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世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
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117話 十の弾丸

「というわけで今夜は時間がかなりあったのでカレーにさせてもらった。幸いにも桃花宅にはかなりのスパイスがあったしな」

「すみません。本来は私の仕事なのに……」

「気にするな。料理するのは好きだからな」


 最近、白愛の仕事が減っていく。

 でも掃除洗濯などまだ彼女に頼り切りな部分は多い。


「それで桃花の方は上手くいったの?」

「うん。やっぱり担任で話がすんなり通って良かったよ」

「名目は?」

「海ちゃんは普通の人の生活をしたいから高校に通うって事になってるよ」


 とりあえず竹林の件が勘づかれる事はないな。

 山場を一つ越えて一安心だ。


「それで海様は学校に通う気は?」

「さらさらありません。カーテン全部占めてポテチでも食べなからアニメでも見てた方がよっぽど有意義ですから」


 うわ、なんというダメ人間……

 まさか引き篭り生活を送る気満々とは。


「海ちゃんは将来何になりたいの?」

「ニートですかね。一生遊んで暮らせるなんて最高じゃないですか」

「少しは社会に貢献する気は……」

「逆に社会が私に貢献するべきだと思いますが」


 まぁ嫌でも資金が尽きて働く羽目になるだろ。

 その時に後悔するのは海で……


「というわけで桃花。養ってください」

「いいよ。お金は腐る程あるから」


 うん。海の将来は安堵だな。

 それが良いことか悪いことかはさておき。


「とりあえず冷めないうちに食べよっか」

「そうだな」


 俺はカレーを皿に盛り付ける。

 あと食べ終わったら桃花に一つお願いしないとな。


「そういえば僕の分は?」

「あるわけないだろ。どうしても何か食いたいならドッグフードぐらいなら用意してやるよ」


 親父はそれだけの事をした。

 少なくともそうでもしないと海の腹の虫は収まらないだろう。

 海と同じ扱いをしてしまってはならない。


「……それはそうと何時になったら僕の拘束を解いてくれるのかな?」

「海がお前を許した時だ」

「酷いな。一生外れないじゃないか」


 このくらいの自覚はあるのか。

 まぁなんでもいい。

 今の親父は喋る事しか出来ない。


「そうだ。空。あそこにある僕の超電磁砲(レールガン)は自由に使ってくれてかまわない。僕から君への選別だよ」

「……何を考えてやがる?」

「少しは親らしい事をしようと思ってね」


 とりあえず悪意は無さそうだ。

 そして超電磁砲は強力な武器。

 俺は親父に言われた通り超電磁砲を手に取りそのまま海の元へと行く。


「お兄様?」

「海が持ってろ。威力が折り紙付きなのはお前も知ってるだろ?」

「……そうですね。使わせてもらいましょう」


 海に足りないのは火力。

 速さは十分にある。

 あとは火力だけだ。

 海との相性は申し分ないだろう。


「おや、僕は空に……」

「自分の物をどう扱おうが俺の勝手だろ」

「そうだね」


 超電磁砲。

 たしか親父いわく一度打ったら二時間は使い物にならないとか……


「それと弾丸も使うといい」


 親父が目で場所を示す。

 そこには十種類の弾丸があった。

 どれも術式が描かれてる。


「随分と面白い事をするんだね」

「そうだろ?」

「説明は不要だよ。私が分かるから」


 さすが桃花だ。

 やはり魔法のエキスパートなんだな。


「全部で十色だな」

「分かりやすくするための区別だね。赤色に刻まれてるのは燃焼。銃弾が当たった人が魔法を使える人なら内部から焼き殺すってものだね」


 なんて威力の高さ。

 考えてみたら親父が魔術師殺しでエニグマ。

 弱いわけがない。


「青色は結界。十分ぐらいの間だけ絶対破壊不能の結界を貼る事が出来る」

「自分を打って守るのも良し。敵に打って拘束するのも良しって感じか……」

「そう。まぁ真央には意味無いね」


 攻守一体の弾丸。

 でもそれも当然ながら相手が魔法適切がある場合のみ。

 相手の血で魔法を発動させるわけだからな。


「緑色のが汚染。当てた相手の血液を毒に変える物だね」

「……能力対策か」

「そうだね。これなら夜桜にも決定打になると思うよ」


 なんてレパートリーの多さだ。

 そんなのがあと七つ。


「紫色のは幻惑。幻を見せたり幻聴を聞かせたりする。もしもこんなので打たれたら立つのも困難」

「これも強力だな」


 しかもこれは付与効果にすぎない。

 これらに加え銃のダメージも与えられるのだ。


「黄色は強化。海ちゃんが良く使うあれだね」

「物にも出来たのか……」

「うん。それにより弾速が速くなってる。でも速くなるのは血に触れた時だからこれは確実に相手の体を貫通させるための処置だね」


 当たった時に加速。

 上手くやれば後ろにいる人も貫けるかもしれない。

 これは集団戦向けだな。


「灰色は透明化」

「……意味あるのか?」

