表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界調整  作者: 虹某氏
3章【妹】
100/305

100話 プロローグ

 なんだかんだとあり学校は遅刻。

 俺が教室に入ると既に二時間目の授業が始まっていた。

 そして夜桜が俺の顔を見ると目を見開いた。


「拓也。あとで話がある」

「なんか面白い事でもあったのか?」


 今の彼は鈴木拓也を演じている。

 間違っても夜桜の名前は出すな。

 全てが失敗する。


「めちゃくちゃ面白い事があったぞ」


 今すぐこの顔面を殴り飛ばしてぇ。

 でも我慢だ。

 友達を演じろ。

 コイツを追い込むその時まで……

 憎しみを心に潜めながら授業を受ける。

 黒板を淡々と移す。

 早く終われ。

 俺は次の手を討ちたいんだ。

 そんな事を思いながら退屈な授業を受けた。

 長い授業が終わると同時に俺は夜桜の元に行く。


「僕、超能力に目覚めたんだ!」


 一人称に気をつけろ。

 この時の拓也が知ってる俺の一人称は“僕”。

 間違って俺とでも言おうものなら疑われる。


「いや、そんなことあるわけないだろ。とうとうお前は頭おかしくなったのか?」


 頭おかしいのはお前だ。

 笑いながら人をポンポン殺しやがって。


「本当だよ。なんか夢の中で“知の神”って名乗る人が出てきて“君は【知】の使徒に選ばれた”と言って……」


 使徒同士は分かる。

 隠すなんて無理だからバラしてしまえ。


「ふーん。それでどんな能力?」

「聞いて驚くなよ。火を操る能力だ」


 そう言って俺は指から小さい火を出して消す。

 たしかに使徒同士は分かるが能力までは分からない。

 それなら本当の能力を言う得なんてない。


「……マジじゃねぇか」

「だから言っただろ」

「本当にお前ってズルいよな! メイドがいてイケメンで勉強と運動も出来る! それに能力まで手に入れて。なんでこんなに不公平なんだろうなぁ! 俺も能力の一つや二つ欲しいなー」


