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世界調整  作者: 虹某氏
1章 【愛】
14/305

14話 親父

 家に入ろうとドアノブに手をかける。

 運命の歯車が狂い始める。

 俺の人生が一変した。

 もしもこの時に違う選択肢を選んでいれば……

 扉はギィィィと不気味な音を鳴らしながら開いた。

 そして家の中には凄く不気味な気配があった。

 間違いなく誰かいる。

 とても邪悪で嫌な気配だ。

 でも馴染みのある気配だ。


「……隠れてないで出てこいよ」

「気づかなければ楽だったのになぁ」


 トイレの扉が開きとても見た顔が出てくる。

 どうやらトイレに隠れていたらしい。


「……親父ッ」

「久しぶりだな。空」


 そこにはいたのは俺の父親。

 神崎陸(かんざきりく)だった。

 一体どうしてここにいる!


「とりあえず久しぶりに俺と握手しようや」

「……断る」


 しかし親父の様子がおかしい。

 まず口調が違いすぎる。

 親父の一人称は僕だ。

 親父に何があった?


「ほう?」


 俺は握手を断る。

 もちろん断ったのには理由がある。

 ずっと頭の片隅で考えていた事がある。

 それは親父の能力についてだ。

 白愛は神崎家の人は二十歳前後で能力に目覚めると言っていた。

 親父も神崎家の血が流れてる以上能力がある。

 そして白愛は俺が部分的な記憶喪失だと言っていた。

 さらに海の存在を隠し通した。

 存在を完全に隠すなんて無理だ……

 でもそれを可能にする能力が一つある。

 それならすべて辻褄が合う。


「親父の能力は触れた相手の記憶を消すとかそういう類の能力だろ」


 俺の部分的な記憶喪失はこいつのせい。

 海が周りにバレなかったのは親父が記憶を消して回ったから。

 そして親父の反応がない。

 どうやらビンゴらしい。


「それで何故かは知らんが僕が白愛と出会った時の記憶を消した。今回はどの記憶を消すつもりだ?」

「まさか俺の能力に気づくとはな。だがその気づいた記憶も奪ってやろう」


 親父との戦いが始まった。

 親父の右手が僕の頭を掴もうと接近してくる。

 俺はそれに対して親父の右手首を左手で叩き落とし右に顔面ストレートを入れようとした。

 しかし親父はニタァと気持ち悪い笑みを浮かべた。


 ――しまった!


「……ウッ」


 気づいた時にはもう遅い。

 腹にかなりの痛みが走る。

 親父は俺に膝蹴りを入れた。

 ここまで痛いのは予想外だ。

 鍛えられた筋肉。

 パワーは尋常ではない。

 あまりの痛みに俺は膝をついた。


「そうだ。記憶を奪う前に言っておこう。俺がこれから奪う記憶は暗殺姫関連のもの全てだ」


 ――それだけは絶対に渡せない!


 何故か分からないが頭の中で強くそう思った。

 しかし先程の蹴られたところの痛みで動けない。

 何とかして時間を稼がないと……


「……どうしてそんなことをする?」

「お前が暗殺姫の事を忘れたら暗殺姫は心に少なくないダメージを受けるはずだ。そしたら暗殺姫にだって触れる機会が出来る」

「一体白愛をどうするつもりなんだ!?」


 少しだけ腹が楽になった。

 あともう少しだけ時間を稼がせてくれ!


「もし暗殺姫が全ての記憶を失って俺に都合の良い記憶だけ植え付けられたらどうなる?」

「……まさか?」

「そうだ! 暗殺姫を俺達の命令に忠実な下僕にするんだ! 暗殺姫なら余裕でどこかの国の大統領すら殺せる! 暗殺姫が俺達の計画には必要なのだ!」


 こいつは間違いなく親父ではない……

 しかし長話のお陰でもう動ける。

 そして少し交えて分かった。

 親父もどきと俺の実力は五分五分だ。

 正面からやったら勝てない事はないだろう。

 しかし、アイツの手の平に触れたらそ終わりだ。

 そんなハンデがある状態で勝てる保証はない。

 今、選ぶのは間違いなく撤退。

 俺は起き上がり家の扉を蹴破り外に出る。

 扉が壊れたのは仕方ないとしか言えない。


 しかし――


 バンッ!


 そんな音が響いた。

 その音と共に右足に体験した事がない痛みが走る。


「誰が逃げていいと言った」


 銃まで持ってやがるのか。

 目撃者がいても記憶を消せばいいだけの事だから平気で撃てるわけか。

 現に俺は右太ももを撃ち抜かれた。

 激しい痛みが止まらないし出血も止まらない。

 でも今は逃げないとダメだ。

 痛みに耐えながら無理矢理足を動かす。

 不幸な事にここはマンションの二巻階だ。

 一階ならそのまま無我夢中で走ればいいのだがそうはいかない。

 だったら仕方ない。


 俺は二階から飛び降り一階に移動。

 そのまま不夜公園を目指して走る。

 そして俺は逃げながらスマホを出す。

 電話をするのだ。

 とりあえず今は逃げなければ。

 俺は迷う事なく雨霧さんに電話をかけた。

 雨霧さんが電話に出ると同時に要件を口早に言う。


「不夜公園に車で来てください!」

「……何があった!?」

「お願いします」


 逃げるなら車が一番だ。

 しかし運転の出来る白愛は今いない。

 拓也は未成年だし運転出来るとは思えない。

 なら成人である雨霧さんに頼るしかない。

 それに雨霧さんのところなら桃花がいる。

 エニグマという謎の単語。

 今はそれに頼るしかない。

 

