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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
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21話 勧誘

「お、お前は誰だよ」


 竹林が問いかける。

 しかし後ろの人は存在感が凄い。

 竹林の存在が薄れていく。


「名乗り遅れて申し訳ない。私の名前は佐倉智之(さくらともゆき)。桃花の父親だよ」


 彼は淡々と自分の名を名乗る。

 やっぱり桃花の父なのか。


「おや、海君。こんなところで合うとは珍しい?」

「お久しぶりです。佐倉さん」


 そして海と佐倉さんが軽く話す。

 見た感じ知り合いみたいだな。


「海と佐倉さんはどこで会ったんだ?」


 俺は海に問いかけた。

 海が桃花を知ったのは月曜日。

 この短期間で会う時間なんてなかったはずだ。

 そしてそれに答えたのはお父さんだった。


「おや、海君から聞いてないのか。後で話すとしよう。流石に民間人のいる前では言えないしな」


 はぐらかされてしまったか。

 まぁ後で聞くとしよう。

 そして佐倉さんが竹林の方をギロりと睨みつける。


「さて、ストーカーよ。私の愛娘を怖がらせた罪をどうやって償う?」


 そう竹林に話しかける。

 とても低いトーンだ。

 竹林からしたら恐怖しかないだろう。


「ぼ、僕はストーカーなんかじゃ……」


 竹林は必死に否定しようとする。

 しかし佐倉さんはそれを許さず追撃する。


「おそらく調べれば色々と証拠も出てくるだろう。それで警察に突き出す事も出来るなぁ」


 一つ一つ逃げ道を奪い追い込んでいく。

 しかしその後に佐倉さんの口から出たのは意外な提案だった。


「でも私の愛娘が可愛くてストーカーしたくなる気持ちも分かる。そこで君にチャンスをあげよう」

「チャンスですか?」


 彼は竹林にチャンスを与えたのだ。

 一体なぜそんな事をするのだろうか?


「そうだ。今からそこの海君の兄と互いに素手で試合して彼を膝をつかせたら全て見逃してやろう」


 何故か俺が巻き込まれてしまった。

 別に良いのだが一体何が目的だ?

 俺には佐倉さんの考えが理解出来ない。


「神崎君。これは君の実力を見るためでもあるんだよ。君がどの程度の人物なのか私に力で証明したまえ」


 そういう事か。

 漫画とかでありがちな展開だな。

 しかしそれに竹林が反論する。


「こんなのチャンスじゃない!」


 たしかに悪いが俺が竹林に負けることは万に一つもないだろう。

 言っちゃ悪いが彼はそこまで喧嘩が強いわけではない。


「では受けないのか?」


 佐倉さんが竹林にそう問いかける。

 もしも竹林が受けなければそのまま警察に連れてかれて終わりだろう。

 彼はもう詰んでいるのだ。


「あなたは素手で竜に挑み勝てば許すって言われて素直に受け入れますか?」

「ふむ。面白い例えだな。つまり無謀な挑戦をして殺されるか何もせずに殺されるかという話だろう?」


 竹林にとって俺は竜なのか。

 なんか少しだけ複雑だ。


「違います! どう足掻いても勝てないって話です! 神崎君の運動能力は完全に人外の領域です!」

「ではここでストーカーとして突き出すか?」

「……やります」


 竹林が渋々そう言う。

 それにしてもまた試合か。

 日曜日に雨霧さんと試合をしてその帰りにヤンキーと軽く喧嘩し月曜日に授業で海と試合。

 そしてその後は親父と文字通りの死闘て先程白愛と軽く手合わせしたばっかだ。

 最近は戦ってばかりだな。


「いつでもどうぞ」

「う、うるさい」


 俺がそう言うと竹林が大振りで殴りかかってくる。

 とても遅い。

 まるでカメが歩くような感じだ。

 こんなのが当たるわけがない。

 俺は軽く回避して後ろに回り込み軽く首トンをして気絶させた。

 

「あら、お強いのね」


 それを見てた貴婦人らしき女性が口を開いた。

 おそらく桃花の母親だろう。

 

「まだまだです」

「まぁ謙虚なことね」


 いや、謙虚なんてことはない。

 今の俺は白愛はもちろん海にも勝てなかった。

 それに親父にすら怪しかったのだ。

 それをまだまだと言わずなんて言うだろうか?


