200話 ステータスオープン!!
ここから視点が変わりましてしばらくの間ですが海目線で話が進んでいきます。
「……桃花。引きこもり姫と話したのですか?」
「ううん。ミネルさんが引きこもり姫からの伝言を私に伝えただけだよ」
たしかに……
ドラキュラ王のちからを借りればどうにかなる。
「ルプスどう思います?」
「ドラキュラ王を引き入れるのには賛成ー」
私は膝の上に乗っけてるルプスに問いかけた。
そしたら賛成の意見が返ってきた。
「そうなると吸血鬼の国に行く必要がありますね」
「今から急いでも二週間だよ。もしかしたら空君奪還まで相当な時間を必要とするかも」
移動時間。
真央といた時には一切考えなかった問題がここにきて出てくるとは……
「どうします。神器捜索とドラキュラ王への救援に分かれて動きますか?」
「ノアの方舟は移動手段にも使える。それならまず最初にノアの方舟かな。それでノアの方舟で向かう。そもそも考えてみたらドラキュラ王というか吸血鬼は夜しか動けないから一晩で下山までやらなきゃダメだから中々に大変だし……」
ドラキュラ王には棺桶に入ってもらい方舟で運ぶということですね。
やっぱりノアの方舟は必要……
「直接戦闘には関係ないけど随分と便利な能力だよ。ゴミ能力って思って反省反省」
でも問題はそこじゃないです。
一番の問題は……
「柊綾人。やっぱり彼……」
「どうする? 腹パンする?」
「桃花はもう少し穏便に済ませるということを分かってください」
「えー。だってミネルからも引きこもり姫からも性格クソって言われてる人だよ」
とりあえずルプスにセクハラとかラッキースケベしたら殺します。
それで動きましょう。
「それでその綾人って人はいつ来るんだ?」
響が私達に尋ねた。
考えてみたら響も最初は性格クソでした。
うん。きっと大丈夫です。
「もうそろそろかな」
「……は?」
「引きこもり姫は五日くらい前から手配してたみたいなんだよ。逆言えば彼女はそのくらい前から真央の動きを読んでいたわけ。なかなかやるよ」
初めて見た……
エニグマで有能な人なんて初めて見た……
「大丈夫。それに腹パン許可は降りてるから」
そんな時だった。
ピンポンと呼び鈴のなる音がした。
「来たみたい。私が迎えに行ってくるね」
桃花はそれから玄関に向かった。
さて、どうなるか……
私は恐る恐る覗き込む。
「君が綾人君?」
「なんだよ。おっぱいしか実ってないガキじゃねぇか」
開幕セクハラ……
桃花の顔が引き攣ってるのが見なくても分かる。
「君と話すことはないかな。回れ右して全面肯定ヒロインのおっぱいでも吸ってたらいいと思うよ」
桃花がバタンと扉を閉めた。
あれは間違いなくキレてるな。
「……桃花」
「海ちゃん。ねぇあれ拷問してもいいよね。いいよね。誰も怒らないよね?」
「拷問ダメ絶対。腹パンに抑えましょう」
「あれ相当頭おかしいと思うよ」
それは激しく同意します。
あれは間違いなく女性の敵です。
さっさと血祭りにすべき存在だとは思いますが……
「まずはあれの考察をしましょう」
「そうですね。まずたしか異世界帰還者ですよね」
「そうだね。それで恐らくチートもあって何一つ苦労がなく快適な生活送ってたと思うわ」
「それにもっと言えば女を侍らせてそうですよね。つまりネットでよく見る異世界系の主人公の性格と考えてOKですか?」
「私はその認識よ」
いや、キツい。
あれがリアルでいるのは少しキツい。
「……どうします」
「見なかったことにするのが」
そうするのは確定ですね。
しかしいざ異世界の主人公となると……
それが中々に想像しにくいものなのですよ。
「とりあえず下半身に忠実なのは間違いないでしょうね」
「あとあれは間違いなく自分を最強だと思ってるタイプだね」
あれ? お兄様と似てる……
そもそも考えてみたらお兄様はイケメンだから許されてるのであってもしもブサイクが同じことやってたらドン引きする。
つまり結局は顔なのだ。
「桃花。綾人さんの顔って……」
「平凡だよ。どこにでもいる不細工な顔」
平凡で不細工ってちょっと意味が分かりかねます。
まぁそれは置いておきましょう。
「桃花。とりあえず私が相手します。家の前にずっといられても迷惑ですから」
「……お願いするね」
私はそれから対話すべきと扉を開けた。
そしたら驚くことに弾丸が飛んできた。
「……随分と物騒な仕打ちではありませんか」
私はとりあえず弾丸を指で止める。
それにより近くの女が驚きの表情を見せた。
「な!?」
「今のは敵対行動と認識してもよろしいですか?」
私は弾丸を落としていく。
まったく弾丸一つで落とせるって随分と舐められたものですね。
私はとっても不愉快です。
だって弱者に舐められたのですから。
「……総合戦闘能力1853!?」
「なんですかそれ。異世界でお決まりのステータスってやつですか」
「お前、何者だ?」
「失礼。私は神崎海。異世界アンチでございます」
さて、異世界でイキった人。
一度はギタギタにしたい存在筆頭ですので少しばかり楽しみですね。
「綾人様……」
「ケレブリルは下がってろ」
「お話は終わりましたか。さて格の違いを教えてあげましょうか」
私は思いっきり踏み込んだ。
すぐに服の襟からナイフを出して綾人の首に軽く当てていく。
「強いのは異世界だけ。現代ではとっても弱いみたいですね。そんなんじゃ学校で虐められる生活に逆戻りですよ」
はい!
決まった!
良い感じに決まりました!
