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世界調整  作者: 虹某氏
4章【嘘】
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133話 理事長

「ふぅ。疲れたよ」


 桃花が俺に寄りかかってくる。

 先程の一件が嘘のように。


「疲れたからイチャイチャしよ?」

「どうしてそうなるんですか?」


 海に同意。

 なんで疲れたらイチャイチャになるんだよ。


「私にとって睡眠と空君とのイチャイチャは同意義なんだよ」

「つまりイチャイチャで疲れが取れると」

「うん!」


 ダメだ。頭がクラクラしてきた。

 少し理解が及ばない。


「ていうかイチャイチャって具体的に言うと?」

「うーん。膝枕?」


 桃花がポンポンと自分の太ももを叩く。

 ここに頭を乗っけろと。

 俺は促されるままそうした。


「……その後はどうすればいい?」

「寝るなり妄想するなりご自由に。私は空君を膝枕してるだけで満足だから!」


 イチャイチャって意識してやるものじゃないんだよな。

 なんかこう気づいたらなってた的なのが理想なのであり……


「何なんですか!」

「どうしたの?」

「彼氏いない私への当てつけですか!」

「竹林は?」

「あんな不細工が恋愛対象なわけないじゃないですか!」


 うーん。怖い。

 あそこまでされたら恋愛感情あると思われても仕方ないだろう。

 しかし現実は酷で影で不細工と言われる始末。


「たしかに話のウマは合いますが他に魅力は全くありませんよ! あの時の買い物だって私のお尻や太ももばかり見て!」


 知らない方が良かった世界。

 この世界の闇は深い。


「……なんですか?」

「いや、海ってホントに胸がないと思って……」

「殺します。死にたいならそう言えばいいんですよ?」


 海が怒りを顕にしつつナイフをどこからか出した。

 うん。死にそ。


「じょ、冗談だから!」

「冗談でも言っちゃダメなのがあるって良い薬になりましたね。お代は命一つで結構ですよ」


 つまり死んで償えと。

 これって詰んで……


「空君。これはフォロー出来ないかな」

「そんな!」

「まぁ本当に死にそうになったら止めるからそれまで頑張ってね!」


 桃花は親指をグーと建てて立ち上がった。

 それにより俺は桃花の膝から転げ落ちる。


「あら、立ち上がらないんですか?」


 そして海に首を踏まれる。

 下着が見えてるのは口が裂けても言ってはいけない。


「それじゃあ天国でお会いしましょう」


 俺の顔にナイフが振りおろれた。

 空気が切れる音が聞こえる。


「……生きてる」


 しかし海のナイフは俺の顔面ギリギリで止まった。

 なんとか九死に一生を得たようだ。


「財布。どこですか?」

「……昨日の服のポケットだ」

「ありがとうございます。女性を怒らせるとどうなるかの授業料として中身は全て抜いておきますね」


 海が俺の首から足をどけて俺の部屋に向かう。

 やっと自由になれた……


「そして俺の所持金はゼロになりました」

「ゼロから始める高校生活だね!」

「やめたまえ。俺は桃花がいるからゼロじゃない」

「そっか」


 ゼロと言われると友達も成績も全て無い人をイメージしてしまう。


「……お兄様にアニメネタは通じませんよ」

「いや、流石にこのネタは通じるって思ったんだけどダメか〜」

「今のネタだったのか!?」

「うん」


 うーん。そろそろ俺もアニメに手を出してみるか。

 流石に身近な人がここまでアニメを見てると見といた方が良いんじゃないか感に苛まれる。


「そうだ! 折角だしアニメ鑑賞会しようよ!」

「賛成です」

「最初は何を見せよっか?」


 俺はまだ知らない。

 微妙にアニオタの道を歩み始めてることを。

 その時の俺はまだ知らない。

 黒歴史を大量に生産してしまうことを……


「ラブコメにバトルに日常。どのジャンルが良いんでしょうか?」

「やっぱりバトルでしょ」

「そうですね。それで初心者向けとなると……」


 まったく話についていけない。

 一体どの言葉がどういう意味なんだ。


「円盤の売上が1万超えてるの見せれば?」

「いや、円盤売上だけで面白さを判断するものじゃないですよ」

「でも円盤売上良いのは万人受けしやすい作品が多いと思うんだけど」

「そうですね。だったらアレにしますか」


 分からねぇ。

 まったく分からねぇよ……


「というわけでシアター室に行こ?」

「こんなのもあるのかよ!」

「え? 普通はあるでしょ……」


 いや、一般家庭にシアター室なんてないから。

 一回でいいから桃花宅の見取り図を見てみたい。

 本当にここは迷宮だ。

 迷子になった事はまだないがいつなってもおかしくないと俺は思っている。


「そうだ! 折角だからオールしようよ!」

「まぁ明日は予定ないし問題ないな」

「あの、学校はどうお考えなのか聞いていいですか?」


 海のツッコミで思い出した。

 そういえばそんなものに通っていたなと。

 そして意見がまとまって移動しようとした時だった。

 桃花の家の電話が鳴った。


「……学校からだね」

「そういえば休みの連絡は……」

「してないね」


 そりゃ来るわ!

