っても既に喋る体力もありませんね。それでは冥府の良い旅を」


 丸山先輩の爪はもちろん全て剥がした。

 骨が剥き出しになるまで肉をピーラーで切った。

 そしたらちょっと体力が切れちゃったみたいだ。

 私はそんな丸山先輩の腹を殴り命を奪う。

 そうして私はストレスを全て発散して心地良い眠りについて明日から普通の学校生活を送りましたとさ……


 ◆ ◆


「虐めへの制裁やりすぎです」


 うん。私は非常にコメントに困っていた。

 たしかに桃花が虐められたのは事実だ。

 だけどたった半日じゃないですか!

 ていうかそもそも返り討ち以上のことしてますよね!

 なんかツッコミどころが多すぎて疲れました。


「そうかな?」

「フッ化水素酸はエグイですね。えぇ。この上なくエグくて人間のすることとは思えませんね」

「そこまで言う!」

「あれ本当に地獄なんですからね! 少なくとも私が過去にされた虐待トップ10入りは確実なくらいに!」


 フッ化水素酸はえぐい。

 これは経験談である。

 私も虐待の時には定期的にされていた。

 いや、あれは死ねる。

 間違いなく死ねる。

 ていうか剛田の再生能力があったからこそ出来た拷問なのは間違いない。


「……海ちゃん体験が?」

「もちろん一通りの痛みは体験してますよ。なんと言っても十四年も毎日虐待という名ばかりの拷問を受けていたんですからそりゃ人間が考えるものなら……」


 ネズミ拷問、山羊攻め、苦悩の梨、鉄の処女に首輪の刑やユダのゆりかごまで全て体験済みですよ。

 もう中には酷すぎて能力でも再生が出来ないくらいの怪我を負ったものこそ……


「そっか……ほんとに辛かったね」

「辛いなんてもんじゃありませんでしたよ」


 だからと言って他者がされても何か思う訳でも無いが……

 あくまで他人は他人でしかない。

 ただ少し胸糞悪い話であったのも事実。

 桃花がそういう人だというのは嫌でも知ってる。

 でもやっぱり私としては出来ればそういうことはしてほしくないものでもある。


「もうそんなことはないよ」


 桃花があのクズ共と姿が重なる事は一度もない。

 それに私は桃花が大好きだ。

 私を大切にしてくれて優しくしてくれる。

 そんな桃花が大好きだ。

 ただそんな大好きな人が私の嫌いな人と同じ事を楽しむということにモヤモヤを覚える。

 当てようのない怒りを覚えるのだ。

 桃花が大好きだからこその怒り。


 好きが故に起こる怒りだ。


「分かってますよ。そんなことは」


 拷問は桃花のストレス解消方法だ。

 桃花は拷問という方法をとって復讐して自分の中のモヤモヤ感を解消する事により心の安静を保っている。

 だから私に止める権利は一切ないと思う。

 そもそも拷問されたくなければ桃花に手を出さなければいいだけの話なのだから。

 ただその方法が私には少し不快で……


「ていうか桃花。高校はどうだったんですか?」

「うん。つまらなかったよ。真央が担任になるまではね」

「そうですか」

「しかし真央の授業は面白かったなー。あんな学校が楽しく感じたのなんて初めてだよ」


 私は真央以外の授業は殆ど受けてないから比較対象が無いためコメントは出来ない。

 ただ真央の授業は間違いなく異端だった。

 一切のプランが無くて真央がやりたいと思った授業や私達が学びたいと言った内容に授業を変えたりとかなり無茶苦茶だ。

 しかも終わる時間も決まってないから真央が飽きたら終わるし逆に飽きなれば日が落ちても終わらない。

 そんな授業だった。


「本当に真央って自分勝手な授業だった。でもだからこそ楽しかったんだからと思う」

「そうですよね」

「大体昨日のテレビでケバブを見てケバブを食べたくなったから生物の授業って名目で豚を狩りに行くとか普通じゃないよ!」

「真央の転移だから出来たことです」


 彼女の授業は座学は殆ど無かった。

 基本的には転移を使って出かけたり身体を動かして基礎体力の向上は戦闘での動きを覚えたりだ。

 それに座学も殆ど哲学に近いことばかりだ。

 数学科学物理も少しだけやるがそこまで深くはやらないで終わってしまった記憶がある。

 だがとても楽しかった。


「またあんな授業受けたいですね」

「そうだね」


 だけどそれはもう叶わない。

 でもやはりあの空気が私は好きだった。

 最初に真央の“今日は何をするか”という独り言から始まる授業が凄く好きだった。


「ていうか世界調整終わったら学校どうなるんだろ?」

「どういう意味です?」

「そのままよ。だって新国家ってことは全てリセットだから今ある義務教育の制度も一転される可能性だってあるわけじゃん?」

「あーたしかに。そこら辺真央はどうするんでしょ?」


 世界調整に関しては分からないことだらけですね。

 今は真央のために止めたいですが実際世界調整された後はどうなるのか……

 お兄様なら知ってたりするのでしょうか?


「真央の思考が分かったらそれはもう天才だよ」

「ですよねー」


 もしも真央ならこのモヤモヤを晴らせるだろうか?

 また、真央に会いたい……

 真央と話したいな。


「海ちゃん。真央シックになってない?」

「なってませんよ!」

「本当かな〜」


 桃花がニヤニヤしながら迫ってくる。

 本当ですよ……

 なんで嘘をつくんですか……


「これは深層心理で思ってるから気付いてないだけで……」

「馬鹿言わないでください」


 まったく……

 そんな深層心理が……


「ていうかそろそろバギー制作にもとりかからないと」

「そうですね。素材はあるんですか?」

「もちのろんよ!」


 それなら問題はなさそうですね。

 では早速バギーを作りましょう。


「桃花。出発は明日の朝ですよね?」

「え? 今日の夜だけど……そうしないとペッシェさん達が……」

「あ……」


 完全に忘れてた!

 そういえば吸血鬼だから……


「今は何時ですか?」

「朝の十一時だから余裕で間に合うよ」


 本当にここは時間感覚が分からなくなる。

 だって陽の光が一切入らないのだから……

 ちょっとそれは不便なところかなと思う。


「とりあえず作っちゃうよ」

「そうですね」


 まぁ作ることに変わりはない。

 手っ取り早く作ってしまおう。

 私達はそうして作業室へと向かっていった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