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世界調整  作者: 虹某氏
4章【嘘】
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188話 竹林響の奮闘

 拙者は必死に走っていた。

 とりあえず遊園地から出た。

 ここから学校までかなり距離がある。

 全て手遅れになる前に……


「……響さん!」

「ルプスか。どうした? 空達は?」

「パパ達なら楽しんでますよ。必死に走る響さんを見かけたのでパパ達に断って少し抜けてきました」

「そうか」


 まぁなんでもいい。

 今はそんなことより……


「真央が何かしたんですか?」

「どうしてそれを……」

「野生の勘です。そろそろ動くと思ってた頃ですから。それで場所はどこですか?」

「学校だ」

「はやく行きますよ!」


 待て、ルプスがいても意味がない。

 こんな幼女に何が……


「あなた一人じゃ夜桜の対処出来ないでしょ。だから私が手を貸してあげますよ」

「……ルプスなら出来るのか?」

「よゆーです!」


 今はルプスを信じよう。

 空達の娘の力を信じよう。


「響さん。私の背中に捕まってください」

「拙者一人でも走るくらい……」

「あなたじゃ遅いです! 間に合わなくなります!」


 そう言われて拙者は半ば強引に手を取られた。

 そのままルプスは駐車場を向かう。


「ここはバイクを使いますよ」

「運転出来るのか?」

「ママから一通りの乗り方は教わってます。ここから学校までなら一時間近くで着くでしょう」

「おい、信号とか……」

「そんなのは無視です! 今はそんな事を言ってられる事態じゃないでしょ!」


 ……それもそうだな。

 今はルプスに任せてるしかない。


「っておい!」

「鍵あったら運転出来ませんから!」


 ルプスは素手で鍵を破壊していた。

 なんて強引な解錠だよ……

 ていうかどんな握力してんだよ……

 さすが空と桃花の子供だ。


「しっかり私に捕まってください! しかしブラバとは良い機体なんてあった事に感謝ですね!」

「最高時速はたしか310kmだったか?」

「はい! 下手な新幹線より速いので絶対に私から手を離さないでくださいね! なんかの弾みに胸とか触っても大目に見ますから!」

「ていうか背足りないだろ!」

「そこは魔法でどうにでもするので安心してください!」


 本当に魔法って便利だよな!

