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世界調整  作者: 虹某氏
4章【嘘】
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176話 桃花さん。絡まれて憂鬱

「つまりお前さん。痴漢をしたの分かる?」


 ……めんどくさ。

 せっかく空君の新しい服を買おうと遠出したのに電車に乗った瞬間これだ。


「しかもお前さん。かなりの進学校だよな。学校にバレたら大問題じゃないか」


 イラつきすぎて笑う気にもなれないかな。

 ぶっちゃけ真央ならそのくらい隠蔽してくれる。

 しかしもしもこれが普通の女子高校生にやってたらエロ同人が一冊書けるくらいの事になってるよ。


「だから私はしてないよ」

「ったく。これが目に見えないか?」


 そう言うと服を軽く脱いで胸元を見てきた。

 うん。ここら辺で一番強いヤクザの刺青だね。

 しかも小指もないからその一員か。

 で、だから?


「俺達は怖い大人よ。君の一生をめちゃくちゃにする事くらい容易いんだよ」

「なにをして欲しいのかな?」

「そうだな……抱かせろ」


 うん。殺していいよね。

 この指輪が目に入らないのかな。

 私は空君の女で君の女じゃないの。

 小学生でも分かるんじゃないかな?

 しかしキレてしまったものは仕方ない。

 折角だからそのヤクザのグループを皆殺しにしてあげるとしよう。

 この私が直々に。


「嫌」

「俺は警察とも繋がりあるのよ。もしも断ったら……」


 とりあえず右手首を握る。

 まだ骨は折らなくていいか。

 拷問に使える部位は残しておかないとね。


「あ?」

「路地裏に行こっか? それも人目が絶対に付かない場所がいいかな」

「お、お前誰に向かって……」

「雑魚。雑魚に向かって口を聞いてるつもりだよ」


 それにしても良かったねー。

 人生の最後に私みたいな美少女に触ってもらえて。

 死んだら地獄で鬼さん達に自慢していいよ。

 私はそう頭の中で言いながら路地裏に連れ込んだ。


「あんまり舐めたこと言ってんじゃねぇよ!」


 男は拳を振り上げて殴りかかってきた。

 とっても遅いのです。

 例えるならハエが飛ぶような速さだけどそれだとありふれた表現で面白くない。

 うーん。これは風船が落ちるくらいの速さかな。

 まぁ回避しないけど。


「ねぇ……手加減はいらないよ?」

「は?」


 私は小指で男の拳を止める。

 もうやっぱり種族単位で人とは差があるよね。


「い、今のはまぐれだ!」


 何度も連続でパンチしてくる。

 私はそれを小指だけで全て捌いていく。

 さて、飽きた。

 いい加減拷問して本部の場所を聞くとしよう。


「待て」


 私は拳を握った。

 それで手に軽く力を入れて骨をゴキゴキと砕く。

 まるで豆腐だな。


「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「いくら昼間で路地裏って言っても大声で叫ぶのは私は近所迷惑だと思うの」