「うん。たしかに血に触れた時に発動から意味無いような気もするけど体内で銃弾が透明になるって事は摘出が難しくなる」


 恐らくこの弾丸で殺す事はないのだろう。

 敢えて足とか狙い傷を負わせる。

 そして相手に撤退を強いる。

 主に戦争で使われた手段だ。

 すると相手はその人を治すのに人手を割かないといけなくなる。

 場合によっては殺すより重体を負わせた方が良い場合もある。


「肌色は液体化だね。銃弾が体内の中で溶けるってもの。そして性格の悪いことにこの弾丸だけ水銀で作られてるよ」

「水銀中毒を故意的に引き起こすとか質が悪い」

「そうだね。これは苦しめるためだけに作られた銃弾だよ」


 ホント胸糞悪い。

 相手を苦しめだけの銃弾とか何時使うんだよ。


「金色は狂化。一時的に精神を蝕んで暴走させるもの。しかも弾丸の形状的に威力は抑えめに作られてる。内輪揉めや同士討ちをさせるのが目当てだな」


 たしかに場合によっては有効だ。

 でも非人道的すぎる。


「虹色は重くなるだけだね」

「桃花の母親のような感じか?」

「そう。でも私のお母さんは全体を一気に重く出来るけどこれは打たれた場所だけが重くなるね」

「なるほど」

「仕組み的には重くなった銃弾が体内に留まって動きにくくするっていう単純なものだよ」


 まぁそれなら俺の場合は持ってるな。

 この時まで存在を完全に忘れていたが。


「そして最後の白色。これは破壊」

「えらくシンプルだな」

「うん。主に破壊するのは魔法。魔法に含まれる微弱な魔力を吸収して発動。そしてその魔法を破壊する」


 シンプルが故に強力か。

 でも能力には聞かないんだろうな。


「私の天敵のような弾丸だよ」

「そっか。桃花や桃花の父さんにはこの上なく有効なのか」

「うん。氷の盾を作って防いでもすぐに破壊される。考えただけで厄介だよ」


 どれも強力だな。

 あれを見るまでだったらゾッとしてただろう。


「……どうしたんですか? 私の顔に何か付いてます?」

「いや、海の蝶化だったら全て意味を成さないんだなって思って」

「当たり前です。私のは魔法じゃなくて能力ですから」


 海なら親父の打つ手が全て意味を成さないのか。

 皮肉なものだ。


「それと私がこの弾丸も貰っても構わないですか?」

「あぁ」

「ありがとうございます。蝶化の得た今となっては多分銃を使う機会が増えると思いますから」


 飛んで一方的に狙撃。

 そして何故か海の射撃の腕は良い。

 とても強くなったものだ。


「ねぇ。海ちゃんの蝶化ばっかり注目されてるけど私のエクスカリバーでも無効化出来るんだからね」

「そうか。アリスにも意味を成さないのか……」


 どうも親父の弾丸は場所を選ぶ。

 そもそも相手に魔法適切が無ければただの弾になる。


「あと海ちゃん」

「なんですか?」

「もしも弾が尽きそうになったら私に言ってね。私なら作れるから」


 そして桃花でも作れる。

 恐らく桃花には発想が無かっただけで術式さえ分かってしまえば簡単なのだろう。


「わかりました。それと難しいのってあったりします?」

「青色と金色かな。この二つだけは頑張っても三日はかかる。ちなみに他は一日で出来ると思うよ」

「……意外と時間がかかるんだな」


 俺はもっと短いと思っていた。

 まさか桃花でもここまで時間がかかるとは。


「うん。流石にこんな小さい所に術式を刻むのは大変だもん。それに狂化の術式なんて二時間頑張ってようやく書けるくらいの難しくて複雑なんだよ」


 とは言うものの。

 桃花は出来ないとは一言も言わなかった。

 すごいものだな。


「……親父はどのくらいかかったんだよ」

「悪いが金色と青色は一つ作るのに一ヶ月。他でも少なくとも一週間は必要だ」


 改めて桃花がどのくらい企画外なのか思い知らされた。

 どんだけ桃花は魔法に精通してるんだよ……


「……空様。恐らく私ならどれも二時間で出来るかと」

「は?」

「たしかに魔法は血の関係で使えませんが知識だけなら十分にあるので術式を書くだけなら問題はまったく問題ありませんよ」


 そういえばそんな事を言ってた気がしなくもない。

 やっぱり白愛もかなりの企画外だな。


「そっか。じゃあ作るのは私より白愛さんの方が適任か」

「……そうだな。それとそろそろ飯にしないか?」

「ごめん! 完全に忘れてた」


 まぁ悪いのは話を振った俺だ。

 文句は言えない。


「ちょっと温めるから待ってろ」


 俺は指を鳴らして小さな火玉を起こしてカレーに近づける。

 そして全体を均等に温めていく……


「とりあえず温まったと思うが冷たいところがあったら言ってくれ」

「……本当にお兄様の能力は凡用性が高いですね」

「まぁな」


 そのまま皆で席に着きカレーを平らげていく。

 皆、口を揃えて美味しいと言ってくれたので良かった。

 さて、食べ終わったし桃花にお願いするか。


「桃花」

「どうしたの?」


 俺はまだ経験が足りない。

 もっと強くならないとダメだ。


「俺と戦ってくれ!」


 俺は桃花に頭を下げる。

 桃花の強さは俺がよく知ってる。

 だからこそ彼女と戦いたい!

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