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世界調整  作者: 虹某氏
4章【嘘】
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186話 壊れさる日常

少しだけモブ目線……

 突然だけど俺は山口慎也(やまぐちしんや)

 どこにでもいる普通の私立高校に通う高校一年生だ!

 今日は待ちに待った終業式。

 俺の楽しい春休みライフが始まるぜ。


「おはよう。慎也君」


 この俺に話しかけてきた女の子。

 彼女は天野恵(あまのめぐみ)

 俺の幼馴染だ。


「春休み何しよっか?」

「水族館でも行こうぜ」


 そして俺の彼女だ。

 めちゃくちゃ可愛いと俺は思っている。


「そう言えば一昨日の抜き打ちテスト難しかったね」

「たしかにな」


 あれはかなりの理不尽だった。

 だって普通に大学の範囲を出してきやがった。

 もちろんクラスの大半の人が赤点だった。

 あの学校の先生は何を考えてやがる。


 それから少し雑談をしながら学校に着いた。

 俺は迷わず自分の席に座る。


「よ! 慎也。随分と遅せぇじゃねぇか」

「悪い。姉ちゃんの弁当を作ってたら遅れたんだ」


 席に座ると親友の修一(しゅういち)が話しかけてくる。

 俺はこういってはなんだがとてもリアルを楽しんでいるぜ!

 しかもこの高校は偏差値が恐怖の七十超えの親学校。

 もう将来は安定だね。


「はぁ……俺も海先輩みたいな人から弁当貰いたいな」

「あの人の話題よく聞くけど実際どうなんだ?」


 たしかバレンタイン祭というふざけたイベントの美少女ランキングのトップに君臨した人。

 なんでも超絶特進コースというよく分からないコースに入れられてるらしい。


「めちゃくちゃ可愛いぞ! あれはどっかのアイドルじゃねぇか?」

「さぁな。俺は顔も見たことねぇし恵がいるから」

「まったく。お前もバレンタイン祭に来れば良かったのによぉ。あれはめちゃくちゃ凄かったぜ。空先輩が桃花先輩に結婚指輪出してプロポーズしたり」

「……高校生で結婚って馬鹿だろ」


 この学校には三人の話題人がいる。

 一人は神崎空。

 彼は先程の話に出た神崎海という妹を持ちテストでは毎回のように百点を出す超天才。

 しかも運動神経も相当なものでめちゃくちゃイケメンでもある。

 そして彼も超絶特進コースとかいう謎のコースに所属している。


 それからもう一人は佐倉桃花。

 彼女は空先輩の彼女さんらしい。

 頭は相当良いがテストでは毎回九十点代で空先輩に一歩劣った印象を持つ。

 また少し前までテニス部のエースであったがつい最近から急に辞めていたりと謎か少し深い。

 それとおっぱいが大きくてめちゃくちゃ可愛い。

 もちろん超絶特進コースで俺達と関わることは無い。


 そして最後は神崎海。

 可愛い。天才。運動神経が良いの三拍子を揃えた超人でもある。

 胸はゼロに等しい。


「ていうか先生もよく許可してよな」

「この学校の先生いろいろとおかしいからな」

「それもそうか」


 そんな馬鹿話をしてるとチャイムが鳴った。

 それから先生が入ってくる。


「みなさん。おはようございます。今日は終業式だけですが気を抜かないでくださいね」

「はーい」

「それでは一列に並んで行きましょうか」


 俺達は私語の一つもせず並ぶ。

 さすが進学校で動きがしっかりしている。


「そう言えば終業式だから学年全員揃うし海先輩の姿を見れるんじゃないか?」

「言われてみればそうじゃねぇか! 楽しみになってきたぜ終業式!」


 しかし移動中は例外だ。

 少しばかし私語も増えて賑やかである。

 それから俺達は体育館に足を踏み入れた。


「あれ? 海先輩は?」

「いないなら休みじゃねぇの。話題人達は学校来てる日の方が少ないしな」

「そうか……」


 修一が肩を落とした。

 そんな気に止めるなって。

 この学校にいればいつかは会えるだろ。


「あと二分と三十二秒で理事長からのお話が始まるのでそろそろお静かにお願いします」


 そんな中で校内アナウンスが入った。

 何故かこの学校は秒単位で言う。

 とても不思議だ。


「理事長かぁ……」

「どうした?」

「あの人の話は頭おかしいからな」

「そうなのか」


 バレンタイン祭の時にチラッとだけ出て話したらしい。

 その時にどうもテロリストの話をしたとか。

 なんていうかウケを狙いすぎて滑った感じだ。


 そんな話をしてると後ろの扉が空いた。

 そこから噂の理事長が入ってきた。

 しかし理事長の隣にはありえない人物がいた。


「……嘘だろ」


 なんと理事長の隣にはマリンちゃんがいたのだ。

 マリンちゃんと言えばアイドル史上最強と言っても過言ではない人だ。

 何故そんな人が学校なんかに……

 当然のことながら周りはザワついた。


「静かにしたまえ。これだと私の声が聞こえないだろ」


 それから理事長はマイクを持って俺達に話した。

 理事長の言葉と同時に周りは渋々静かになった。

 みんなマリンちゃんについて話したいのだ。


「ねぇ。うちの魔王様が話すんだからそれなりの態度があるんじゃないかな? 命令よ。喋るな」


 しかし不思議な事が起こった。

 マリンちゃんの言葉と共に俺達は口が開かなくなったのだ。

 体が言うことを聞かない。

 これはなんだ!