 さて、そろそろお話しよう。

 小指がないから爪は十九枚。

 目は二つに耳は二つ。

 それと性器は一つ。

 やっぱりサンドバッグとしては剛田の方が優れてるかな。


「まずは私を嵌めようとした罪に片目貰うよ」


 ポケットから爪楊枝を出す。

 それを目に勢い良く突き刺す。

 爪楊枝は手軽に拷問出来る道具なので持ち歩いてる。

 それで跳ねた爪は私の服に触れる前に爪で弾いてと。


「ゴリゴリするのって楽しいよね」


 そのままゴリッゴリッと。

 もうそんな泣いたら赤ちゃんみたいだよ。


「あ、悪魔……」

「聞きあげたこと言ったから爪を三枚貰うね」


 手でメシメシと剥がしていく。

 悪魔という罵倒は少し聞き慣れたからつまらないのです。


「おい、そこまでやる必要ないだろ」


 そんな時だった。

 私の腕が誰かに掴まれた。

 もう鬱々しいな。

 そう思い顔をあげるとそこには見知れた顔がいた。


「あ、竹林」

「……流石にここまでする必要はないはずだ」

「そうだ。ルプスにセクハラした件をちょうど良い機会だし精算させなきゃ」

「おいおい! どうして俺が拷問される事になってんだよ!」


 私は軽くデコピンする。

 それにより竹林は転倒した。


「ま、顔の知れた仲だしこのくらいでいいか」


 流石に友人を拷問したいとは思わない。

 この程度でいい。


「ていうか桃花。一通り見てたが何をされた?」

「電車に乗ってたら手首を掴まれて、耳元で逆痴漢したビッチだって言い触らすと言われた」

「最近は逆痴漢増えてるからそれを逆手に取った脅迫か」

「それで肉体関係求められたからキレて拷問なう」


 だって悪いの向こうだし。

 まぁ私が悪かったとしてもイラッときたら拷問することは否定しないけど……


「……普通に殺せばよくね?」

「やだ。苦しんでから死んでほしい」

「うわ、歪んでるなぁ……ていうかこの男ってヤクザじゃねぇか」

「そうだよ」


 そういえばあの噂。

 ヤクザも最近は使徒を雇ってるって話。

 どこまで本当だろうか。


「……拙者は降りるぜ」

「どうぞ〜」

「いや、そこは泣きつけよ!」

「だってヤクザ程度いまさら……」


 ぶっちゃけ足音一つで全滅出来る気がする。

 だって相手は人だし……


「そう言えるお前が怖いよ! ていうか普通に銃とか使ってくるぞ」

「……銃弾とか普通は当たらなくない?」

「ダメだ。こいつ」


 まぁ拷問再開しよ。

 ていうか早く場所を吐かせて私に手を出した事を後悔させて身の程を弁えさせないと。


「で、君が所属するヤクザの総本部の場所を教えてくれるかな?」

「おい、桃花。こいつは竜王飛影山岳組でここから三駅くらいのところにあるぞ」


 なにその変な名前。

 ちょっと笑いが止まらなくなりそうなんだけど。


「お、お前がどうしてそれを!?」

「あまり探偵を舐めるな」


 そういえば竹林って名探偵の孫だっけ?

 意外と情報収集能力は高いよね。


「とりあえずこいつは引っ張っていくか」

「そうだね」


 そうして私は少しだけ寄り道をすることにした。

 とりあえず彼の身は引きずって本部を目指す。

 本部の場所は意外とすぐだった。


「お邪魔します」


 私は迷わず入る。

 人数は十五人か。

 そして使徒が一人と。


「……お前ら下がれ。この女は能力者だ」

「あなたが使徒?」

「そうだ。俺は……」

「はい。さよなら」


 先手必勝。

 私は音の弾丸を飛ばして脳天を打ち抜く。

 変な能力持たれてるとめんどいしね。


「ひぇっ……」

「バン。バン。バン」


 一人一人ちゃんと撃ち抜いていく。

 まだ射撃精度が甘いな。

 もう少し練習しなきゃ。


「あと三人だね」

「こ、この化け物!」

「まぁ皆殺しだね」


 私は再び音の弾丸を飛ばす。

 一人。また一人と殺していく。

 さて、残りは私が持ってきた一人だけだ。


「ご、ごめんなさい! 生命だけは……」

「この世界には私みたいに絶対に喧嘩を売っちゃいけない相手がいるって良い勉強になったね」


 私は近くにあった銃を指紋が付かないようにハンカチで掴み彼に手渡した。


「とりあえず君が全員殺したって事で。ちなみに私のバックにも警察がいるから名前を出しても揉み消されるよ。それじゃあバイバイ」


 その時の男の顔は絶望に染まっていた。

 やっと私という存在を理解出来たようだ。

 どんなに足掻いても絶対に手の届かない聖域で私の前ではひたすらに目を付けられないように身を小さくするしかないということを。

 この顔を私は見たかったんだよ。


「しかし桃花もえげつないな」

「まだ甘い方だよ。本来ならあの組のヤクザ全員を拷問して殺すつもりだったもん」


 私は上位だ。

 人よりも生物学的に上位だ。

 人は私の理不尽を甘んじて受け入れるしかない。

 それが人として産まれた宿命だ。

 蟻が獅子に逆らえないようにね。


「まぁあの組は胸くそ悪い事件ばっかり起こしてたし妥当な結末だな」

「そうなんだ」


 死人に口なし。

 凄くどうでもいい。

 今の私には空君にどんな服が似合うかの方が重要だ。


「しかし新宿まで距離あるな。竹林。その胸糞悪い話を聞かせてくれる?」

「……随分と趣味が悪いな」

「だって暇なんだもん」

「いいぜ」


 私は竹林と電車に乗った。

 そういえば彼とどっか行くのは初めてだな。


「まず一つが女子高生の奴隷売買だな」

「あ、この世界にまだ奴隷あるんだ」

「当たり前だ。表沙汰になってないだけで数えきれないくらいある」


 なんでもその事件はある女性の手足をその女性にとって兄にあたる人物を唆して切り落とさせてダルマ状態にして性奴隷として売ったらしい。

 ちなみに主犯は時雨桃(しくれもも)という貿易会社の娘でその貿易会社が今回潰したヤクザと一山絡んでるとか。


「あとは体の弱い弟がいる姉さんを弟関連で適当に脅迫して犯して写真を撮ってそれでテンプレだがバラされたくなければ水商売しろっていうのもあったな」

「ふーん」

「それでその姉さんには彼氏さんもいてその彼氏さんは発狂して自殺するも失敗して植物状態だってよ」



 犯す以外でないの?

 胸くそ悪い=犯すが竹林の頭の中に完成されてるの?

 ていうか普通にセクハラだと思う。

 やっぱりこの変態は一回しばいた方がよくない?

