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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
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2話 買い出しとチョコ

「空様。起きてください」


 枕元でそう呟く白愛。

 彼女が僕を起こすのはいつものことだ。


「もうそんな時間か」

「はい」


 彼女は既に着替えている。

 そういえば今日は買い出しに行くと言っていたな。


「早く顔を洗ってきてください」

「分かってるよ」


 僕はベッドから出て洗面に行き顔を洗う。

 冷たい水が寝惚けていた僕の目を覚ます。


「白愛。着替えはあるか?」

「はい。こちらをどうぞ」

「ありがとう」


 黒いシャツとジーパンを受け取りそれを着る。

 サイズにも問題無いし十分暖かい。

 これにコートを着れば外に出ても問題ないだろう。


「朝ご飯は既に出来ています」

「今日のメニューは?」

「フレンチトーストでございます」


 フレンチトーストか。

 朝食としてはピッタリだろう。

 僕はそのままダイニングに行く。

 ダイニングに行くとフレンチトーストが丁寧に盛られていた。


「蜂蜜はお好みでどうぞ」


 その言葉と共に近くに蜂蜜の入った瓶が置かれた。


「いつもありがとな。いただきす」


 白愛は軽く微笑む。

 僕も軽く笑い返してナイフとフォークで一口サイズに切っていく。

 フレンチトーストは柔らかくナイフを入れただけでスッと切れてしまう。

 僕はそれをフォークで刺して口へ運んだ。


「やっぱり美味しいな」

「勿体なきお言葉です」


 そういえば白愛が蜂蜜を置いていた。

 恐らく蜂蜜をかけるとより美味しくなるのだろう。

 そう思いスプーンで蜂蜜をすくい上げてフレンチトーストの上に丁寧に垂らしていく。

 そして迷わず口に運ぶ。


「めちゃくちゃ美味いな!」


 凄く蜂蜜と合っている。

 程よい甘みにこの溶けるような感触。

 ほんとに凄い。


「ごちそうさま」


 それから僕はすぐに食べ終えた。

 あまりにも美味しいのだから当然と言えば当然だ。


「それでどこに買い出しに行くんだ?」

「折角ですので車を出して少し遠くのスーパーに行こうと思います」

「分かった」


 一応、家に車はある。

 何故か親父が残していったのだ。

 そして白愛は運転免許を持っている。


「もうそろそろ行きますから準備してください」

「僕は何時でも大丈夫だ」

「では、行きましょうか」


 僕はしっかりと鍵を閉めて家を出る。

 鍵が閉まったのを確認すると駐車場へと移動する。

 ウチの車は綺麗な青色の車だ。


「どうしたんですか?」

「いや、なんか胸騒ぎがしてな」

「そうですか」


 何故か外に出た時から胸騒ぎが止まらない。

 凄く良くない事が起こる。

 そんな気がしてならない。


「きっと気のせいですよ」

「そうだといいな」


 しかしどうする事も出来ない。

 僕は不安を覚えたまま車に乗り込んだ。


 ◇ ◇


「相変わらずここは大きいな」

「そうですね」


 あれから少しばかし時間がかかったが現在は目的地であるスーパーにいる。

 時間で言えば昼食の時間だろう。

 ここのスーパーは中々に大きく品揃えも多い。


「空様。ケバブの屋台が出てますね」

「珍しいな。ちょっとお腹空いたし食うか」

「そうですね」


 僕はそのまま屋台のところに行きそこにいるおっちゃんにお金を渡す。


「二つお願いします」

「あいよ」


 目の前の肉塊から豪快に肉が切られていく。

 切られた肉はパンに挟まれ渡される。

 僕はお礼を言って受け取り白愛の元へと向かう。

 流石に二つは少しだけ持ちにくいな。


「ほれ」

「ありがとうございます」


 中々に肉が詰まっている。

 かなり食べ応えはありそうだ。

 僕はそのままガブリつく。

 噛んだ瞬間に肉汁が溢れて更にトマトの甘みやソースとの絡みがとても良く美味しいとしか言えない。


「そういえば今日は何買うんだ?」

「そうですね。とりあえず野菜と肉類を買おうかと」

「なるほど」


 幸いにも車で来ているし運ぶのには困らない。

 冷蔵庫も空だし場所にも困ることはないだろう。


「食べ終えましたし行きましょうか」

「そうだな」


 そして店内へと足を運ぶ。

 そういえばそろそろ菓子類が尽きかけていた。

 今、補充するべきだろう。


「とりあえず野菜から買いますか」

「そうだな」


 でも菓子は最後でもいい。

 とりあえず食材を買わねば……


「今日の晩御飯どうするつもりだ?」

「そうですね。まだビーフシチューの残りもありますし……」


