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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
20/305

20話 空VS白愛

 俺は持ち場に着く。

 俺は親父と戦いで初めて実践を経験した。

 多分三秒は立っていられるようになったと思う。

 桃花は先程のが嘘のようにピンピンしてる。

 間違いなく重い一撃だったはずだ。

 やはり桃花も規格外だ。

 だけど白愛はその上を行く規格外。


「空様が動いたら開始でいいですね?」

「あぁ」


 そして試合が始まった。

 もちろん防具の一つもない。

 昔は手合わせの時は防具を付けようとしたが白愛に止められてしまったのだ。

 どうも痛みを伴わない試合には勝負がないらしい。

 まぁその結果が防具を着て動くのに違和感を感じるようになったのだが……

 とりあえず俺は白愛に近づくために踏み込む。

 その時だった。


「まだまだですね」


 二歩目を踏み出そうとした時には白愛が目の前にいた。

 白愛が思いっきり俺を蹴り飛ばした。

 もちろん対応出来るわけなく体は吹き飛ぶ。

 痛みのあまり吐きそうだ。

 何度もやってるとは言えこの痛みは慣れない。

 とりあえず言えることは一つだ。

 今回も勝負は一瞬でついたのだった。


「0.64秒ですね」

「海。なんの時間だ?」

「お兄様がやられるまでの時間です」


 海はどうやら俺が負ける時間をストップウォッチで数えてたらしい。

 それを伝えるのがとても性格が悪いと思える。

 しかし目に見えてやられた秒数が分かると辛いものがあるな。

 

「ちなみに桃花は11.8秒よ。実に十八倍もの差が付いてるわね」

「次は海様ですよ」


 その瞬間、海の顔が青ざめた。

 海はどのくらい持つのだろう。

 しかし逃げは許さない。

 海の抵抗も無意味で試合が始まった。

 もちろん秒殺であった。


「0.73秒だな」

「やっぱり普通は白愛相手に十秒も持たないわよ」


 相変わらずの規格外。

 恐らく束になっても結果は変わらないだろう。


「そもそも私はまだ本気じゃないし」


 ……え?

 桃花の言葉に唖然とする。

 