 お前は能力を数え切れないくらい持ってるだろ。

 ふざけた事を抜かすな。


「それで白愛ちゃんの反応はどうだった?」

「ちゃんと“さん”をつけろ。白愛の反応は驚いてそのあとにどこか納得したような感じだった」

「そうか……」


 この頃の俺はまだ神崎家を知らない。

 夜桜もそう思っている。

 だから俺は少しだけ神崎家を匂わせる発言をした。

 運の良いことにまだ夜桜は気づいていない。


 キーンコーンカーンコーン


 そしてチャイムの音が鳴って話が遮られた。

 ちゃんと手は打てた。

 夜桜は今のでどう判断するか。

 恐らくは自分の家柄すなわち神崎家について知らない少年が偶然使徒に選ばれたと判断するだろう。

 つまりまだ無知だと思っている。

 もしかしたらラオペンへの勧誘もあるかもしれない。

 しかしそれは海も想定している。

 今のところは海の狙い通りに動いている。

 あと気をつけるのは真央。

 真央に共有だけはされちゃダメだ。


「次は私の歴史の時間だな」


 その言葉と共に先生が入ってきた。

 歴史の先生は俺達の担任と同じ。

 すなわち夜桜の一派だ。


「今日やるのは世界大戦の開幕だな」


 何事もなかったかのように授業が始まる。

 二十分ぐらい変哲のない授業が続いただろうか。

 そんな時だった。


「かくしてホローポイント弾の使用は禁止された。それじゃあ鈴木君。君はどうしてその禁止条約を他の国も守っていたか分かるかね?」


 夜桜が先生に指される。

 しかし彼は大きなイビキをかいてスヤスヤと寝ていた。


「鈴木」


 先生が彼の後ろに立ち軽く教科書で叩く。

 それにより夜桜が跳ね起きた。


「な、なんでしょうか!」

「後で生徒指導室に来なさい。君の授業態度は悪すぎる」

「そ、そんな〜」


 前までは当たり前だくらいにしか思わなかっただろう。

 しかし今では分かる。

 夜桜を呼んだのは叱るためではない。

 恐らく授業中のどこかで夜桜が先生に合図をした。

 “適当な理由を付けて呼び出せと”。

 俺について話すために……

 俺が使徒になったからヤツらの動きも多少は変動している。

 それが吉と出るか凶と出るかは未だ不明だ。


「さて、続きをするぞ。それから戦争においての禁止兵器は増えていき……」


 それ以外は普通に授業は進んだ。

 怖いくらいに何もなく……


「ちゃんと復習しておくんだな。まぁ地獄を見たいなら話は別だが……」


 先生がそう言うとチャイムが鳴り授業の終わりを告げた。

 夜桜はトホトボと先生に連行された。


「……神崎君」


 それを見計らったのか桃花が俺の元に来る。

 手紙を持ちモジモジしてる。


「空でいいよ。だから僕も桃花って呼んでいい?」

「う、うん」


 少しばかし戸惑う桃花。

 しかしずっと神崎君と呼ばれるのも調子が狂う。


「それで僕に何か用?」

「こ、これを読んでください!」


 中身は告白文(ラブレター)ではない。

 告白するための呼び出しだ。

 彼女も回りくどいことをするものだ。

 俺は敢えて手紙を開かず彼女の目を見る。


「昼休みに校舎裏だな」

「見てもないのにどうして!?」


 ここでは答えない。

 彼女にもっと俺に興味を持たせろ。


「悪いが行けない。ただ……」


 顔を近づけて息のかかる距離までいく。

 そのまま耳元に近づき……


「放課後に俺の家に来い。夜桜のことで話したい」


 その瞬間、桃花の表情が変わった。

 意表を突かれたかのように。


「空君ってもしかして……」

「あとで話す。ここだと夜桜に聞かれかねないからな」

「……うん」


 女子一人で男の家に行くのは不用心すぎる。

 少しは自分の身を心配してほしいものだが無事に応じてくれて良かった。

 まぁ一般人なら返り討ちに出来るだろうが……

 そして夜桜が戻ってきて四時間目が始まりそのまま昼休みと残りの授業を消費。

 俺の真意が夜桜にバレることなく無事にその日を終えた。


「おかえりなさいませ」

「ただいま」


 家に帰りそのまま台所に立つ。

 少しだけやる事がある。


「なにか作るんですか?」

「桃花が来るからちょっとした菓子をな」

「でしたら私が……」

「いや、俺がやるよ」


 桃花の場合は俺が作った方が間違いなく喜ぶだろう。

 使うのは薄力粉と砂糖とバターだけでいい。

 時間もないしさっさと作ってしまおう。


「そう言えばこんな事も出来るのか」


 耐熱のボウルにバターを入れて溶かす。

 本来なら電子レンジでやるが考えてみたら俺の能力で火も使えるからこれで十分じゃないか。

 改めて便利さを痛感させられた。

 そして溶けたバターに砂糖と薄力粉を入れてよく掻き混ぜてそれを一口サイズに切って焼く。


「流石に能力で焼くよりオープン使った方が熱が均等に伝わるか……いや、練習もかねて能力で焼くか」


 手から軽く火を出して近づける。

 時間かけてのんびりと焼いていく。

 時が経つにつれてクッキーの焼ける良い匂いが部屋に充満。

 そろそろ良いだろう。


「白愛。味見頼む」

「分かりました」


 白愛がひょこひょことこちらに来て焼けたクッキーを啄む。

 それと共にサクッと音が鳴った。

 しっかりと焼けるようで何よりだ。


「普通に美味しいですね」

「なら問題ないか」


 俺はそのままクッキーを大皿に盛り付けてテーブルに運ぶ。

 あとは飲み物か……


「白愛。リンゴあるか?」

「はい」


 ウチの冷蔵庫はよく空である。

 今までは少しばかし謎だった。

 しかし今ではその理由も分かる。

 白愛の能力は亜空間。

 その中では物の時間が経たないから腐ることもなければ冷めることもない。

 そして容量も無限。

 使う必要がないのだ。


「ありがとな」


 白愛の方からリンゴが飛んできたのでそれをキャッチ。

 本当に彼女の能力も便利だ。

 戦闘面においては相手と自分を亜空間に連れ込んで逃げ道を奪うことも出来る。

 また大量のナイフが入っておりいくら投げても弾切れする事はまずない。

 とりあえず白愛の能力の話はその辺にしておいてジュースを作ってしまおう。

 受け取ったリンゴはそのままミキサーに入れる。

 そこに砂糖や蜂蜜などを適当にブレンド。


「こんなものか。白愛悪いがまた……」


 ピンポーン


 出来上がり白愛に味見を頼もうとした時だった。

 それと同時に呼び鈴が鳴ったのだ。

 どうやら桃花が来たらしい。


「はい。どちら様ですか?」

「佐倉桃花です。空君に呼ばれてきました」

「貴方が桃花様ですね。どうぞ」


 そのまま白愛に案内されて桃花が部屋に入る。

 白愛が案内してる間にミキサーからジュースをコップに注ぎしっかりとセットはしておいた。


「……空君ってメイドいるんだね」

「まぁな。彼女は青井白愛(あおいはくあ)。もっと分かりやすく言うなら暗殺姫だ」


 その瞬間、桃花の表情が驚愕に変わった。

 無理もないか。


「……あなたって何者?」

「【知】の使徒にして神の血を引くとされる神崎家の末裔だ」


 包み隠さず自己紹介。

 とりあえず概要は伝わっただろう。


「そして桃花。俺に力を貸してくれないか?」


 本題はここからだ。

 まずは彼女に全て説明せねばな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