 つまり夕食から決めるのは無理か。

 思いついた野菜をカートに入れていくしかないな。


「人参に茄子にキャベツにピーマン」

「あとは玉ねぎとトマトとスイカ……」


 あれ、今おかしいのが聞こえたぞ。

 僕の聞き間違いで無ければ“スイカ”と言った。

 それは間違いなく今の時期には取れないものだ。


「スイカは野菜ですよ」

「違う。今は冬だ」

「そういえばそうでしたね」


 わざとボケてるのか天然なのか凄く分かりにくい。

 まぁ気にしたら負けだ。


「とりあえず傷みとはどうにか出来ますから気にしないで大丈夫ですよ」

「分かった」


 どうにか出来るって言うがどうするつもりなのだろうか。

 きっと白愛の事だし何かあるのだろうが……


「……野菜だけでカート埋まりました」

「少し予想外だな。とりあえずお会計済ませてから肉類を買うか」

「そうですね」


 そしてレジに並び一旦お会計する。

 それにしても車まで運ぶのが面倒だな。


「私がやっときますから空様は先に肉を選んでといてください」

「悪いな」


 白愛がそう言うなら全て任せてしまおう。

 僕は白愛を一人残して肉のコーナーに行った。


「……何買えばいいか」


 肉と言うが色々とある。

 牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などだ。

 更にそこから部位に分かれるから量は豊富。

 僕は一通り見るが一つだけ怪奇な物があった。


「……蝙蝠(コウモリ)肉?」


 そこには蝙蝠が丸々一頭袋に入れられていた。

 たしかに蝙蝠が食べれるのは知っている。

 でも、こんな場所でお目にかかるとは思ってなかった。


「蝙蝠肉ですね。味は鶏肉に近いですが弾力はあまり無くて脂が強いです」


 白愛がスっと話に入ってくる。

 どうやら野菜は既に運び終えたらしい。


「白愛なら料理出来るか?」

「余裕です」


 その言葉を聞いて安心した。

 僕はそのまま迷わずカゴに入れる。


「そういえばもうそろそろワニの解体ショーがあるとか……」


 ホントにここがスーパーか疑いたくなる。

 マグロの解体ショーは聞いたことあるがまさかワニの解体ショーとは……


「見ます?」

「いや、いい」


 面白いかもしれないがそれだけ混んでそうでもある。

 またの機会にしよう。


「白愛は欲しい肉あるか?」

「とりあえず一通りお願いします」

「了解」


 白愛に言われた通り僕は牛肉に豚肉に鶏肉。

 目に付くものを端ッからカゴに入れていく。


「あとは菓子類だな」

「そうですね。飴もチョコも切れかけてますもんね」


 流石にチョコが無いのは精神的にキツい。

 早く補充しなければ……


「とりあえず例のチョコでいいですね」

「あぁ」


 例のチョコ。

 それは味こそイマイチだが一キロ入ってワンコインという破格の値段設定だ。


「三袋でいいですか?」

「問題ない」


 基本的にそれは常に貯めている。

 チョコが無い生活は少しばかり考えにくい。

 僕の体は糖分で出来ている。

 血潮はカカオで心は砂糖。

 すなわち僕という人間はチョコで構成されていると言っても過言ではない。


「とりあえず買うのはこんなもんでいいですか?」

「あぁ」


 野菜に肉にチョコに飴。

 必要なものは全て買った。

 そのまま会計を済ませて車に運ぶ。


「それじゃあ帰るか」

「そうですね」


 白愛は車に乗りエンジンをかける。

 もう時間は夕方だ。

 思ったより長い買い物になってしまった。


「空様。結局何も無かったではございませんか」

「そうだな」


 あの胸騒ぎも結局、何でもなかった。


「まぁ帰ってる途中で事故に遭うかもしれませんが」

「……それは洒落にならない」

「もちろん冗談です」


 とりあえず現実にならない事を祈ろう。

 まぁ白愛の運転に限ってそんな事はないと思うが。


「……怖いくらい安全に進んでます」

「安全より良いものなんかないよ」


 結局事故が起こる事なく無事に家に着いた。

 着いた時には完全に夜。

 やはり冬は日が落ちるのが早い。


「さて、荷物を運びますか」

「そうですね」


 この量を一回で運ぶのは難しい。

 とりあえず二回か三回に分けねば。

 僕は右手にチョコを持ち白愛は両手で野菜を抱える。

 そして家に入ろうとドアノブに手を掛けた時だった。


「……あれ?」

「どうしました?」

「鍵が空いてる」


 おかしい。

 しっかりと鍵は閉めたはずだ。

 なのにどうして空いている。


「随分と帰りが遅いのですね。お兄様」


 そして家の中には見ず知らずの少女がいた。

 僕を“お兄様”と呼ぶ謎の少女が……

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