 バンッ


 親父がまた銃撃してくる。

 弾丸は運良く外れる。

 それにしても銃が厄介すぎる、ら


「……隠れたいが血で場所がバレるな」


 俺は一目散に不夜公園を目指す。

 俺は今回三つの賭けをした。

 全部の賭けに勝たねば俺は死ぬ。

 一つ目の賭けは雨霧さんが来てくれるかどうか。

 二つ目の賭けは雨霧さんが車の免許を持ってるか。

 そして三つ目の賭けは俺が親父に捕まる前に不夜公園に行けるかどうかだ。


「逃がすわけないだろ」


 親父は先程から容赦なく銃撃をしてくる。

 とりあえずそれを止めさせねば。

 俺は大通りに移動した。

 記憶が消せると言ってもこれだけ人が多ければ全員の記憶を消すのは困難だ。

 そしてこの大通りを抜ければ不夜公園だ。


「クソッ」


 なんとか不夜公園に着いた。

 さらに雨霧さんはいて車もある。

 俺は無事三つの賭けに勝ったらしい。


「……雨霧さん」

「空! この怪我は!?」

「話は後です。とりあえず遠くに移動してください」

「分かった」


 車じゃなければ血痕でどこに行ったかバレてしまうところだった。

 親父が悔しそうにこちらを睨んでるのを確認した。

 しかしすぐに去っていった。

 その様子ならもう追って来ないだろう。


「とりあえず包帯だ。これを巻いとけ」


 車の中に包帯があるのはとてもありがたい。

 おかげで応急処置は出来そうだ。


「……何があった?」

「銃を持った通り魔に襲われた」

「そうか」


 神崎家や白愛の話はややこしくするだけだ。

 とりあえずはこれでいいだろう。

 雨霧さんも何かを察したのか深くは追求しない。


「一回俺の家に戻るぞ。それでいいか?」


 これ以上ないほど良い展開だ。

 あの家なら親父に割れてないから身を隠せる。


「家ならある程度医療機器がある。とりあえず止血ぐらいは出来るはずだ」

「……ありがとうございます」


 それから俺は佐倉家に移動した。

 それにしても疑わず来てくれた雨霧さんには頭が上がらないな。


「桃花! 医療機器を頼む!」


 家に着くと同時に雨霧さんが僕を抱き抱えてそう言う。

 この歳でお姫様抱っこは少しだけ恥ずかしいものがあるが我慢するしかないだろう。


「神崎君!? この出血は?」

「……話は後だ」

「とりあえず血を止めないとね」


 そして応急処置を始まった。

 二時間ぐらい経っただろうか。

 なんとか血は止まった。

 しかしまだ傷口は残ってるし痛みもある。

 それに動いたらまた傷口が開きそうで怖いな。

 もしこの状態で親父と戦闘になったら間違いなく勝てないだろう。


「……神崎君何があったの?」


 桃花がそう問いかける。

 とりあえず適当な事を言っておこう。


「……通り魔だ」

「嘘。今回のも多分だけど白愛さん絡みでしょ?」


 しかし桃花にはバレてしまう。

 そして白愛絡みだって事までバレてる。

 本当に彼女の直感は怖いな。


「……あぁ」

「なんで神崎君はこんな目に合っても白愛さんを諦めないの?」


 もう迷わない。

 今回ハッキリ分かった。

 どうして気づかなかった。


「好きだからだ」


 俺は白愛に恋をしてたんだ。

 だから白愛の記憶奪われたくないって思ったんだ。


「そっか」


 それと白愛に小型通信機を貰ってたな。

 ちゃん報告しておこう。


「空様どうしましたか?」


 ちゃんと出てくれてよかった。

 それにこの声が凄く安心する。


「……襲撃に合って銃で右太ももを撃たれた」

「ホントですか!? 今から私もそちらに行きます!どこにいますか?」

「……佐倉さんの自宅だ。住所は―――だ」

「分かりました」


 白愛が来るなら安心だ。

 とりあえずこれで通話を切る。

 少し血を失いすぎたのか電話を切った瞬間にフラッとした。

 もう限界かもな……


「……今のが白愛さん?」

「あぁ」


 桃花がそう問いかける。

 特に否定する理由ないだろう。

 さて、これからどうしたものか。

 とりあえず何かしら親父の対策を取らねば。

 

「ねぇ神崎君」

「なんだ?」

「白愛さんのどこが好きなの?」


 俺は白愛が好きだ。

 今さっきハッキリした。

 しかしどこが好きなのかはまだ自分でもよく分からない。


「……具体的には言えない。でも一緒にいたいと思う。それが好きって事なんじゃないか?」

「……そっか」


 そして会話が途切れた。

 それから少しばかりの時間が経った。

 会話が続かなくなって何分経っただろうか?

 そろそろ話しかけようとした瞬間だった。

 白愛が来た。

 とても愛しい言葉が部屋に響き渡る。

 何日ぶりだろうか?

 白愛の愛しい顔が見える。

 ずっとその顔が見たかった。

 

「空様! 大丈夫ですか!」

「……白愛」


 白愛が来ると同時に俺を心配してくれる。

 会えた事がとっても嬉しい。


「とりあえず血は止まってますが血を失いすぎです誰かA型の人はいますか?」

「……私がA型」

「少し血を貰ってもよろしいですか?」

「うん」


 白愛が桃花から血を取った。

 そういえば白愛は前に医術も出来ると言っていたな。

 そして輸血とかには免許がどうのこうの言うがそんな事を言ってる場合でもない。


「とりあえず弾丸を摘出するために手術します」

「……そんなことも出来るのか」

「はい。とりあえず麻酔もあるので痛みはないかと」


 さすが白愛だ。

 白愛にならなんだって任せられる。


「全て任せる」

「起きた時に全て終わってますからご安心ください」


 俺は麻酔を受けて安心して眠りについた。

 何とか無事に親父から逃げられたのだ……

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