 それと海ちゃんの事件の方が胸糞率高い。


『間もなく新宿〜新宿〜』


 あ、電車が着く。

 そろそろ降りる準備しよう。


「それじゃあね。私は空君の服を買ってくるから」

「え、拙者は……」

「バイバイ」


 電車の扉が閉まった。

 竹林が一人寂しく電車に連れていかれる。

 ていうか新宿では待ち合わせあるしね。


「ママ! 大丈夫だった?」

「よしよし。ルプスも一人でここまで来れて偉いよ」


 あの痴漢冤罪の時にルプスも一緒にいたのだ。

 流石にルプスの教育に悪いからということで電車に一人乗っけて新宿に先に行ってもらってた。

 少し誰かに絡まれる心配もあったがルプスは賢いし強いから大丈夫だろうって信用してね。


「そうだ。ご褒美にポテトチップス買ってあげるね」

「やった〜」


 本当にルプスは見てるだけで癒される。

 あとそろそろ空君の子供が欲しいな。

 帰ったら少し強請ってみよう。


「ルプスは妹か弟欲しかったりする?」

「高校生でそーいうのは早いと思う」

「そうかな? 何かあっても白愛さんいるし……」

「白愛さんは五歳児。私よりも年下で信用出来ない」

「そっか」


 少しあの人は育児の経験が無さすぎるか。

 空君の子供の件はまだ保留。

 とりあえず今は空君の服。


「それじゃあ行こっか?」

「うん!」


 そうして私は小さなお姫様と私の王子様の服を買いに街に潜っていった。


 ◆ ◆


「……母さん。これでいいかい?」


 私の前に狼の死体がドンと置かれる。

 目の前にいるのは私が森で拾った義理の息子。

 名前は適当にジョンと付けた。

 もっと言うなら私の異名である黒魔女の黒から取ってジョン・ブラック。

 彼は珍しき獣人族であり身長は2m近くもある。


「あぁ。ご苦労さま」


 私は手早く準備を始める。

 もうそろそろエニグマからの刺客が来る。

 私は人を殺した。

 数え切れないほど殺した。


「……本当に大丈夫?」

「心配しなくていい。いざとなったら君だけでも逃すさ」


 この子の名前は知らない。

 でもあの地獄から唯一救えた子供だ。

 誰か頼むから彼女だけでも安全な場所へ……


「やっぱり森を焼いたのはヤバかったか……」

「仕方ないだろ。あんな私の能力でも治せない病は初めて見た。あれを無くすには病原体と思われる森を焼き払い現況を消すしかなかったんだ」

「それをエニグマに説明は……」

「あの頭の固い連中は絶対に話を聞かないさ。それに森を焼いたことには変わりないから私は裁きを受けるさ」

「そうか」


 もう十分に生きた。

 死んでも心残りはないと思えるくらいには。


「安心しろ。君達が逃げる時間は稼ぐよ。黒魔女として……いや、【罪】の使徒として」

「そうか」


 私の能力は合成。

 戦闘面ではこの上なく弱い。

 でも日常生活では強い。

 簡単に言うなら薬を作る能力だ。

 どんな薬を作りたいかイメージすればその素材や作り方が分かる。

 間違いなく使徒の中でも異質な能力だろう。


「やっぱり年を取らない人は不気味なのかねぇ……」

「俺にとってはどうなろうが母さんだ」

「そうかい」


 でも最後に神様。

 一つだけお願いがあります。

 どうか彼等だけは生きさせてください……


「ジョン。変なことを考えるんじゃないよ」

「……わかってる」


 しかしあれは一体なんだったんだ……

 森を焼いた件とは別件で私は村に薬を届けに行った。

 そしたら辺り一面に死体が転がっていた。

 それだけならまだ良しだ。

 一番気味の悪いのは同じ顔の人間が何人もいて人を殺し回っていたことだ。


「……私が死んだ後も気を付けろ。間違いなくやばい事が起こってる」

「あの件か」

「そうだ」


 しかもその顔がエニグマのトップであるルーク・ヴァン・タイムだった。

 不思議な事に使徒の反応は無かったが間違いなく異常事態であることには変わりない。

 世界を調停するエニグマ。

 そのトップと同じ顔が何人もいて殺し回った。

 私はすぐさま表沙汰にならないようにジョンと謎のルークを殺し死体を誰か分からなくなるまで焼いたが……


「母さん……やっぱり俺……」

「言うな」

「でも絶対にエニグマは母さんを口封じで殺すつもりだよ!」


 私も想定した。

 あのルークはエニグマの物。

 それで実験にあの村を使いたまたま目撃した私達を口封じで殺す。

 さらにもっと言うならば森の病原体だってエニグマが私を嵌めるために用意した可能性すらある。

 しかしだとしたらエニグマは私に何を求める?


「言っただろ。裁きは受けると」

「それでも……」

「それに私があと二時間早く家を出ていたら村人を救えたのも事実だ。私は七つの大罪と呼ばれる程に嫌われる怠惰の罪を犯したのさ」


 しかしただ死ぬ気はない。

 せめて私の研究材料だけは未来のために受け継いでほしいものだ。

 そのためには私の身辺を捜査させるしかない。

 だったら無意味な抵抗をして私が何かを隠してると思わせるのが一番か。


「ほら早くお逃げなさい。私が盾になるから」


 勝負といきましょう。運命様。

 私が勝ったら彼等に幸福を与えてくださいね。

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