「神崎君の実力は聞いてたとおり問題ないな。そこで君に提案があるのだよ。エニグマに来る気はないかい?」


 予想外の展開だ。

 まさかエニグマに誘われるとは。

 一応エニグマの概要は理解している。

 たしか親父みたいな超能力やオカルト現象などの不思議現象について色々とやってるものだ。

 しかしこれ以上は知らない。


「詳しくは中で話そうか」

「そうですね」


 そして俺達は家の中に移動した。

 竹林は気絶してるが目を覚ましたら勝手にどこか行くだろう。


「お父さん! お帰り!」


 扉を開けた瞬間桃花が父親に抱きつく。

 見ていて微笑ましい光景だ。


「ただいま桃花。ほら頼まれてた物だぞ」


 そう言って小袋一つ分のエメラルドを佐倉さんは桃花に渡した。

 お土産感覚でそれだけの量の宝石を渡すのが彼女がお金持ちなのだと改めて実感させられる。

 宝石の物価はあまり知らないがこの位の量を売ったら家が一つ立つのではないだろうか?


「ありがとう!」

「これで宝石魔法の練習が出来るな」

「うん!」


  ……宝石魔法?

 そういえば桃花が言ってたな。

 名前の通り魔法の一種なのだろうがイマイチ理解できない。


「あぁ君は宝石魔術について知らないんだな。まぁ君は超能力持つ予定だしそこら辺は言っても問題ないだろう」


 桃花のお父さんは熱弁に語りはじめる。

 俺はそれを真剣に聞く。


「この世界に実は魔法が存在するのだよ」

「やっぱりそうですか」


 魔法の存在が佐倉さんにより肯定された。

 もう予想通りだ。

 この世界は何が起きてもおかしくない。

 海が俺の元へ来た日から俺の世界は変わった。


「宝石魔法は宝石に術式を刻み魔力を通して発動する魔法だ。ちなみに一度使うと宝石が灰になりその宝石は使い物にならなくなるがね」


 それで練習するためにあれだけの量の宝石か。

 それなら納得だ。

 しかし宝石魔術は凄く金がかかりそうだ。


「ちょっと見ててね! お父さんナイフ貸して!」

「これでいいかい?」

「うん! ありがと!」


 そう言って桃花はナイフを受け取ると宝石を一つ袋から出してナイフで図形を刻んでいく。

 とても言葉では表しにくい図形だ。

 それを終えると桃花はこのナイフを自分の指先に軽く当てる。


「何してる!?」


 桃花はナイフで指先を切って血を出したのだ。

 どうしてそんな事を……


「魔法を使うには魔力を通す。汗とか唾液とかの体液でも問題ないけどやっぱり血が一番魔力を含むからコントロールが楽なのよ」


 魔法には血が必要なのか。

 そういえば海が剣道の試合の時に指を噛んで血を出していたな。

 今思えばアレは魔法だったのだろう。

 使ったのは恐らく身体能力強化。

 筋力を強化しての加速。


「そよ風を来たけり」


 桃花が宝石を胸の前に掲げた。

 すると軽くそよ風が頬を撫でた。


「これが宝石魔法! 家の中だからそよ風に抑えたけどその気になれば私なら暴風だって起こせるよ!」

「……凄いな」


 俺はお世辞抜きにそう思った。

 これは俺には出来ない事だ。

 そこまで魔法が使える桃花が凄いと思った。


「えへへ〜」


 俺が桃花の頭を撫でると笑顔になる。

 まるで犬みたいだな。


「部屋の中で魔法なんて何考えてんですか……」


 白愛がそう言いながらキッチンから戻ってきた。

 口調から察するにやっぱり白愛も魔法について知ってるのか。


「お久しぶりです。佐倉様」

「久しいな。暗殺姫」

「その名は捨てました。今は白愛とお呼びください」

「そうなのか。すまない事をした」


 どうやら白愛とも面識があるらしい。

 完全に俺は置いてきぼりだな。


「……白愛はどこで知り合ったんだ?」


 俺は白愛にそう問いかける。

 実際どこで知り合ったのか気になるしな。


「海様に仕えて時でございます。空様は他の神崎家から身を隠すために海様が戸籍を持ってないのをご存知ですよね?」

「まぁな」


 普通に考えてみれば海も白愛も戸籍がないはずだ。

 そこで一つの疑問が生まれる。

 誰が彼女達の戸籍を作ったのかどうか。

 海の場合は間違いなく被害者。

 それも能力絡みの……

 だったらエニグマがどうにかするのが道理というものだ。

 恐らく戸籍を作ったのはエニグマ。

 その時に知り合ったのだろうか。


「白愛の戸籍もその時か?」

「一人作るなら二人も変わらないって感じでついでに作っていただきました」

「なるほど」


 海がエニグマの事を知ったのもこの時なのだろう。

 そしてオカルトをオカルトに留めたり魔法の存在を隠してるのもエニグマだろう。

 思ってた以上にエニグマは大きな機関だ。

 それこそ世界規模の……

 

「さて、それで本題に入ろう。神崎空。君はエニグマに入る気はないか?」


 俺はそのエニグマに誘われているのだ。

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