今の私って最高にカッコよくないですか!
「ケレブリルさんでしたっけ。あなたが撃つよりも早く彼の首を切れますので覚えておいてくださいね」
何度思い描いたシュミレーションか!
圧倒的な力を見せつけて余裕の表情を見せる!
人生で一度はやりたい動作であった!
ついにこれが叶ったのだ!
「俺は異世界で魔王を倒した男だ。この程度で……」
「魔王を倒した? 安心してください。現代魔王の真央はあなたが殺せるほど甘くはないですから」
さて、今日はケーキでも食べましょう。
夢が一つ叶った記念日です。
少しくらいの贅沢は良いでしょう。
「……二十三の神器。それを使うしかねぇか」
え?
ちょっと待ってください!
それは反則ですよ!
神器なんて一つでどれだけ厄介だと……
「……魔王剣“フォロボスナ”」
「は?」
そう言うと彼はバッグから大剣を出した。
あのバッグは無限収納だったりするんだろう。
お約束はきっちり守るんですね。
しかしそんなことより……
「すみません。それ魔道具じゃ……」
「この力を見抜けぬ雑魚か。これは異世界の魔王から奪い取った闇を滅ぼす……」
なにその特大ブーメラン!
まぁ百聞は一見にしかずだ。
私は回れ右して家に戻る。
「待て! 逃げるのか!」
それから家の物置に走った。
たしか桃花はここに置いていたはず。
「ありました。聖槍クリシャルス」
真央から貰った桃花の槍。
凄く持ち運びにくい武器だ。
やはり携帯性に優れるハンドガンが最強!
それから私は傷つけないように丁寧に持ち綾人のところへ戻る。
「遅くなりました」
「おい、それって……」
「聖槍クリシャルス。魔道具ですよ」
「どう見ても神器じゃねぇか! いや、それ以上の兵器か?」
神器はもっと覇気がある。
魔道具なんかとは違う。
「はぁ……魔道具が神器扱いとは程度が知れます」
「ほんとに何者だよ……」
「だから神崎海って何度も名乗ってるじゃないですか」
「……名前を聞いてるんじゃねぇよ」
とは言うが本当にそれ以上はない。
あと言えることは和都君の彼女ってことだがそれを言ったからなんだという話になるし……
「海ちゃん。終わった?」
「とりあえず神器と魔道具を吐き違えてたのでその訂正をしてました」
「海ちゃんは優しいね〜」
なんか間違われるの癪ですし。
神器と魔道具が同等に扱われるのは少しだけ気分が悪い。
「……総合戦闘能力1902?」
「ん。どうしたの?」
「……ハッハッ。ついにバグった! 世界がバグった!」
あら壊れてしまいましたよ。
氷でも持ってきましょうか……
「僕は最強なんだ! 世界がおかしいんだ!」
「……とりあえずケレブリルさん。落ち着いたら再度呼び鈴を押してください」
「は、はい」
言動から察するに一過性のものだろう。
放っておけば治る……多分。
「みんなどうしたんです?」
戻ろうとした時だった。
ルプスが気になったのかひょこひょこと来た。
「……総合戦闘能力E。こいつは雑魚か。まぁアルファベット表示なのが気掛かりだが恐らくアップデートされたんだろ」
違います。
恐らくそれはエラーのEです。
ランクのEじゃないです。
電卓で数字を打ちすぎると出たりするでしょう?
間違いなくそれですよ。
「みんなどうしたの?」
「なんでもありませんよ。戻りましょうか」
「うん!」
「それと綾人さん。この子に手を出したら今度は首を掻っ切りますのでご了承ください」
私はニッコリと笑顔を作る。
最近なんとなく笑顔の作り方が分かってきた。
そして私は家へと戻った。
「それと桃花。明日アララト山に行きますよ」
「分かった。それまでに準備しとくね」
まずはノアの方舟だ。
話はそれからだ。
「ルプス。響。あなた達はどうしますか?」
「考えてみたら意見を聞いてなかったので」
「行くに決まってろだろ。拙者は真央にもう一度会って真意が聞きてぇ」
「ルプスも行くですよ! 私がいなきゃ話にすらならないと思うから!」
ルプスの話は響から聞いている。
獣化夜桜と互角以上に戦える戦闘能力。
間違いなくこの中ではトップクラス。
この小さな体のどこにそんな力が……
「ありがとうございますね。それじゃあ明日のアララト山にお付き合いしてもらってもよろしいですか?」
「当たり前だ」
さて、主な行動はこの四人か。
荷造りを早く済ませねば……
「それと和都君は家に帰っていてください」
「……分かった」
「悪く思わないでくださいね。活躍する機会が無いから連れていかないだけですから」
ぶっちゃけ邪魔だ。
何の能力も持たない一般市民などいまさら……
「それにアニメ関係の仕事も忙しいでしょう?」
「……そうですね」
「私達の方は私達で全て解決しますから気にしないでください」
さて、どうしましょうか。
とりあえず綾人待ちですね。
「そう言えば海ちゃん」
「どうしました?」
「あの遊園地の時に国内全域の電子機器が壊れたみたいなんだよ。恐らく電磁パルス兵器だよ」
真央の仕業か……
なんてものを……
「あれ、でも桃花は電話を……」
「それは携帯とか全部一から作ってミネルさんにだけ連絡したんだよ。まぁ時間がかかったけど」
そういうことか。
しかし疑問が一つ……
「それで何が言いたいんですか?」
だから何だと言うのだ。
大した問題では……
「遊園地のあれ。まだ外には一切出回ってないの」
なるほど。
そういうことか。
なんて厄介なことをしてくれたんでしょう……
「桃花。車の準備をお願いします」
「はーい」