 それに魔王様って……


「魔王様の前で図が高いわ。頭を下げろ。人間」


 それからマリンちゃんは再び言葉を放った。

 謎の力により頭が地面に押し付けられる。


「スー。そこまではしなくていい」

「魔王様の温情に感謝するのね」


 それと共に一気に体が楽になった。

 一体あれはなんだったんだ……


「まず最初に自己紹介といこうか。私は神崎真央。この世界初にして世界最後の魔王だ」


 魔王。

 いつもなら笑い飛ばしてるだろう。

 でもマリンちゃんのあの謎の力を見せつけられたあとでは頷くしかない。

 間違いなく彼女は人間じゃない。


「……もしかして」

「修一。どうした?」

「あの自称魔王の名字は神崎。それで話題人の空先輩と海先輩の名字も神崎だ」


 まさか関係があると言うのか!

 だとしたらどんな関係だ……


「察しの良い賢き者は気づいたかもしれないが私は空と海の母親だ。この学校に通う者なら空か海の名は一度は聞いたことあるだろう?」


 なんて態度だ……

 こちらが知ってること前提に話が進められる。

 たしかに知っているが……


「そうだ。事態が飲み込めないみたいなので一つ選別してあげるよ」

「真央。どうするつもり?」

「今日一日は魔王様って呼べって言っただろ。とりあえず銃を貸してくれ」

「はーい」


 それから魔王は銃を受け取った。

 魔王はニヤリと笑い銃をこちらに向けた。

 まさか……


 気づいた時にはもう遅かった。

 バンッという銃声と共に銃弾が飛んだ。

 そしてその弾丸は最悪な場所に当たった。


「……え?」

「めぇぇぇぇぐぅぅぅぅみぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 俺の最愛の彼女に当たったのだ。

 俺は人を掻き分けて恵のもとへと行き抱き上げた。

 しかし既に冷たく体温は一切ない。

 恵はもう死んでいたのだ。


「このように私は殺すのに一切の躊躇いはない。今から二時間後にテロリストをここに呼び込む。もちろん体育館は全部鍵を閉めるから逃げられるとは思わないことだ」


 殺す! 殺す! 殺してやる!

 あのクソみたいな魔王を打ち殺してやる!


「しかし君達にチャンスをやろう。この生徒の中には夜桜っていう私の部下がいるんだ。もしも彼を見つけて殺すことに成功したならテロリストは撤退させて今まで通り普通の学校生活を送らせてやろう」


 魔王は淡々と語っていった。

 人を殺しておいて罪の意識も覚えないか!


「バレンタイン祭の時にテロリストの事は話しただろう。聡明な君達の事だからきっと対策はしてると私は信じてるよ」


 俺はひたすらに憎悪の目を向ける。

 しかし魔王はそれに一切気付かない。

 そんな中で声を張り上げたのは修一だった。


「誰があんなのを本気だと思うんだよ! ふざけるのもいい加減にしろよ!」

「それは冗談だと受け取った君達の自己責任だろ」

「それにそんな事したら警察が……」

「スー。現実を教えてあげなさい」

「はーい」


 それから不思議な事が起こった。

 なんと三年生全員が殺し合いを始めたのだ。

 全員が獣のように爪を立てて互いが互いを引っ掻き回していく。

 時には噛みつき肉を食い破り、首を力強く締め付けて互いに殺していく。

 素手による殺し合いが行われていたのだ。

 あれは人間じゃない。

 ただの獣だ……


「彼女の能力は洗脳。このように人を操るのは朝飯前だ。もし警察が来たとしても返り討ちに出来ると思うよ。それに外には一切の情報を漏らしていない」


 ……能力?

 なにラノベみたいなことを言ってるんだよ!

 そんなのが現実にあるわけないだろ!


「それともう一つ良いことを教えてあげよう。こんな事態になってどうして先生は動かないのかな?」

「まさか……」

「そう! 先生も全て私の手駒だからだ! しかも全員が能力を持っている。特に死月先生なんて雷を扱う能力で戦闘センスはピカイチだ」


 この場にいる先生は三十二人だ。

 その全員が能力を持っている?

 それで俺達の武器はない。

 もし戦うとしたら素手しかない……

 しかも誰一人として人を殺したことはない。


「まぁ中二病って言う人はこの状況を望んでいたんだろ。夢が叶って良かったじゃないか」


 初めて知った。

 俺は初めて知ったのだ。

 本当の絶望の味を。

 目の前で真っ暗になる感覚を……


 俺達はもう詰んでいたのだ。

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