 拙者も魔法適性欲しかったぜ。


「それじゃあ行きますよ!」


 それから凄い勢いだった。

 ジェットコースター並のGが襲いかかってくる。


「あそこのガールレール突き破りますね!」

「絶対死ぬって!」

「少しは私を信じろです!」

「ていうか雑木林の中を走るって……」


 今の速さは殆ど最大時速に等しかった。

 それなのにルプスは一切緩めようとしない。


「ここが最短距離なんだから文句言うなです!」


 それからルプスは容赦なく突っ込んだ。

 しかし一切のバランスを崩すことなくルプスは地面に着地してそのまま走り続ける。


「邪魔です!」


 しかも片手運転だ。

 空いた片手で邪魔する木を薙ぎ払っていくというこの上なく豪快っぷり。

 それでもなお速さを抑える気は毛頭ないらしい。


「て、おい! この速さで住宅街は不味いって!」

「知らねぇです」


 ルプスの暴走は止まらなかった。

 容赦なく街中を爆走していく。


「おい、目の前に子供が……」

「そういう時はこうするんですよ!」


 ルプスはそう言うとウィリーを始めた。

 それから迷わず地面を蹴り飛ばした。

 それによりバイクは空中を舞う。

 一体あの身長でどうやって足が届いたのか。

 そんなの考える時間すらない。


「ルプス! 着地点に子供が……」

「誰が二段ジャンプ不可能なんて言いましたか?」


 しかし摩訶不思議な事にバイクが空中で跳ねた。

 完全に物理法則を無視してやがる……

 もう考えるのが馬鹿馬鹿しい。

 こいつらに物理学とか生物学とか考えるだけ無駄でしかないな。

 そんなこんなで爆走すること一時間近くが経とうとしていた。

 たまに警察に追われるがルプスの空中走行の前では無意味であっさりと振り切れる。


「響さん! 学校見えましたよ!」

「なんだあの巨人は!」

「恐らく真央の一味でしょう! とりあえずそのまま学校に突撃しますよ!」


 そう言うと流星の如く学校にバイクが突撃した。

 途中でルプスはバイクを投げ捨てて巨人を叩いていた。

 拙者もルプスに続いてバイクを捨てる。

 よくよく見ると巨人の近くに生徒がいる。

 もう交戦中ってわけか……


「……大丈夫ですか?」


 ルプスは優しく声をかけた。

 しかし生徒は怯えても声も出せないようだ。


「私の名前は神崎ルプス! 間に合ったかな」


 それからルプスは自己紹介した。

 この流れは拙者もした方が良さそうだな。


「間に合ったようだな。体育館に全員いるってことであってるか?」


 いや、その前にとりあえず状況確認だ。

 少年の顔を見る限りその認識でOKか。


「あなたは……」

「拙者は竹林響! 主人公だ!」


 まずは何事も口に出すのが大事。

 少なくとも真央はそう言っていた。


「何者だァァァァァァァ!」

「言ったでしょ。私は神崎ルプス。ここであなたの物語は終了よ」


 そう言うとルプスは巨人の頭を払った。

 それと共に頭が吹き飛んだ。

 強えぇ……

 まさかここまでとは……


「おやおや騒がしいと思ったら響か。それにルプスまで」

「真央……」

「まぁ君ならここまで来ると思ってたよ。魔王として死なない程度に相手してやろう」

「お前の戦闘能力は皆無だろ」


 近くで良く見てきたから知ってる。

 真央は決して強くない。

 ただ怖いのは強い仲間がいること。


「……敵対するなら私も容赦はしないよ」


 それからスーも出てくる。

 彼女の能力は洗脳。

 対処の方法は無し。


「スー。今回は手を出すな」

「どうして?」

「私は響もルプスも好きだから敵対したとしても殺す気はさらさらない。悪くても骨折に抑えるよ。それに実践は良い勉強になるだろうから彼には経験を積んでもらいたいのさ」

「はーい。なら私は傍観します」


 舐めたことを……と罵倒したいが仕方ない。

 真央は拙者以上に拙者のことを知ってる。


「死月君」

「お呼びでしょうか。真央先生」

「響に授業をしてあげなさい。戦闘の授業だ。殺さなければ何をしても構わん」

「御意」


 真央がそう言うと死月先生が降り立った。

 明らかに格上だと分かる覇気を放っている。


「それと夜桜はルプスの時間稼ぎを」

「分かった」


 そう言うと夜桜は獣の姿になった。

 身長は相当デカイな。

 それに何より体全体から毛がムシャムシャと生えてきて鍵爪になっている。


「……獣化」

「ルプスは博学なんだな。じゃあな」


 そう言うと夜桜の姿は消えた。

 いや、違う。

 恐らく透明化だ。


「……透明になったくらいでアドバンテージを取ったとは思わない事だね」


 しかしルプスも異常だ。

 まるで見えてるかのように的確に蹴り飛ばした。

 さすが真央が強いというだけはある……


「……随分と面白いじゃねぇか!」

「まだ能力を隠してるね。でもどんな能力でも私が対応してあげるから安心して」


 もしも拙者一人なら夜桜で詰んでたな。

 まさかあそこまで強いとは流石に規格外だ。


「竹林。先生としてのアドバイスだが戦闘中の余所見はしない方がいい」


 そんな事を考えてる矢先だった。

 拙者の真上から雷が降ってきた。

 死月先生の能力は雷か。


「五パーセント・魔神解放(アノイング)


 最初から本気で行くしかねぇな。

 そうしないとこいつには勝てねぇ!

 だがその前に……


「早く逃げろ!」

「は、はい!」


 まずはこの生徒を逃がさないとな。

 真央達に校門を通させないことくらいは出来る。

 たしかに真央の転移ならすぐだが真央は一人で攻め込むなんてリスキーな事はしない。


「雷撃武装」


 それから拙者の技に合わせるかのように死月先生も技を使う。

 雷を全体にまとわりつくような技だ。


「電気により筋肉の刺激。それにより本来人が出せない身体能力を誇る」

「な!?」


 その動きはあまりにも速かった。

 電気を纏いし先生の姿が拙者の目の前にあったのだ。


「……クッ」


 腹に蹴りが入る。

 中々に痛てぇじゃねぇか。


「響。私からのアドバイスだが死月先生は私の戦力の中でもかなりの上位に入る。油断はしないことだ」


 真央からの言葉。

 もうなりふり構ってられねぇか。


「……二十パーセント魔神解放(アノイング)


 十五パーセントを超えると頭が痛くなる。

 真央からも禁止されてる。

 でも今はやる時だ。


「時には何かを犠牲にしなければならない。響は本能的にそれを理解してるみたいだね。とりあえず正解だよ」


 ダメだ。

 意識が朦朧としてきた。

 魔神に体が持ってかれる。

 いや、耐えろ!

 拙者は主人公だ!

 その程度も耐えられずしてどうする!


「……早く決着をつけようぜ。死月先生」

「奇遇だね。私もこれ以上は君の命が危ないからあと五分以内に決着をつけるつもりだったんだ」

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