 まったく何をしてるのか……

 俺は仕方なく電話に出る。


「……空か。俺だ。死月遊戯(しつきゆうぎ)だ」


 あぁデスゲーム先生か。

 すなわち俺達の担任。


「まぁ昨日か一昨日か忘れたが大変だったのは分かるが……」


 そして真央と関わりがある人物。

 何故か学校の内通者にもいる真央の一派。


「今日も休みです」

「それはいつもの事だしいい。ちょっと面倒だがウチの理事長がお呼びだ」


 理事長?

 そういえば誰なのだろう。

 そもそも表に顔を出さないし……


「ほら、うちの高校の教師を全切りして校則とかも全て一新させて偏差値を一年で30近く上げた人だよ」


 そんなことがあったのか。

 言われてみれば入試の時は苦労してない。

 それはその時の偏差値が低かったからなのか。


「それでそんな凄い人が何の用ですか?」

「どうもテスト毎回満点のチーター共に頼みがあるそうだ」

「……ていうか桃花と一緒にいるの知ってるんですね」

「当たり前だ」


 あまり当たり前で済ませてほしくはない。

 まぁそんな人が直々に呼び出すというは余っ程のことだろう。

 面倒だが行くとしよう。


「それじゃあ待ってるよ」


 電話はガチャと切れた。

 一応スピーカーにしておいたし桃花と海にも聞こえていただろうか。


「……何ですか。このチート理事長」


 まぁたしかにチートだな。

 そんな人が表舞台で暴れてるとは。

 てっきりそんなチーターエニグマと裏舞台に行くと思っていたのだが……


「行きましょうか。どんな人か興味ありますし」

「私も興味ある。理事長って調べても名前どころか性別すら出ないんだよね」


 なんて謎の多い人物……

 本当にどうして俺なんかに……

 そう思った矢先に再び電話が鳴った。


「……なんだよ」


 また学校からだ。

 一体何だと言うのだ……


「私服でもいいって伝え忘れたから……」

「そんな事かよ! それじゃあ私服で行かせてもらいますよ!」


 俺はイラつきながら電話を切る。

 こっちがそう言うなら私服で行きますよ。

 文句言うなよ。


「……行くぞ」

「そうだね」


 俺達はそのまま家を後にした。

 理事長が俺達に用なんて想像……


「桃花?」

「呼び出された理由にちょっと心当たりがあったから……」

「あるのかよ!」


 うわ。完全に桃花のせいだ。

 ていうかだとしたら俺はなぜ呼び出された。


「……桃花は一体何をしたんですか?」

「ちょっと生意気な子がいたから腹パンしたのが問題になったのかなって思って。ちゃんと口止めしたんだけどなぁ」

「えぇ……」


 どういう経緯でそうなった。

 間違いなくそれだろ……


「でもそんな事で理事長が呼び出すでしょうか?」

「どうだろ。意外と私ってそういう事を日常的にやってるから」

「お前はほんとに何をしてるんだよ……」


 まぁ最低限のフォローはするか。

 たしかそういうのがあると学校の大幅なイメージダウンになるし理事長としても問題にしており……


「まぁ行けば分かるよ。最悪説教になったら理事長を腹パンして黙らせればいいんだよ」

「その発想がダメなんだよ……」


 はたして桃花は反省するのか。

 ちなみに俺だったら反省しないに賭ける。


「そんなことを話してるうちに学校着きますよ」

「……ねぇ今から帰っちゃダメかな?」

「何ビビってんだよ。行くぞ」


 俺達は校門に足を踏み入れる。

 それから恐る恐る職員室を目指した。


「……来たか」

「理事長っていうのは?」


 デスゲーム先生は親指である扉を示した。

 そこに理事長が……

 俺はノックをする。


「何時でもどうぞ」


 すると声が聞こえた。

 それと共に俺はまったく問題ないと判断した。


「この声って……」

「間違いなく彼女だね」


 体から一気に力が抜けた。

 何でお前がそこにいるんだよ。

 と思いながら扉を開けた。


「やぁやぁよく来てくれた」

「……それで何の用だよ。真央」

「そこはもっと驚いてもいいんじゃないかな」


 ここの理事長は神崎真央。

 つまりこの学校は彼女の箱庭だ。


「どうも。私がこの高校というか学園の理事長の神崎真央だよ」

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