「私の本職は魔法使いだよ。私は一度は魔法を使ってないよ」


 ていうかこの世界に魔法あるのか。

 普通は驚くべきカミングアウトだが何となくそんな気はしていた。


「それでどうして魔法を使わなかったんだ?」

「私が使うのは宝石魔法。使う度に宝石を消費するからね」

「なるほど」


 納得しざるおえない理由。

 しかし魔法を使わずとも俺達には十分勝てるだろう。


「ちなみに私は主に関節技がメインですので」


 海は関節技なのか。

 それだったら近づかなければならない。

 白愛との相性はこの上なく最悪だな。


「そういえば海」

「なにかしら?」


 丁度良い機会だし海の口から聞いておこう。

 昨日の夜は盛り上がりすぎて聞きそびれたからな。


「土曜日に白愛と結婚するのは本当か?」

「えぇ。教会で式も開きます。お兄様も誘いますから指をくわえて見ててくださいね」


 相変わらず酷い言い様だ。

 しかし本当に結婚式を行う事が確認出来た。

 そして今日は水曜日だからあと四日か。


「考えなおすつもりはないんだな?」


 念のためにもう一度聞く。

 おそらく訂正することはないだろう。


「微塵もないわ」


 海は強く言い放った。

 決意は硬いと改めて分かる。

 でも結婚を中止させる方法はある。

 親父の記憶を消す能力で海から結婚関連の所だけ無くせばいい。

 しかし素直に親父が協力するとも思えないしそんなことをするつもりはない。

 それは最後の手段だ。


「お兄様はあの時のゲームを受けた時から詰んでたんです」

「それはどうかな?」


 俺はわざと不気味な笑みを浮かべてそう言う。

 出来る限り海に警戒させる。

 そしたらそこから隙が生まれるかもしれない。


「いったい何をする気ですか?」

「それは内緒だ」


 しかし今の時点で策なんかなにもない。

 だからこそあると思い込ませる事に意味があるのだ。


「まぁいいです。お兄様が何をしようと白愛は私のものですから」


 なんという自信の強さだ……

 まぁそれが海の強さとも言えるが。


「無駄話はその辺にしてそろそろ再開しますよ」


 白愛が試合を終えたらしくこちらに来る。

 さて、そろそろ休憩も終えて再開するか。


 ◇ ◇ ◇


「さて、そろそろ桃花様達のお父様方がお見えになる頃ですから準備をしましょう」


 物凄く疲れた。

 いつも通り何度も蹴られた。

 身体中が痛い。

 そして白愛が家の中に戻っていく。

 桃花もフラフラしながら家に入った。

 さて、俺も入るか……


 そう思った矢先だった。


「な、なんでお前が佐倉さんの家にいるんだよ!それに海ちゃんまで!」


 道路から聞き覚えのある声が聞こえたのだ。

 間違いなくこちらに向けた声。

 海も興味が惹かれたのか足を止めた。

 俺は声のした方を見る。

 叫んだ相手はファミレスで桃花と俺に絡んできたクラスメイトの竹林か。

 しかし桃花達はもう声の届かない部屋の中にいる。

 桃花に冷たく何かを言われることはないだろうな。


「あら? 竹林さんがなぜここにいるのかしら?」


 海がそう尋ねる。

 竹林はその一言で黙ってしまう。

 海のこの他者を見下したような声。

 初見なら動揺するだろうな。

 は個人的に海って感じがしてかなり好きだが……


「まさか、桃花ちゃんの言ってたストーカーってあなたの事かしら?」


 こいつストーカーだったのか。

 だとしたら桃花はなぜ放置したのだろうか。

 間違いなく桃花ならその程度の対処は容易かったはずだ。

 それとそんな話を桃花から一度も聞いてない。

 もしかしたらファミレスで会ったのも偶然じゃないかもしれないな。


「う、うるさい! ていうか神崎! 佐倉さんに飽き足らず妹にまで手を出すなんて! この性欲猿が! それに兄相手に股を開く妹も妹だ!」


 カチンと何かがキレる音がした。

 間違いなく海がキレている。

 絶対に海の方を見てはいけない気が凄くする。

 まぁあんな事言われてキレない女性は中々いないだろう。

 しかしそれに気づかず竹林は語り続ける。


「僕なんか佐倉さんにプレゼントを渡しても受け取ってもらえないし盗聴器をカバンに仕込んでも気づかれて部屋の中の声は一切聞こえない! だから仕方なく佐倉さんが鼻をかんだティッシュをゴミ箱から漁りコレクションする日々だ! そして佐倉さんと海ちゃんが今日学校休んだ所から2人が百合プレイしてると思って早退してここに来てみたらまたお前だ! 神崎!」


 お前も百合好きなのかよ。

 百合って凄い人気なんだな。

 それにしても色々と凄いな……


「ねぇ」

「な、なんだい海ちゃん?」


 海にちゃん付けとは桃花以外がやるとなんか気持ち悪いな。


「発言には気をつけた方がいいんじゃないかしら?」


 凄く濃密な殺気を放ちながらいつもより一層冷めた声で告げていく海。

 海はそのまま竹林の方向に向かっていく。

 竹林は完全に足が震えていて動けないみたいだ。


「それに盗聴器なんて気持ち悪い。あなたはされた女性の気持ちを考えた事ある?」


 珍しく正論を言う海。

 今の海は今までの海で一番怖い。


「なぁ海」

「なんですか? お兄様。私は少し忙しいのです」

「コイツをどうするつもりだ?」

「そうですね。とりあえず埋めますか?」


 海が少し悩んでそう言った。

 内容が物騒だ。

 そして竹林の方を同情するように見ると人影があった。

 竹林はそれに気付かず叫び始める。


「ぼ、僕を無視して話を進めるな!」

「なぁ竹林」

「な、なんだ?」

「後ろ見よ?」


 竹林が後ろを振り向くとそこには凄く紳士でダンディーな感じの男の人と白のドレスに白の日傘を指した真っ白な貴婦人らしき人が立っている。

 紳士な人は竹林に話しかける。


「ウチの愛娘になにようかね?」


 話の文脈から察するにおそらく彼は桃花の父親だ。

 つまりエニグマの職員だ。


 彼の言葉がこの一体がヒンヤリとした。


 さて、どうなるか。


 俺は彼の持つ威圧感から少し冷や汗をかいた。


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